2010年12月12345678910111213141516171819202122232425262728293031

シーガルの石膏彫刻の技法に迫る!

2010年12月03日

 

愛知県美術館では現在、当館の約7,600点の所蔵品の中から選りすぐりの名品約300点を展示した「美の精髄 愛知県美術館の名品300」展を開催しています(2011年1月23日まで)。

この展覧会の会期中は、「学芸員おすすめの1点」と題された特別なギャラリー・トークを行っています。これは当館のM副館長以下、全13人の学芸スタッフが出品作の中から1人1点を選び、日を変えて順番に作品解説をしていくというものです。1番手のM副館長(横山大観《飛泉》)、2番手のT企画業務課長(アンドリュー・ワイエス《氷塊I》)のトークは既に終了していて、いずれもそれぞれの専門性がフルに発揮された奥深いものだったと聞きました。
 

001《ロバート&エセル・スカルの肖像》1965年.jpg


△ ジョージ・シーガル 《ロバート&エセル・スカルの肖像》 1965年
油彩・画布、石膏、木製布張り椅子 181.0 x 143.5 x 143.0 cm 愛知県美術館蔵


私が選んだ作品は何かと言えば、ジョージ・シーガルの《ロバート&エセル・スカルの肖像》です。私は別にシーガルの専門家でも何でもないのですが、たまたま今年の春にクーリエとしてこの作品を苦労してニューヨークの展覧会に持って行っており、そんな縁で少々愛着があったので選んでみました。

それで、独特の技法によるシーガルの石膏彫刻についてお客様にご説明する前に、自分自身でその技法を試してみたくなりました。シーガル独特の技法とは、医療の場で使われている石膏を含んだ特殊な包帯による人体の形どりです。詳しくは12月4日(土)の午前11:00-11:30に行われる私のトークの時にご説明させていただきますので、ここでは事前の実験の様子だけ簡単にお伝えさせてください。
 

00211111.jpg


△ まるで医者の治療を受ける患者のよう。

シーガルが用いていたのはジョンソン&ジョンソン社製の医療用石膏包帯でしたが、それと同一の物は、あいにく時間の都合で入手できませんでした(この実験を思いついたのは一昨日のこと)。でも、幸い似たような物が近場で手に入りました。その包帯も石膏を含んでいて、そのままの状態では柔軟性に欠けるのですが、水で湿らせてやると顔にピタッと貼りつきます。それで、適当な大きさに切りつつ、顔の凹凸を考慮しながら一枚一枚貼りつけていきました。
 

 

00322222.jpg


△ 作業中は神妙にしていないといけません。しゃべったり笑ったりして顔の皮膚が動くと、包帯の形が崩れてしまいます。

今回は、私自身がモデルになりました(シーガルが初めてこの技法で石膏彫刻を試みた時も、彼自身がモデルになっています)。そして、作家役は当館保存担当アシスタントのNさんが引き受けてくれました。ところで、包帯片を貼りつける時には気をつけることが2点あります。まず、事前にニベアをよく塗ること。これを怠ると、包帯を顔から剥がす時にスムーズに行かず、痛い思いをすることになります。別にニベアでなくてもいいのでしょうが、シーガルはニベアを愛用していたそうなので、今回の実験でもわざわざニベアを用意しました(こちらはジョンソン&ジョンソン社製の石膏包帯と違って、簡単に手に入りますね)。そして、こちらはもっと深刻ですが、鼻を覆う包帯片については、鼻の穴の部分をあけておくこと。これを忘れると、口も塞いだ時点で窒息します。
 

00433333.jpg


△ 実験終了。トークを前にマツ毛やマユ毛が抜けるのが恐かったので、今回は顔の下半分だけにしました。あごや首に石膏がちょっと残っていますね。

いったん湿った石膏成分は、15分もあればまた乾いて固まってきますので、頃合を見計らって包帯を顔から剥がします。そうすると、顔の形が見事に石膏包帯に移し取られていました。今回は、石膏包帯の使用説明書を見ながらのたどたどしい実験でしたが、結果はとてもうまく行きました。また、シーガルのモデルとなった人たちの気分が少し分かったような気がしました。

この実験の収穫は、12月4日(土)のトークでもっと詳しくお話ししたいと思います。お時間のある方は、ぜひトークの方にいらしてください! (T.O.)


「学芸員おすすめの1点」
金曜日=19:00-19:30     土・日曜日=11:00-11:30
聴講無料。ただし観覧券が必要です。美術館ロビーにお集まりください。

11月27日(土) 横山大観《飛泉》 村田眞宏  【終了】
       28日(日) アンドリュー・ワイエス《氷塊I》 高橋秀治  【終了】
12月 4日(土) ジョージ・シーガル《ロバート&エセル・スカルの肖像》  大島徹也
        5日(日)  舟越桂《肩で眠る月》 中村史子
      11日(土) アンリ・マティス《待つ》 鯨井秀伸
      12日(日) 竹内栖鳳《狐狸図》 長屋菜津子
      18日(土) 高橋由一《不忍池》 深山孝彰
      19日(日) ポール・デルヴォー《こだま》 藤島美菜
   1月7日(金) フランク・ステラ《リヴァー・オブ・ポンズIV》 塩津青夏
        8日(土) グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》 古田浩俊
        9日(日) 浦上玉堂《秋色半分図》(木村定三コレクション) 馬渕美帆
      14日(金)  ジョアン・ミロ《絵画》 副田一穂
      22日(土)  オスカー・ココシュカ《夢みる少年たち》 森美樹