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魔術/美術のカタログを開いてみれば・・・(前半)

2012年04月28日
  展覧会の担当学芸員が取り組む業務の一つにカタログ作りがあります。カタログは展覧会が終了した後もずっと残りますので、おのずと学芸員は力が入ります。そういうわけで、今回はカタログのお話です。
 
 さて、まず気になるのはカタログの中身ですよね。魔術展のカタログの方向性を決めるにあたって担当者が最初に考えたのは「主観的、偏向的、周縁的で混交的。でも、感性を揺さぶるカタログを!」ということ。これは、学術的な情報をできるかぎり客観的に網羅することが求められる美術館のカタログとしてはNGかもしれません。しかし、出品作品の大半が各公立美術館できちんと調査研究されている※ので、これくらい型破りなコンセプトを掲げる余裕もあるわけです。さあ、魔術的なカタログの始まり、始まり・・・。
 
 というわけで、今回は美術館の担当学芸員以外に五名の方にテキスト執筆をお願いいたしました。出品作品にこだわらずに個々の執筆者の世界観が伝わるテキストを、と依頼したので、どのテキストもとても個性的です。早速、テキストを寄せてくださった方々を順にご紹介しましょう。
 
 まずは、文化人類学者、中島智さん。世界各地を巡り、シャーマンと呼ばれる方々と接してきた経験を持たれる中島さんは、石垣島の巫女をめぐる出来事から独自のアート論を展開されています。書き出しからゾクゾクするような文章です。
 より詳しく知りたい方には『文化のなかの野性 - 芸術人類学講義』(中島智/現代思潮社/2000年)をお勧めします。
 
 つづいて唄邦弘さんがアンドレ・マッソンとジョルジュ・バタイユ、神話の再解釈を巡るテキストを寄せてくださっています。すでに会場をご覧になった唄さんからは、ブルトンの部屋を想像させる、とのコメントをいただきました。専門家からそう言っていただけると嬉しいです!
majutsu_installation2.jpg
 ↑「ブルトンの部屋」みたいなのは、このコーナーですね。ここは思想家ジョルジュ・バタイユ等が編集した雑誌『ドキュマン』をベースに構成されています。芸術と文化人類学の垣根を越えた展示がポイント。唄さんのテキストを読むと理解も深まります。
 
中島さんはしばしば、表現者の意図や目的に回収されえない芸術作品の事後性について示唆されていますが、気づくと、このカタログもそんな感じです。担当者の意図を越えてテキスト同士が響きあい、それが一つの展覧会のかたちを作っているかのよう。
さあ、続く三名については第二弾にてご紹介します。お楽しみに!
 
IMG_6150.JPG  IMG_6147.JPG
 
↑おまけ。キラキラで人気のカタログ表紙(右)もホログラムを押さないとこんな感じ(左)です。これが最初に印刷見本として出てきたときは、担当学芸員もまさかあんなキラキラになるとは想像していませんでした。
 
(F.N.)
 
※この展覧会は愛知県美術館、岐阜県美術館、三重県立美術館の所蔵作品から構成されています。より詳しい作品情報を知りたい方は、各美術館の目録等をご覧下さい。