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「小川芋銭と珊瑚会の画家たち」展記念講演会

2010年04月26日

4月24日(土)、「大正期日本画の動向―小川芋銭を中心に」と題して講演会が開催されました。講師は京都国立近代美術館館長の尾崎正明さん。

長く東京の国立近代美術館におられた尾崎さんは、1993年に東京近美と当館で開催した「小川芋銭展」の主担当で、当時学芸員の仕事を始めたばかりだった私は、兵庫県の所蔵家への作品返却に同行させていただいたことがあります。

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▲講師の尾崎正明氏

 

ご講演の初めには、93年の展覧会の折、芋銭の大コレクターとして知られていた木村定三氏のお宅へご挨拶に伺ったときのエピソードを。床の間に掛けた《紆泉道人洗面之池》を指して「この絵の中に美人が隠れているが、わかるか?」という木村氏の問いに答えられたことで出品依頼が許され、それが後の当館へのコレクションご寄贈にもつながったわけです。

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▲この部分が正解?

 

その後は演題のとおり、横山大観・菱田春草らの〈朦朧体(もうろうたい)〉や、速水御舟・小茂田青樹らの細密描写といった当時の新動向が紹介され、さらに芋銭と同様に洋画から日本画への転向者や漫画的要素をもつ画家も多かったことをご説明された上で、芋銭の特異さについてのお話となりました。

河童伝説で知られる茨城県牛久で農業にも従事していた芋銭の作品には、自然の中での人間の営みへの深い共感と、「土」の匂いとそこから育まれた豊かなイメージがある、と尾崎さんはおっしゃいます。田園風景や無人の自然の向こうに河童や狐火が見えるのは芋銭にとってごく当然の感覚であり、それは古代中国の想像の世界である「桃花源」(桃源郷)を描いても実感として表されているとのこと。

幅広いモティーフをもつ芋銭の絵画世界の核心をつくお話で、会場からのご質問を含め予定時間をかなり越える、充実した講演会でした。

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▲会場の様子

 

講演の最後に触れられた「桃花源」をテーマとする作品は、展覧会後期の27日から展示されます。前期にご覧いただいた皆様も、ぜひまたお越しください。 (T.M.)