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ポロックの足跡を訪ねて1 生地コディ(前編)

2011年02月23日

 

  

 

愛知県美術館はこの秋、「生誕100年  ジャクソン・ポロック展」を開催します(今年11月11日 - 来年1月22日)。それまでの間、当ブログにてポロックゆかりの地をご紹介する「ポロックの足跡を訪ねて」という記事を連載していきます。第1回目となる今回は、ポロックの生地を訪ねます。

 

 

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▲ ポロック巡礼の聖地コディの街の入口の看板(2004年撮影)。乾いた荒野に、澄んだ青い空と白い雲。どことなくマグリットの世界のようですね。

 

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▲ コディの街並(2004年撮影)。いかにもアメリカ的な田舎町です。

 


ジャクソン・ポロックは1912年、アメリカ西部のワイオミング州コディに生まれました。コディは西部開拓史における伝説的人物ウィリアム・フレデリック・コディ(通称バッファロー・ビル)が建設した街で、彼の名をとって「コディ」と名付けられました。西部開拓史の英雄バッファロー・ビルが建設した街に、現代アートの開拓者ジャクソン・ポロックが生まれたのは、なんとも奇妙な縁です。いや、時代を背負う人物には、得てして何かしらそういったことがあるものなのでしょうね。

 

 

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▲ ポロックが生まれたワトキンズ牧場のあったあたり(2006年撮影)。

 

ポロックはコディの外れにあるワトキンズ牧場で、5人兄弟の末っ子として生まれました。ワトキンズ牧場はすでに無くなっていますが、現在も牧草地のままで、セージ・クリークという小川が近くに流れるのどかな一帯です。


コディにはポロックの親友だったハリー・ジャクソン(1924年 - )という芸術家が住んでいて、このハリーさんはポロックとコディの関係について次のように言っています。「ポロックはコディというこの新しい街に生まれたことを疑いなく大切に思っていました。ポロックは一歳に満たなかったですが、これらのものすごい草の広がりは、彼の比類なく敏感な潜在意識の最も深いレベルに消えることなく焼き付きました。……彼は、広大な平原が周囲に広がるバッファロー・ビルのコディに生まれたことをいかに誇りに思っているか、しばしば語っていました」(ハリー・ジャクソン、インタヴュアー/訳=大島徹也 「1948年から1950年のポロック」 『芸術/批評』 3号 [2007年]、15頁)。

 

 

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▲ コディの街の象徴、ハート山(2006年撮影)。

 

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▲ 曇りの日のハート山(2004年撮影)。《西へ》のような、アメリカの地方の情景を描いたポロックの初期の陰鬱な絵画世界に通じるものがあります。
ジャクソン・ポロック 《西へ》 1934-35年頃  スミソニアン・アメリカ美術館蔵(画像=http://americanart.si.edu/collections/search/artwork/?id=19820
ポロックの初期の代表作で、「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」に出品予定です!

 


コディの街の中心には、ランドマーク的な老舗ホテル「アーマ・ホテル」があります。

 

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▲ アーマ・ホテル(2006年撮影)。

 

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▲ アーマ・ホテルのレストラン(2004年撮影)。


アーマ・ホテルはバッファロー・ビルが立てたホテルで、ポロックの父親も一時そこで働いていたことがありました。ホテル内のレストランやバーはほとんど西部劇の世界で、カウボーイ姿の人たちが普通に食事をしたり酒を飲んだりしています。

 


アメリカが世界に誇る偉大な芸術家の生誕の地ということで、コディはポロックで町興しでもしているのかと思いきや、少なくとも私がその地を訪れた2004年時と2006年時には、そのような気配はまったくありませんでした。また、ホテルの人や観光案内所の人たちに「ポロックの生地を知っていますか」と尋ねると、「知らない」という答えがほとんどでした。そして、「ポロックはここコディの生まれなんですよ」と教えると、みな驚くという次第でした。2009年にマティスの生地、フランスのル・カトー=カンブレジを訪れた時には、街のあちこちにマティスに関する建物や看板、マティスにあやかったショップや商品を目にしたのですが、コディでのポロックの存在の薄さは意外でした。世間一般ではどうしてもポロック=ニューヨークのイメージが圧倒的に強いのでしょうね。

 

 

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▲ コディのマクドナルド(2004年撮影)

 

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▲ コディのマクドナルド店内の壁面(2004年撮影)。

 


それでも何かポロックにちなんだ現在の物がコディにないかと探してみたら、一つ見つけました。マクドナルドの店内の壁紙(そして壁に掛かっている絵自体の背景)が、見事にポロック風でした!

 

コディにはまだまだ興味深いポロック関連スポットがありますので、今日のところはここまでとして、次回の「ポロックの足跡を訪ねて」は、「生地コディ(後編)」をお送りしたいと思います。

 

 

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愛知県美術館の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」は、今年11月11日スタートです(来年1月22日まで)。どうぞお楽しみに! 

(T.O.)