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カタログ・レゾネってなに?

2009年01月26日

 美術館で気になる画家を見つけて、その画家についてもっと知りたくなったら、とりあえず画集や他の展覧会のカタログを見る。基本的かつ手っ取り早い調べ物の方法です。

 作家の全貌を知りたいときに一番便利なのは、「カタログ・レゾネ」と呼ばれる本を見ることです。意外と知られていないこのカタログ・レゾネ、いったいどんなものなのでしょうか?

 カタログ・レゾネ(Catalogue raisonné)とはフランス語で、「論理的思考にもとづいて編まれたカタログ」という意味です。大抵の場合、特定の作家の全作品について、図版、制作年、来歴、サイズ、所蔵者、言及論文などの情報が網羅的かつ編年的に記載されています。作品数が多すぎると複数巻になったり、絵画だけの巻、彫刻だけの巻などとジャンル別に分けられたりします。

ちなみに愛知県美術館の入っている愛知芸術文化センターの一階には、アート・ライブラリーがありまして、様々な芸術家の資料がそろっています。例えばピカソのレゾネを見てみると…

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 なんと全33巻!当館所蔵の《青い肩掛けの女》ももちろん記載されています(Z155)。貴重書なので、傷まないようにストレージ・ボックスに入れて保管してあります。

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 最近では存命の作家のレゾネが出版されることもあります。この場合は、○○年から○○年までというように時期を区切っていることが多いです。しかしレゾネだからデータは完璧、というわけにもなかなかいきません。レゾネ発行後に新しく作品が見つかったとか実はあの作品は偽物だったとか所蔵者が手放してからあの作品は行方が分からない…なんてこともありますしね。そういえば先日スペインのプラド美術館所蔵のゴヤの作品《巨人》が、実は弟子の作かもしれないというニュースがありました。そんなわけで、作家によってはレゾネが何ヴァージョンも刊行されていることもあります。先ほどのピカソのレゾネはクリスチャン・ゼルヴォスという人の編纂で、通称「ゼルヴォス・レゾネ」と呼ばれています。ですが、すでに刊行されてから30年以上経っており、情報が古い部分もあるので、その後も時期を絞ってレゾネはいくつか刊行されています。

 レゾネを探すときに注意しなければならないのは、これらの本には必ずしも「カタログ・レゾネ」という名前がついているわけではないというところです。通称みたいなものです。日本語なら「全作品集」とか、フランス語なら「Oeuvres Completes」とか、そういう名前のことが多いです。

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 上からアンディ・ウォーホル、アントニ・タピエス、パウル・クレーのレゾネです。他にもいろいろな作家のレゾネがあるんですが、特に見た目がきれいなものを選んで撮ってきました。表紙カバーは外してありますけれど。ウォーホルは《ブリロ・ボックス》を彷彿とさせるような(?)装丁。タピエスは背表紙がつながって絵になりそうです(実際にはつながっていませんが)。クレーはとてもカラフルで、並べているだけで愉しくなります。

 そうそう、それからピカソのレゾネと言えば、オンライン・ピカソ・プロジェクトというウェブサイトがありまして、膨大な資料や図版を見ることができます。サム・ヒューストン州立大学とテキサスA&M大学の助成金で、学術研究目的で行われているようです。

 また、現在当館で展覧会開催中のアンドリュー・ワイエスのお父さん、N.C.ワイエスのオンライン・カタログもあります。こちらはブランディワイン・リバー美術館が運営している模様。

 このようなオンラインのデータベースはとりわけ検索性に優れている点が強みでしょうか。今後どんどん増えていくと良いんですけれど。

 さて、長くなりましたが、愛知芸術文化センターのアートライブラリでは、レゾネは貸出しができないものが多いですが閲覧することはできますので、○○の作品をたくさん見たい!という方は是非探してみてください。下のリンク先から所蔵資料の検索ができますよ。

(KS)