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手による美術鑑賞、言葉による美術鑑賞

2011年03月16日

以前、ブログでもご紹介しました「視覚に障がいのある方に向けたプログラム」。すでに愛知県美術館では10年以上続いているプログラムです。今年2月末に開催された模様を今回はお話します。

愛知県美術館のプログラムでは、参加者とガイドボランティアとが作品について語り合う言葉を通じた鑑賞のほか、立体コピー(平面作品の立体複写画像)を用いた鑑賞、そして実際に作品に手で触れて行う鑑賞などがあります。

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↑三沢厚彦のライオン像に触れる参加者。このプログラムでしかできない鑑賞体験です。

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↑クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》の立体コピー。輪郭部分が触れると分かります。

具体的な方法については前のブログでお話したので、今回は参加者の反応についてご紹介しましょう。

ピカソ《青い肩かけの女》の前に立たれた鑑賞者のお一人は、ガイドボランティアから「肩にかかっているケープは薄くてヒラヒラしたものではなく、ずっしりとしたもの」と説明をうけたそうです。そして、物寂しさや「森の精につつまれているようなひっそりとした雰囲気」を感じたと話されていました。

また、レームブルックの《立ち上がる青年》を手で触って鑑賞された方は、彫刻の足のくるぶしの向きとひざの皿の向きがねじれていることを発見。普通の人間の足はこのようにはならないそうです。レームブルクはあえて人のフォルムをねじりながら上に伸ばしたのでしょう。ぱっと見ただけでは気づきにくいこれら造形上の工夫が、青年像に独特のリリシズムを与えているのかもしれません。

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↑ヴィルヘルム・レームブルック《立ち上がる青年》 1913年

このようなプログラムを経験すると、私たちが普段何かを見ているつもりで見ていないのかに気づかされます。また、同じものを見ていても、あらためて言葉にすることで全然違う風に見ていることも分かります。こうした捉えがたさにこそ、アートの豊かさがあるのかもしれません。

(F.N.)