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 現在愛知県美術館のラウンジ(エルンスト展を出たところ、コレクション展の入り口手前で八角形の空間)では、庄司達《黄色い布による空間(糸の柱)》を展示しています。この場所は自然光が入ってくる場所で、晴天のときは大変明るい空間となります。その明るさに負けない、鮮やかな黄色の布を使った立体作品が吊るされています。

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 この作品は1998年に開催した企画展「久野真・庄司達展」のときに、この場所、この空間を見て作家が新たに制作したものです。展覧会後、愛知県美術館の所蔵品となりました。数年に一度となりますが、ときどきこの空間に戻ってきます。
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 布を素材としたこの作品は軽やかで、無数の糸に引っ張り上げられた布が作り出す造形美と場所を意識して選定された色合いとによって、魅力的な空間が創出されています。作品自体は緩やかに凹面を形作り、光を掌で受けているようでもあります。近づいてみると布が織りなす襞が山並みを上空から見下ろすようでもあります。
 最初にこれを展示したときは、当時の写真をご覧になるとわかると思いますが、たくさんの人の手と長い時間をかけて吊り上げられました。

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 庄司さんのこうした立体作品は、量塊や自立する垂直性といった伝統的な西洋彫刻が目指したものから解き放たれた、柔軟で設置される空間をも作品化するインスタレーションに近いものとも言えます。美術館のロビーに入るとまっすぐ正面に見えますので、是非来館の際は、遠くからと近くからとで鑑賞してみてください。(ST)

 8月21日から碧南市藤井達吉現代美術館では、企画展の「原裕治展ーかたちの奔流と止水ー」の会期と同時開催として、愛知県美術館サテライト展示「杉本健吉が描く『新平家物語』」が公開されています。

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 「原裕治展」は59歳という若さで亡くなった愛知県の彫刻家を回顧する展覧会です。愛知県立芸術大学時代の初期の具象彫刻から、抽象への変化、そして晩年に至るまでのそのあゆみを跡づけた、大変見応えのある展覧会です。愛知県美術館が所蔵している2点の作品も同会場でご覧いただけます。

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 20日にあった開会式には式典の行われたロビー部分に入り切れないほどの大勢の招待者があふれ、展示作品には、この作家の魅力を改めて認識させられました。

 

 この原裕治展と同時開催で、地下の展示室4を会場として愛知県美術館所蔵の杉本健吉作品の中から、いまNHKテレビでも話題?の平清盛を題材とした作品を公開しています。

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 もともとは1950年から吉川英治原作で週刊朝日に連載され大変な人気となった『新平家物語』の挿絵として描かれたものです。杉本健吉の名を広く世に知らしめたことでも記憶されています。杉本の巧みな筆さばきを間近ご覧いただけます。是非碧南市藤井達吉美術館まで足をお運びください。

(S.T.)

ARCH vol.2 荒木由香里

2012年08月22日

APMoA Project, ARCHは、若手アーティストを継続して紹介するプロジェクトです。


"APMoA" は愛知県美術館の英語名 "Aichi Prefectural Museum of Art" の頭文字、ARCHは、このプロジェクトがアーティストと鑑賞者の皆様をつなぐ架け橋となるようにとの思いが込められています。

 

2回目となる今回は荒木由香里さんに展示をお願いしました。


荒木さんは三重県の出身で名古屋芸術大学を卒業し、この地域を拠点に活動をしています。

その制作の特徴は、私たちの身の回りにあるごくありふれたものを素材として、これを一つの立体作品とするものです。

これまではコンパクトで洗練された美しさが何よりの魅力でした。

それに加えて近年は、屋外の広い環境の中に作品を設置したり、より大きな規模の制作を志向するようになってきました。

また、それまでの豊かな色彩によるものから、ホワイト、イエロー、ブルーといったモノトーンによる制作を展開しています。

そんな荒木さんが、美術館の空間を使って大きなスケールでの展示を行っています。  

 

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↑ 《Yellow》 2012年         撮影:尾崎芳弘

 

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↑ 《White》 2012年         撮影:尾崎芳弘

 

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↑ 《Blue》 2012年         撮影:尾崎芳弘

 

8月11日の土曜日には、荒木さんによるアーティスト・レクチャーが開催されました。

これまでの作品写真を見ながら「何故、このようなものを使って制作するようになったのか」、「これまで制作活動をどのように展開してきたのか」といったことを話されました。

はじめの頃、靴にそれを履いていた人の物語があると感じて、それを作品に使うようになったこと。また、ある時から、宇宙に浮かぶさまざまなものが集まって星ができたように、自分の制作を意味づけるようになったこと。そして具体的な目的や機能をもって作られたものが、作品となった時にそれを失って形だけが残るということへの関心から、今回の「何ものでもある 何でもないもの」というタイトルに結びついているといったことなど、作者本人からでなければ聞けない興味深い内容の話を伺うことができました。

レクチャーが終わってから、場所を展示室に移して、荒木さんを囲んで実際に作品を観ながら、質問をしたり、個々の作品について話をしたりと、参加された皆さんには荒木さんの制作と作品を知る上でまたとない機会になりました。

 

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↑ レクチャーの後、展示室で荒木さんと一緒に作品を鑑賞。


荒木さんはまた、仲間のデザイナー、写真家の3人で「MYY BOOKS」という私家版の本を作っていて、その3冊目として今回の展示に合わせた『何ものでもある 何でもないもの』を制作したことも紹介されました。

この本は100冊余りしか作られないとのことで、それも表紙の色や用紙を止めているゴムの色がさまざまで、楽しみながら作られた私家版の魅力を味わうことができるものです。

 

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↑ オリジナルの本『何ものでもある 何でもないもの』。

 

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↑ 中には、作品の写真が。


9月9日までの展覧会会期中、美術館のショップで販売しています(1冊1,000円)。

こちらもどうぞお見逃しなく!


(M.M.)

 

日本美術教育学会

2012年08月19日

 8月18日、19日の二日間に亘って愛知芸術文化センターで第61回日本美術教育学会学術研究大会が開かれました。大変盛況で二百名ほどの参加者がありました。

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 この大会では学会とともに愛知県美術館も主催者として協力し、愛知県美術館と地域の学校の先生方との連携による鑑賞活動について、担当学芸員と愛知県美術館の鑑賞学習ワーキンググループのメンバーの先生と共同発表も行いました。

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 その連携の活動の一つの成果として、今年愛知県下の小中学校すべてに「あいパック」と名づけられた鑑賞補助ツール(作品写真のカードやポスター、鑑賞授業の指導案など)を配布したことも報告しました。多くの関心が寄せられ、またその連携活動の実践について高く評価されました。

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 近年、学校美術の中で表現活動だけでなく、鑑賞活動の重要性に目が向けられるようになっています。学習指導要領の中でも地域の博物館、美術館との連携がうたわれるようになっています。
 それぞれの地域で様々な試みがなされていますが、愛知県美術館はかなり以前から有志の先生方との研究会を重ねてきており、美術館からの一方的な情報提供ではなく、現場の先生方の意見を取り入れながら、また、子ども鑑賞会などでは先生方が強力なサポーターとして連携をしてきたことが実っています。

 また、今回の大会では、あいちトリエンナーレ2010の関連事業として行われたアーティスト派遣事業の成果なども発表があり、作品展示などもありました。a日本美術教育学会10.jpg

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 (フジイフランソワさん指導の飛島村の中学生の共同制作の作品)

 愛知県美術館の教育普及事業も地域の先生方に支えられながら進んでいます。興味のある方はホームページの先生方のページを覗いてみてください。(ST)

ポロック展 その後

2012年08月16日

  

 昨年11月から今年1月にかけて、愛知県美術館はジャクソン・ポロック(アメリカ,1912-56年)の生誕100年記念回顧展を開催しましたが、ポロック生誕100年本番の今年、小規模なポロック展が本国アメリカでもいくつか企画されています。その内の1つが先月ニューヨーク州のブリッジハンプトン(マンハッタンから車で二時間半)で行われたので、休暇を取って3泊5日の強行軍で行ってきました。

 

 

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▲ ArtHamptons 2012 でのポロック生誕100年記念展&パーティの案内状。

 そのポロック展は、今年で5回目を迎えたアートフェア「ArtHamptons」(2012年7月13-15日)の会場内の一角で、フェアの関連イベントの1つとして企画されたものです。開催地ブリッジハンプトンは、ポロックが最後の10年を過ごしたイースト・ハンプトンのすぐ隣なので、ポロックに対して特別な思いがあったのでしょうね。

 

 

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▲ ポロック展&パーティの会場。入場料は75ドル(1ドル=80円とすると6000円)もしましたが、大勢の人々が集まっていました。ハンプトンは高級避暑地なので、セレブっぽい人もチラホラ見かけました。

 

 

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▲ スタッフが手描きでポロック風に仕立てたパーティ会場のテーブルクロス。

 展示作品は愛知県美術館の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」にも出た版画作品が中心で、あとはポロックの関連写真などがたくさん飾ってありました。けっきょく油彩画や素描はなかったのですが、特にがっかりはしませんでした。というのは、私の今回のお目当てはポロックの作品ではなく、愛知県美術館にゆかりのある別のものだったからです。

 

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▲ 愛知県美術館でのポロックのアトリエの原寸大再現。

愛知県美術館の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」では、ポロックの特殊な制作空間を体感できるように、アトリエの原寸大再現を行いました。特に重要なのが絵具の飛び散った6.5 x 6.5 m の床面で、この忠実な再現のために、イースト・ハンプトンに現存する本物のアトリエにカメラマンさんを派遣して床面を数十分割で写真撮影してもらいました。その分割画像を日本で専門家に繋ぎ合わせてもらって、シート状に打ち出して仮設の床板に貼り付けました。
 「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」終了後、私たちのこの試みを聞きつけたArtHamptonsのスタッフからメールをいただいて、「今度のArtHamptonsでもポロックのアトリエの床の再現をやりたく、愛知県美術館で作った床面画像が欲しい」とのことでしたので、お役に立てれば光栄と、喜んで画像を提供したのです。それがArtHamptonsではどんなふうになったか、ぜひ自分の目で見たくてブリッジハンプトンまで出かけた次第でした。

 

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▲ ArtHamptons 2012 の会場のエントランスに設置されたポロックのアトリエの床面複製。

 

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▲ これはArtHamptonsで再現された床面を写したものですが、こうして画像で見ると、本物を撮影した画像とほとんど区別がつきません。

 その他にも、ArtHamptons 2012 の会場のあちこちで、いろいろなポロック関連のイベントが行われていました。

 

 

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▲ エド・ハリス監督・主演の映画「ポロック―2人だけのアトリエ」(2000年)の撮影に使用された、エド・ハリス自作のポロック絵画のイミテーション。右側の茶褐色地の作品は、オリジナルが特定できないレベルの代物でしたが、左の《肖像と夢》(1953年)を真似た方は、なかなか良く出来ています。逆に言えば、塗料を流し込み撒き散らすポロックの「ポーリング」というテクニックは、下手な模倣はできても、やはりポロックならではのものということなのでしょうね。

 

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▲ 身につけたドレスを地面に釘刺して、自らの身体を大地に繋ぎとめるアンドレア・コートのパフォーマンス(2012年7月13日)。

 

 

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▲ 全身を白く塗った裸の男女二人のモデルに、青・黄・赤の三色のペンキを投げ掛けるクリスティアン・ヴェローノのパフォーマンス(2012年7月13日)。

 この秋には、ポロックの甥っ子さんがニューヨークでやっている画廊などでも、ポロックの個展が企画されています。そんな中、当館がポロック生誕100年記念展としては世界最大規模のものを開催できたのは大きな喜びです。ご協力くださった皆様、どうもありがとうございました。

(T.O.)

 現在開催中のエルンスト展では、作品の保存上の観点から、会期中盤に当たる8月13日(月)の休館日に一部作品の展示替えが行われました。

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たとえば、フロッタージュの技法がよく分かる《博物誌》のシリーズでは、10点の入れ替えが行われました。紙の作品はどうしても光に弱いので、照明の照度を落とすだけでなく、展覧会の会期中に入れ替えを行うことが美術館ではよくあります。

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 展覧会担当者は、慎重に作品の状態チェックをした上で、新たな作品の入れ替えを行います。展示そのものは作業員が壁に取り付けますが、担当学芸員はしまう作品に問題がないかをチェックしています。

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 また、この機会を捉えて、個人所蔵家の作品のうち額装に難点が見つかっていた作品を、所蔵者の許可を得て、一旦額から外して、額のメンテナンスなども行いました。

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 こうして展覧会の会期中でも状態チェックやメンテナンスが行われています。作品保護のため一度に全ての作品をご覧いただけなくて申し訳ありませんが、もう一度展覧会へ足を運んで見ていただけたらと思います。(ST)

 現在開催中のマックス・エルンスト展では、関連企画として美術館ロビーにフロッタージュコーナーが設けられています。「フロッタージュ」というのはエルンストが多く作品制作に使った技法のひとつです。「擦り出し」ともいいますね。

 

 今回の展覧会はエルンストの様々な技法を見ることが出来ますが、手軽に試すことのできるフロッタージュを作品鑑賞の後で、実際にやってみて、「やっぱりエルンストは巧みにこの技法を使っているな」と実感できるコーナーになっています。

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 今は夏休み中でもありますので、いつも以上の多く訪れる小学生から大人の方までが楽しまれています。案外大人の方が最初は机の上にあるさまざまなもの(ザルや材木の切れ端やお菓子の缶など)を見つけて最初は怪訝な様子。

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でも、やってみると案外面白くて、ついつい時間が過ぎるのを忘れて、用意されている紙を何枚もつかって力作を作られています。

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自分の作品を壁にピンナップしてにっこりという方も多く、毎日壁がフロッタージュ作品でいっぱいになります。皆さんも来館の際はぜひ試してください。(ST)  

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夏休み子ども鑑賞会

2012年08月06日

 夏休み子供鑑賞会が始まりました。

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 暑い夏がやってくると涼しい(人のためでなく作品保存のために温度や湿度の設定がされています)愛知県美術館では、恒例の夏休み子供鑑賞会が行われます。

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 今年の夏休み子供鑑賞会が8月2日から始まりました。初日は小学校3,4年生が対象で1時間ほどの展示室での作品鑑賞(コレクション展を中心に見ます)と30分ほどのワークショップの組み合わせで、開催中のマックス・エルンスト展に合わせて、エルンストのおこなった技法のフロッタージュを実際にやってみるプログラムです。

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 最初はちょっと緊張気味を子供たちも、鑑賞の先導役をしていただいているボランティアの方たち(現役の先生や元先生、学生)のやさしい導きで、とても愉しんでいました。中には子供鑑賞会のリピーターもいて、すっかり愛知県美術館に馴染んでいる子もみられます。
 子供むけの鑑賞会は、15年以上まえからスタートしていますが、「夏休み子供鑑賞会」として定例化したのは2000年からです。現在愛知県美術館友の会の学生会員のなかには、小学生の頃に子供鑑賞会に参加していた人もいます。今年の鑑賞会の受け付けは締め切られていますが、美術館のサポーターがすこしでも増えていくことを願っています。(ST)