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皆さんは、愛知県美術館にお越しの際、屋外展示作品をご覧になる時間がおありですか。屋外展示ってどこ?と思われた方もいらっしゃると思います。当館の屋外展示作品の数は多くありませんが、3つのエリアに分かれて展示されています。

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↑10階美術館の入口前のレストラン中庭である屋上庭園

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↑10階入口前の屋外展示スペース

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↑12階の屋外展示スペース

屋外で風雨にさらされることから、作品は材質が金属に限られた立体ですが、景観に合わせて作品が選択されています。普段は、ひっそりとした存在の作品たちですが、夏休みの子ども鑑賞会の時など、プログラムの中でちょっとした気晴らしに屋外に出た子どもたちには、大いに親しみある作品です。


  この連休中には、これら屋外展示作品の中から主に1点の作品を鑑賞する、高校生向けのプログラムが開催されました。有志の高校の先生が企画し、数校の生徒を同時に対象とした鑑賞会「高校生のための美術鑑賞」で、これまでにも、愛知県美術館の所蔵作品展や企画展の鑑賞、また鑑賞を含むワークショップが開催されました。どのプログラムも先生方の発意による独自のもので、学芸員も企画途中でアドヴァイスしたり、作品に関するインフォメーションを提供したりと、協力して実施してきました。今回は、今井瑾郎氏の《大地》を鑑賞しましたが、愛知芸術文化センターの一角に設置され建物に調和したこの作品は、これまで団体鑑賞会ではあまり取り上げられてこなかったものです。
 生徒たちは、初めに10階の所蔵作品展で、学芸員から主に彫刻作品についての解説を受けました。その後、屋外展示スペースに移動し、先生から作品を見るとはどういうことか、イメージするとはどういうことかという問いかけを受け、作品にまつわる話を聞いた後、各自で作品を鑑賞し、グループに分かれてディスカッションしました。

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↑高校生の鑑賞授業風景


 「上まで上ってみたい」「地球の頭がひょっこり出ているようにみえる」「作品に投げかけられている建物の影も作品の一部のように感じる」「この空間に置かれてはじめて完成したと感じる」などと屋外作品と展示環境のあり方を含めた、作品の本質に迫る意見が出され、高校生ならではの一歩踏みこんだ鑑賞会となりました。後日、各生徒は、作者の今井瑾郎氏に手紙を書き、また今井氏も返事を送ることになっていて、広がりのあるプログラムとなりました。この後、今井氏がどのような回答を高校生に寄せられるのかその後の展開も楽しみです。このように屋外作品も鑑賞者にいろいろな問いかけや広がりをもたらしてくれます。皆様も美術館にお越しの際は、是非ともこれら屋外作品にも注目していただければと思います。
  なお最後に付け加えますと、これら作品は、ほこりや酸性雨の影響を免れません。季節の良い折をみて、美術館スタッフが水などを使って洗浄し、皆様に気持ちよくご鑑賞いただけるよう管理しています。

(M.F.)

 

愛知県美術館では、毎年、県内各地で「移動美術館」を開催しています。当館から離れた地域で、多くの方に鑑賞の機会を持っていただくため、平成6(1994)年から始めたものです。今回の開催地は、豊橋市です。先日、今年度初めての打ち合わせがあり、会場となる豊橋市美術博物館に行って参りました。連休の合間の平日でしたが、美術博物館前の広場には多数の遠足の小学生で賑わいをみせていて、美術館見学も予定されていました。

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↑ 豊橋市美術博物館外観


さて、ご記憶にある方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、豊橋市美術博物館開館1周年記念(1980(昭和55)年)に、現在の愛知県美術館の前身である愛知県文化会館美術館の所蔵作品を、愛知県美術館所蔵「絵画名作展」としてご紹介しています。以後、1989(平成2)年までほぼ毎年計9回(1988年は開催せず)、豊橋市美術博物館で、愛知県美術館の所蔵作品による展覧会を開催しました。今年度の移動美術館は、それ以来22年ぶりに豊橋市を中心とする地域で愛知県美術館の所蔵作品を展示する機会となり、展示予定作品には、1992(平成4)年10月に愛知県美術館としてリニューアルオープンするにあたって収集した作品も含まれています。今年は、豊橋市美術博物館が開館して30年目の記念の年になります。そのため、豊橋市美術博物館のご協力を得て、通常の移動美術館よりも規模を拡大して開催します。現在、出品作品を最終調整しているところですが、展示内容は、近現代日本洋画、日本画、彫刻、海外作品、そして木村定三コレクションの作品も含めて約80点の予定です。愛知県にゆかりの作家もご覧いただく予定ですので、お近くの豊橋市地域の皆様はもちろんのこと、県内の皆様にも是非とも足をお運びいただきたいと思います。また、会期中には、ギャラリートークやコンサートなどの関連事業も企画中です。詳しい内容は、ウェブサイトのほか、今後作成されるチラシなどの広報物で皆様にお伝えしていきますので、どうぞ楽しみにお待ち下さい。

(MF)


会 期:平成22年2月20日(土)から3月28日(日)入場無料
 

江戸絵画、修理中

2009年05月14日

美術館は作品を展示する所ですが、美術館が所蔵した時点で、傷んでいる作品も少なくありません。そうした作品を、安全に展示し続けられるように修理することも、美術館の大切な仕事です。大きな修理が必要なものは、専門の修理所に「入院」させ、1年から2年がかりで修理をすることになります。今もいくつかの作品が修理中で、江戸時代の伊藤若冲の《伏見人形図》(木村定三コレクション)もその一つです。

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▲伊藤若冲 《伏見人形図》

かわいらしい伏見人形の布袋様を描いたこの作品は、紙の折れや絵具の剥落がひどく、このまま展示を続けると傷みが進んでしまうおそれがありました。また、表具(ひょうぐ)のうち、「一文字(いちもんじ)」と「風帯(ふうたい)」(焦げ茶色の細い裂(きれ)の部分です)に使われていた裂は、媒染剤※に含まれる鉄分のせいで劣化が激しく、この鉄分が作品にも影響を与えかねないため、取り替える必要がありました。※裂を染める際、染料を繊維に固着させるための物質。

作品は、現在解体修理中ですが、膠(にかわ)で絵具の剥落を止める「剥落止め」がされ、汚れが除かれて、布袋様たちも心なしかほっとした表情です。

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▲解体作業中です

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▲「剥落止め」がされ、汚れが除かれました

修理後の表具は、なるべく修理前の雰囲気に近いものにすることが決まり、新調する「一文字」と「風帯」もふるいものに似せて染めてもらいました。リフレッシュした布袋様たちに、展示室でお会いいただけるまで、今しばらくお待ち下さい。

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▲修理後の表具裂合わせ。左下はふるい「一文字」

(M.Ma)

 

今年度の所蔵品展示として、木村定三コレクションの中から「京都の焼物」が、愛知県陶磁資料館で「日本のやきもの」と題して展示されています。それぞれ特徴ある優品ばかりで、今回はじめて公開されるものも含まれています。
 楽茶碗の黒楽や赤楽、また永楽保全の中国の陶磁器や東南アジアの陶磁器の写しなど多彩な京焼が展示されます。展示の詳細は陶磁資料館でお尋ね下さい。(HK)

愛知県陶磁資料館
〒489-0965 愛知県瀬戸市南山口町234番地
 TEL (0561)84-7474(代表)

 

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▲黒楽茶碗(くろらくちゃわん) 銘ぬれ烏, 楽 了入(らく りょうにゅう) 

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▲祥瑞写唐子図腰鎬筒茶碗(しょんずいうつしからこずこししのぎつつちゃわん)永楽 保全(えいらく ほぜん)

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▲交趾写魚形水注(こうちうつしさかながたすいちゅう), 永楽保全

 

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▲色絵蓬莱注連縄文茶碗(いろえほうらいしめなわなわもんちゃわん), 永楽保全

 

 アヴァンギャルド・チャイナ展の関連イヴェントのひとつとして、GWの4日(日)と5日(月・祝)に「胡同(フートン)のひまわり」上映会が行われました。愛知県美術館では、これまでも企画展の関連イヴェントとして映画の上映をしたことはありますが、どちらかといえば、やることが少ない方のイヴェントといえます。thmnl_たくさんの来場者です.jpg

↑たくさんの来場者です。

「胡同(フートン)のひまわり」を上映した最大の理由は、展覧会の出品作家である張暁剛(ジャン・シャオガン)の作品が、この映画の主人公の画家が描いた作品として映し出されるからです。thmnl_上映中:ジャン・シャオガンの作品が展示されています.jpg

↑上映中:ジャン・シャオガンの作品が展示されています

同じく出品作家である王広義(ワン・グァンイー)のポリティカル・ポップの作品も出てきますよ。ちなみに、先に巡回した国立新美術館や国立国際美術館でも、この映画を上映しました。


 上映会では、映写技師さんにより35mmのフィルムを映し出しました。フィルムをセッティングしている間に、いろいろとお話を伺ったのでご紹介しましょう。映写機は2台使いました。私も知りませんでしたが、2台で交互に映し出すのだそうです。Aの映写機が映写している時に、Bの映写機に次のフィルムを準備し、映写機Aのフィルムが終わると映写機B(2巻目のフィルム)に切り替える。これを交互に繰り返すことで全巻(今回は7巻)のフィルムを映し出すわけです。間違って同時に両方の映写機から映像が映し出されないような仕組みになっているそうです。だから映画を見ている人には、切れ目なくずっとつながっているように見えるわけです。ちなみに音声もフィルムに入っていて、映写機の一部で音声を読み取っているとのことでした。

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↑2台の映写機、下の赤いケースにフィルムが入っています

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↑フィルムから音声を読み取る部分

運悪く上映会を見逃してしまった人は、レンタルDVD屋さんに急行!

(HF)
 

あつまる・アニマル

2009年05月08日

 5月2日、アニマルズ in AAC―三沢厚彦の世界展ワークショップ「あつまる・アニマル」が開催されました。参加してくれた20名くらいの小学生たちと一緒に、まずは作家の三沢さんご本人による作品鑑賞ツアーです。

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▲「しっぽはなんで切れてるの?」

 小学生向けのワークショップですが、三沢さんの言葉に付き添いの保護者の方々も熱心に聞き入っています。

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▲「大きいってどういうことか分かる?」「アリさんからみたら君はすごく大きいけど、僕からみたら君は小さいよね」
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▲「ニガウリって知ってる?似てるでしょ」

 一通り作品を見終わったら、今度は水彩絵具で動物の絵を描きます。「ライオンのライオンらしさってどこにある?君たちのなかのライオンはどんなライオン?どういうかたちでどういう色してる?」という三沢さんの問いかけに、子どもたちは一所懸命頭の中で動物のイメージを膨らませていきます。

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 最初は「うーん」と悩んでいた子も段々調子がでてくると筆がすいすい進んでいました。どちらかというと低学年の子の方が積極的で何枚も描く子もいましたが、高学年の子はじっくり考えてから描こうとします。

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▲みんなの絵が勢揃い!

 三沢さんの作品を細かいところまでしっかり覚えていて再現する子もいれば、既存の動物を組みあわせて新しい動物をつくる子も。それぞれが思い描いた動物が集合。三沢さんが一枚一枚丁寧にコメントしてくれました。

 みんなが描いた絵は、今月24日まで愛知芸術文化センター2階フォーラムに掲示されています。お立ち寄りの際は是非ご覧ください。
(KS)

平塚で愛知県美展

2009年05月07日

4月25日(土)から、神奈川県の平塚市美術館http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-museで、当館のコレクションによる展覧会が開催されています(6月21日(日)まで)。thmnl_DSC00399.jpg

↑平塚市美術館


「近代日本洋画の華」と題して、明治の高橋由一や黒田清輝から1980年代までの作品70点と木村定三コレクションの熊谷守一15点、合計85点を出品しています。

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↑展覧会ポスター 藤田嗣治《青衣の少女》1925年が使われています

開会前の20日(月)にまる一日かけて作品を点検・梱包、翌日トラックを送り出し、22日には展示作業に立ちあってきました。私の到着時には、担当学芸員の江口さんによる章構成の中で、ほぼ制作年順に作品が仮置きされたところ。草薙奈津子館長と館長代理の土方さんも加わり、4人で作品の配置を検討。thmnl_DSC00402.jpg

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↑昭和戦前までの作品のあとにガラスケースを開いて棟方志功の版画掛軸《華狩頌》(1954年)を納め、戦後の章は抽象画から始めて、展示の流れに変化がつけられました。

当館の所蔵作品展でこれほど日本の洋画ばかりが並ぶ機会は少ないのですが、予想以上に壮観です。神奈川周辺の方、またはあちらへお出かけの方にはぜひご覧いただきたいと思います。今月9日(土)には当館の牧野館長による講演会もあります。


(TM)

やわら

2009年05月02日

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 まずは、上の写真をご覧ください。フカフカの座布団のようなものですが、これが美術館の収蔵庫(作品を保管する所)にたくさんあります。何に使うものかお分かりになりますでしょうか。
 この写真に写っている布団のサイズは、大体A4サイズぐらいで、大変上質なビロードでできています。厚さも結構あり、枕にすると気持ちよさそうなかんじです。実際、触っていると気持ちが良くて、抱きかかえていたくなる感じなんです。

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▲たくさんの赤い座布団的なもの



 これは、私たちが[ヤワラ]とか[布団]と呼んでいる美術館で使う道具です。ヤワラは基本的に、展示作業中に使っています。作品を移動させる際、台車に乗せて運んでいるのですが、作品をそのまま台車に乗せる事はまずありません。作品を乗せる部分に、ヤワラを敷いて、その上に作品を乗せます。移動の際にかかる負担や衝撃を和らげるため、さらに、装飾的な額の場合、突起している部分にだけ重力がかからないように、床面から離すために使っています。

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▲絵画用の台車に乗せています。真横からthmnl_サブ04.jpg

▲前から見るとこんな感じで乗せています。

 

 さらに、このヤワラには、色々な種類があります。先に紹介した赤いかわいいヤワラもあれば、美術作品の輸送や展示に携わる業者の方が持ってきているグレーの長いタイプのもの、さらに綿を薄い紙で巻いたものなどのヤワラがあります。

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▲ひとまとめになっていますが、これが業者の方がお使いになっているヤワラです。thmnl_ザブ06.jpg

▲こちらが、薄い紙に巻かれたタイプのヤワラ

 

 最初の写真のヤワラは、当館専用のヤワラです。作っていただいたのは、美術館友の会のサポート部会の方々っ! 赤いヤワラ以外にも、白いヤワラも存在します。下の写真にある白いヤワラは、すっごく綺麗ですべすべです。ちりめんやりんずといった着物用の絹地でできています。thmnl_ザブ07.jpg

▲綺麗な模様もはいっています。

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▲この写真では、作品を裏返しておく際に、作品の画面が直接あたらないよう浮かせるために敷いています。

ご来館の方々には、お見せすることができないものですが、美術館が閉館中の展示替え作業中などで、大活躍してくれる道具です。

(RK)