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さてさて、中国現代アートの決定版「アヴァンギャルド・チャイナ」展ですが、東京での展覧会も無事に終わり、次は大阪の国立国際美術館での開催となります。大阪が終わると、来年の4月からいよいよ愛知県美術館での開催です。
 ところで、どうして愛知県美術館の学芸員が他の美術館での開催にこんなにも興味津々なのかお分かりですか。それは、いくつかの美術館などが協力しあって一つの展覧会を作っているからです。もちろん、一館だけで展覧会を企画することもありますが、複数の美術館が集まって協力すると、そのぶんアイデアや人材、経験、お金も集まります。一緒に展覧会を作り上げた美術館同士、お互いの状況は気になるものです。

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↑ 現段階での会場展示プラン。どこか入口になるのでしょうか・・・!?


 さてさて、そんな「アヴァンギャルド・チャイナ」展なのですが、愛知県美術館では、今、展示プランの計画に本格的に取り掛かったところです。楊福東(ヤン・フートン)、曹斐(ツァオ・フェイ)などの映像作品の場合、機材の設置や配線も含めて会場プランを作らなければなりません。また、車椅子のお爺さん達(孫原・彭禹の《老人ホーム》)を、どのように安全な場所で動かすかも重要な問題です。狭い場所だと、鑑賞者や柱にぶつかってしまいそうになるからです。
 ともあれ、この展覧会は作品数が多いうえ、絵画や彫刻という枠に収まりきらないいろいろなものがあるので、ずいぶんとはみ出し気味(!?)の展示になりそうな予感がします。
 
(F.N)

移動美術館

2008年11月21日

 11月20日から、移動美術館が始まりました。今年は武豊町のゆめたろうプラザ(武豊町民会館)で、今月30日まで、この連休中も開催しています(25日(火)は休館日なのでご注意を)。愛知県美術館から離れた地域で、多くの方に鑑賞の機会を持っていただくために、平成6(1994年)から始まったものです。県内各地、三河山間部や渥美半島等々でおこなってきましたが、知多半島には、記念すべき第一回に南知多町で開催して以来、実に15年ぶりに戻ってきました。

 これまで、体育館や地域の美術館で開催してきましたが、今回の会場は、コンサートホールも使うという初めての試みで、安全にどうやって展示するかが最大のポイントとなりました。何度となく会場に足を運んで、武豊町の方のお知恵も拝借して、プランを練りました。また展示する作品も、ホールという性格に合った、舞台芸術に関連した作品も並べています。今回は照明も舞台照明を使用してとのことで、もっていった彫刻たちも、華やかな舞台照明にあてられて、ドラマチックに見えてきます。特に、ベートーヴェンの肖像は、本当はこういうコンサートホールに飾られたかったんだという声が聞こえてきそうで、その場の雰囲気ににぴったり合っているのです。

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 またもう一つの会場のギャラリーは、少々台形というスペースなのですが、グレーの壁に小品の絵画と彫刻たちが、しっくりとなじんでしまい、驚きました。展示室の外には、地元の学校の先生方の発案で、「あなたの選ぶベストワン」のコーナーがあります。武豊町民会館に飾りたい作品は?家で飾りたい作品は?を選ぶ人気投票です。このまま飾っておいてもいいような気がしてくるほど、作品たちがなじんでいるので、投票にまよってしまうかもしれませんが、ぜひ投票してみて下さい。また、先生がたが、展示作品の1点を使っての、子供向けのぬり絵も用意してくださり、子どもたちのぬり絵も会場をにぎわしています。こちらの作品もぜひ楽しみにご覧ください。

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 期間中はギャラリートークやワークショップなど盛りだくさんで、お近くの方はもちろん、なんども足を運んでみて下さい。おなじみのコンサートホールやギャラリーがいつもと違う顔をして待っています。
(MF)

 企画展ごとに開催している学芸員のギャラリー・トークを、所蔵作品展でもスタートしました。これまでも特集展示のおりや学校などの団体様向けにはよくやっているのですが、ふだんの美術館にももっと親しんでいただきたいとの願いからです。第1回は11月14日(金)の夜間開館時におこないました。

 開催日時について、美術館友の会会員の皆さんへはお知らせできましたが、一般の方々への告知はHPの「イベント」→「その他のイベント」内でしたので、ほとんどお集まりいただけないのではと・・・・。意外なことに(?)30人以上のお客様がおいでになり、感激とともに珍しくドキドキ。

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 今回はいくつか小道具を用意してみました。高橋由一の《不忍池》では私が上野で撮影した実景写真をご披露。無風状態の写真と比較すると、絵の上方では左から右に、下方では右から左に風を吹かせていることに気づかれます。

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▲高橋由一 《不忍池》 油彩・画布、1880年頃

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 赤と緑の色の交響が美しい、小出楢重の《蔬菜静物》では、野菜や果物が黒塗りのテーブルに映った様子も見どころです。この作品図版の蔬菜本体に切り込みを入れて折り上げ、テーブルの縁や壁も折り曲げると、立体画像のできあがり。ミュージアム・ショップの絵葉書(70円)で作れますのでお試しあれ。

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 このほか、ファイニンガー展に関連させての特集〈キュビスムとその周辺〉の部屋では、「さまざまな方向から見た物の形を、一つの平面上に重ねて描く」ということを感覚としてご理解いただこうと、8つの立方体が重なる〈四次元立方体〉の模型を透明シートで作ってみました。

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 初回としては、お客様とご一緒に楽しい時間が過ごせたように思います。第2回は12月6日(土)午前10時30分からですが、担当学芸員がかわります。お話しする作品の選定や内容もガラリと変わるはずですので、そうした違いも含めてご来館の楽しみに加えていただければ、と思います。
(TM)

 東京のBunkamura ザ・ミュージアムで、ついに「アンドリュー・ワイエス―創造への道程(みち)」が始まりました。愛知県美術館では来年1月4日から開催です。中部地方以西のワイエス・ファンの方は首を長〜くしてお待ちいただいているんじゃないでしょうか。
 ひとつの展覧会がオープンするまでには、様々な作業が行われています。今回はその一端をご紹介します。
 国内、海外を問わず、輸送されてきた作品はまず専門の方による厳しいチェックを受けます。万が一にも傷が付いたり汚れたりしてはいけませんからね。それが済んでから、展示に向けた作業に入っていきます。今回のワイエス展でご紹介する作品のなかには、これまでに展示されたことのない初公開のものも多数含まれています。そのような作品は、紙一枚の状態で(もちろん厳重に梱包されて、ですが)届きます。
 紙の作品は痛まないようにマット(台紙)に装着してから額装されます。専門の方の手で作品を一点一点慎重にマットに装着していきます。使われている糊や装着用の紙は、作品に極力影響を与えない特殊なものを使っています。

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 もちろん作品の大きさは一点一点違います。それぞれの作品に合わせたマットと額を作らなければなりません。作品の端まで見られるように、マットに開ける穴はできるだけ大きくしたいのですが、大きすぎると作品が装着できません。バランスが重要です。

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 作品がこれまで未公開だった場合、作品写真が撮影されていないことがあります。そこで今回のカタログや広報物に掲載するために作品の撮影を行います。できるだけ生で見たときと同じ感動を伝えられるように…カメラマンさんの腕がなります。

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 さて、額装が終わったら展示作業です…が、その前にもう一度、作品を移動する度ごとに必ず入念にチェックをします。後ろにはチェックが終わった作品が展示されるのを待っています。

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 このような過程を経て、晴れて皆さんの前にお披露目、ということになります。

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 Bunkamura ザ・ミュージアムでの展示の様子です。

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 カタログと前売りペアチケット。ワイエスの画集やカタログは、日本語で読めるものが殆ど絶版状態で非常に少ないので、今回の展覧会カタログは貴重な一冊になると思います。お買い逃しのないように!
 ペアチケットは二枚組で1,900円と通常よりもかなりお得です。前売り期間中(2009年1月3日まで)のみの販売になりますので、ご家族ご友人と一緒にワイエス展を、という方は是非お買い求めください。美術館10階チケット売場やプレイガイド、大学生協などで販売しております。
(KS)

11月2日、テーマ展出品作家松藤孝一さんのレクチャーが行われました。松藤さんのこれまでの歩み、ガラスの赤ちゃんの制作過程などをお話していただきました。
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↑レクチャー後質問を受ける松藤さん

簡単ですが、レクチャーの内容を一部ご紹介!
今回展示しているガラスの赤ちゃんの原形が誕生したのは、アメリカ留学中のこと。その当時社会問題となった「クローン」から生れました。アメリカでは、コンセプトやテーマ性のある制作が重要視されたそうです。
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↑《Copy-babies》1999年

日本に帰国後、日本美術に触れたことを通して、ガラスの赤ちゃんは進化を遂げていきます。特に康勝作《空也上人像》を知ったときの衝撃は、とても大きかったそうです。赤ちゃんの口から蝶が飛び出した作品は、この康勝の作品から着想されました。

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↑あまりに斬新な造形!!康勝作《空也上人像》13世紀初期 京都・六波羅蜜寺 
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《宙遊赤子座像》

制作過程も興味深いです。最初は蝋で赤ちゃんの形を作ります。
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↑黒い蝋で作るので、ガラスとはずいぶん印象が異なります。
蝋から石膏で型をとり、そこへガラスを流し込みます。それからガラスを何日もかけてゆっくりと冷やし、ようやくガラスの像ができます。さらにガラスの表面を磨き、ふっくら、つるっと滑らかな赤ちゃんの肌が仕上がります。

また赤ちゃんは目にも注目!です。目は表情を左右する一番重要な箇所で、目の形や大きさ、色など、今回松藤さんが特に試行錯誤を重ねたところです。

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↑《宙遊赤子座像》部分

現代美術の面白いところは、アーティストの作品を、制作された同じ時間・時代の中で享受できるところ。レクチャーでは、長い時間を積み重ね、また出会いや経験、偶然の出来事を通して様々な試行錯誤や模索を繰り返してきた松藤さんの制作が良く分かりました。そしてたどり着いた今回の展示。過去のどの作品とも違うものになっていて、ガラスの赤ちゃんが醸し出すなんとも不思議な空間が体感できます。松藤さんの「今」をぜひ目撃してください!!

(MRM)

松藤孝一さんのHP→http://www.koichimatsufuji.com/
 

漫画家ファイニンガー

2008年11月06日

 ライオネル・ファイニンガー展、好評開催中です! クリスタルの画家ファイニンガーにオモチャ作家としての側面があることは、10月20日にHF学芸員がこのブログでお話ししました。今日は、さらに別の興味深い側面についてご紹介しましょう。

 ファイニンガーはなんと漫画家でもありました。1906年の一時期、アメリカの『シカゴ・サンデー・トリビューン』という新聞に、毎週日曜日「キンダー・キッズ」という漫画を描いていたのです。これは、キンダー家の3兄弟と1匹の愛犬がバスタブに乗ってニューヨークの港から航海の冒険に出る物語です。今回の展覧会では、この「キンダー・キッズ」から21話、さらにファイニンガーが同じ年に同じ新聞に描いていたもう1つの漫画「ウィー・ウィリー・ウィンキーの世界」から4話、計25話のファイニンガー漫画を展示しています。

 それら25話の中で特に面白かったり重要な11話については、吹き出しの中だけ日本語に変えたものをパネルにして、オリジナル作品の横に添えてあります。これらの漫画、とっても楽しいですから、ぜひいらしてご覧になってください。

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▲オリジナル作品(右)と日本語訳パネル(左)

 

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▲「キンダー・キッズ」の1コマ(日本語訳パネル)

 

 ファイニンガー展は来月23日までです。会期終盤は混雑が予想されますので、ゆったりしたご観覧をお望みの方は、どうぞお早目のご来館を!
(TO)
 

 今、所蔵作品展の展示室8で特集展示「受け継がれる木村定三コレクション」を開催しています。これに関係する3つの催しが終わったところですが、その裏話をちょっぴりさせて頂きます。

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 いやあ、シンポジウムというのは、やっぱり難しい。これで2回目になりますが、今回もまた担当としましては不完全燃焼で終わってしまいました。でも皆様から伺うお言葉やアンケートには、熱心なご感想やら励ましの言葉が多く、普段はあまり紹介されない美術館の裏方活動というか基礎研究の部分に、こんなに興味を持っていらっしゃる方々が多いのだなあということを、今回もまたつくづく感じたのでした。
 ただこの手のものをまともにやると、ただ「小難しい話」になってしまい、またどうしたって「地味」であることには間違いなく、それを少しでも「分かりやすく」「面白く」というのが、毎回、担当が苦しむところなのですが・・・。ああ、やっぱり、難しい。
 

 前回のシンポジウムで何より残念だったのは、日本画の独特の技法、裏彩色(うらさいしき)や裏箔(うらはく)といった技法についてお伝えしきれなかったこと。もちろん講師の先生は、これ以上はないだろうという写真などをご準備下さいましたが、やはり写真では限界があり、またそれを見越して見本までもお持ち下さったのですが、それはそれで極わずかな方にしか見て頂けない・・・、そこを担当としましては、なんとかしたいという思いにかられたのでした。今回の特集展示ではサンプル資料を展示しました。日本の伝統的な顔料そのものの美しさや、それを絹の表と裏と両面から彩色した「透ける」色の重なり・・・その立体的な色彩の妙を、実際に見て頂きたいと思ったからです。その上で作品をご覧いただけると、また違った目で作品の美しさ、神秘さに触れて頂けるのではないでしょうか。サンプルを制作して下さっているところも、一部ですが撮影させて頂きました。またいずれ、そういうものも参考資料として展示に取り入れていこうと思っています。

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  さて、今回の展示で担当が一番ふんばったのは、作品とお客様の距離。これはいささか自慢したいことなのです。なんたって作品が展示ケースのガラスから10cmの距離にあるのですから!! 特に今回のシンポジウムのテーマにもなった阿弥陀三尊来迎図の衣類を表現している「きり金技法」は、虫眼鏡で見たって「凄い」の一言。この、とてもこの世の人の手によるものとは思えない精緻なるものを、展示ケースの奥の壁に展示したって、とても見ることはできません。だから担当はまず展示の仕様に精一杯の知恵を絞りました。でも・・・、それより何より語りたいのは、展示の前のガラス磨き。これだけ作品が近いと日頃はあまり気にならない程度のガラスの曇りも致命的です。だけどこれがこれが・・・!! 最初はもちろん普通にワイパー方式。だけど寄る年波か、段々と腕が上がらなくなってくるのです。だったら今度は両足開きのガニ股スクワットで!! それこそ髪を振り乱し、なりふりかまわず、執念の鬼婆の如く! ああ、こんな姿はとても亭主、子どもにも見せられないわあ・・・と思っていたら、ガラスの向うで先輩学芸員がニコニコ手を振っているではないか。「力、入ってるねえ」。「うー、なんのこれしき、主役は作品よお。学芸ではないのよお」なぞと訳のわからないことを口走りながら磨くこと1日半。腰は痛いし、時間は迫るし、でもやっぱり「最高の状態で見て頂きたい!!」。おかげで(??)、ちょっとどこの博物館でもやってない、迫力の展示になったと悦に入っていますが、いかがでしょうか? あっ・・・いえ、ガラスではなく作品を見てくださいね。

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 スライドトークの方も非常に盛会。竹上先生の「使える糊になるのに10年、1人でできる職人になるのが10年、だから弟子入りして最初の年に作った糊をもらって、暖簾(のれん)わけさせてもらう」という話には、会場からため息が。また豊橋市出身の加藤先生には「頑張って下さいね」と、逆に先生を励ますお客様もいらっしゃり、シンポジウムとはまた違う小規模の会ならではの良さを再認識致しました。

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 スライドトークはもう一度、11月29日に行われます。

(NN)