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ワイエス展 作品を借りる難しさ

2009年02月12日

  アンドリュー・ワイエスが亡くなって、ワイエスにゆかりのある、ペンシルヴェニア州チャッズ・フォードのブランディワイン・リヴァー美術館でお別れの会(彼の人生と作品をしのぶ会)が1月31日に開かれました。この日とその翌日の2日間、あの有名な《クリスティーナの世界》がニューヨーク近代美術館から出張展示されました。この作品は、ニューヨーク近代美術館が建て替えのために休館していたときに、作品が描かれたメイン州に里帰りしたことはあったようですが、それ以外で開館している時期に他の美術館に貸し出されることはないようです。つまりニューヨーク近代美術館は、例外的に作品を貸し出すことで、ワイエスの死に対する弔意を表したのでしょう。

 今回の展覧会では、《クリスティーナの世界》の習作が展示されています。作品ができるまでの過程をたどるのも楽しいものです!
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   このように、現存作家でも(展覧会準備の段階ではワイエスは現存作家でした)、展覧会で作品を借りるのが難しいことがあります。今回のワイエス展の開催にあたり、ワイエスから二つの条件が出されました。そのひとつは良い展覧会を開催してほしいということ。至極当然のことですね。もうひとつは2006年に開催されたフィラデルフィア美術館をはじめとする大回顧展に出た作品は借りないでほしいということでした。同じ所蔵者に続けて出品依頼を避けるためです。今回の展覧会の準備を始めたのがその回顧展の開催中だったので、そういう条件が示されたわけです。この二つの(矛盾するような!!)条件は展覧会準備をきわめて困難にし、大回顧展に出品された代表作を候補からはずしながらも、できるだけ良い作品を探し出し、何度も出品交渉を行いました。その結果、ワシントン・ナショナルギャラリーの《雪まじりの風》やフィラデルフィア美術館の《粉挽き小屋》のように、2006年の展覧会には出なかった代表作を借りることができました。《粉挽き小屋》はフィラデルフィア美術館でもまだ一般に公開していない、2007年にコレクションに入ったばかりの作品です。

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↑フィラデルフィア美術館の《粉引き小屋》は右端、この作品の習作と共に展示されています。


  ワイエスが亡くなって、今後しばらくは展覧会が開かれることはないでしょう。少なくとも日本においては、所蔵作品を展示する展覧会はできても、アメリカから多数の作品を借りて行う展覧会はさらに困難が増したといえます。
だからこそ!!今の貴重な展覧会をお見逃しなく!

(ST)