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  国立西洋美術館で開催中の「古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―」展は、来年正月からいよいよ愛知県美術館で開催です。正式な展覧会タイトルは長いので、愛知会場では「大ローマ展」というタイトルをメインで使っています。愛知県美術館で開催される古代文明をテーマにした企画展としては、2002年のポンペイ展、2006年のペルシャ文明展に続く3回目になります。愛知会場のポスターやチラシなどをすでにご覧になられた方も多いのではないでしょうか。たくさんの来館者が想定される展覧会なので、前売りや広報活動をいつもより早くから始めています。

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↑愛知県美術館ロビーに掲示されているポスター 左に一部見えているのは国立西洋美術館のポスター

 どの作品を展示室のどこに配置するといういわゆる展示プランを練り、作品を展示するためにどういう台やケースが必要になるのかということを考えるにあたり、すでに開催中の国立西洋美術館(略称西美:セイビと読む)の展示をO学芸員と下見してきました。当日は愛知県美術館(略称県美:愛知県内のみ通用)をはじめとする各巡回館の担当学芸員が参集し、西美でこの展覧会の展示を指揮したTさんの解説を受けながら展示会場や空箱を納めた収蔵庫を見せてもらいました。

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↑国立西洋美術館 古代ローマ帝国の遺産展 会場入口

 一番大きな大理石彫刻《皇帝座像(アウグストゥス)》は重さ3トン。10階の県美にこの作品を上げるためのエレベーターの重量制限はなんとかクリアです。エレベーターに載せられない作品は基本的に展示できないのが県美の宿命です。西美では床下に梁が通っている場所にこの作品を展示しているそうです。県美でも図面で建物の内部構造を確認して、梁の上にこの作品がくるような展示プランを作る必要があります。床面積当りの耐荷重が足りないというわけではないのですが、そうした場所に重い作品を設置しておいた方が絶対的に安心だからです。

 
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↑《皇帝座像(アウグストゥス)》 彫刻が乗る草色の台座の中は、重量に耐えられるよう鉄骨で頑丈に骨組みされています 

 作品が大きいと、それが入ってきたクレートと呼ばれる木箱も大きくなります。《皇帝座像(アウグストゥス)》の場合、縦横が約2mに高さが約3mで、内箱もある二重箱になっています。作品の抜け殻とも言うべきクレートは、展覧開会期中は収蔵庫など温湿度が管理された部屋に保管しておかないといけません。この大ローマ展くらいの規模になると、クレートの容量が半端ではないのです。県美にはそうしたクレート類を一時保管するための部屋がありますが、果たして全部入るのかちょっと心配です。

 バーチャル・リアリティの映像も見せてもらいました。「これって本当にバーチャルなの?」って思うくらいにリアルです。西美でもこのコーナーは予想以上に人気だそうです。今から楽しみですね。

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↑この壁画断片のありし日の様子がバーチャル・リアリティ映像で見られます

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↑宝飾品も綺麗に展示されています

(HF)

カビの話

2009年10月25日

 日本で文化財を保存してゆく上で、一番問題になるのが「カビ」そして「虫」です。江戸時代、江戸の大火は有名ですが、その頃ですら貴重本が失われる原因は「火事」よりも、これら生物被害によるものが多かったと試算されています。

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↑カビ

 美術館でもカビ処理は非常によく行う作業です。文化財によらずカビの生えた物の最初の処置はよく乾燥させることですが、文化財の場合、やみくもに乾燥させるとひび割れなど違う弊害が起こります。ただ幸いにして文化財によく使用される素材の保存適正湿度は、カビの発育適正湿度より、ほとんどが低いので、まずはその素材の保存適正湿度に馴染ませてやります。そうすると生えたカビは非常にもろい状態になり、少しの衝撃でも粉砕されるようになります。そういう状態にしてから乾式クリーニング、つまりカビ払いを行います。

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↑カビ払いの様子

筆で払ったり布で拭いたりといった作業ですが、私たちはちょっとした作業に学童用の化繊の筆をよく使います。化繊の筆は乾燥した状態でこすられると静電気が起きやすいので、胞子などが筆側にひっついてくれるからです。このように先を様々な形状に自分でカットして使います。

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↑カビ払いで使用する化繊筆

 小さいものですと修復室のフーバの下で行いますが、大きい物はそういうわけにいきません。これはあくまで殺菌処理ではないので、飛び散った胞子などを吸い込まない様、作業をする職員もマスクをし、ひどいものは白衣を着て作業をします。またしょっちゅうクリーンルーム用の掃除機でまわりを掃除しながらの作業になります。

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↑白衣とマスク

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↑掃除機がけの様子

 余談ですが、お着物などに茶色いシミが、「そばかす」というか「ジンマシン」の様に出てきてしまったというご経験はありませんか?一般には「ほし」とかとも呼ばれ、私たちは専門用語として「フォクシング(foxing)」と呼んでいます。あれの原因もカビであることが非常に多いのです。あまり知られていないことですが、実際にカビが生え出してから、あの「シミ」が出るまでには結構、長い時間(環境にもよるが年単位)が必要です。タンスを開けて少しでも「カビ臭いなあ」と感じたら、すぐ良く乾かして乾式クリーニングを行って下さい。今ではお着物用のブラシなども市販されているようですが、柔らかい毛のものでしたら刷毛のようなものでも使えます。あの「シミ」は一度出来てしまったら、ほとんどの場合、染み抜き出来ません。出来ないばかりか、時として分泌されたものによって次の染め替えの邪魔をする、実に厄介者です。
 昔の日本人の暮らしに「虫干し」という行事は欠かせないことでした。近年、「虫干し」という年中行事も科学的な裏づけがされ、その有効性が再認識されてきています。「虫干し」にはいろいろな類語があるのですが、その中に「目通し、風通し」という言葉があり、まさしく「虫干し」のメカニズムを言い表した言葉だと言えます。上記Foxingなどの症状を予防するにも、この「目通し、風通し」が一番有効なのです。
 美術館の収蔵庫は温湿度管理がされ、いわゆる四季のない空間なのですが、早期発見、早期予防はしっかり継承しなければならないことです。みなさんも自分にとっての宝物は、時々取り出し、眺め、慈しんでやって下さいね。
 

(N.N.)
 

 18日には「放課後のはらっぱ」展、名古屋市美術館会場で、イベントが3つ同時開催されました。名古屋市美術館中がちょっとした文化祭のような感じです。

 まず、一階のカフェステラでは、安藤正子さんと加藤美佳さんが「はらっぱ一日カフェ」をプロデュースされました。カフェの内装からレシピまで、お二人の感性が活かされた可愛らしいものになっています。
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↑ネコのライスのハヤシライスに、ハリネズミのスウィートポテトなどなど。どちらもあっと言う間に完売です。


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↑風船などで飾り付けられた店内は12時前にはすでに満席に!

 地下一階のスペースでは、櫃田珠実さんによる「はらっぱフォトバッジ、バッチ・グー!」。出展作品の好きな部分を誰でも数分でバッジにできちゃうこの企画、どの方もバッジを手に笑顔です。バッジは、この展覧会ならではのレアアイテムになるかも・・・。
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↑ここから好きなイメージを切り出します。快くオッケーを出してくださった出展作家さん達に感謝!
 

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↑出来上がり。いろんなバッジが出来ました。

 そして二階の講堂では「幻灯会」が午後二回行われました。設楽知昭さんが映し出す《透明壁画・人工夢》のスライドを、みんなで床に座って眺めます。どこか奇妙な室内風景や逆さまの人の姿がほのぐらい中に次々と現れると、謎めいた雰囲気に講堂全体が包まれました。
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↑無言のままイメージのみが現れていきます。《透明壁画・人工夢》のオリジナルは愛知県美術館に展示中です。

 名古屋市美術館会場は、この18日がはらっぱ展の最終日となりましたが、愛知県美術館会場は25日までやっています。各アーティストの個性が溢れ出る展示、みなさまお見逃しなく!

(FN)
 

 ただいま愛知県美術館で開催中の「放課後のはらっぱ」展。実は、この美術館では初となる試みが行われています。それはボランティアによるガイドツアー!展覧会の説明を専門とするボランティアスタッフが、「放課後のはらっぱ」展の見どころを、お客様と展示室を回りながらお話してくれます。
 このガイドツアー、開始するまでに実はかなりの研修が行われました。ガイドボランティアをつとめる方々は各アーティストや作品の細かい情報まで学んできたのです。ガイドマニュアルも、ボランティアさんたちの意見を取り入れつつ作りました。
 とは言え、実際にお客さんを前に話すときは、それぞれのガイドボランティアさんの個性が出るものです。実際、櫃田作品を前にすると言葉に熱の入る方もいれば、教え子さんの活動に共感しながらお話する方も・・・。どんな方のツアーに参加するかによって、展覧会の見え方もちょっと変わってくるかもしれませんね。
 毎週土曜、日曜と祝日に、午前11時と午後2時の計二回行われています。申し込み不要、参加費無料なので、ツアーに参加してみたい方は愛知県美術館のロビーにお集りください。

 

 

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↑この看板が出ている日にはガイドツアーがあります。

 

 

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↑あいちトリエンナーレ2010プレイベント「後ろの正面」展の会場運営ボランティアによる日誌。ボランティアさんは、こういう交換日記のようなものをつけています。



また、自分もガイドボランティアをやってみたい、という方にもお知らせ。これからもボランティア募集が行われるので、あいちトリエンナーレのHPをご確認ください。(ガイドボランティア以外にも、作品とお客さんをつなぐ会場運営ボランティア、アーティストと一緒に活動するアーティストサポートボランティアなんていうのもあります)。皆様の参加をお待ちしております!

 

 

 

 「日本の自画像展」の準備は、ポスターもできあがって、いよいよ最終段階を迎えています。

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この展覧会では、木村伊兵衛、東松照明、土門拳、奈良原一高といった著名な写真家11名の作品168点をご紹介します。これらの作品には、敗戦直後の厳しい社会状況から、復興の道を歩み、経済成長を軌道にのせた20年間が記録されています。そこにはたとえ貧しくても、明るく、力強く生きてきた人々の姿があります。敗戦の傷跡、占領下での生活、伊勢湾台風の被害、歌声喫茶など、当時をご存じの方々は、その情景にご自身を重ね合わせていただけることでしょう。より若い世代の方々には、ご両親、お祖父さんやお祖母さんたちが生きてきた時代を、きっと身近に感じていただけるに違いないと思います。
 ポスターの作品は土門拳の《紙芝居》です。まだ家庭にテレビがなかった頃、子どもたちの楽しみは、街角に集まって楽しむ「紙芝居」や「しんこ細工」でした。紙芝居を食い入るように見つめる子どもたち、そこに自分もいるように感じていただける方も少なくないと思います。そういえば髪型も、男の子は刈り上げで前髪を揃え、女の子は「おかっぱ」がお決まりでした。テレビやパソコンが普及して、いつの間にか私たちの生活は大きく変わってしまいました。放課後も塾に通い、家にいてもテレビゲームなどに熱中しているせいか、街中で遊ぶ子どもたちの姿を見かけることは少なくなってしまいましたが、ここには皆で遊ぶ元気な子どもたちがいます。
「あの時 私は」という言葉には、写真家それぞれが何を見ていたのか、そして作品のなかの一人一人がその時代をどのように生きていたのか、ということへの思いが込められています。
 日本を代表する写真家たちの優れた作品と、そこに記録された時代と人々、その両方を楽しんでいただける展覧会です。また、同時に当館所蔵の東松照明《愛知曼陀羅》から、選りすぐりの作品も特集展示します。どうぞお楽しみに。
(MuM)