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  次回展覧会「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち」の開催まで、すでに一ヶ月近くとなりました。ポスター、チラシを目にした方、開催の噂を聞いた方も、だんだんと増えているのではないでしょうか。

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 この展覧会は、愛知県立芸術大学で長らく先生をされていた櫃田伸也さんを中心にしたものです。櫃田さんは画家として素晴らしい作品を生み出すと同時に、数多くの優れたアーティストも育ててきました。そういうわけで、今回の展覧会は、奈良美智さん、杉戸洋さん、森北伸さんという教え子のお三方が「大好きな先生」のため企画に協力してくださっています。櫃田伸也さんの画家としての活動と教え子との交流の両方が、楽しめる内容に仕上がりつつありますよ。
 こうした特別なコンセプトの展覧会なので、ポスターやチラシのメインヴィジュアルも、多くの学生が集った櫃田さんのアトリエの写真を使っています。ポスター用に、カメラマンの怡土さん、森北さんと、櫃田さんのアトリエに集合して写真撮影をしました。櫃田さんも撮影用にちょっとアトリエを片付けたりして・・・。でも、パレットが床にそのままあるのも、格好いいですよね。

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 この時嬉しかったのは、出展作家のお一人であり奥様の珠実さんが、お昼にカレーを用意してくださっていたこと!多くの学生が櫃田さんのお宅に集まったのは、珠実さんのご飯が美味しいから、とよく聞きましたが、本当に納得のお味です!!お庭で取れたタケノコが入った特製カレーでした。

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こんなほのぼのムードで進んでいる「放課後のはらっぱ展」ですが、もちろん真剣なシーンもあります。次回は、シリアスな裏側(笑)をご紹介いたしましょう。


(N.F.)
 

12日に、高校生対象の鑑賞ワークショップ「携帯電話をデザインしよう」を開催し、1年生から3年生まで23名が参加してくれました。
 内容は、アーツ&クラフツ展会場の作品から自分が気に入ったデザインを選び、あるいは複数のデザインを組み合わせたオリジナルのデザインを考えて、各々シールに写し、自分たちの携帯電話に貼り付けようというものです。今回の企画は、愛知県美術館の鑑賞学習ワーキンググループ有志の高校教員を中心に練られ、制作指導には、高校・中学校の教員と芸大生があたりました。

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↑暑い中真剣に制作

生徒たちが展覧会を鑑賞する前に、学芸員がアーツ&クラフツ運動の説明を行いました。単に気に入ったデザインを探しに行くのではなく、忘れ去られていた手仕事を見直す、または自然や伝統の中に美を見出すといったアーツ&クラフツ運動の精神によって制作されたデザインに注目してもらいたかったからです。

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↑友人と話し合いながら鑑賞する参加者

 鑑賞後、参加者が選んだデザインはほとんど重なることなく、各自の携帯電話の形や色に合わせてデザインされ、流行の「デコ電」と同様、個性あるオリジナルの携帯電話に生まれ変わりました。

 

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↑オリジナルデザインを思案中


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↑ 転写を繰り返し、シールを貼付

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↑オリジナルなモノに変化

鑑賞ワークショップ終了後のアンケートには、次のような感想が寄せられました。
「今回見たものは、どれも模様のようだったりと、形が単純化されているものが多く、普段の生活にもとけこみやすい作品だと思った。マットや壁紙のようで、いつも見ていた美術館の作品より、身近に感じた。」(女子)
「ただ、展示物を見るだけじゃなくて、自分で描いてみて、デザインって素敵だなと感じました。じゅうたんとかすごくキレイで、一つ一つがこまかくて、本当にすてきでした!」
(高3女子)
「自分で描いたものを使うっていうのはなかなかない気がしますが、なんか満足気な気分になれます。」(高2女子)
「実用的なだけじゃなくて、もちあるくのが楽しくなりそうな冷たい工業製品に柄を入れるだけで民芸品みたいなあたたかみがでた気がする。日常品で普段はじっくりみなかったりするものだけど、見ていてきもちがいい」(高3女子)

参加者が日常的であるがゆえに気づかなかったモノの美(デザイン)もあらためて対峙し、その出会いに心地よさを感じていることがわかります。
実は、今回の鑑賞ワークショップは、携帯電話のほか、日常的な存在である電子辞書や眼鏡ケースなどにデザインを施した後、各自がそれらを一週間使ってどのように感じたかを報告してもらうことになっています。一体どんな感想をもつのでしょうか。一週間共に生活することで、デザインされたモノに愛着を抱くと共に、おそらくは美のもたらす作用や美の役割について、なにごとかを感じていることと思います。今回の鑑賞ワークショップでは、わたしたちも目の前で高校生が取り組んでいる作業風景を通して、手作業のすばらしさに思いを馳せることができました。

(M.F.)

 

 

愛知県美術館では、実に7,500点近いコレクションを所蔵しています。自慢の作品たちを、もっと皆さんに見ていただきたい、ということで、館外での公開も、企画展への貸出や移動美術館、愛知県陶磁資料館常設展での展示など、色々な試みを行っています。企画展への貸出はとても盛んで、昨年度は、海外・国内の約50の展覧会に、延べ300点を超える作品を貸し出しました。貸出によって、より多くの方に見ていただけるのはもちろん、展覧会ごとに違う切り口が示されることで、所蔵作品の新たな顔が見えてくるのも、貸出の大切な意義といえるでしょう。
最近では、コレクションの層の厚さを活かして、作品をたくさんまとめて貸し出す機会も増えています。6月まで平塚市美術館で行われていた「近代日本洋画の華?愛知県美術館所蔵品展?」(4月25日-6月21日)には、日本近代の洋画85点(!)を貸し出しました(5月7日のブログをご参照下さい)。
平塚での洋画に続き、この夏は、二つの展覧会で、愛知県美術館の日本画をまとめてご覧いただけます。下記の、碧南市藤井達吉現代美術館の展覧会に33点を貸し出し、岐阜県美術館の展覧会に24点を出品しています。後者の「岐阜・愛知・三重 三県立美術館協同企画」は、この地方の3県立美術館が協同し、3館の所蔵作品によって展覧会を構成する企画で、今年で4回目となります。写真は、岐阜県美術館への作品搬出作業の様子です。

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1.点検して調書を作成します

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2.裏側も点検します

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3.掛軸の裏側は、巻きながら点検

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4.1点ずつラベルを貼り、梱包中

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5.梱包済の作品。運び出しを待ちます

搬出・搬入の際には、開催館と愛知県美術館の学芸員が、1点ずつ作品の状態を点検します。搬出の際には、輸送や展示の方法についても確認します。これだけまとまった数だと、作業も消耗戦になりますが(^^;)、無事展覧会がオープンした、お客様に好評だった、との開催館の学芸員さんのお話を聞けた時の感慨はひとしおです。平塚からの搬入、碧南・岐阜への搬出と、3週連続の大量搬出・搬入作業で、担当者が年齢を感じてしまったこの頃でした。


(M.Ma)

「愛知県美術館所蔵作品展 戦後の日本画」(7月7日-8月30日)碧南市藤井達吉現代美術館 
「岐阜・愛知・三重 三県立美術館協同企画 No.4 時代を創った日本画家たち」(7月17日-8月30日)岐阜県美術館 

平田あすか展

2009年07月13日

 あいちトリエンナーレ2010のプレイベントとして、4-5月の「アニマルズ in AAC 三沢厚彦の世界」に引き続き、「平田あすか“サボテンノユメ”」を開催しています(会場は所蔵作品展内の展示室6)。

 平田さんは1978年名古屋市生まれで2005年に名古屋芸術大学大学院の版画コースを修了。現在は水彩と色鉛筆によるドローイングと、ベルベットやサテンの布に脱色と刺繍をした作品をおもに制作しています。

 

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■写真:《鳥の夢》2008年

 一見優しく可愛い色づかいの作品の中では、人の体から頭部が離れて飛んで行ったり、鳥や蝶・魚・奇妙なサボテンなどとつながったりして、不思議な物語が進行しています。

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■写真:布作品の展示壁

布の作品は、私とO学芸員が高い足場に登って展示しました。

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■写真:アートスペースでのおはなし会

 7月4日に平田さんと展覧会監修をしていただいた高橋綾子さん(名古屋芸大准教授)による「おはなし会」を催し、メキシコやケニアでの制作体験や、個々の作品の意味などを伺いました。

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■写真:《空の狩人》2009年

 平田さんの絵によく登場する、角のようなトゲが生えたサボテンは「湖と漁師の神が一人の女をサボテンの上で生け贄にした」というメキシコの伝説から、十日ほど想像をめぐらせて生まれたそう。

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■写真:《空の狩人》の一部分

 オオカミに乗って雲間を飛び交う、ちょっと怖いサボテン人間たち。でもその中に、サボテンのマスクを脱いで休憩している人も。

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■写真:《吐息》2009年

  「不景気で何かと風当たりの強い日本だけど、みんなで力を合わせてがんばろう」って絵だそうです。片足だけ見せている人が一人います。

 皆さんどうぞご覧になって、色々と物語を想像してみてください。
(T.M.)

 美術館は多くの作品を収蔵しています。所蔵作品展で順次公開していますが、展示スペースや保存上の問題など色々な理由から、実際に目に触れる機会の無い作品も出てきます。そうした作品も含めて紹介するため、ウエブ上で作品を公開しています。著作権の問題などで画像の公開が難しいものもありますが、できるだけ多くの作品を公開できるよう計画的に取り組んでいます。

 利用の仕方も含めコレクション検索の片鱗をご紹介します。
 作品は、「キーワード」「作家」「地域」「時代」「主題」などの項目で検索できます。
 今回は「キーワード」「作家」で作品を探す仕方をご紹介しましょう。

*「キーワード」検索

 コレクション検索のページで、ページ上の「キーワード」ボタンをクリックしてください。
○ 全テキスト
○ 作品タイトル
○ 作家/制作名
などの項目がありますが、全テキストを選ぶと○に印が付きますので、右側の欄に、作家の名前、作品のタイトル、単語、年代など探したい言葉や数字を入力してみてください。
 例えば「パリ」と入れて下の「作家検索」ボタンを押すと、「パリ」という言葉をデータに持つ関連作家が一覧表示されます。

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図 1キーワード検索・作家

同様に「作品検索」ボタンを押すと、今度は「パリ」に関連する作品が一覧表示されます。

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図 2キーワード検索・作品

それぞれ興味を持った作家・作品の情報を得ることができます。

*「作家検索」

 次は「作家」ですが、上の「作家」ボタンを押すと「あいうえお」や「ABCD」のボタンの付いた画面になります。それぞれ「あ」なら「あ」で始まる作家が右側に表示されますので、興味ある作家を選んでください。また下段の「作家」欄に名前や苗字だけの入力でも検索できます。選択や入力後「作品検索」ボタンを押して探してみてください。(参考画面では「あ」から浅井忠を選んでいます。)

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図 3作家検索・作家

 

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図 4作家検索・作品

他にも色々と工夫した検索方法もありますので、試に検索してみてください。
(HK)

 

 6月26日(土)に行われた、林望氏による講演会「私にとってのアーツ&クラフツ」のご報告です。
「リンボウ先生」の愛称で有名な林氏は、近世書誌学が専門の日本文学者であり、またケンブリッジ大学・オックスフォード大学で研究のためイギリスに滞在した体験から、イギリスの食文化・イギリス人の食生活に関する著書を発表するなど、イギリスに造詣が深い方です。というわけで、今回の記念講演会が実現しました。

さて、先生は演壇に上がるとすぐに、集まった多くの聴講者の心をつかんでしまいました!先生はなにやら鉄でできたものを、控え室から講演会会場までずっと大切そうに、まるで犬を連れて歩くかのように持ち歩き、壇上に置きました。イギリスのとある骨董屋で出会ったこの鉄の代物は「フット・スクレッパー」といって、靴の裏についた泥を落とすために使うもの。シンプルで美しいデザインだけれど、日常の生活にとても便利そうです。骨董屋の店主に「アーツ&クラフツのフット・スクレッパー」という説明を受け、アーツ&クラフツに関心を持ち始めたそうです。

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↑フット・スクレッパーを持ち上げて説明する林先生 鉄製なので結構重いです!

講演の内容は、アーツ&クラフツ運動が抱えた矛盾に焦点が当てられました。デザイナー、ウィリアム・モリスを中心に始められたアーツ&クラフツ運動は、機械生産による日用品を、中世の職人のように手仕事によって芸術性の高い品へ変えることを理想とし、そうした装飾品によって囲まれた精神的に豊かな生活、そして社会を目指しました。しかし、技術や素材のよさにこだわったばかりに、制作された品は非常に高価なものになり、結局裕福な人の生活にしかアーツ&クラフツ運動は及ばなかったのです。

一方、アーツ&クラフツが果たせなかった理想を昔から実現していたのが日本であり、食器や伝統的な日本の住空間の図版を通して、大衆の生活にいかに芸術が根付いていたかを示してくださいました。またこうした日本の芸術が19世紀に西洋に伝わり、「ジャポニスム」として、日本の芸術の本質である「生活の中の美」が影響を及ぼしているという興味深いお話でした。

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↑本阿弥光悦の舟橋蒔絵硯箱

江戸時代初期の書家、陶芸、漆芸、出版、茶の湯などにも携わったマルチアーティストの本阿弥光悦とウィリアム・モリスとの共通点を指摘!

展覧会では日本の芸術とアーツ&クラフツの関わりについては民芸運動を中心に紹介していますが、林先生のお話ではアーツ&クラフツ運動の問題点や限界に言及し、日本のより本質的な美学に踏み込み、アーツ&クラフツ運動との関係や比較をご紹介していただきました。先生のお話を聞いて、日本人として誇らしい気持ちになりました。


(M.M.)