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4月24日(土)、「大正期日本画の動向―小川芋銭を中心に」と題して講演会が開催されました。講師は京都国立近代美術館館長の尾崎正明さん。

長く東京の国立近代美術館におられた尾崎さんは、1993年に東京近美と当館で開催した「小川芋銭展」の主担当で、当時学芸員の仕事を始めたばかりだった私は、兵庫県の所蔵家への作品返却に同行させていただいたことがあります。

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▲講師の尾崎正明氏

 

ご講演の初めには、93年の展覧会の折、芋銭の大コレクターとして知られていた木村定三氏のお宅へご挨拶に伺ったときのエピソードを。床の間に掛けた《紆泉道人洗面之池》を指して「この絵の中に美人が隠れているが、わかるか?」という木村氏の問いに答えられたことで出品依頼が許され、それが後の当館へのコレクションご寄贈にもつながったわけです。

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▲この部分が正解?

 

その後は演題のとおり、横山大観・菱田春草らの〈朦朧体(もうろうたい)〉や、速水御舟・小茂田青樹らの細密描写といった当時の新動向が紹介され、さらに芋銭と同様に洋画から日本画への転向者や漫画的要素をもつ画家も多かったことをご説明された上で、芋銭の特異さについてのお話となりました。

河童伝説で知られる茨城県牛久で農業にも従事していた芋銭の作品には、自然の中での人間の営みへの深い共感と、「土」の匂いとそこから育まれた豊かなイメージがある、と尾崎さんはおっしゃいます。田園風景や無人の自然の向こうに河童や狐火が見えるのは芋銭にとってごく当然の感覚であり、それは古代中国の想像の世界である「桃花源」(桃源郷)を描いても実感として表されているとのこと。

幅広いモティーフをもつ芋銭の絵画世界の核心をつくお話で、会場からのご質問を含め予定時間をかなり越える、充実した講演会でした。

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▲会場の様子

 

講演の最後に触れられた「桃花源」をテーマとする作品は、展覧会後期の27日から展示されます。前期にご覧いただいた皆様も、ぜひまたお越しください。 (T.M.)
 

 

愛知県美術館では、教育プログラムの一環として、愛知県内の小学校・中学校・高校の先生方と「鑑賞学習交流会」を行っています。今回はこの「鑑賞学習交流会」をご紹介します。

 

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▲ 昨年度に開かれた〈大ローマ展〉関連ワークショップについての発表

 

交流会のなかでは、先生方が鑑賞教育の実践例を紹介したり、学芸員が展覧会について解説を行なったりして、鑑賞教育についての情報交換を行なっています。
簡単に言うと、鑑賞学習についての勉強会のようなものですが、図工・美術専科の先生だけでなく、そのほかの教科の先生にも多く参加していただいています。

 

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▲ 展示室内で、学芸員の解説に耳を傾ける先生方

 

▲ 昨年度のワークショップを再現、古代ローマの衣服「トガ」を着る I 先生。
この発表を聞いて「実際に彫刻の授業で参考にしたい」という意見もいただきました。


鑑賞学習交流会は、2、3ヶ月に一度のペースで開かれており、企画展の開催ごとに各学校にその案内を送っています。
「鑑賞学習についてもっと知りたい」という方、「鑑賞の授業で、こんな方法があるんだけど」という方などなど、鑑賞教育にご関心のある先生方、ぜひお気軽にご参加ください(予定などの詳しい情報はこちらをご覧下さい。)(S.S.)


 

当館が所蔵するジョージ・シーガル(1924-2000年)の立体作品《ロバート&エセル・スカルの肖像》(1965年)が今ニューヨークに行っています!

 

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▲ ジョージ・シーガル 《ロバート&エセル・スカルの肖像》 1965年 油彩・画布、石膏、木製布張り椅子 181.0 x 143.5 x 143.0 cm 愛知県美術館

 

ニューヨークでも指折りの大画廊アクアベラで、「ロバート&エセル・スカル――コレクションのポートレート」という展覧会が開催中で(2010年4月12日-5月27日)、それに出品しています。他の都市の例はよく知りませんが、ニューヨークではある程度のレベル以上の画廊だと、国内外の美術館から作品を借りて企画展をすることも別に珍しくはありません。

 

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▲ アクアベラ画廊。メトロポリタン美術館のすぐ近く、79丁目の5番街とマジソン街の間にあります。

 

ロバートとエセルは現代美術の重要なコレクターだった夫妻で、今回のアクアベラ画廊のスカル展は、彼らが所有していたけれども今は散逸しているいろいろな作品を一堂に集め直そうという興味深い企画です。シーガルの作品はかなりもろいので、貸し出すかどうかについては館内で慎重に議論がなされましたが、展覧会の意義や、単にスカル夫妻蔵であっただけでなく彼ら自身がモチーフとなっている当館のシーガル作品がその展覧会において果たす中核的な役割、また、輸送や展示についての相手方の信頼できる対応などを考慮し、お貸しするという結論に至りました。

 

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▲ 輸送用の箱に収まったロバート像

 

作品の梱包に際しては、当館の保存担当のN学芸員と美術品輸送業者のYさんとYさんとMさんが苦労して知恵を出し合い、さまざまな制約のもとで可能な限り安全な方法を探りました。作品はロバート像、エセル像、赤の絵、ソファーの4ピースから成るのですが、特に注意が必要なのは石膏製のロバート像とエセル像です。立像であるロバート像は、背面の起伏に合わせていくつもクッションを当てて横に寝かせ、比較的固くてしっかりしている胸と太ももの2ヶ所にベルトを締めて固定しました。

 

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▲ 輸送用の仮の椅子に固定されたエセル像

 

衣服の端などあちこちに薄い出っ張りがあり、さらに、足を組んで座っているというかなり複雑な形のエセル像には、ロバート像以上に神経を使いました。ソファーに座って安定している普段の状態になるべく近づけるため、輸送用の仮の椅子を作り、そこに座らせることにしました。そして、グラつき防止のため、ちょうど飛行機の客席のシートベルトのようにして、こちらも2本ベルトを締めました。こうして神経の磨り減るようなエセルの据え付け作業を終えて疲労コンパイした私たちの目には、サングラスをかけてすまし気取った彼女が、「あなたたち、よくやってくれたわね。ありがとう♥」と優しく微笑みかけてくれているように見えたものです(たぶん錯覚ですが)。

 

そして、梱包を終えたシーガル作品全4ピースが、ニューヨークへ向けて旅立っていきました。成田空港やJFK空港での作業の様子などもできれば画像でお見せしたいのですが、セキュリティ上の都合でそのあたりは割愛させていただきます。どうかご容赦を。

 

今回の貸出しで梱包からすべてクーリエとして立ち会った私は、作品の安全のことを最後まで本当に心配していたのですが、みんなで心と力を合わせた結果、無事にアクアベラ画廊での展示を終えることができました。5月末には今度は作品をアクアベラ画廊から持って帰ってこないといけませんが、ひとまずはめでたし、めでたしです。有意義な展覧会にご協力でき、さらには、その作品がその展覧会で中核的な役割を担っているということで、当館としても大変に意味のある貸出しだと思っています。

 

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▲ アクアベラ画廊での展示(照明等は未完了)。壁面や床面が違うので、当館でのいつもの展示とはいくぶん異なった趣を見せています。

 

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▲ スカル展の図録。当館のシーガル作品が表紙になっています。

 

スカル展はアクアベラ画廊(Acquavella Galleries,  18 East 79th Street, New York, NY 10021 USA,  http://www.acquavellagalleries.com)で5月27日まで開催中です(日曜閉廊)。展覧会はまだ始まったばかりですが、さっそくニューヨークの美術界で評判になり、『ニューヨーク・タイムズ』紙にも大きく取り上げられています(http://www.nytimes.com/2010/04/10/arts/design/10scull.html?scp=1&sq=scull%20acquavella&st=cse)。会期中にニューヨークに行かれる方は、ぜひアクアベラ画廊出張中の当館のスカル夫妻の仕事ぶりをご覧になってきてください!
(T.O.)
 

 

芋銭展オープン!

2010年04月09日
 

 「小川芋銭と珊瑚会の画家たち」展がオープンしました。
 4月8日午後から開会式が行われました。幸い快晴にも恵まれ、多くの方にお集まりいただきました。展覧会で取り上げた作家のご遺族の方も数名来館され、和やかな雰囲気でした。河童のお化けは茶目っ気があって面白そうというご意見もいただきました。

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△開会式の様子

 今回は、「珊瑚会」の活動の一端を取り上げていて、大正期の新しい感覚の日本画が見られます。また、木村定三コレクションの芋銭作品を全公開しますのでぜひ御覧下さい。会期中大幅な展示替えがありますので、前期・後期と2度御覧いただくことをおすすめします。

 また、記念講演会も開催されます。
 4月24日(土)午後1時半から、京都国立近代美術館長 尾崎正明氏が「大正期日本画の動向 小川芋銭を中心に」と題して講演されます。申し込み不要ですので皆様ふるってご参加下さい。(HK)

間もなく開催される「小川芋銭と珊瑚会の画家たち」展。
担当の学芸員は、その準備のために大忙し!です。この展覧会は当館のオリジナル企画で、巡回はしないため、他の美術館の学芸員さんたちと仕事を分担することがないのです。
この展覧会を担当するK学芸員は、夕方まで東京都内の美術館で作品を集荷し、夜は出版会社でカタログを校正するという過酷な日々を一週間ばかり過ごしたもよう…(お疲れ様です!)
というわけで、大忙しの担当学芸員に代わって、先週東北方面の美術館の集荷に行ってきました!個人的にはこの仕事、かなり好きです。自分の足ではなかなかいけない美術館を実際に訪れ色々と知ることができ、また学芸員さんたちとも面識を得ることができます。

さて、2泊3日の出張、初日は秋田県立近代美術館です。朝5時起き、名古屋→バス→小牧空港→飛行機→秋田空港→バス→秋田駅→電車→横手駅→トラックといった行程で、お昼過ぎにようやく美術館に到着しました。3月といってもまだまだ寒く、畑は一面厚い雪で覆われていました。借用時には、作品を貸してくださる美術館の学芸員さんと一緒に作品の状態を確認します。掛け軸の日本画の状態チェックは久々だったので、ちょっと緊張しましたが、ほとんど傷みがなく、状態の良い作品ばかりで、無事終了しました。ほっ・・・

2日目はトラックで移動して、日光東照宮のまさに隣にある小杉放菴記念日光美術館に行きました。日光に入ったあたりから雪が降り出し、一面雪景色。自然に囲まれた美術館で、庭にはサルや鹿が迷い込むことがあるとか。

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↑小杉放菴記念日光美術館正面

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↑日光の雪景色

この美術館では4月17日?5月30日まで「日光X会津 小杉放菴と喜多方美術倶楽部の人々」という展覧会が開催されます。大正時代に会津にあった美術後援会の喜多方美術倶楽部には、当館の展覧会で取り上げる珊瑚会のメンバーが中心的に関わっていたそうです。同じ時期に、関連する内容の企画展が開催される偶然に感動です!

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↑「日光X会津 小杉放菴と喜多方美術倶楽部の人々」展チラシ

さて、3日目は茨城県近代美術館です。茨城出身の芋銭の作品は、やはりこの美術館に多く所蔵されています。今回は特別に協力をしてくださり、貴重な作品をたくさん貸してくださいました。借用する作品が多かったので、作品の点検には、茨城から3名の学芸員さんが立ち会ってくださり、当館からも課長が合流しました。

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↑茨城県近代美術館

このように、ひとつひとつ大切な作品をお借りして、ようやく開催することができる展覧会。展覧会では、作品をじっくり鑑賞していただくことが一番ですが、作品がどこからやってきたのかを知るのも、結構面白いものです。ここで紹介した美術館からお借りした作品は、ぜひ会場で確かめてみてください。

(MRM)