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展示室もそうですが収蔵庫の空気は厳密に管理されています。

みなさんは展示室でこういうものをご覧になったことはありませんか?

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この中には「自記温湿度記録計」という温度と湿度の変化を1週間分記録する計測器が入っています。

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もちろん空気調和設備(家庭でのエアコンに該当する機械。以下、空調と略す)に直結した電気的なセンサーはあるのですが、展示室も収蔵庫も、その電気的なセンサーとこの記録計と、常に2本立てて温度湿度はモニターされています。

空気成分や塵埃も管理対象です。空調機の中のフィルターは3層有り、カビの胞子レベルも有害なガスもここで除去されます。

これはプレフィルターといって空調機の一番手前に入っている、おおまかな塵埃除去目的のフィルターです。thmnl_塵埃1.jpg

左の真新しいものと比べるとかなりの違いがわかりますね。空中浮遊塵の数は収蔵庫の場合、人が作業を始める前、空気がかき乱される前は病院の手術室と同じレベルの清浄度です。ちなみに私は花粉症ですが、収蔵庫での作業が続く日は、帰る頃には花粉の季節だという事を忘れるぐらいになっています。外に出て、くしゃみをして始めて思い出す・・・といった具合です。

もちろん掃除もしますが、できるだけ埃を作らない様に、また持ち込まない様にするための工夫もします。

これはまるでエレファントマンのようですが、カバーのかかった彫刻です。thmnl_塵埃2.jpg

こういった長期保存のためのカバーには絹が使われます。絹は木綿などと違って長繊維なので埃が出にくいのです。だから収蔵庫内では強度を必要としないものに関しては絹が積極的に使われています。

また入り口には足拭き用の粘着シートが敷かれ、スリッパや台車の車輪についた埃を取る様なしくみになっています。

これは汚れて来たので一番上を、半分めくった所です。

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真新しい時は結構粘着が強く、うっかりすると転びそうになるくらいです。これを「人間ごきぶりホイホイ」と命名した学芸員がいます。

余談ですが、先程、絹は長繊維なので・・・と書きました。ご存知のとおり絹はお蚕さんの繭なのですが、お蚕さんは繭の作り始めから終わりまで、休むことなく・・・つまり繊維を切らすことなく吐き続けます。なんとまゆ1粒は1500mの長さの1本の繊維でできていると言われているのです。木綿がわが国に普及したのは江戸時代以降です。羊毛が普及したのはもっと新しいことです。昔は絹かこれまた長繊維の麻しかありません。昔の人の暮らしにはほとんど「綿ホコリ」というものがなかったものと推定されています。

 (N.N.)
 

7月に、博物館実習を実施しました。大学等で博物館学芸員資格取得を目指して講座を受講している学生が、美術館の現場で実習を行うものです。今年も愛知県内やそれ以外の地域の様々な大学から、芸術を中心とした諸専攻の、男性1名、女性8名が受講しました。
実習の基本的なプログラムは、美術館の概要に始まり、収集、保存、展覧会企画、ドキュメンテーション、教育普及、広報などの各講義に加えて、作品の点検・取り扱い、展示実習などにより行われます。愛知県美術館の学芸員が、各分野を担当します。
毎年、実習時に開催される展覧会の事業や館内の仕事の流れによって、重点的に行われる実習が変更されます。夏場の実習ということもあり、過去には、屋外展示作品の洗浄を行ったこともありますが、今年は、夏休みの子ども向け鑑賞会に参加・実施してもらうことにしました。


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↑子どもの好奇心におどろき

実際、子どもを対象としたイベントに慣れていない学生も多く、作品鑑賞に導くことはもとより、子ども相手への戸惑いも見られました。けれども、子どもというフィルターを通して、語らいながら作品を鑑賞することの楽しさ、または作品への子どもの素直な反応に、作品が持っているエネルギーをあらためて感じたようでした。


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↑実物の作品での展示実習に緊張気味

こうした現場の生の声による講義や実習を通して、各自が、来館者としてそれまで抱いていた展覧会を開催する場としての美術館像から、作品を中心とした活動を展開する美術館像に転換させている様子がみえてきます。毎日提出される実習日誌からもそれはうかがえるのですが、最終日に受講者に課される課題発表に、その成果が現れるように思います。毎年、発表の日は、皆さん寝不足のようです。それだけに、展覧会企画・ワークシート等の鑑賞補助資料作成・教育事業企画等々に取り組まれた発表は、(限られた予算で)いかに魅力的な美術館にするかということへの、学生らしい斬新な提案ばかり。美術館も、初心に返って、こうした企画を実現できるよう活動していけたらと思わず感じざるを得ませんでした。
受講生の皆さん、5日間お疲れ様でした!

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↑自分たちで行った展示に感動、満足

なお、来年度は、「あいちトリエンナーレ2010」開催のため、博物館実習は行いません。学生さんたちとの交流は、トリエンナーレなどの開催を通して、別のかたちで行っていけたらと思っています。

(M.F.)

夏休み子ども鑑賞会

2009年08月04日

 美術館では毎年夏休みの期間に小・中学生を対象としたプログラム「夏休み子ども鑑賞会」を実施しています。美術館や作品鑑賞に慣れ親しんでもらおうと、毎年様々なテーマを設けています。今年は【めざせ!!美術館マスター】です。美術館長から、マスターになるための3つの指令が出され、それをクリアすると美術館マスターになれるというものです。今回の鑑賞会には、美術館のスタッフの他、鑑賞学習ワーキンググループの有志の先生方や芸術系大学の学生などに、プログラムの企画から参加していただきました。
 プログラムでは、4から7名のグループに分かれ、サポートスタッフが2名つき美術館長からの指令をクリアしていきます。低学年(小学1年生から4年生)と高学年(小学5年生から中学生)と指令の内容が異なり、対象年齢に合わせた指令が出されています。

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▲「指令できそうなひとーっ」の掛け声に元気に手を挙げてくれています。

 

 まだ、鑑賞会実施期間中なので全てご紹介できませんが、指令を1つご紹介したいと思います。
 指令 「ピッタリの作品をさがせ」 では、色カードと言葉カードを使って、そのカードとピッタリ合う作品を探し出し、その作品の特徴などを鑑賞していきます。
 カードホルダーに3枚までカードを入れることができるので、色を3色入れてその作品を探し出すわけですが、参加者にカードを選んでもらうと、金色はみんな好きなようで、必ずといっていいほど手に取ります。

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 ▲金色がホルダーに入っていますが、作品のどこにあるのでしょうか?

 

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▲グループのみんなでピッタリ合っているか検証中

また、言葉カードでは「あたたかい」「どろどろ」「シュッ」「つるつる」などのカードから作品を探します。

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▲どの言葉でピッタリを見つけようか相談しているようです

 

 この「ピッタリの作品を探せ」では、実施前3色の組み合わせだと、見つからない作品が出てくるかと思いましたが、作品をじっくり観察してみると、見つかるものでたくさんピッタリの作品を発見することができます。

たとえば、金色・ピンク色・緑色だと、どんな作品を見つけられるでしょうか。来館の際に探してみてください。

(R・K)

裏方通信 収蔵庫の話

2009年08月01日

  華やかな美術館の表側と異なり、裏側には関係者しか入れない大変厳しいセキュリティーエリア(警備強化範囲)があります。さらにその奥に日頃作品が眠る「収蔵庫」があります。thmnl_収蔵庫1.jpg

↑収蔵庫前室

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↑収蔵庫の内部

 「収蔵庫」は、私たちが中で調査や作業を行う時だけ、また必要なところだけ照明を点けることになっています。光も作品の劣化を促進してしまうからなんですね。
 額に入った作品は、「絵画ラック」というものに掛かっています。このラック自体、必要な時に引き出せる様、モノレールのように上からつり下げられた構造になっています。thmnl_収蔵庫3.jpg

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↑ラックにかけられた絵画 落下防止のためさらしで留められています

 収蔵庫は分厚い断熱材を内張りしたコンクリートの箱の中に、その壁からは独立した別個の木造の家を建てた様な、完全な二重構造になっています。その木のお家とコンクリート躯体との間には巨大なゴムが噛ませてあり、劇場やコンサートホールから、もし重低音振動が伝わってきたとしても、そこでシャットダウンできるようになっています。複合施設なので他の美術館博物館施設にはない工夫がされたのですね。でも近年それが地震対策にも有効に機能するということがわかってきました。
収蔵庫は年間を通じて22度55%の温度湿度に保たれ、空気成分の各種ガスや固形物である空中浮遊塵に至るまでモニターされ、管理されています。

(N.N.)