2017年11月123456789101112131415161718192021222324252627282930

 現在開催中の企画展「長沢芦雪展」では、和歌山県にある無量寺が所蔵する障壁画を展示しています。この障壁画は、1786年10月頃に、芦雪が師の円山応挙の名代として作品を届けに南紀に赴いて翌年2月中旬まで滞在した折、現地の寺院や個人のために制作した作品群の1つで、芦雪33歳の作品です。今回の展覧会では、この無量寺の仏間を中心とした寺院建築を再現し、障壁画を展示しています。

 この再現にあたっては、施工を請け負ったディスプレイ会社が、建物の約10分の1の縮小模型を作りました。現場でも模型を見ながら再現に取り組みました。

171101_1.png

施工風景

 愛知県美術館では、長沢芦雪展会期中の11月に各種教育プログラムを実施します。そこで、精巧に作られたこの建築模型を、視覚に障害のある方との鑑賞会で活用する案が浮上しました。コレクションの彫刻作品を直接触察する従来の鑑賞に加えて、模型に触れながら芦雪の作品の鑑賞が出来たら、臨場感ある鑑賞が出来るに違いありません。

 そこで、現在、高校生プログラムを準備中の高校教員と大学生にも協力を依頼し、コラボすることにしました。実は、この高校生プログラムでも、障壁画の虎図を参考に水墨画を体験し、襖と仏間に見立てた紙材で、ミニチュアの空間を再現することにしています。

 こうして、高校教員の指導の下で大学生が集まり、模型を作りこむことになりました。

171101_2.jpg

ささくれをサンドペーパーでとる作業

171101_3.jpg

欄間の取り付け

171101_4.jpg

仏間の飾りつけ

171101_5.jpg

紙粘土による仏間の欄間

171101_6.jpg

襖の引手部分

 模型に貼られた襖の画像は、無量寺で発行している図録の付録にあった展開図を模型に合わせて拡大しています。襖を模型にはめ込む作業は苦労したとのこと。合板のままの模型では木のささくれなどで触察が厳しいことが問題でしたが、サンドペーパーをかけ着色して滑らかな手触りにしています。また、仏間の欄間は紙粘土で成形して色彩とニスを塗るなどして、手の込んだ作業となっています。紐飾り、畳など、100均ショップで集めた材料ながら、見かけは本物に迫る出来栄えです。4時間ずつ3日で作業し、見事仕上がりました。先生、大学生の皆さんご協力有難うございました!

171101_7.jpg

完成

 せっかくの出来栄えなので、是非、ご来館の多くの皆様にも見ていただきたく、フォトスポットに設置することにしました。展示室では実物を撮影できませんが、展示室外のこの模型なら撮影OKです。写真に撮ってみると、本物に見まごうばかり。是非フォトスポットにお越しください!(M.F.)

 大変有難いことに、近年多くのお客様に愛知県美術館に来て頂いております。その中には愛知県外からのお客様も多く、中には最寄り駅である栄駅からの行き方が分かりにくかった、というお声も頂いております。

 おそらく当館が単独の施設ではなく、「愛知芸術文化センター」という複合施設の中にあることにも起因しています。なので、駅からの案内に愛知県美術館という表示がない場合は、

愛知芸術文化センター」を示すルートに従って頂ければと思います。

 とはいえ、遠方から初めての方には難しい点もありますので、ここでは写真付きでその詳細をお伝えいたします。

michiannai1.jpg

 地下鉄の栄駅に着いたらオアシス21へ向かう「4A出入口」方面の「東改札」を目指してください(名古屋駅から東山線でいらっしゃる場合は、進行方向に向かって一番先頭の車両に乗ると便利です)。

michiannai2.jpg

 そのまま階段を上って正面にある改札を出て直進します。

michiannai3.jpg

 すると左手に、下に降りる階段とエスカレーターがあるので、下りてください。

michiannai4.jpg

 さらに進むと広い場所(オアシス21)に出ます。右手にマクドナルド、正面に観光案内所があります。その間の道を、カーブを描く建物に沿って反時計回りに歩きます。

michiannai5.jpg

 しばらく歩くと三菱東京UFJ銀行のATMの脇に連絡通路があるので、通路を奥へ進むと愛知芸術文化センターの地下2階に到着します。そこからエレベーターで10階に上がると愛知県美術館です。

皆様のご来場を心よりお待ちしております。(T.I)

 7月1日より開催している大エルミタージュ美術館展も間もなく終盤。すでに10万人の方々にお越しいただいております。

 さて、今回は展覧会の関連イベントとして催された二つの記念講演会についてレポートします。

 7月22日に開催された一つ目の記念講演会は、本展監修者で、成城大学名誉教授の千足伸行先生による「名画と出会う日:エカテリーナ2世とエルミタージュ美術館」です。

 千足先生は名古屋に巡回した過去の2回の大エルミタージュ美術館展(2006-07年、2012年)の監修者でもあり、エルミタージュ美術館の膨大な絵画コレクションに精通されているのはもちろんのこと、長きにわたりエルミタージュ美術館と深い信頼関係を築いてきた方です。本講演では、エルミタージュ美術館のコレクションの成り立ちや展覧会の出品作について、じっくりと1時間半ほどお話しくださいました。

hermitageevent1.jpg

 また本展覧会の図録には、論文として「オールドマスターの世紀:バロックからロココへ」と「コレクターとしてのエカテリーナ2世とその周辺」をご執筆くださいました。いずれも本展をより深く理解するうえで欠かせない内容が論じられています。

hermitagecatalog.jpg

 さらに8月19日には、二つ目の記念講演会として大阪大学名誉教授の生田美智子先生に「エカテリーナ2世の時代――光太夫のみたロマノフ王朝」という題名で講演をいただきました。

hermitageevent2.jpg

 両氏の講演会の題名にも登場するエカテリーナ2世は、エルミタージュ美術館のコレクションの礎を築いた18世紀後半のロシア皇帝です。大黒屋光太夫は現在の三重県を拠点として、同時代の江戸後期に活躍した船頭で、当時ロシア領だったアラスカ沖の島に漂着し、ロシアを横断して首都サンクトペテルブルクでエカテリーナ2世に謁見、交渉の末に帰国の船を出させたという驚くべき日本人です。日本史の授業でその名を耳にした方も多いのではないでしょうか。本講演会では、『大黒屋光太夫の接吻 異文化コミュニケーションと身体』の著者でもある生田先生に、光太夫が未知の国ロシアで発揮した類稀なコミュニケーション力や、彼が見た18世紀後半のロシアについて詳しくお話をいただきました。

hermitagebook.jpg

 愛知県美術館では学芸員による解説だけでなく、ゲストをお呼びした多彩なラインナップの講演会などを開催しております。さまざまな分野の専門家たちが、それぞれの視点で愛知県美術館の展覧会やコレクションについて語ってくださいますので、ぜひチェックしてみてください。(K.K.)

 愛知県美術館では、7月1日(土)より「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」がスタートし、早くも1カ月が経ちました!

 すでに多くのお客様にご来館いただいております本展ですが、ここでは6月末に行われた展示作業をレポートしたいと思います。


 最初に本展について簡単にご説明しておきますと......

 本展のタイトルに聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「大エルミタージュ美術館展」が名古屋で開催されるのは今回で3回目になります。過去には2007年と2012年にお隣の名古屋市美術館にて開催されています。といってもエルミタージュ美術館には、絵画だけでも1万7000点ものコレクションがあるので、ネタが尽きるなんてことはありません。

 

 今回のテーマは「オールドマスター」です。オールドマスターとは、16世紀から18世紀を中心とする巨匠たちのことで、これらはまさにエルミタージュ美術館の核となるコレクションです。出品作85点は全てエルミタージュ美術館の常設展示作品で、またその約半分は美術館の礎を築いた18世紀後半のロシアの女帝、エカテリーナ2世の在位中に集められたもの。古くからエルミタージュ美術館に所蔵され、美術館の顔として展示されてきた作品なのです。

 さて、それだけ貴重な作品を輸送・展示することになるので、借りる側の日本の美術館はもちろん、貸す側のエルミタージュ美術館も慎重になります。エルミタージュ美術館とは展示構成だけでなく、事前に壁の厚さなど細かな点まで確認を行いました。

hermitagekasetukabe.jpg

 仮設壁を設置する様子。重い作品にも耐えられるよう、通常よりも板の厚みを増してあります。

 展示作業には本家エルミタージュ美術館から3名のクーリエ(輸送・展示作業などの監督者)がいらっしゃいました。彼らは作品を開梱してコンディションをチェックするだけでなく、展示などの全ての作業を監督します。特に大型の作品の場合は、作業前に流れを確認し、ロシア側、日本側の双方が安全と認める方法で作業を行います。

hermitagesmall.jpg

 比較的小さな作品はテーブルのうえに載せて、1点1点細かくコンディションをチェックしていきます。

hermitagecourier.JPG

 クーリエに見つめられて作業するのは緊張しそうですが、作業員の方々にとっては慣れたものでしょうか。

hermitagebig.JPG

 大きな作品の展示は作業員の方々が総出で行います。

 どういった展示方法が最も安全かという判断は伝統や習慣によっても異なるので、海外のクーリエと意見が食い違うことも。しかし双方でしっかりと議論し、両者が納得した上で作業するのが重要です。数日間のピリピリした(?)展示作業を経て、ようやく会場が完成します。

hermitageroom.JPG

 最後に照明の調整を行い完成です。

 会期は9月18日(月・祝)までですので、ぜひこの機会に会場でエルミタージュ美術館の名品の数々をご覧ください。なお同時開催のコレクション展では、先日受贈いたしましたバルテュス《白馬の上の女性曲馬師》も展示しております。こちらもぜひお見逃しなく!(K.K.)