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特集展示「受け継がれる木村定三コレクション」

2008年11月05日

 今、所蔵作品展の展示室8で特集展示「受け継がれる木村定三コレクション」を開催しています。これに関係する3つの催しが終わったところですが、その裏話をちょっぴりさせて頂きます。

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 いやあ、シンポジウムというのは、やっぱり難しい。これで2回目になりますが、今回もまた担当としましては不完全燃焼で終わってしまいました。でも皆様から伺うお言葉やアンケートには、熱心なご感想やら励ましの言葉が多く、普段はあまり紹介されない美術館の裏方活動というか基礎研究の部分に、こんなに興味を持っていらっしゃる方々が多いのだなあということを、今回もまたつくづく感じたのでした。
 ただこの手のものをまともにやると、ただ「小難しい話」になってしまい、またどうしたって「地味」であることには間違いなく、それを少しでも「分かりやすく」「面白く」というのが、毎回、担当が苦しむところなのですが・・・。ああ、やっぱり、難しい。
 

 前回のシンポジウムで何より残念だったのは、日本画の独特の技法、裏彩色(うらさいしき)や裏箔(うらはく)といった技法についてお伝えしきれなかったこと。もちろん講師の先生は、これ以上はないだろうという写真などをご準備下さいましたが、やはり写真では限界があり、またそれを見越して見本までもお持ち下さったのですが、それはそれで極わずかな方にしか見て頂けない・・・、そこを担当としましては、なんとかしたいという思いにかられたのでした。今回の特集展示ではサンプル資料を展示しました。日本の伝統的な顔料そのものの美しさや、それを絹の表と裏と両面から彩色した「透ける」色の重なり・・・その立体的な色彩の妙を、実際に見て頂きたいと思ったからです。その上で作品をご覧いただけると、また違った目で作品の美しさ、神秘さに触れて頂けるのではないでしょうか。サンプルを制作して下さっているところも、一部ですが撮影させて頂きました。またいずれ、そういうものも参考資料として展示に取り入れていこうと思っています。

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  さて、今回の展示で担当が一番ふんばったのは、作品とお客様の距離。これはいささか自慢したいことなのです。なんたって作品が展示ケースのガラスから10cmの距離にあるのですから!! 特に今回のシンポジウムのテーマにもなった阿弥陀三尊来迎図の衣類を表現している「きり金技法」は、虫眼鏡で見たって「凄い」の一言。この、とてもこの世の人の手によるものとは思えない精緻なるものを、展示ケースの奥の壁に展示したって、とても見ることはできません。だから担当はまず展示の仕様に精一杯の知恵を絞りました。でも・・・、それより何より語りたいのは、展示の前のガラス磨き。これだけ作品が近いと日頃はあまり気にならない程度のガラスの曇りも致命的です。だけどこれがこれが・・・!! 最初はもちろん普通にワイパー方式。だけど寄る年波か、段々と腕が上がらなくなってくるのです。だったら今度は両足開きのガニ股スクワットで!! それこそ髪を振り乱し、なりふりかまわず、執念の鬼婆の如く! ああ、こんな姿はとても亭主、子どもにも見せられないわあ・・・と思っていたら、ガラスの向うで先輩学芸員がニコニコ手を振っているではないか。「力、入ってるねえ」。「うー、なんのこれしき、主役は作品よお。学芸ではないのよお」なぞと訳のわからないことを口走りながら磨くこと1日半。腰は痛いし、時間は迫るし、でもやっぱり「最高の状態で見て頂きたい!!」。おかげで(??)、ちょっとどこの博物館でもやってない、迫力の展示になったと悦に入っていますが、いかがでしょうか? あっ・・・いえ、ガラスではなく作品を見てくださいね。

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 スライドトークの方も非常に盛会。竹上先生の「使える糊になるのに10年、1人でできる職人になるのが10年、だから弟子入りして最初の年に作った糊をもらって、暖簾(のれん)わけさせてもらう」という話には、会場からため息が。また豊橋市出身の加藤先生には「頑張って下さいね」と、逆に先生を励ますお客様もいらっしゃり、シンポジウムとはまた違う小規模の会ならではの良さを再認識致しました。

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 スライドトークはもう一度、11月29日に行われます。

(NN)