2010年07月12345678910111213141516171819202122232425262728293031

 ところでこの「さらし」、使えば当然汚れます。汚れれば洗って使えばいい、というのがまた「さらし」のいい所ではあるのですが、これがまたなかなか厄介なのです。
 「さらしの話 1」で紹介しました通り、「さらし」は普通、35cm弱ぐらいの幅で売られています。美術館では用途に合わせて、これをこの幅で使ったり、半分や3分の1幅に裂いたり、時にはもっともっと細く裂いて使う事もあります。
 で、これをいきなり洗濯機に入れて洗うとどういうことになるでしょう?洗い終わって、洗濯機から出てくる頃には、こんがらがって、どこから手をつけていいのかわからない代物と化してしまいます。
 

 それで私どもは、このように緩く巻いて、あるいは蛇腹に折って、中央をきつく輪ゴムで縛ってから洗濯します。

↓洗濯前

002洗濯前.jpg

 

 当館ではこの作業を、現在、友の会の中の「所蔵品管理サポート部会」のみなさんがして下さっています。

↓さらしまき

001さらしまき.jpg

↓物干

004物干.jpg

 

 洗い上がったものも、この通り、皺をのばしてきっちり巻き込んで現場に提供して下さいます。

↓洗濯後

003洗濯後.jpg

 さらしは「さらしの話 1」でもお話しましたとおり、紐の様に一部分に圧力を掛けるのではなく、できるだけ分散させるために使うのですから、このような事前の手間ひまが、実は作品保護の為に重要な意味を持っているのです。
 また棚のフランケンシュタインも、シワシワの棒状のさらしと、幅いっぱい、ピンと張ったさらしとでは、どちらがより効果的であるかといえば明々白々です。さらしを巻くのは学芸員ですが、その手間の効果が60%なのか、100%なのか、このサポート部会のみなさんの、美術館に対する惜しみない労力によって大いに変わってくるということです。
(N.N.)

ニューヨークのアクアベラ画廊での「ロバート&エセル・スカル――コレクションのポートレート」展(2010年4月15日の当ブログ「スカル夫妻のニューヨーク出張」参照)に貸し出していたジョージ・シーガルの《ロバート&エセル・スカルの肖像》が、展覧会を終えて愛知県美術館に無事に帰ってきました。

 

004img_2106.jpg


▲ ジョージ・シーガル 《ロバート&エセル・スカルの肖像》 1965年 油彩・画布、石膏、木製布張り椅子 181.0 x 143.5 x 143.0 cm 愛知県美術館 (アクアベラ画廊「ロバート&エセル・スカル」展での展示)


 

005img_2111.jpg

▲ 日本への輸送のため、再び梱包されるエセル像


ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館、フィラデルフィア美術館、デトロイト美術館など、名立たる美術館から作品を集めたこの展覧会はとても盛況だったようで、『ニューヨーク・タイムズ』、『アートニューズ』、『ヴォーグ』など、メディアにもたくさん取り上げられました。そんなニューヨークのスカル展で、当館のシーガル作品は広報面でも大活躍しました。

 

001exh.cat. cover.jpg

▲ スカル展図録

まず、以前にもお知らせしましたが、展覧会図録の表紙になりました。また、アクアベラ画廊のほか、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館なども集まるマンハッタンのアートなエリアに設置された数十本のバナー広告にも使われました。

 

002img_1174.jpg

▲ メトロポリタン美術館のすぐそば、五番街と79丁目の交差点 (画像提供:アクアベラ画廊)
 

003img_1177.jpg

▲ ホイットニー美術館のあるマジソン街 (画像提供:アクアベラ画廊)


その他、同様のポスターなども作成されました。今回のシーガル作品貸出しで、Aichi Prefectural Museum of Artも、ニューヨークで少しは有名になったことと思います。スカル夫妻、お疲れ様でした! (TO)
 

レームブルック片付け

2010年07月24日

愛知県美術館10階の「ラウンジ」と呼ばれる八角形の空間には、開館以来レームブルックのブロンズ彫刻《立ち上がる青年》がたいてい展示されています。この作品も「あいちトリエンナーレ2010」のために片付けました。《立ち上がる青年》は人力で持ち上げられるほど軽くないので、作業もたいへんです。この彫刻は3次元の揺れにも対応する専用の免震台に乗っているので、まずは免震台が動かないように固定することから始め、いくつかの作業工程を経て、収蔵庫内の予め確保しておいたスペースに収納しました。重い作品の移動は見ているだけでも疲れるものです。
 (H.F.)

 001dsc_0167.jpg
↑免震台を固定しています

 002dsc_0168.jpg
↑作品を移動します

 004dsc_0173.jpg
↑トリエンナーレが終わるまで収蔵庫でしばらくお休みです

 003dsc_0170.jpg
↑残った免震台を片付ければ作業終了
 

愛知芸術文化センター10階の愛知県美術館企画展示室、所蔵品展示室での展示は7月11日で一旦終了しました。そして8月に始まるあいちトリエンナーレ2010の開催に向けて準備が始まっています。
その最初として壁のお化粧直しを行いました。これまでは壁から作品が全く消えることはなかった所蔵作品の展示室ですが、今回は開館以来初めてすべての展示室から一旦作品を撤去して、汚れの目立ってきた壁の塗り直しを行いました。

 

001壁塗り.jpg

限られた時間内に作業を行うために、多数の作業員が従事して作業は行われました。さすがに広い壁も見る見るうちに塗られていくのでした。とはいえ高い壁は6メートル近くもあり、また可動壁も含めて全て塗り替えるため大変な作業で5日間を要しました。

 

002展示室5.jpg

展示室によっては普段可動壁で仕切られ、作品が壁に架かった状態しかご覧になれないのですが、きれいにお化粧直しが終わった後は、この写真のように可動壁が全て収納され、広々とした空間が広がっています。この展示室5では動物彫刻の三沢厚彦さんとインスタレーション豊島秀樹さんのコラボレーションの展示が予定されています。この大きな部屋を二人だけで使われます。どんな展開になるのか乞うご期待!(ST)
 

所蔵作品展の展示室には作品こそ変わるものの常に100数十点の作品が出ていますが、展示室が「あいちトリエンナーレ2010」で使われるため、作品を収蔵庫に片付けなくてはなりません。1992年の芸術文化センターの開館以来、所蔵作品展の展示室の作品をすべて収蔵庫にしまったことは一度もなかったように思います。その準備として、収蔵庫の整理をしました。
基本的には、ラックと呼ばれる格子状のスクリーンに掛かっている絵を移動し、戻ってくる絵を掛けるスペースを空けておいてやるという作業です。

 

 001dsc_0128.jpg

↑左の作品を左いっぱいに寄せて

 

 002dsc_0129.jpg

↑右の作品をその上に掛けると、右側に大きなスペースが

 

 003dsc_0131.jpg

↑整理が終わったら、地震対策としてさらしで作品を固定


 004dsc_0132.jpg

↑拡大です

 

なんとか準備は整ったので、あとは戻ってくるのを待つばかりです。はたしてすべての作品がうまく納まるでしょうか。
(H.F.)
 

ライオンのお出かけ

2010年07月13日

こちらのライオン(本名は《ライオン(Animal 2008-01)》、三沢厚彦の作品です)は、去年の春にアニマルズinAACで愛知芸術文化センターに初めて来て以来、愛知県の議事堂へも出張展示に行ったりと大忙しでした。
そしてこのたび、またもや遠くへお出かけする事になりました。行き先はなんと九州、鹿児島県。霧島アートの森で開かれる「ANIMALS in KIRISHIMA 三沢厚彦展」への出展が決まったからです。

 

001lion_photo1.jpg

↑「ぼく、鹿児島の展覧会に行くんだよ」と嬉しそうなライオン。

 

002lion_photo2.jpg

↑ライオンを無事に鹿児島までお送りするため、様々な機材が用意されます。 

 

003lion_photo3.jpg

↑さあ、お出かけに向けてお着替えしますよ。(梱包、とも言います)

 

鹿児島へ向けて輸送の準備をしていると、それを見ていた周りの方々から「ライオン、行っちゃうんだ、寂しくなるなあ」という声が聞かれました。けれども、鹿児島に行けば会えますし、8月後半より始まるあいちトリエンナーレではたくさんの動物達がよりパワーアップして当館に登場する予定です。どうぞ会いに来てくださいね。  (F.N)

 この「さらし」、地震対策としても大活躍です。

 

001dscn1456-1.jpg

 

↑なんか棚がフランケンシュタインのようになっていますが、これは収蔵庫の掛け軸類が入っている棚です。阪神淡路大震災の後、全国の美術館が協力し合い、被害のあった美術館博物館の支援をしながら、被害状況について詳細な調査を行いました。どういう展示、どういう収納方法がされていたものが、どういう被害を受けたのかということを調べ、大変貴重なデータを蓄積しました。
 そしてやはり桐箱にきちんと収納された状態の物が、比較的被害が少なかった事、また横揺れに対し、このような「さらし」であっても充分に落下防止になっていることなどを客観的なデータとして導き出す事ができたのです。

 

002dscn1481-1.jpg

 

003dscn1483.jpg


↑ラックに掛けられた作品も、V字に「さらし」を掛ける事で、落下防止のみならず、ラックに直角の揺れが来た時の、作品によるラック面への「叩きつけ」緩和にも役立ちます。
 けして高価な器具を購入するばかりが、地震対策ではないのですね。手間はかかりますけど。(新人さん達の「さらし」結びのトレーニングにはいいですが)

(N.N.)

6月27日(日)、「渡辺崋山の絵画と生涯」と題し、記念講演会が行われました。講師は、田原市博物館学芸員の鈴木利昌さんです。
田原において、崋山と彼にまつわる画家たちに関する数々の展覧会を手がけてこられた鈴木さんの博識に基づき、崋山の生涯と絵画制作について、丁寧なお話をいただきました。
崋山の精力的、情熱的な人となりや、彼を囲む当時の環境が具体的によくわかり、崋山に対する親しみが増す内容でした。

 

001ライブラリ - 3371.jpg

↑会場は、熱心に聴講される方でにぎわいました。

 

「田原市博物館の名品による 渡辺崋山展」は、いよいよ来週の日曜日、7月11日までです。
ご覧いただいた方からは、崋山の絵画の幅広さを初めて知ったとの声を多くいただいています。
前にも書きましたが、ふだん田原市博物館を訪れても、これほどの規模で崋山の絵画をまとめて見る機会はなかなかありません。名古屋の中心部で崋山絵画をお楽しみいただけるこの展覧会、ぜひお見逃しなく。(M.Ma)