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6月12日(土)から、安城市民ギャラリーで移動美術館が始まっています。安城市民ギャラリーは、安城市東部に位置する安城城址と安城城址公園に隣接しています。この一帯には、安城市歴史博物館、安祥公民館、安城市埋蔵文化財センターがあり、「安祥文化のさと」として、歴史と美術を楽しむ文化ゾーンとなっています。
 

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↑安城市民ギャラリー外観
 

愛知県美術館のコレクションを、広く県民の皆様にご紹介する移動美術館は、今年で17年目にあたり、年に一度、県内各地で開催してきました。今年は、「近代絵画に見る人と自然」をテーマに、愛知ゆかりの作家を含む近代日本洋画から現代美術までの洋画、日本画、版画、彫刻の国内外の作品52点をご紹介します。(出品作品リストは、愛知県美術館ウェブサイトでご確認できます。)

 

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↑展示会場入口
 

明治期に外光派として新しい絵画の作風を広めた黒田清輝や久米桂一郎といった近代日本洋画家たちを始め、愛知県ゆかりの伊藤廉、鬼頭鍋三郎、荻須高徳などの洋画家たち、また、山本鼎や恩地孝四郎らを始めとする近代から現代に至る版画作品をご紹介しています。今回の移動美術館では、版画作品を多く展示しています。これは、これまで安城市民ギャラリーに併設する創作実習室で、版画制作のワークショップが多く行われてきた経緯を踏まえたもので、普段から鑑賞や制作で市民ギャラリーを利用されている皆様に、版画作品により親しんでいただく機会になればと特集しました。また、日本画をご紹介する会場では、安城市出身の石川英鳳を始め、中村正義、星野真吾など愛知ゆかりの日本画家を紹介しています。石川英鳳の作品の前では、多くの方が足を止めて話に花を咲かせている様子が見られました。


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↑展示室A 海外作家の作品も展示

 

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↑展示室B 版画の様々な技法による作品を展示

 

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↑展示室C 愛知ゆかりの日本画家の作品を展示


展示期間中は、学校団体鑑賞会や展示室での展示解説会(ギャラリートーク)、子供から一般向けのワークショップなど様々な事業を行います(お問い合わせ:安城市教育委員会生涯学習課文化振興係TEL(0566)75-1151)。先日の20日(日)には、隣接する歴史博物館のロビーで、オペラ歌手を招いてのピアノ伴奏によるコンサートが行われました。プッチーニのオペラ「蝶々夫人」からの曲目など、愛知県ご出身で国内外で大いに注目されているオペラ歌手による歌声に、実に200名を越える方が酔いしれました。その興奮冷めやらぬなか、聴衆の皆様には、展示室に足を運び作品を鑑賞していただきました。


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↑ロビーコンサート(左)テノール宮崎智永 (右)ソプラノ二宮咲子 ピアノ西尾由希 広々とした歴史博物館ロビーに美声が響き渡りました
 

また、展示会場の外には、出品作品の人気投票が行われています。鑑賞した後、どんな作品がお気に入りか、投票者の年代別のシールを貼って投票するものです。一番人気は、いまのところ、久米桂一郎《秋景》のようですが、愛知県ゆかりの鬼頭鍋三郎や石川英鳳の作品も健闘しており、どの作品が安城市民の皆様の一番のお気に入りになるのか最終日まで楽しみです。

 

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↑久米桂一郎《秋景》(油彩1892年)
 

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↑お気に入りの作品の投票


まだ会場をご覧になられていないかたは、是非とも足をお運びいただき、お気に入りの作品を見つけていただければと思います。何度ご鑑賞いただいても無料です。皆様のご来場をお待ちしています。(M.F.)
 

先日6月19日(土)、現在の所蔵作品展に展示されているアンリ・マティスの『ジャズ』について、コレクショントークしました。

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↑コレクショントークの様子

 

マティスの制作において非常に重要とされるこの『ジャズ』は、主に晩年に制作するようになった切り紙絵の手法を用いたオリジナル作品を、1947年にステンシルで印刷して発行した挿絵本です。なかには20点の挿絵があります。

切り紙絵というのは、助手が色を塗った紙をマティスが切り抜き、それを紙の上で構成して貼り付ける手法です。この制作方法は、もともと1910年代のバレエの舞台装飾や、1930年代のバーンズの壁画など、大規模な作品を制作する際に用いられました。その後この『ジャズ』の制作を機に、切り紙絵はマティスの主な制作を担うようになりました。

作品のタイトルは『ジャズ』というタイトルがつけられていますが、もとは『サーカス』というタイトルが考えられており、20点の挿絵のうちの多くが、空中ブランコ、曲馬、綱渡りなど、サーカスを題材にしています。

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↑ 《道化師》(右)、綱渡りをする人物を表現した作品(左)

 

トーク中、「数点の作品には白い空白がありますが、これは何ですか?」という質問がありました。

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↑空白のある作品、右の挿絵は《イカロス》

 

この空白に、マティスは自分で書いた文章を入れました。展示しているのは挿絵だけがセットになった版ですが、画家の手書きの文章が全て入った版もあります。
マティスは切り紙絵の制作と平行して、1930年代からたくさんのデッサンや、デッサンによる挿絵を制作しました。それまで色彩表現を重視していたマティスですが、この時期のデッサンには豊かな表現力が花開いています。

切り紙絵は助手によって彩色され、それを画家が切り抜くという手法なので、マティエール感や、消したり書き足したりした制作の痕跡を残す油彩に比べると、どうしても画家のオリジナルの制作行為が見えにくいものです。『ジャズ』では、そうした切り紙絵の手法に、マティスのみずみずしい筆跡を加えることで、全体としてより豊かな表現を獲得しています。

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↑個人的なお気に入りは、マティスが手書きした図版一覧。個々の作品の図柄とタイトルが記されています。ゆるーいにょろにょろと書かれたような図柄は、なんともいえない味わいがあります。

 

さて、今回のコレクショントークでは、最後に展示室を移動し、アルプやミロのシュルレアリスムの作品が展示されている部屋にご案内しました。アルプやミロの生命体的なフォルムを示す作品と、当時アンドレ・マッソンなどのシュルレアリスムのアーティストともの交流を持っていたマティスの作品には共通性を感じることができます。

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↑ミロとアルプの作品

 

マティスの『ジャズ』は個人的にとても好きな作品です。華やかな色彩構成、有機的なフォルムの重なり、繰り返されるリズミカルな装飾モティーフなど、まさに音楽を聴くような心地で楽しく見ることができます。

マティスは『ジャズ』に添えた手書きの文章のなかで、次のように書いています。

喜びを空のなかに、木々のなかに、花々のなかに見出すこと。見ようとする気を起こしさえすれば花はいたるところにある。

マティスの『ジャズ』のなかに、皆様のちょっとした喜びが見つかればうれしく思います。
最後に、雨が降る悪天候にもかかわらず、このコレクショントークにお越しくださいました皆様、ありがとうございました。まだご覧になられていない方もぜひ!美術館に足をお運びください。
(MRM)
 

 美術館に就職した学芸員や保存担当学芸員、あるいはその助手さん達が最初に苦労することに、この「さらし」の結び方の習得というのがあります。

 実はいろいろな結び方があるのですが、絶対というルールが2つだけあります。一つはもちろん加重がかかっても絶対に緩まない事。もうひとつは一カ所を引っ張れば(ほとんどの場合、短く垂れる方になりますが)、すぐにほどけることというこの2つのルールです。

↓すぐに解ける結び
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 まず2番目のルールを達成できる結び方を覚えるのも一苦労ですが、さらにその結び方で1番目のルールもきちんと達成できる様になるまで、結構、繰り返しの練習が必要です。
 作品を扱う時は、「さらし」などで固定されている時以外は、どのような場合でも必ず手を添えるのが鉄則です。片手で作品を支え、片手で紐を解こうとした場合、誰かがこの「結び」のルールを破っていたら、結構、大変なことになってしまいます。

 私も新人の頃、外部の美術輸送専門技術者の方に「だから素人に現場に紛れ込まれると困るんだよな」と言われた事があります。どんな現場もそうやって先輩方にいろいろ叱られながら、みんな育ってゆくんですよね。
その後、私はある一人の美術輸送専門技術者の方にまとわりつき(残念ながら今はもう、その方は退職されてしまいましたが)、いろいろなやり方を教えて頂きました。これはその時、最初に教えて頂いた結び方です。

↓ひとつのやり方

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 ところでこの結び、この間、本を読んでいた時、お着物の仮紐の結び方と同じ原理なんだなと気がつきました。着物の仮紐は、着物を着たら襦袢に使った紐を着付けた着物の合間から、帯が固定されたら着物に使った紐を固定した帯の下から、スルスルと上を壊さないように抜かなければならないので、やはりしっかり固定ができて、しかもすぐに解ける紐結びにしなければならないというわけです。

 他にも仕事の上で習い覚えた紐結びが、日常の中で役に立っていることがいくつかあります。それはまたこのシリーズでおいおいと。
(N.N.)
 

今日6月4日、「田原市博物館の名品による 渡辺崋山展」がオープンしました。

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↑展示室1で行われています。

 

また、「渡辺崋山展」に関連して、所蔵作品展の中で、「和魂洋眼」と題した特集展示を併催しています。
崋山に続く時代の画家たちにおける、日本絵画と西洋絵画の間での葛藤、さらにそうした区分を超えていく営みを、所蔵作品を通してご紹介しています。
改めて、「うちの所蔵作品は層が厚いなあ・・・」との内部からの自画自賛(?)の声もあがっている、充実した展示となっています。

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↑展示室2・3にて開催中。

 

つづく所蔵作品展も、マティスの『ジャズ』など、見ごたえ十分な内容です。

さらに、展示室7では、このたび愛知県とオーストラリア・ビクトリア州の友好提携30周年を記念して、ビクトリア州から愛知県に贈られた、アボリジニのアーティストの作品をはじめとする現代版画の展示も併催されています。

盛りだくさんな展示は、いずれも7月11日(日)まで。ぜひご覧下さい。(M.Ma)