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スカル夫妻のニューヨーク出張

2010年04月15日

当館が所蔵するジョージ・シーガル(1924-2000年)の立体作品《ロバート&エセル・スカルの肖像》(1965年)が今ニューヨークに行っています!

 

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▲ ジョージ・シーガル 《ロバート&エセル・スカルの肖像》 1965年 油彩・画布、石膏、木製布張り椅子 181.0 x 143.5 x 143.0 cm 愛知県美術館

 

ニューヨークでも指折りの大画廊アクアベラで、「ロバート&エセル・スカル――コレクションのポートレート」という展覧会が開催中で(2010年4月12日-5月27日)、それに出品しています。他の都市の例はよく知りませんが、ニューヨークではある程度のレベル以上の画廊だと、国内外の美術館から作品を借りて企画展をすることも別に珍しくはありません。

 

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▲ アクアベラ画廊。メトロポリタン美術館のすぐ近く、79丁目の5番街とマジソン街の間にあります。

 

ロバートとエセルは現代美術の重要なコレクターだった夫妻で、今回のアクアベラ画廊のスカル展は、彼らが所有していたけれども今は散逸しているいろいろな作品を一堂に集め直そうという興味深い企画です。シーガルの作品はかなりもろいので、貸し出すかどうかについては館内で慎重に議論がなされましたが、展覧会の意義や、単にスカル夫妻蔵であっただけでなく彼ら自身がモチーフとなっている当館のシーガル作品がその展覧会において果たす中核的な役割、また、輸送や展示についての相手方の信頼できる対応などを考慮し、お貸しするという結論に至りました。

 

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▲ 輸送用の箱に収まったロバート像

 

作品の梱包に際しては、当館の保存担当のN学芸員と美術品輸送業者のYさんとYさんとMさんが苦労して知恵を出し合い、さまざまな制約のもとで可能な限り安全な方法を探りました。作品はロバート像、エセル像、赤の絵、ソファーの4ピースから成るのですが、特に注意が必要なのは石膏製のロバート像とエセル像です。立像であるロバート像は、背面の起伏に合わせていくつもクッションを当てて横に寝かせ、比較的固くてしっかりしている胸と太ももの2ヶ所にベルトを締めて固定しました。

 

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▲ 輸送用の仮の椅子に固定されたエセル像

 

衣服の端などあちこちに薄い出っ張りがあり、さらに、足を組んで座っているというかなり複雑な形のエセル像には、ロバート像以上に神経を使いました。ソファーに座って安定している普段の状態になるべく近づけるため、輸送用の仮の椅子を作り、そこに座らせることにしました。そして、グラつき防止のため、ちょうど飛行機の客席のシートベルトのようにして、こちらも2本ベルトを締めました。こうして神経の磨り減るようなエセルの据え付け作業を終えて疲労コンパイした私たちの目には、サングラスをかけてすまし気取った彼女が、「あなたたち、よくやってくれたわね。ありがとう♥」と優しく微笑みかけてくれているように見えたものです(たぶん錯覚ですが)。

 

そして、梱包を終えたシーガル作品全4ピースが、ニューヨークへ向けて旅立っていきました。成田空港やJFK空港での作業の様子などもできれば画像でお見せしたいのですが、セキュリティ上の都合でそのあたりは割愛させていただきます。どうかご容赦を。

 

今回の貸出しで梱包からすべてクーリエとして立ち会った私は、作品の安全のことを最後まで本当に心配していたのですが、みんなで心と力を合わせた結果、無事にアクアベラ画廊での展示を終えることができました。5月末には今度は作品をアクアベラ画廊から持って帰ってこないといけませんが、ひとまずはめでたし、めでたしです。有意義な展覧会にご協力でき、さらには、その作品がその展覧会で中核的な役割を担っているということで、当館としても大変に意味のある貸出しだと思っています。

 

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▲ アクアベラ画廊での展示(照明等は未完了)。壁面や床面が違うので、当館でのいつもの展示とはいくぶん異なった趣を見せています。

 

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▲ スカル展の図録。当館のシーガル作品が表紙になっています。

 

スカル展はアクアベラ画廊(Acquavella Galleries,  18 East 79th Street, New York, NY 10021 USA,  http://www.acquavellagalleries.com)で5月27日まで開催中です(日曜閉廊)。展覧会はまだ始まったばかりですが、さっそくニューヨークの美術界で評判になり、『ニューヨーク・タイムズ』紙にも大きく取り上げられています(http://www.nytimes.com/2010/04/10/arts/design/10scull.html?scp=1&sq=scull%20acquavella&st=cse)。会期中にニューヨークに行かれる方は、ぜひアクアベラ画廊出張中の当館のスカル夫妻の仕事ぶりをご覧になってきてください!
(T.O.)