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一度は見なきゃ!!グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》

2008年12月20日

 

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↑愛知県美術館の看板作品、グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》(1903年)

 

 今年春、この作品を展覧会へ貸し出すため、イギリスのリヴァプールにある美術館まで作品と一緒にでかけました。(←これはクーリエという仕事です。この仕事については、9月21日のブログに詳しい説明があります)
 クリムトに関する作品が世界中から集まり、展示作業には作品を貸し出す美術館の学芸員たちが立ち会いました。《人生は戦いなり》が開梱され、壁にかけられたとき、他の美術館の学芸員たちが作品の周りに自然と集まり、「ビューティフル!!」と称賛の声があがりました。自分のものじゃないけれど、なんだかとっても誇らしい気持ちになりました。

 クリムトといえば、《接吻》のように女心をくすぐる、装飾模様に彩られた甘美な作風が一般的に知られているように思います。

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↑《接吻》(1907-08年)、オーストリア美術館

 一方、《人生は戦いなり》に描かれているのは、金の甲冑を着けた「黄金の騎士」。クールでかっこいい印象です。この作品の制作にあたって、クリムトはアルブレヒト・デューラーの版画作品《騎士と死と悪魔》(1513年)を下敷きにしたと考えられています。
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↑馬に乗った騎士は、彼を邪魔しようとする死神や悪魔を無視して歩みを進めています。

  《人生は戦いなり》のなかで、騎士を邪魔する悪者はヘビ。

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 画面左下にいる金色のヘビが、黄金の騎士の行く手を阻んでいます。けれど、ヘビはまた楽園の象徴でもあります。そう、イヴにりんごを食べさせたヘビのことです。
 小さな花々が咲く楽園を進む騎士。戦う騎士と幸せな楽園…ってなんだかミスマッチですが、この作品には、当時のウィーンの保守的な美術界に戦いを挑みながら表現の自由を探求し、後に《接吻》のような優美な世界の創造にいたるクリムトの歩みがしるされているのかもしれません。
 この作品はほかにもまだまだ見どころ一杯!!作品の近くでよく目を凝らしてみると、馬の美しい毛並みの描写がよく分かります。

 また隠し絵のように、木の幹には怪しげな男の姿が見えます。

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↑男の顔がどこにあるか分かりますか?
 

 こうやって実際の作品をよく観察すると、いろんな発見があります。

 クリムトの作品を所蔵している美術館は、日本国内ではたった数館。そのうちの3館は豊田市美術館飛騨高山美術館、当館となぜか東海地方に集中しています。この冬、クリムト巡礼の旅なんていかがでしょうか。

(MRM)

(当館と豊田市美術館は2009年3月までの所蔵作品展で展示予定です)