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APMoA Project, ARCHの第1弾を飾ってくださった吉本直子さんのレクチャーが、4月28日に行われました。
このレクチャー、これが単に過去の作品の紹介にとどまらない、ものすご?く深くいい内容。それをこの場で余すことなくリポートすることは筆者の能力ではいかんともしがたい...ですが、ともかくがんばってその一部でも皆様にお伝えできれば、と思います。

吉本さんはもともと大学で心理学を専攻され、卒業後は臨床心理士になる予定でしたが、在学中に旅行したインドで、染織工芸品と出会います。それをきっかけに吉本さんは染織を学び始めました。この時期から、今回の出品作にも共通する、「存在の痕跡」や「記憶」をテーマにした作品を発表するようになりました。最初の作品は、桜が散って地面を桜の花びらが覆う様子からインスピレーションを得た染織の作品を制作しました。満開となった後にその残骸として残る花びらは、桜の最も美しい姿を思い出させるとともに、すぐに散ってしまう命の儚さをしみじみと伝えます。
その後ハンカチや古着といった古布を通して、記憶と触覚の関係を辿ろうとします。

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プロジェクターで映る作品《Memory Miles in My Hand/ 掌中の記憶》を解説する吉本さん

例えば上の作品は、イギリス旅行中に見つけた古着に写真が転写され、さらにその古着の糸が解かれています。転写された写真は自らの記憶にあるイメージであり、それは時間とともに薄れていきます。一方、糸が解かれても古着は布の形態を留め、その手触りを確かめることができます。触感はあいまいなまま記憶に残り続けることをこの作品は教えてくれます。また解かれた糸は再び紡がれ、丸められています。ここには、消え去る記憶を繋ぎ止めたい、という吉本さんの願いが込められています。

私的なテーマから、より普遍的なテーマを求めた吉本さんは、白いシャツと出会います。白い古着に残る染みや汚れは、人が生きた痕跡や人生の記憶をなまなましく物語ります。
こうして白い古着シリーズの作品が生まれ、現在当館で展示されているわけです。

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展示室で実際の作品を前に聴講者の皆さんと話をする吉本さん

時に抽象的な質問にウ?ンと考え込んだり、また冗談をまじえたりしながら、集まった皆さんとほのぼのとコミュニケーションをとられていた吉本さんでした。

さらに、吉本さんの制作活動の中で特筆すべき作品をご紹介!
2008年国際芸術センター青森で開催された展覧会「月下の森」へ参加するために、吉本さんは同地の「川倉賽の川原地蔵尊」を訪れました。この地蔵尊では、亡くなった人の衣服を預かって祈祷をおこない、死者の霊を慰める慣わしがあるそうで、その場所を訪れた吉本さんは「不気味というよりは、何だかあったかくてほっとする空間だった」と話し、生と死の間で記憶をつなぎとめる衣服の存在に強く心惹かれたそうです。生と死の間にある衣服は、三途の川で死者の衣服を奪う「奪衣婆(だつえば)」と、この世で初めての命を取り上げて産着を着せる「取上げ婆」によっても、日本の文化において象徴的に表されています。国際センター青森で展示された作品は、《river of oblivion/ 忘却の川》というタイトルで、少しだけオリジナルの色を残して白く漂白された衣服が天井からつるされています。永遠へと旅立つ魂の浄化と、また残された衣服に亡き存在の記憶を抱いたまま生きる人々がやがてその記憶から解放され、川のように人生が流れていくことへの祈りが込められた作品となっています。

そして昨年の大震災の経験から、吉本さんは東北への想いをさらに強められたようで、作品制作のかたわら、東北に残る古い伝統ある儀式やお祭りを取材し、伝統を育む東北の風土、人々の生活と向き合うようになりました。
これらの吉本さんの活動、また過去の作品の詳細に関心のある方は、吉本さんのウェヴサイトへGO!

以上、レクチャーのご報告でした。開催からずいぶんと時間がたってしまい、申し訳ございません!! BUT!! 展覧会は6月24日(日)まで開催しています!まだ作品をご覧になっていない方は十分間に合いますので、ぜひ展覧会にお越しください。
(MRM)

前回に続き、愛知県美術館のある愛知芸術文化センター内の見どころをご案内します。

現在の愛知県美術館の収蔵品は7000点を超えていますが、これは1992年に開館した現在の愛知県美術館が収集したものだけではありません。前身である愛知県文化会館美術館時代に集められた作品も多く含まれています。その中でも特に早い時期(1959年)に収集された作品で古い美術館時代にロビーに展示されていたブールデルの作品をご記憶の方はあるでしょうか。ひょっとしたら文化会館時代に展示されていたのを記憶されている方は少なくなっているかも知れませんね。b施設写真034.JPG 

 写真をご覧いただくと、1992年に現在の愛知芸術文化センターが開館した時点ではすぐ目の前、現在のオアシス21のところに古い文化会館があるのが見られます。ほんの一時期ですが旧館と新館が同時に存在していました。この文化会館美術館は30年ほど県民のみなさんに親しまれました。その一階のロビーに入るとそこには当時としては珍しいフランス近代彫刻エミール=アントワーヌ・ブールデルの作品が展示されていたのでした。ブールデルは師ロダンやマイヨールと並んでフランス近代彫刻の重要な作家の一人です。
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 現在芸術文化センターの二階フォーラム部分ちょうど階段を上がったところにそのうちの《自由》の像が展示されています。この彫刻を見て旧館を懐かしく思い出す方もあるでしょう。


 この像は、もともとアルゼンチン共和国の建国の父アルヴェアル将軍(1788-1852)をたたえる記念碑のためにつくられた像です。記念碑全体は1912年に注文を受けてから13年後の1925年にブエノスアイレスで除幕式が行われました。その3年前、サロン・ド・チュイルリーにはじめて発表した際、多くの芸術家たちがこの作品が南米に運ばれてしまうのを惜しんだと言われています。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある《アルヴェアル将軍の記念碑》の中央の高い台座の上には将軍の騎馬像が掲げられ、その台座の下方四隅に置かれたのが、《力》、《勝利》、《自由》、《雄弁》と名づけられた4体の像でした。 
 ブールデルは将軍をたたえる徳を4つの人物像にあらわしました。持ちものや身につ
けるものがそれぞれの像の特性を象徴しています。すなわち、《自由》は樫の木を、《力》はライオンの毛皮を身にまとい、《勝利》は剣と盾を、《雄弁》は巻物を持っています。
 4体の像の大きなヴァージョンは箱根の彫刻の森美術館で見ることができます。また、アルヴェアル将軍の騎馬像のほうも日本には「馬」だけがあります。高崎市の「群馬の森」のなか、群馬県立近代美術館の正面入口近くに置かれている《巨きな馬》がそれです。将軍は乗っていません。高さが4.5mとブロンズの馬の彫刻としては日本一の大きさだとのこと。どちらもそれぞれのウェブサイトで写真を見ることができます。芸文センターの2階フォーラムで《自由》をご覧になるとともに、ウェブサイトを検索してみては如何でしょうか。

(S.T.)

本日、「魔術/美術」展は二万人目のお客様をお迎えいたしました。岐阜からいらっしゃった三名様。館長より、カタログとオリジナルグッズ、キャンドル等がプレゼントされました。おめでとうございます。
 
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また、二万人達成を記念して、明日、6月13日(水)より魔術展のB3ポスタープレゼントを行います。魔術展のオリジナルノート、オリジナルクリアファイルのうち二点をお買い上げのお客様に、もれなくB3ポスターをお渡しいたします。ノート2冊、クリアファイル2冊、それぞれを1冊ずつでもオッケーです。 
 
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ポスターに使われているのは、中村岳陵の《都会女性職譜・奇術師》(1933年、三重県立美術館)です。1933年と言えば、昭和モダンが花開いた時代。短髪、洋装の女性や、アール・デコ様式のデパート、カツレツなどの洋食などが街を彩りました。また、江戸川乱歩の怪奇小説をはじめ、大都会は時に妖しいサスペンスの舞台ともなりました。本作品にもどこかミステリアスな雰囲気が漂いますね。
 
「魔術/美術」展、残すところ二週間弱です。
 
(F.N)

想像力と創造力

2012年06月07日

 先日、「魔術/美術」展の記念講演会ということで、作家の平野啓一郎さんにご講演いただきました。講演タイトルは「想像力と創造力」。ロマン派、象徴主義、ダダイズム、そしてシュルレアリスムへいたるヨーロッパの美術が、どのように目に見える現実を越えようとしたのかについて、魔術的な物事の捉え方という点からお話いただきました。西洋の哲学思想や社会背景をずいぶんとかみ砕いてご説明くださったので、とても分かりやすく知的好奇心を刺激される内容でした。

 また、幼少期、恐がりだった思い出や怪しげな心霊番組の思い出なども語ってくださり、平野さんにぐっと親近感を持った方も多いのではないでしょうか。 

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 最近では、平野さんが新たに翻訳された『サロメ』の舞台も話題になっています。これまでの豪奢な翻訳とはちょっと違う現代的な感覚の訳になっているとのこと。

『サロメ』と言えば「魔術/美術」展にも関係のある作品があります。出品作、オディロン・ルドンの版画《夢の中で?. 幻視》(1879年)には、ギュスターヴ・モローの《出現》シリーズからの影響が指摘されています。

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↑《夢の中で?. 幻視》1879年、岐阜県美術館所蔵

 

 

 モローの画像については、こちらオルセー美術館のウェブサイトをご覧になるとお分かりの通り、左側にサロメを右上に聖ヨハネの首を描いていますが、ルドンの場合は左側に男女、右上には目玉が描かれています。モローが『サロメ』の物語を大変ドラマチックに表現しているのに対し、ルドンの方は明らかな物語性が感じられません。むしろ、はっきりとした意味が分からないところが人を不安に陥れますね。

 

 

 魔術展の関連イベントについてですが、記念講演会も終了し残すところわずかとなりました。6月9日(土)と6月15日(金)のギャラリートークほか、9日にアートラボあいちで行われるワークショップ「ラボ・マジック・サークル」となります。魔術展を存分に楽しめるこの機会、みなさん、逃さないでくださいね。

 

F.N

 展覧会を目当てに芸術文化センターへ来られるみなさんは、美術館(8階、10階)へ直行される方が多いと思いますが、芸術文化センターの建物の中にはモニュメント的に置かれた美術品(愛知県美術館の所蔵作品ではありませんが)があちらこちらにあることをご存知でしょうか?

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 正面2階のペデストリアンデッキには、彫刻家の速水史朗さんの作品「阿吽」が大きく構えています。芸術文化センターの建物が巨大なので一見すると大きく感じられないかも知れませんが、近づくと大きな黒御影石の存在感が迫ってきます。速水史朗さんは1927年香川県生まれです。徳島大学工学部卒業ですが、瓦づくりの技法を使った陶の作品や石彫を造られています。芸術文化センターのようにモニュメンタルな作品も多く、インターネットで検索するとここの「阿吽」の写真が出てきます。

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 設計段階では何を置くかは定まっていませんでしたが、建設前の模型を見ると丸いものが据えられています。芸文模型2.JPG

この模型も芸術文化センターの2階フォーラムで見ることができます。今度来館されるときには一寸足を止めてみてください。

(S.T.)