2010年09月123456789101112131415161718192021222324252627282930

愛知芸術文化センター、そしてその周辺の街は、まさに「都市の祝祭」!と、トリエンナーレで盛り上がっていますが、愛知県美術館の内側では、次の展覧会「美の精髄 愛知県美術館の名品300」の準備が粛々と進められています。
 

展覧会のタイトルにもあるとおり、当館のベスト300の作品が展示される予定です。「ベスト300って、何だか多いな」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、現在当館のコレクション点数は約7600点。その中から300点選ぶのもなかなか至難の業で、担当者も頭を悩ますところ。


さて、この展覧会のチラシやポスターといった広報物が出来上がりつつあります。このブログをご覧の皆様に、一足先に公開です。

 

001dsc01947美の精髄.jpg

↑広報物を一部ご紹介

 

当館の目玉作品はなんといってもクリムトの《人生は戦いなり(黄金の騎士)》ですが、意外なことに展覧会のポスターやチラシのメインヴィジュアルに使用されるのは初めてのこと。今回は画面中央の黄金の騎士をぐっとクローズアップした仕上がりです。


実はこのクリムトの作品は、世界中の美術館でクリムト関連の展覧会が開催されるたびに引っ張りだことなる非常に重要な作品。現在もハンガリーのブダペスト美術館で開催中の展覧会「裸の真実:グスタフ・クリムトとウィーン分離派の始まり1895?1905」に出品され、展覧会のハイライトとしての重責を担っています。この展覧会の会期は9月22日から来年1月9日までですが、全期間貸し出されると当館の名品展に間に合わない!クリムトがない名品展なんて名品展ではない!というわけで、こちらの展覧会に間に合うように11月には当館に帰ってきます(ほっ)。一方、ブタペスト美術館からは、半期だけでも展示したい!遠く離れた日本から作品の輸送費がどんなにかかろうとも展示したい!という意気込みが伝わってきます。つまりそれだけ貴重な作品だということで、何だか誇らしい気持ちになります。


当館の展覧会は11月26日(金)からと、もう少し先のことですが、当館の名品が8室の展示室やロビーなど美術館の全空間に並ぶのは、必見です!ぜひ足をお運びください。また今回の展覧会の関連事業として、当館全学芸員が一人ひとりお勧めの1点を選び、その作品を解説する説明会を行います。こちらも楽しみにしてください。(この関連事業の詳細は展覧会チラシをご覧いただくか、当館ウェブサイトの「企画展関連イベント」のページに後日掲載されますで、チェックしてみてください)

(MRM)
 

 クリムトが学んだのは、美術アカデミーではなく工芸美術学校でした。前者が画家や彫刻家といった芸術家を輩出する場所だとしたら、後者は一人前の職人を養成する学校です。そこを卒業したクリムトは、仲間と3人で芸術カンパニー(小さな工務店のようなもの)をつくり、建築装飾を請け負います。当時のウィーンは近代化の只中で、古い城壁を壊して環状道路(リンクシュトラーセ)を作り、その道路沿いには公共建築物などが次々と建てられていきました。その中でクリムトが関わったのは、ブルク劇場と美術史美術館の装飾でした。今回は美術史美術館を覗いてみましょう。

 

001?khm.jpg

↑美術史美術館正面

 

 正面から入り階段を上った2階の部分にその壁画があります。〈古代ギリシア美術〉や〈エジプト美術〉などを寓意的・擬人的に描いたものです。居並ぶ泰西名画を目当てにこの美術館を訪れる多くの来館者には、ほとんど気付かれることはありません。

 

002?.jpg

↑開口部のあるアーチによって生じたスパンドレル(三角小間)と呼ばれる壁面を中心に描かれています。

 

003?.jpg

004?.jpg

↑〈初期イタリア美術〉:フィレンツェのクアトロチェント(アーチ左側)、聖告の天使(アーチ右側)、ダンテの胸像と少年(柱間)
*上の画像は実写、下は複写(以下同じ)

 

005?.jpg

006?.jpg

↑〈エジプト美術〉:少女とホルスとトト(左柱の左)、ミイラ、彫像、壁画断片(柱間)
〈初期イタリア美術〉:フィレンツェのクアトロチェント(右柱の右)

 

007?.jpg

008?.jpg

↑〈初期イタリア美術(ヴェネツィアのクアトロチェント)〉:総督の姿で(左柱の左)
〈古代ギリシア美術〉:タナグラの少女(柱間)、ゴルゴンを付けニケをもつアテナ(右柱の右)

 

009?.jpg

010?.jpg

↑〈初期イタリア美術(ローマのクアトロチェント)〉:ティアラを持つ女性(アーチ左)

 

 この他にも〈初期イタリア美術(フィレンツェのクアトロチェント)、(フィレンツェのチンクチェント)〉の壁画もあります。特別に照明をしているわけでもなく、近寄って見ることもできない(フラッシュも届きません)ので、しっかりと見ようと思ったら双眼鏡を持参しましょう。
 (HF)

前回のブログ「所蔵作品はどこに?」に書いたとおり、トリエンナーレの期間中、当館の所蔵作品であるクリムトとピカソはそれぞれ海外に貸し出されます。クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》はハンガリーのブダペスト美術館で行われる展覧会「ヌーダ・ヴェリタス:グスタフ・クリムトとウィーン分離派の始まり1895−1905」に、ピカソ《青い肩掛けの女》はスイスのチューリヒ美術館で行われるピカソ展に出展されるのです。ともに世界中から高い注目を集める展覧会です。

 作品輸送の具体的な方法についてはクーリエ記事ですでに何度かご紹介していますが、じゃあ、どんなふうに貸し出しが決まるのか、その辺りは美術館外の方々にとって謎に包まれているのではないでしょうか。そこで今回は、作品貸出しの決め方についてQ&A形式でお話ししましょう。
 
Q.どんな作品なら貸し出し可能なの?
A.先方から借用依頼状を受け取って、とにかく最初に考えるのは作品のコンディションです。作品が修復中だったり非常に脆い状態だと館外には出せません。また、他の場所への貸し出しや愛知県美術館での展示がすでに決まっている場合も、残念ながら貸し出しはお断りさせていただきます。
 
Q.借りる側にはどんな条件がありますか?
A.当然ながら、借用を希望する側についても色々確認させていただきます。例えば施設面。大事な作品ですのでどんなところに展示されるのかはやっぱり気になります。展示室の温湿度の管理や防犯対策、防災対策、搬入経路などをチェックします。
 
Q.展覧会内容も無視できないですよね。
A.展覧会内容が最も大事といえるかもしれません。所蔵作品を貸し出すのに値する企画内容かどうかみんなで検討します。例えば、今回のクリムト展のようにきちんとした研究に基づいた展覧会に出品すると、所蔵作品自体の価値も高まります。私達としても世界中の名画と共に所蔵作品が並べられる事はとても誇らしいですね!
 
 と、こんなふうに諸条件を検討して作品の貸し出しは決まります。しかし一番大きな意味を持つのは「なんとしてもこの作品を借りたい!」という企画を担当する学芸員の熱意かもしれません。また「○○を借りるには××を貸すべきか」といったスリリングな駆け引きが、所蔵作品をめぐって起こることもしばしば。その辺については、いつかまた、お話することにしましょう。
(F.N)

 現在、あいちトリエンナーレ開催中の愛知県美術館。トリエンナーレの展示のために、所蔵作品は収蔵庫に仕舞われていますが、それでも「今、所蔵作品はどこで見られるの」というありがたいお問い合せをいくつかいただいております。そこで今回は、トリエンナーレ期間中も見られる愛知県美術館の所蔵作品についてご紹介します。


 まず、田原市博物館のサテライト展示「愛知県美術館 所蔵作品による川瀬巴水展」(9月20日まで)がおすすめです。巴水は日本の津々浦々を訪ね歩き、その光景を美しい版画で表現した版画家です。大正から昭和にかけて活躍した巴水は「昭和の広重」とも呼ばれています。秋の田原で日本の名所巡り、いかがでしょうか。

 

001hasui.jpg

 

 また、10月23日から12月19日にかけて三重県立美術館で「愛知・岐阜・三重三県立美術館協同企画展 ひろがるアート」が開催されます。三重県立美術館、岐阜県美術館、そして愛知県美術館の所蔵作品で構成される展覧会です。三重県立美術館の学芸員さんの手腕が発揮されるこの展覧会、当館で行う所蔵作品展とはひと味、ふた味も違うかたちで愛知県美術館の所蔵作品が展示されます。大型の現代美術作品が数多く展示される予定ですので、愛知県美術館としてもどのようになるのかドキドキです。

 

002nevelson1.jpg

003nevelson2.jpg


↑ニーヴェルソンの巨大なオブジェも解体され、三重への輸送を待つばかりです。

 

 もちろん、これら以外にも全国各地の美術展に愛知県美術館の所蔵作品が出展されています。しかし、やっぱり気になるのは当館の代表作品であるクリムトやピカソの行方ではないでしょうか。実はクリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》もピカソ《青い肩掛けの女》も、トリエンナーレ期間中は海外に貸し出される予定です。これについては、次回のブログでお伝えします。
(F.N)
 

熊谷守一ビデオ制作中

2010年09月09日

現在、木村定三コレクションの中から熊谷守一を紹介するビデオを制作中です。


15分弱という短い番組ですが、ビデオ原稿をもとに編集者やレポーターの意見も取り入れて編集し、展示室等での撮影も行いました。次の段階はナレーターによるスタジオでの録音となります。

 

今回の番組は、岐阜県美術館をはじめご遺族の方からも資料を拝借して番組に盛り込むことができました。ご遺族のご自宅をお訪ねし、貴重な資料の中から当館のコレクションに関係あるものを選んで取り上げています。木村氏と熊谷との交友の一端を垣間見ることのできるものも含め、これまで紹介されていなかった資料もあるため、興味深い番組になると思います。

 

002初期の日本画展(1938).jpg

↑初期の日本画展の会場風景(個人蔵)

 

番組は、来年の春には芸術文化センター10階の美術館ビデオテークで御覧いただける予定です。

(HK)

 
 001これまで制作した番組のdvd.jpg
↑これまで制作した番組のDVD
 

愛知県美術館で鑑賞学習について共同で研究している現職の先生方と、滋賀県立近代美術館のワークショップの見学をしてきました。

滋賀近美は夏休みに毎年ユニークな子ども向けのワークショップのイベントを行っているというということで、駆けつけてきました。

 002まず子どもたちは「アート博士」のお話を聞きます。.jpg
▲ まず子どもたちは「アート博士」のお話を聞きます。

今年のワークショップは、動物や植物などをテーマにした常設展「夏休み子ども美術館 アートのぶつブツえん」の展示室を「サファリ」に見立てて、探検隊員になった子どもたちが、作品を鑑賞しながら探検する、というものでした。

 006解説ボランティアの方々と話しながら作品を見る子どもたち。.jpg
▲ 解説ボランティアの方々と話しながら作品を見る子どもたち。

展示室では、作品を見るだけではありません。
パネルで出題されるクイズに答えて、「怪盗ルパンダ」の狙っている「伝説の大海賊フックマ船長」が展示室に隠した財宝を見つけていきます。

 004作品のなかのトラが何を話しているのか想像して、みんなでクイズの正解を考える。.jpg
▲ 作品のなかのトラが何を話しているのか想像して、みんなでクイズの正解を考えています。

 005全てのクイズをクリアすると、「フックマ船長」の財宝である伝説の不死鳥「マイアストラ」を制作する材料をゲット!.jpg
▲ 全てのクイズをクリアすると、「フックマ船長」の財宝である伝説の不死鳥「マイアストラ」を制作する材料をゲット!

子どもたちは、前半の作品鑑賞だけで終えて、後半はミニ作品の制作までおこないます。

 001アート博士のアドバイスをもとに、長時間の疲れも関係なく集中して作品を作っていました。.jpg
▲ アート博士のアドバイスをもとに、長時間の疲れも関係なく集中して作品を作っていました。

 003不死鳥「マイアストラ」の完成作。.jpg
▲ 不死鳥「マイアストラ」の完成作。

今回見学したワークショップは、全体の構成から細かなテクニックまで、滋賀近美の教育普及担当学芸員や解説スタッフの豊富な経験がなければ、簡単にマネできるものではありません。
見学に参加した愛知県美術館ワーキンググループの先生方は、大いに刺激を受けて帰ってきました。

解説ボランティアのみなさん、「アート博士」こと滋賀近美の平田学芸員、どうもありがとうございました。(S.S.)

※ 愛知県美術館では、鑑賞学習に関する勉強会「鑑賞学習ワーキンググループ」を定期的に開催しています。日程などの詳しい情報はこちらをご覧ください。