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所蔵作品の収集

2009年11月22日

愛知県美術館は、国内外の近現代美術を中心に、質・量ともに充実したコレクションをもつことが自慢です。2009年3月現在で、7,400点近い作品を所蔵しており、毎年、その数を増やしています。今回は、こうした所蔵作品の収集の仕組みについてお話します。
作品を収蔵するやり方には、購入(お金を払って買う)と、寄贈(無償でいただく)があります。購入はもちろん、寄贈の場合でも、作品の管理自体にお金や人手がかかり、収蔵庫のスペースも限られるため、制限なく受けられるわけではありません。購入でも寄贈でも、美術館の収集方針にそった作品を選んで収蔵することになります。


愛知県美術館の収集方針は、次のとおりです。
・20世紀の優れた国内外の作品及び20世紀の美術動向を理解する上で役立つ作品
・現在を刻印するにふさわしい作品
・愛知県としての位置をふまえた特色あるコレクションを形成する作品
・上述の作品・作家を理解する上で役立つ資料


21世紀となった今では、20世紀美術はもちろん、「現在を刻印するにふさわしい作品」に力を入れて収集しています。また、3,285点の木村定三コレクションは、愛知県のコレクターである木村定三氏の旧蔵品をご寄贈いただいたもので、これにより美術館の所蔵作品にさらなる広がりが生まれています。作品の収集に当たっては、既に所蔵している作品との兼ね合いや、展示での活用のしやすさなども大事なポイントとなります。


学芸員は、日頃から、美術館で収蔵するにふさわしい作品の情報収集につとめています。毎年、それらを吟味・厳選して、その年に収集する作品の候補を決めます。収集候補作品については、学芸員が分担して、来歴や文献、市場価格などを調査し、愛知県美術館のコレクションの中に位置付けた調書を作成します。その上で、当館としてそれらを収蔵することが適当かどうかを、「収集委員会」を通じて外部の専門家の方々に審議していただく制度をとっています。
昨年度は、新たに25点の作品を収蔵しました。中でも、安井曽太郎《パンと肉》は、日本近代洋画の分野では久しぶりの収蔵です。フランス滞在中の1910年に制作された、安井の自信作です。12月20日(日)まで、所蔵作品展でご覧いただけます。

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↑安井曽太郎《パンと肉》。これで、愛知県美術館にある安井の油彩画は3点になりました。

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↑川瀬巴水の木版画のコレクション。一昨年度にご寄贈いただいたもので、こちらも12月20日までの所蔵作品展で展示中です。
 

(M.Ma)

 

自画像展 記念講演会

2009年11月18日

先日、本展出品作家である、田沼武能(たぬま たけよし)さんにお越しいただき、記念講演会を開催しました。「あの時写真家たちが見たもの」というタイトルが付けられた講演会では、田沼さんご自身の当時のことから、今回出品作家の方々の活動までお話いただきました。


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↑田沼武能さん


色々なエピソードをお話いただきましたが、中でも興味深かったのが土門さんとの始めての出会いの場面です。

田沼さんが、土門さんの助手をしていたサンニュースの先輩の人と土門さんのお宅へと遊びに行き、2階の書斎でコンタクトプリントを見ていたところに、土門さんが帰宅。その様子を見た土門さんは、仁王立ちになり顔を真っ赤にしたそうです。当時、田沼さんは木村伊兵衛さんの助手をしていたこともあり、スパイと思われて当然だったようですが、怒鳴るようなことはなく、その後、お茶を出されたそうです。
そこでは、土門さんとその助手がいる中、木村さんの現像で使っている現像液の種類や時間などの暗室での処理を詳しく聞かれたそうです。スパイをしに土門さんの所へ行ったわけではないですが、逆に木村さんの仕事を聞かれるかたちとなってしまったみたいです。しかし、このことについて木村さんが怒るようなことはなく、それ以来土門さんにも可愛がってもらった、と話してくれました。

 

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↑会場風景(スクリーンに映っているのは、1949 年に浅草国際劇場屋上で撮影された田沼さんの《SKDの踊り子》です。 )

 

そのほかにも、色々な話を聞くことができました。田沼さんから、当時の様子を生の声で聞けたことは、大変興味深く勉強にもなり、また、聴講者からの質問にも丁寧に答えられ、有意義な講演会となりました。

(RK)

ピエール・ボナールの《子供と猫》(1906年)という作品、ご存知でしょうか。当館のコレクションの1点、小作品ですが、少女と2匹の猫が描かれたかわいらしい作品です。

この作品が、フランスのラングドック地方にある山間の小さな集落、ロデヴという町の美術館の展覧会へ貸し出されました。

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↑町の周囲を川が流れる

ボナールのナビ時代から晩年までの作品を70点ほど集めた「ボナール、日常のすぐれた観察者」という展覧会です。

この展覧会は10月29日で終了し、クーリエとしてこの美術館へ出かけました。クーリエとは、作品の搬送に付き添い、作品状態を確認するという仕事です。

ロデヴ美術館に着いて最初に驚いたのは、建物が非常に古い造りだということです。美術館として使用されている建物は、ルイ15世の司祭を務めたフルリー家の邸宅です。中央の庭を四角く取り囲むこの建物は16ー17世紀に建造されたものです。

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展示室に入り、ボナールの作品と対面。

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↑黄色い壁に掛けられて、普段とは少し違った表情

まだ学芸員になって間もない頃、作品の貸し出し業務を担当していたのですが、先輩から「作品を貸し出すときは、自分の子供をよその家族に預けるような気持ちで」といわれたことがあります。こうやって他の美術館で久しぶりに作品を見ると、普段以上に親しみ深く感じます。

感慨にひたるのもつかの間、早速クーリエの仕事に取りかかります。まずは展覧会の担当者の方と展示中の様子を聞きながら、作品の状態チェックをします。それが終わると、作品を運ぶための木箱に納めます。この木箱は今回の輸送のために特別に制作されたものです。的確な素材を用い、寸法も完璧で、安全面でもしっかりしたこの木箱に、ロデヴ美術館のスタッフは感心しきり、「素晴らしい!」と大絶賛でした!

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↑本来はセキュリティー上お見せできない木箱の中身。今回は一部ご紹介。箱の中の銀色のシートは、水漏れ防止、断熱、気密性を保持する優れもの。

さて、今回のクーリエ業務、ここからが大変でした。

朝7時美術館から作品を搬出。そのため早起きしてホテルを出ようとしたら、なんとホテルの玄関が閉まって出られない!受付には人がいないし、美術館に電話しても誰も出ないし、ホテルの中をおろおろ行ったり来たり。ようやく7時になってホテルの従業員さんが出てきて、玄関を開けてもらい、美術館へダッシュ!搬出が終わるとすぐにトラックに乗り、パリへ向かいました。フランスを南北へほぼ横断し、なんと12時間にも及ぶ道のりでした。パリに着いたのは夜の9時、美術品輸送会社の倉庫に作品を搬入し、近くのホテルへ直行、翌朝は6時45分ホテル発という、なんともハードなスケジュール(涙)。再び作品を倉庫からトラックに乗せ、空港へ。ここで飛行機に乗せる荷物と一緒に作品が荷造りされるのに立ち会うのですが、作業が一向に始まらない!結局1時間半も待機状態でした。理由は、飛行機会社のスタッフたちが朝食に出かけていたとのこと…(またまた涙)。12時ごろ作品を飛行機に乗せて、ようやく一息。

翌日関西国際空港へ到着(本当は中部国際空港へ到着したかった…。出発のまさに5日前にパリ名古屋間直行便が閉鎖という不運…)、半日かけて名古屋へ移動。こうして、長い輸送にも耐え、作品は元気に美術館に戻りました。

 このように、とんだハプニングにも遭遇してしまう大変なクーリエ業務ですが、よい事もあります。普段個人では行けないような美術館では、情報の少ない希少なコレクションを知ることができます。ロデヴ美術館には、パスキン、スーチン、キスリングなど特にエコール・ド・パリや、デュフィの作品がありました。また美術館との交流も生まれます。今回はロデヴ美術館館長でフォーヴィスムの専門家マイテ・ヴァレ=ブレッド氏と面識を得ることができました。今後、当館との協力関係にプラスになることと思います。

(MRM)

コレクション・トーク

2009年11月14日

 愛知県美術館では、企画展ごとにギャラリー・トークを行っていますが、所蔵作品展に関するギャラリー・トークも「コレクション・トーク」と題して今年度から始めています。

 11月14日(土)に本年度の3回目として、今回の所蔵作品で特集展示をおこなっている『川瀬巴水の版画』を中心にお話ししました。

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 はじめに、展示室4で当館が誇るグスタフ・クリムトの《人生は戦いなり》を含めた20世紀の西洋絵画コレクションと当館の収集方針についてお話しし、次の展示室5では明治以降の日本の洋画家の多くがフランスに学んだことを黒田清輝、久米桂一郎や梅原龍三郎らを取り上げてお話ししました。実はここでのお話に黒田らが帰国後結成した白馬会の話を少ししました。それは、今回のお話の中心である川瀬巴水が日本画家の鏑木清方に入門する前に、白馬会葵橋洋画研究所で学んだ経歴のあることとつなげたかったからです。

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 当館の川瀬巴水のコレクションは2006年に小川潤三・郁子夫妻から寄贈されたもので、今回はその中から39点の作品をご紹介しています。

 近年川瀬巴水らの新版画は注目度が高くなっています。浮世絵版画の伝統を引き継ぐ巴水の精緻な木版画は、多いもので40版も使って摺られています。その結果深い色合いの仕上げを堪能することができます。ぜひ会場へお出かけになってごらんください。
(ST)

 11月14日(土)、15日(日)は、長者町地区で「ゑびす祭り」というおまつりが行われています。現在開催中の長者町プロジェクト2009の参加アーティストたちも、おまつりと聞いちゃ黙っていません。

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 KOSUGE1-16は、ワークショップで子どもたちと一緒に制作した人形を乗せた「やわらかい山車」をひいて、長者町通りを練り歩いています。名古屋を中心に活動しているチンドン/ラグタイム/ポルカという不思議なバンド「ホット・ハニーバニー・ストンパーズ」のみなさんが素敵な演奏で先導してくださいました。

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 またトーチカは長者町繊維卸開館の前に「PiKAPiKAアート屋台」を出しています。誰でも簡単にPiKAPiKA(ペンライトをつかった光るラクガキ)ができちゃう、ということで大人気、長蛇の列ができていました。

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 斉と公平太の「LOVEちショップ」も屋台スタイルでグッズ販売を行っています。LOVEち君自ら店頭販売。ちなみにLOVEち君の顔は正面から見てください。顔を横からのぞくのはご遠慮願います(みなさんのぞきますが)。

 繊維の卸問屋街のおまつりなので、出店も衣料品が充実。色んな服が破格のお値段で買えちゃいます。お買い物とアート、どちらも楽しめる絶好の機会、土曜日を逃した方も、本日日曜日(15日)に是非ご来場ください!
(KS)

 6日(金)から、『日本の自画像』展が始まりました。今回の展覧会は、愛知県美術館ではめずらしい、写真の展覧会です。ちなみに、当館初の写真展は2006年に開催した「愛知曼陀羅?東松照明の原風景」展です。

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上の会場写真をみると、はらっぱ展の時のウキウキするような楽しげな雰囲気から、ガラリと替わり、しっとりとした落ち着いた雰囲気になっています。作品点数は、特集展示も合わせると236点もあり、写真作品以外にも今回の出品作家が当時出版していた写真集の初版本も数点展示されているので、かなり見ごたえがあると思います。展示室にあるイスで休憩しながらみるといいと思い、各所にイスを設置したので、ご活用下さいませ。
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基本的に、企画展では一般公開に先駆けて、開会式を行い、関係者をお呼びして展示をご観覧いただく内覧会というものを実施しています。(過去の記事にも何回か登場していますね。)美術館関係者がたくさん集まるVIPな集まりです。もちろん自画像展でも開会式&内覧会を開催しました。当日は、テレビクルーがきての取材もありました。どこかのタイミングでテレビ放映されるかもしれません。ちなみに、テレビ愛知です。


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開会式での1枚。

自画像展、始まって1週間ですが、会期が短いので(12月13日まで)、お早めにお越し下さい。今週末には、出品作家の田沼武能氏による記念講演会も開催されるので、ぜひご来場下さい。

(RK)

 

 

 11月6日スタートの「日本の自画像」展に合わせて、美術館のロビーでは市川武史さんによる「オーロラ―絵画/彫刻」の展示を行ないます。市川さんは浮遊する透明な彫刻などで知られる作家ですが、今回は初の絵画作品を発表します。といっても、通常のキャンバスに描かれた絵画ではありません。長さ14Mに及ぶ布に描かれた作品で、それが平面上にではなく立体的に展示されており、中にも入れるという不思議な状態です。絵画でありながら同時に彫刻的でもある、ということで、サブタイトルに「絵画/彫刻」と付いています。と、言葉で説明してもあまりピンと来ないかも…。ちょっとだけ写真を掲載します。全貌は見てのお楽しみということで。

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 朝/昼/夜で作品の表情ががらりと変わります。11月にはいって、日もかなり短くなってきていますので、閉館直前はもう外は真っ暗です。そんな中で見るオーロラはとてもロマンティックでおすすめ。展示作業中に、「これカップルが中に入ったら幸せになれる、って噂を流そうか」なんて冗談が出たくらいです。ほんとに幸せになれるかも知れません。個人的には午前中のさわやかなオーロラが好きですが。なかなか一日中美術館内で過ごす、という方はいらっしゃらないと思いますが、「オーロラ―絵画/彫刻」は無料スペースでの展示なので、是非何度でも足をお運びいただければと思います。

 また期間中の11月20日金曜日は、夜間開館で20時まで開館しています。同日18:30より市川武史さんと詩人・建畠晢さんによるサウンドパフォーマンスを行ないます。建畠さんは「あいちトリエンナーレ2010」の芸術監督でもありますが、今回は詩人としての建畠さんの魅力をお楽しみ下さい。こちらも観覧無料、申込不要です。
(KS)