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桜の季節も過ぎ、少しずつ日差しが強くなり始めたこの頃。

美術館では「アヴァンギャルド・チャイナ」展が開催中ですが、その裏では次回の「アーツ&クラフツ展」の準備が着々と進められています。
地下鉄の駅などで、ポスターを見かけられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この展覧会は、昨年秋からこの春まで、京都国立近代美術館と東京都美術館を巡回し、6月からは最後の会場となる当館で開催されます。
担当者としてまず悩んだのは、広報物のデザインイメージを決定することでした。というのは、出品される作品は、イギリスを中心としたヨーロッパや日本と地理的に幅広く、また家具、テーブルウェア、ファブリック、服飾、書籍、グラフィック・デザインと分野も多様で、「この1点!」といったヴィジュアルイメージを作り出すことがとても難しかったからです。

京都と東京の会場は、多岐にわたる作品を一つのイメージとして作り出した、かなり斬新なデザインで広報を展開しました。
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↑東京都美術館のチラシ
目を引く、とても面白いデザインですよね。

一方、愛知会場は・・・というと、春から初夏にかけての明るい季節に似合う、やさしいデザインにしてみました。
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↑愛知件美術館のチラシ
広報物には、今回の展覧会の一番の目玉であるウィリアム・モリスとジョン・ヘンリー・ダールのデザインによるタペストリー《果樹園》《別名《四季》)を使用しました。ポスターやチラシの裏表の地には、モリスのテキスタイルデザインの《マリーゴールド》があしらわれています。
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↑ウィリアム・モリス《マリーゴールド》(内装用ファブリック)

上部の唐草文様は、下のテキスタイルのデザイン見本帳に入っていたもの。これをデザイナーさんがグラフィックに起こしてくれました。
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↑ウィリアム・モリス、ジョン・ヘンリー・ダール《別珍プリントの見本帳》

皆さんはどちらのデザインがお好みですか?

さらに、今回の展覧会では前売り券でもとくにお得なペアチケット(1900円)を販売中!
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横長のタペストリーのイメージは、中央破線で二つに分かれるようにできていますよ。このペア券を使って、お一人で2回、またはお友達、ご夫婦、恋人同士でぜひ展覧会に遊びにいらしてください!

(MM)
 

 

 モーリス・ルイス(1912-62年,アメリカ)は、キャンバスに色とりどりの絵具を浸み込ませて、色彩の美しい広がりを表現した画家です。愛知県美術館には、このルイスが1960-61年に取り組んだ「アンファールド」(「広げられた」)というシリーズに分類される《デルタ・ミュー》があります。高さ3 メートル弱、幅6 メートル弱の巨大な作品ですので、見覚えのある方も多いと思います。

 

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▲モーリス・ルイス 《デルタ・ミュー》 1960-61年 愛知県美術館蔵 (2008年8月1日撮影)

 

 実はこの作品、1996年に購入した時から、展示の上でちょっとした問題を抱えていました。まず、作品の四側面が板ですべてぴっちりと覆われていました。これは、作品を移動させる時などには、板の部分を持てば作品そのものに直接手を触れずにすむため、作品保護の観点からは良いことなのですが、別の観点からは一考を要する問題でした。というのは、赤や青や黄の色彩の流れはすべて側面部にも及んでいるのですが、その美しい側面の在りようがまったく見えない状態になっていたからです。

 

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▲展示室の壁から取り外しているところ。巨大な作品だけに、大変な苦労です。

 

 次に、四側面を覆う板には金色の装飾物が付けられていて、このため、画面はピカピカに縁取られていました。これが、この作品の持つ広々とした感覚を害してしまっているように、私などには感じられたのです。

 そういった個人的な考えを同僚の保存担当学芸員に話した際、彼女は彼女で、《デルタ・ミュー》のストレッチャーの構造やキャンバスの張りに危惧を感じており、機会があればそれらを改善すべきだと考えていたことも判りました。

 それで、アメリカのルイス研究の第一人者の方、ルイス作品を数多く手がけている国内の修復家の方などのご意見をお聞きしつつ、それらの問題点を館内で慎重に議論しました。それと前後して、川村記念美術館さんからこの作品の貸出し依頼をお受けしたので、それを機会として《デルタ・ミュー》に本格的に手術を施そうということになったのです。

 

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▲川村記念美術館から帰ってきた《デルタ・ミュー》。大きすぎて、そのままでは当館の建物から運び出せなかったので、ロール状にしてお貸しし、同じくロール状で戻ってきました。

 

 結局、ストレッチャーの裏面にループ状の帯を何箇所か取り付けて、作品を移動させる際にはそこを持てば良いようにすることで、四側面を覆っていた板(そして、それに伴って、画面を囲っていた金縁)をすべて取り外すことにしました。

 

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▲作品を動かす時は、この輪っかをつかんで作品を持ちます。

 

 その他にも、さまざまな改良を加えた特製ストレッチャーに取り替えたりしています。今まで以上に美しく生まれ変わった《デルタ・ミュー》がどんなふうになっているかは、ぜひ当館にお越しいただいて現物をご覧になってください。当分の間、所蔵作品展示室の方で展示されていますから。

 

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▲新ストレッチャーに張り込む直前の《デルタ・ミュー》。ここで見えているのは、この絵の裏面です。絵具はすべてキャンバスに浸み込んでいるので、裏面にも色彩の美しい流れが現れています。

 

 このたびのモーリス・ルイス《デルタ・ミュー》に対する処置については、なるべく早くに正式に文書にまとめて、同種のルイス作品を所蔵する他館にご参考にしていただけるようにしたいと思っています。(T.O.)
 

4月4日(土)と5日(日)にチャイナ展の最初のイヴェントが開催されました。
4日は美術評論家の費大為(フェイ・ダウェイ)さんの講演会と、フェイさんに国立国際美術館の建畠館長、当館の牧野館長を交えてのシンポジウムでした。フェイさんの講演では、伝統芸術、学院主義(アカデミズム)、現代芸術が三つ巴になっている現代中国美術の状況を図式化して見せてくれるなど、素人にもわかりやすいようにお話していただきました。続くシンポジウムでは、両館長からの質問に答えるかたちで、フェイさんから30年代と80年代とのつながり、都会と地方などについて興味深いお話が聞けました。
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フェイさん講演会


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シンポジウム 右から建畠館長、フェイさん、牧野館長

 5日は出品作家の孫原(スン・ユアン)さんのアーティストトークと、同じく出品作家の張培力(ジャン・ペイリー)さん、楊振中(ヤン・ジェンジョン)さんらによるシンポジウムを行いました。スン・ユアンさんは自身のパソコンの画像データをプロジェクターで写しながら、これまで作ってきた作品について説明してくれました。スンさんのパソコンと美術館のプロジェクターとの接続がうまくいかず、動画を二つ(犬を使った作品と虎を使った作品)見せられなかったのが残念そうでした。「死体派」として知られたスンさんですが、トークでは刺激の強い作品はあえて写さず、かなり自制してくれたようです。
 
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スンさんのアーティストトーク
脂肪吸引しているところ
 
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体脂肪を塗りこめた柱

続くシンポジウムで「メディア・アート」をテーマにしたのは、ジャン・ペイリーさんが中国のビデオ・アートのパイオニア、ヤン・ジェンジョンさんは映像作家だからです。この展覧会でメディア・アートの分野を担当した国立新美術館の長屋さんと文化情報センターで映像担当をしている越後谷さんにパネリストに加わっていただき、中国のメディア・アートの現状などを作家たちから聞き出してもらいました。
 
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シンポジウム 右からジャンさん、ヤンさん、長屋さん、越後谷さん(切れています)

同様のイヴェントは、先行の国立新美術館や国立国際美術館でも開催しており、名古屋では聴講者がどれくらい集まるのか心配していましたが、先行館に劣らないくらい多くの人に聴講していただきホッとしました。

おまけ
ジャン・ペイリーさんは、コワモテのがっしりとした体格なので近づきがたい雰囲気ですが、実は気さくな人で、開会式で作家代表として挨拶もしてくれましたし(二言三言でよいと頼んでいたのですが、本格的な挨拶でした)、シンポジウムでも大いに発言してくれました。

ゴールデンウィークには、第2弾のイヴェントとして映画「胡同のひまわり」の上映会がありますのでお楽しみに!                         

(H.F.)

すでに、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、現在、愛知芸術文化センター内で開催中の「アニマルズ in AAC 三沢厚彦の世界」展に合わせて、スタンプラリーを実施しています。(以前のブログでもご紹介しました。)
 今回の展覧会では、芸文センター内のいろんな場所に作品を展示していることもあり、来場されたみなさまに、作品を探しながら、楽しく鑑賞していただこうと、スタンプラリーを行っています。実際に参加された方は、どうでしたか?楽しんでいただけているとうれしいです。

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スタンプ押し中

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 スタンプラリーのガイドには、作品の配置場所を載せているのですが、作品を実際に展示するよりも前に作るので、展示場所が変わってしまったらどうしようという不安を抱きながも変更はないだろう(というかしてほしくないなー)と思いつつ準備をしました。
しかし、やはりその心配は的中してしまい、、、8階に展示予定であった「ヤモリ」が、10階へと移動してしまったり、美術館の展示室内の作品の場所が入れ替わってしまったりといった変更が出ました。
でも、結果的には、その場にいる動物はイキイキしているし、オリエンテーリングのように、「ヤモリ」を探し出す楽しさが増えました。参加された方々には、少しご不便をおかけしますが、楽しく「ヤモリ」を探していただけるとうれしいです。

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8階にいるアニマル 何かわかりますか?

美術館の中にも、アニマルズがいます。もちろんスタンプもあります。

今回のスタンプは、以前ご紹介したように、三沢さんに描いていただいたのですが、そのスタンプになっている動物を使ったプレゼントもご用意しています。スタンプを全部押して、ぜひプレゼントを手に入れて下さい。どんなプレゼントかは、来てのお楽しみってことで!!

(RK)

 

 

 愛知県美術館の4月最初の展覧会、アヴァンギャルド・チャイナ展がいよいよ、オープンしました。開催が危機に陥ったこともある展覧会ですので、担当学芸員の感慨もひとしおですっ。

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↑10台のスクリーンを使う楊振中(ヤン・ジェンジョン)さんの作品


 今回の展覧会に合わせて、出展作家である張培力(ジャン・ペイリー)さんと楊振中(ヤン・ジェンジョン)さん、孫原(スン・ユアン)さんに加え、フランス在住の中国美術評論家、費大為(フェイ・ダウェイ)さんが来日されました。中でも孫原(スン・ユアン)さんは、出品作《老人ホーム》の状態が気にかかるそうで、展覧会が始まってからも熱心にメンテナンスをされています。

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↑今回の目玉作品の一つ《老人ホーム》

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↑作品の状態を確認する孫原(スン・ユアン)さん


 さて、この快活な孫原(スン・ユアン)さん、実は世界を震撼させた「死体派」を代表する作家さんです。
 「死体派」とは、90年代に中国に登場した現代美術の傾向の一つです。身体の存在、生死の問題を極限まで突きつめた「死体派」の作家さんは、動物や人間の死体を素材に使って作品制作をします。例えば孫原(スン・ユアン)さんは、雪原に血の滴るヤギの背骨200本を置いて《羊飼い》(1998年)という作品を制作しています。恐ろしい風景ですが、血と骨と雪の奏でる色と形のコントラストに美しさも感じてしまいます。どこか寓話的な雰囲気も漂いますね。


 そんな孫原(スン・ユアン)さんですが、ご本人はいたって気さくで感じの良い方。5日の午後には「アーティスト・トーク 孫原(スン・ユアン)に聞く」というイベントも行われます。直接、彼の話を聞いてみたい方はこのチャンスをお見逃しなく!!

イベントの詳細は愛知県美術館HPhttp://www-art.aac.pref.aichi.jp/event/index.html

(F.N)