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年の瀬なので、愛知県美術館も今日から閉館。新年は1月4日から開館致します。
閉館日の今日は、さっそく「美の精髄」展の展示替作業が行われました。

 

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↑安田靫彦が描いた巻物《月の兎》、1月は後半部分を展示します。兎年なのにかわいそうなお話ですが、優しい兎がどうなるのか、展示室でご覧下さい。

 

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↑修復後の木村定三コレクション作品も大幅に展示替。詳細はホームページの「所蔵作品展」「出品作品リスト」でご確認下さい。

 

今年も愛知県美術館ブログをご愛顧下さり、ありがとうございました。来年も何とぞよろしくお願い申し上げます。


(M.Ma)

作品の裏には・・・

2010年12月24日

美術館では今日も作品の点検を行っています。三重県立美術館で開かれた愛知・岐阜・三重三県立美術館協同企画展「ひろがるアート」の展示作品が、愛知県美術館に戻ってきたからです。お貸し出しする前と後とで、作品に何か変化はないか入念にチェックしています。

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 こうしたチェックの過程では、普段は見られない作品の側面を見ることもできます。例えば、原裕治の〈アポクリファ〉シリーズ。白く隆起した円が鮮烈な印象を残す抽象的な作品ですが、その裏は・・・。
 
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 なんと石膏デッサンが!どのデッサンからも生真面目な手の痕跡がうかがえます。
これらデッサンは、原裕治本人ではなく彼の教え子たちが描いたものとも言われていますが、実際のところはよく分かりません。しかし、誰が描いたかも分からない愚直な素描の数々が影となって、一つの作品を支えているようにも見えます。白と黒。抽象と具象。そして、作家による作品と匿名の作品。まさに作品のネガとポジですね。作品を作品たらしめる地層の厚さをしみじみと感じさせられました。
 
(F.N)

 来年1月23日まで、愛知県美術館の全展示室を使って「美の精髄 愛知県美術館の名品300」展が開催されています。その中の最後の部屋、いつも木村定三コレクションを展示している「展示室8」では、木村定三コレクションの名品のうち、愛知県美に収蔵されてから修復がされた作品がお披露目されています。


 愛知県美での作品修復は、作品を今後もずっとよい状態で皆さんに鑑賞していただくために行われるものです。一つずつの作品に個性があって他に代えがたいものであるように、いたみの具合も作品ごとに千差万別で同じものはありません。修復は、作品ごとに注意深い状態調査をした上で、その作品にとってベストな方法を、修復技術者と学芸員が相談を重ねながら行われます。


 一堂に展示された修復後の作品を眺めていると、それぞれについての修復のエピソードが思い起こされ、感慨深いものがあります。ここでは、展示作品の中から1点をご紹介。


 江戸時代の画家、呉春が描いた《蛙図扇面》は、扇絵が掛軸に仕立て直されている作品です。

 

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↑修復前は、細い軸木に掛軸を巻くことによる横折れがひどく、作品がいたんでいることはもちろん、鑑賞が大きくさまたげられていました。

 

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↑修復により、横折れが解消され、すっきりとしゃれた作品の魅力が味わえるようになりました。

 

 この作品で重要なのは、古くになされたと考えられる紙の表具です。表具の紙自体も大変いたんでおり、修復の際に再使用できるかどうか危ぶまれましたが、この作品の軽く上品な味わいには欠かせないものという判断から、修復技術者のかたに表具を新調する以上の手間をかけて再使用していただきました。


 ぜひ展示室で、修復のなった《蛙図扇面》の魅力を味わって下さい。なお、この作品は12月26日までの展示です。お見逃しなく!
(M.Ma)

 

愛知県美術館では現在、当館の約7,600点の所蔵品の中から選りすぐりの名品約300点を展示した「美の精髄 愛知県美術館の名品300」展を開催しています(2011年1月23日まで)。

この展覧会の会期中は、「学芸員おすすめの1点」と題された特別なギャラリー・トークを行っています。これは当館のM副館長以下、全13人の学芸スタッフが出品作の中から1人1点を選び、日を変えて順番に作品解説をしていくというものです。1番手のM副館長(横山大観《飛泉》)、2番手のT企画業務課長(アンドリュー・ワイエス《氷塊I》)のトークは既に終了していて、いずれもそれぞれの専門性がフルに発揮された奥深いものだったと聞きました。
 

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△ ジョージ・シーガル 《ロバート&エセル・スカルの肖像》 1965年
油彩・画布、石膏、木製布張り椅子 181.0 x 143.5 x 143.0 cm 愛知県美術館蔵


私が選んだ作品は何かと言えば、ジョージ・シーガルの《ロバート&エセル・スカルの肖像》です。私は別にシーガルの専門家でも何でもないのですが、たまたま今年の春にクーリエとしてこの作品を苦労してニューヨークの展覧会に持って行っており、そんな縁で少々愛着があったので選んでみました。

それで、独特の技法によるシーガルの石膏彫刻についてお客様にご説明する前に、自分自身でその技法を試してみたくなりました。シーガル独特の技法とは、医療の場で使われている石膏を含んだ特殊な包帯による人体の形どりです。詳しくは12月4日(土)の午前11:00-11:30に行われる私のトークの時にご説明させていただきますので、ここでは事前の実験の様子だけ簡単にお伝えさせてください。
 

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△ まるで医者の治療を受ける患者のよう。

シーガルが用いていたのはジョンソン&ジョンソン社製の医療用石膏包帯でしたが、それと同一の物は、あいにく時間の都合で入手できませんでした(この実験を思いついたのは一昨日のこと)。でも、幸い似たような物が近場で手に入りました。その包帯も石膏を含んでいて、そのままの状態では柔軟性に欠けるのですが、水で湿らせてやると顔にピタッと貼りつきます。それで、適当な大きさに切りつつ、顔の凹凸を考慮しながら一枚一枚貼りつけていきました。
 

 

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△ 作業中は神妙にしていないといけません。しゃべったり笑ったりして顔の皮膚が動くと、包帯の形が崩れてしまいます。

今回は、私自身がモデルになりました(シーガルが初めてこの技法で石膏彫刻を試みた時も、彼自身がモデルになっています)。そして、作家役は当館保存担当アシスタントのNさんが引き受けてくれました。ところで、包帯片を貼りつける時には気をつけることが2点あります。まず、事前にニベアをよく塗ること。これを怠ると、包帯を顔から剥がす時にスムーズに行かず、痛い思いをすることになります。別にニベアでなくてもいいのでしょうが、シーガルはニベアを愛用していたそうなので、今回の実験でもわざわざニベアを用意しました(こちらはジョンソン&ジョンソン社製の石膏包帯と違って、簡単に手に入りますね)。そして、こちらはもっと深刻ですが、鼻を覆う包帯片については、鼻の穴の部分をあけておくこと。これを忘れると、口も塞いだ時点で窒息します。
 

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△ 実験終了。トークを前にマツ毛やマユ毛が抜けるのが恐かったので、今回は顔の下半分だけにしました。あごや首に石膏がちょっと残っていますね。

いったん湿った石膏成分は、15分もあればまた乾いて固まってきますので、頃合を見計らって包帯を顔から剥がします。そうすると、顔の形が見事に石膏包帯に移し取られていました。今回は、石膏包帯の使用説明書を見ながらのたどたどしい実験でしたが、結果はとてもうまく行きました。また、シーガルのモデルとなった人たちの気分が少し分かったような気がしました。

この実験の収穫は、12月4日(土)のトークでもっと詳しくお話ししたいと思います。お時間のある方は、ぜひトークの方にいらしてください! (T.O.)


「学芸員おすすめの1点」
金曜日=19:00-19:30     土・日曜日=11:00-11:30
聴講無料。ただし観覧券が必要です。美術館ロビーにお集まりください。

11月27日(土) 横山大観《飛泉》 村田眞宏  【終了】
       28日(日) アンドリュー・ワイエス《氷塊I》 高橋秀治  【終了】
12月 4日(土) ジョージ・シーガル《ロバート&エセル・スカルの肖像》  大島徹也
        5日(日)  舟越桂《肩で眠る月》 中村史子
      11日(土) アンリ・マティス《待つ》 鯨井秀伸
      12日(日) 竹内栖鳳《狐狸図》 長屋菜津子
      18日(土) 高橋由一《不忍池》 深山孝彰
      19日(日) ポール・デルヴォー《こだま》 藤島美菜
   1月7日(金) フランク・ステラ《リヴァー・オブ・ポンズIV》 塩津青夏
        8日(土) グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》 古田浩俊
        9日(日) 浦上玉堂《秋色半分図》(木村定三コレクション) 馬渕美帆
      14日(金)  ジョアン・ミロ《絵画》 副田一穂
      22日(土)  オスカー・ココシュカ《夢みる少年たち》 森美樹