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美術館と防災(1)

2011年12月22日

美術館は、お子様や高齢者の方々を含むたくさんのお客様をお迎えして展覧会を行なっています。

また一方でかけがえのない文化財をお預かりし保存する施設でもあります。

今年の3月11日は私たち美術館スタッフにも大きな衝撃を与え、今一度、館の防災計画を見直す契機ともなりました。

 

そしてまず復活したのが「シミュレーション・ミーティング」というものです。

これはいわば災害の仮想体験をしながら、個々の職員が自らをトレーニングする場であり、また既存の防災計画では、到底及ばないような、現実的かつ細かな部分について職員間で知恵を出し合い、話し合いを行なう場です。

 

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↑ ワークシート。

 

これがそのワークシート。
出題者の「何月何日何時何分に○○規模の地震が発生し、センターの設備やインフラがこういう状態になりました。そしたら、その時、あなたは?」という課題に沿って、まず自分で行動予想を書き込みます。

 

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↑ シミュレーション・ミーティングの様子。

 

みんな真剣でしょう?

美術館は土日も開館していますし、閉館日しかできない仕事というのもあり、美術館職員はローテーションを組んで出勤しています。その為、意外と全員が出勤している日というのが少なく、出張者が重なった日に事が起こると、少ない人数で対応しなければなりません。「今日、このミーティングに出席している職員だけで対応するとなると・・・」。毎回、条件が著しく異なるので、みんな、その都度、いろんな問題に直面する事になるのです。

 

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↑ シミュレーション・ミーティング2。

 

その次にはグループで話し合い、グループの代表がみんなの前で発表を行います。

館内の平面図上で各自の行動経路を動かしながら行なう事もあります。複雑な構造ですので、奥まったところでお客様が倒れていないか、「それで漏れなく確認が取れるか」、先輩学芸員から厳しいチェックが入ります。

 

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↑ 非常階段勉強会。

 

そのように仮想体験を重ねていると、毎回、いろんな問題点が出てきます。

センター上層の施設ですので、当然、避難経路は長く複雑になります。長く美術館に勤務している人間でも「覚えてるかしら?」、新人は「行ったことがない」というようなことが、ある時問題となり、今回は非常階段勉強会を行なう事になりました。

 

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↑ 非常階段勉強会2、3。

 

その他にも、「展示室監視員さんたちには、頭を守るものと懐中電灯は持っていてもらったほうがいいよね」「でも、展示室で、監視員の足元にヘルメットがゴロンというのは、あまり好ましくないよね」など、様々な意見の末、監視員さんの椅子の背もたれカバーと兼用できるような防災頭巾を考えました。

 

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↑ 防災頭巾試作。

 

いえいえ、怪しいお兄さんではありません。その試作品第一号を検討している場面です。

ちなみに、こういうものも、友の会のお母様方のご協力を頂いております。

 

(N.N.)

 

*ブログ編集担当者より

雨降らずして、地固うする。


 

現在当館では「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」を開催中ですが、今回は所蔵作品についてのお知らせです!


昨年度から試行実施としまして、愛知県美術館の所蔵作品をサテライト展示という形で県内の美術館や博物館へ出品をしております。

サテライト展示とは、愛知県美術館のコレクションを県内において広く公開する事業の一環であり、
実施館の企画内容に合わせ、当館のコレクションをテーマ性を持たせてご紹介するものです。


現在は、当館所蔵の藤井達吉作品の中から《大色紙梅百題》を出品し、碧南市藤井達吉現代美術館の展示室3におきまして展示していただいております。
梅を様々な技法で描いた晩年の代表作のひとつです。

この作品は「題」と「あとがき」を含め102点にも及ぶのですが、ここでその一部をご紹介いたします。

 

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↑ 〈第二十二題〉

 

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↑ 〈第三十六題〉

 

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↑ 〈第四十二題〉

 

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↑ 〈第五十三題〉

 

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↑ 〈第七十三題〉

 

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↑ 〈第百題〉

 

ここでは6点だけをご紹介しましたが、どうでしょう、100点全部を見てみたくなりませんか。
続きは、碧南市藤井達吉現代美術館でご覧いただけますので、ぜひお出かけいただければと思います。
《大色紙梅百題》は、展示替えを繰り返しながら2012年4月1日まで展示されます。観覧は無料です。

 

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↑ 展示室の様子。


また、碧南市藤井達吉現代美術館では現在「やきものを愉しむ 愛知県陶磁資料館名品展」と題して愛知県陶磁資料館の名品を展示する企画展もされており、そちらも是非お楽しみいただければと思います。こちらは観覧料が必要です。

詳しくは、碧南市藤井達吉現代美術館のホームページをご覧ください。

 

(Y.H.)

 

*ブログ編集担当者より

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ご報告

2011年12月10日

東日本大震災発生から9ヶ月が過ぎようとしています。被災された方々に、あらためて心からのお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、被災地の復興を心よりお祈り申し上げます。


愛知県美術館では、震災以降、さまざまな機会に来館者の皆様に義援金へのご協力をお願いし、その都度、ご支援をいただいてまいりました。そのなかで、被災した美術品をはじめとする文化財を救出する「文化財レスキュー活動」へのご支援を呼びかけさせていただいてまいりました。先日、全国美術館会議から感謝状を受けてまいりましたので、ここにそのご報告を申し上げます。

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↑ 感謝状の授与。左は全国美術館会議・青柳正規会長、右が村田。


まず、4月29日から6月12日まで麻生三郎展を開催にあわせて、所蔵作品展では、この度の大震災で被災された方々に思いをよせ、その心情に寄り添わせていただくことを願って、「祈りと鎮魂」をテーマにしたささやかな展示を行いました。その際、展示室内に文化財レスキューの支援のための義援金箱も設置し、ご来場いただいたお客様にご協力をお願いいたしました。その結果、175,406円の義援金をお寄せいただきました。この義援金はその後、「愛知県美術館来館者一同」として全国美術館会議に託させていただきました。その義援金への同会議会長からの感謝状です。


つぎに、7月9日から9月4日まで開催した「東北復興支援特別企画 棟方志功 祈りと旅」展では、この展覧会の実行委員会として、支援のための募金、絵葉書あるいはポスターの販売などを通じてご協力をお願いし、合計金額569,234円の義援金を集めさせていただきました。この内、半額の284,617円を文化財レスキュー活動のため、全国美術館会議に託させていただきました。同じく、その感謝状です。なお、この義援金の半額につきましては、朝日新聞厚生文化事業団に託させていただきました。

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また、棟方志功展開催期間中には、美術館のミュージアムショップで、東北地方の各美術館のオリジナルグッズや、同地方の名産品などを販売して、その収益金500,011円の半額250,006円を、このショップを運営する愛知県文化振興事業団から、文化財レスキュー活動等のために全国美術館会議に託させていただきました。なお、この収益金の半額につきましても、朝日新聞厚生文化事業団に託させていただきました。


以上、ご報告させていただきますとともに、改めて皆様のご支援とご協力に心から感謝申し上げます。


愛知県美術館長
村田 眞宏

 

現在、好評開催中の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」。

抽象の極みとも言えるポロック作品を理解できるのは、成熟した大人のみ・・・

いえいえ、そうとは限りません。

 

先日、ポロック展を名古屋市昭和区にある昭和荘保育園の園児の皆さんが見に来てくれました。

先生によると、園に戻ってからポロック風の作品を制作するとのこと。
今回はその予習として展覧会を訪れてくれたようです。

映像コーナーでポロックの制作する姿を熱心に観察した後は、再現アトリエコーナーでポロックの足跡探しに大興奮!

《インディアンレッドの地の壁画》の前では、「おもしろい!」「きれい!」といった感想を発していました。

 

その後、皆さんがどんな作品を制作するのか気になったポロック展担当者3人。

後日、昭和荘保育園におじゃましてきました。

 

男の子チームと女の子チームに分かれ、まずは先生から今日のルール説明。

「今日はかたちのあるものを描くのではなくて、自由な線を描きましょう。」

スタートの合図とともに、ブルーシートの上に準備された大きな紙の上にお絵かきを開始!

まずはクレパスを手に取り、みんなものすごい勢いで紙いっぱいに線や点を描きはじめました。

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↑ 勢いよく描き始める園児たち

 

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↑ 開始1分後にはすでにこの状態!

 


次はいよいよ水彩絵具を使って、ポロック風のテクニックに挑戦。

 

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↑ 先生が準備された絵具と筆。ポロックの塗料缶と筆立てを思わせます。


園児たちは、ポーリング(流し込み)、ドリッピング(滴らし)、スパタリング(撥ねかけ)といったテクニックを見事に使い分けていて、ポロック展で予習をした成果がとてもよく発揮されていました。

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↑ ポーリングに挑戦中。なかなか上手く線が出せていますね。

 

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↑ 絵具を直接注ぎ込む。ポーリングの中でも大胆な手法!

 

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↑ これはドリッピングのようです。

 

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↑ ポロック顔負けの華麗なスパタリング!

 

そして、キャンバスの上に自らの手形や足形を残したポロックに倣って、それぞれの手形や足形を刻印。

 

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これで完成!

 

・・・と思いきや、最後に同じ色で作品の周縁部を塗りつぶしはじめた園児たち。

思わず、先生に質問しました。


「先生、これは何をしているんですか?」

「これは地塗りです。子どもたちに最初に地塗りをさせると混乱するので最後にしました。」

 

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↑ みんなで決めた色で「地塗り」。

 

なるほど・・・これは、いわゆる図と地の反転!?

そういえば、ポロックも本展出品作《トーテム・レッスン2》(1945年)などで、図と地の関係を反転させてしまうようなマスキング的手法を使っています。


こうして、《インディアンレッドの地の壁画》ならぬ、"黄の地の壁画"(男の子チーム)と"青の地の壁画"(女の子チーム)が完成しました!

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↑ 完成した作品。「地塗り」が画面をうまくまとめています。

 

こちらの保育園では、子どもたちの自由な発想を育てるため、造形のクラスを重視されているとのこと。

実際、今回見学させていただいた授業でも、何かを上手に描こうという考えから解放されたのか、ものすごい勢いで作品を仕上げていく子どもたちの姿が印象的でした。

これも、事前に美術館でポロックの作品や制作する姿を見たことに刺激されていたのかもしれません。

これをきっかけに、また美術館に来たいと思ってくれる園児が一人でもいてくれればいいなと思います。

 

「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」は、愛知県美術館にて来年1月22日まで開催。

保育園児の皆さんのご来場も大歓迎です!

また、愛知県美術館では、一般の方も含む団体鑑賞を随時受け付けています。お申込みは、当館ウェブサイトのトップページからダウンロードできる「団体鑑賞申込書」にご記入のうえ、ファクスで美術館へお送りください。(ただしご希望の日時に実施できない場合もありますので、ご了承ください。)

 

(S.N.)

 


愛知県美術館の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」(2012年1月22日まで)が、NHK「日曜美術館」で放送されます!

 

日曜美術館
NHK Eテレ
2011年12月11日(日) あさ 9:00―9:45
2011年12月18日(日) よる 8:00―8:45

 

 

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▲ ポロックの《インディアンレッドの地の壁画》の前に立つ石井竜也さん(右)、千住さん(中央)、森田アナ(左)。

 

 今回の「日曜美術館」ポロック特集では、千住さん、森田アナ、そしてメインゲストの石井竜也さんが愛知県美術館に来てくださり、展示室内で収録が行われました。
 かつて、お父様がお持ちだったポロックの画集を見て衝撃を受け、ポロックに憧れて画家になろうとしたという石井さん。収録でも、現在愛知県美術館に展示されているさまざまなポロックの傑作を前に、ご自身のポロックに対する思いや個々の作品についての解釈を、熱く語ってくださいました。
 放送は、今週日曜(12月11日)の朝9時から。再放送は、来週日曜(12月18日)の夜8時から。必見です! (T.O.)

 


★ NHK「日曜美術館」ポロック特集インフォメーション:
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2011/1211/index.html

 


★ 愛知県美術館「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」について語る石井竜也さん:
http://www.sundayfolk.com/livlog/6g76g7y/
 

 

   愛知県美術館「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」(2012年1月22日まで)の関連小展示「ジャクソン・ポロックとポップカルチャー」展、おかげさまで大好評です! 「もっと大規模に展示してほしい!」、「もっと目立つように、美術館のロビーに場所を移しては?」といったご要望多数につき、ポロック展関連小展示第2弾を緊急追加企画しました!

 


「生誕100年  ジャクソン・ポロック展」関連小展示

ヒストリー・オブ・ザ・ストーン・ローゼズ  History of The Stone Roses

2011年12月6日(火)―2012年1月22日(日)
場所=愛知県美術館ロビー[愛知芸術文化センター10階]
企画=愛知県美術館
協力=林 玄徹(愛知県文化振興事業団)

 


   ザ・ストーン・ローゼズは、イギリスのマンチェスターで結成されたロックバンドです。1985年にシングル「ソー・ヤング」でレコード・デビューしました。主なメンバーにイアン・ブラウン(ヴォーカル)、ジョン・スクワイア(ギター)、マニ(ベース)、レニ(ドラム)がいます。1980年代のおわりから1990年代はじめにかけてマンチェスターで隆盛した「マッドチェスター」(Madchester)と呼ばれる音楽ムーヴメントの代表的なバンドの1つとして、その名を歴史に大きく刻んでいます。1996年に解散しましたが、2011年10月18日、再結成を宣言。世界ツアーの開催やアルバムのレコーディングに向けて再び活動を始めています。

 

 

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▲ ストーン・ローゼズのレコード・ジャケット

 


   ストーン・ローゼズ、とりわけギターのスクワイアはジャクソン・ポロックの芸術から多大な影響を受けています。スクワイアがポロックを意識し出したのは、彼自身によれば、イギリスのパンクバンド「クラッシュ」の写真集でペニー・スミスがポロックについてコメントしているのを見てのことだといいます(同バンドのポール・シムノンが、彼のベースのピックガードにポロック風のドリッピングを施していたことはよく知られています)。その後スクワイアは、ストーン・ローゼズのレコード・ジャケットのデザインを手掛けていきますが、その多くにおいて、自らが描いたポロック風の絵画を使っています。「あなた達がレコードのために生み出した、ジャクソン・ポロックへのオマージュは、どの程度重要だったんですか?」というあるインタビューでの問いに対して、スクワイアは次のように語っています。「僕にはすごく重要だった。別のジャケットで出してたら、恥ずかしかっただろうから。自分達のレコードがどういう風に見えるべきか、僕には正確にわかってたんだ。僕が1stを手掛けて、そこからはただ、他も全部僕がやるべきだ、って感じに自然になってった。……(ジャクソン・ポロックを)コピーしたのは、彼のオリジナル作品をレコード・カヴァーに使う許可なんて絶対に下りないだろう、って思ったから。で、ただ彼をコピーした――かなり楽しかったね。それから、レニが自分のドラムキットにもやってくれ、って言ってきて。その後、ギターにもやった」(『スヌーザー』39号、2003年4月)。

 

   この「生誕100年  ジャクソン・ポロック展」関連小展示第2弾、「ヒストリー・オブ・ザ・ストーン・ローゼズ」は、ポロックの生誕100年とストーン・ローゼズの再結成を祝して、このバンドのポロック芸術との関わりを、セレクトされた11枚のレコードを通して探ろうとするささやかな試みです。ポロック展にご来場の際、「ジャクソン・ポロックとポップカルチャー」展(愛知芸術文化センター地下2階)と併せて、ぜひお楽しみください。12月6日(火)からです!

(T.O.)