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麻生三郎展オープン

2011年04月29日

本日「麻生三郎展」が始まりました(6月12日まで)。
厳しい時代に向き合い、人間の存在の尊さを描き続けた麻生(1913-2000)の約60年にわたる画業を、3つの章に分けてご紹介しています。 

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第1章「闇の中で光を見つめる」
10歳時の関東大震災と32歳時の東京大空襲で家を焼失し、召集令状を2度受けた麻生は、戦時下から戦後しばらくまで、妻や生まれたばかりの娘などの姿を闇に灯る明かりのように描きました。003dsc01203.jpg

 

第2章「赤い空の下で」
戦後の復興や高度成長の陰でなお重苦しく不穏な空気を、麻生は赤黒い空と感じながら、その重さに抗する人々や街を絵の中に立たせました。

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第3章「内と外の軋み」
1960年代以降も安保闘争やヴェトナム戦争、核実験や環境破壊などの現実に直面した麻生は、人間の生命を否定し脅かす大きな力への抵抗として、混沌とした空間と人体がせめぎあう絵画を追究しました。004dsc01205.jpg

 

去年の11月に東京での麻生展オープンをレポートしたときは、「表面的なキレイさ、かわいさがもてはやされがちな今日だからこそ、麻生の重い絵を紹介」という言葉がありましたが、その後1月からの京都展の頃には閉塞感や不安が日本を覆うようになりました。そして誰もが人の命を想い続けている今、麻生三郎の絵はあらためて心に迫るように感じています。愛知会場では説明パネル10枚と『鑑賞ガイド』を新たに作り、また第3章の後半に「人間像の再生に向けて」という節を立ててみました。じっくりとご鑑賞いただければと思います。005dsc01206.jpg

 

5月14日には、岩手県立美術館の原田光館長に「赤い空の下で」と題してご講演いただきます。長く神奈川県立近代美術館におられた原田さんは、1994?95年に神奈川・茨城・三重県で開催された麻生三郎展の主担当を務められ、作家とも親しく接しておられた方です。こちらもご期待ください。

(T.M.)
 

館長からのごあいさつ

2011年04月28日

東日本大震災で被災された方々に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、被災

地の復興を心よりお祈り申し上げます。


大地震と津波による被害、度重なる余震、それに福島第一原子力発電所の事故がかさなり、今、私

たちは復興の道筋さえ描けないような未曾有の被災状況に直面しています。日々、刻々と変わる被

災状況や避難所での不自由な生活に耐える被災地の方々の状況などを伝えるテレビや新聞に接して

いるうちに、いつの間にか4月からの新しい年度を迎えていました。被災地から遠く離れてはいる

ものの、愛知県美術館でもその活動に少なからぬ影響が出始めています。そのようななかで、美術

館として被災を受けられた方々に何ができるのか、あるいはこのような時期だからこそできること

は何かと自問しながら、この数週間を過ごしてきました。


本年度第1回目の企画展として4月29日から麻生三郎展を開催します。戦前から戦後にかけて、

時代や社会の変化のなかで人間そのものを見つめ、その本質を追究し続けたこの画家の作品は、今

の時期だからこそ私たちに深く問いかけ、語りかけてくるものがあるように思います。是非、ご来

場いただきたく存じます。また、この企画展にあわせて開催する所蔵作品展では、この度の大震災

で被災された方々に思いをよせ、その心情に寄り添わせていただくことを願って、ささやかな展示

を準備しています。ぜひ、一人でも多くの皆様にご覧いただきたく思っています。

 

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↑所蔵作品展示室にて。

 

この度の大震災では、多くの文化財や美術品も被災しました。文化財や美術品は、地域社会に生き

る人々の心のよりどころとしての役割をもっています。被災地が本当の意味で復興をなしえるには

、その地域にとってかけがえのない文化財や美術品が救出され、必要な処置を施されて、再びその

地に戻されて人々の心と生活のなかに息づいていくことが欠かせません。それらを救出する活動が

文化庁を中心に始まっています。当館でも、この救出活動に学芸員も派遣するなど、少しでも貢献

できるようにしていきたいと思っています。また、被災した文化財や美術品を救うための募金もお

願いしたいと思っております。皆様のご援助をお願いします。

 

新年度は、日本が未曾有の困難な状況に直面したなかで始まりました。今の時期だからこそ、私た

ち美術館が社会のなかで何ができるのか、美術作品を皆さんにご覧いただくことを通じてどのよう

な貢献ができるのか。そのようなことを問いながら、活動を続けていきたいと思っています。そし

て何よりも、県民の皆様に良質の美術作品をご紹介することを通じて、心休まる平穏な時間をお持

ちいただけるよう努力していきたいと存じます。


2011年度を迎え、館長以下新しい体制で、心新たに頑張っていきたいと思います。これまでにも増

して、皆様に親しんでいただける美術館になっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い

申し上げます。

 

                                        愛知県美術館長    村田眞宏