2014年01月12345678910111213141516171819202122232425262728293031

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▲当館で使用しているスポットライト(ハロゲン)

 1992年の開館に合わせてメーカーに特注で作ってもらった「愛知県美術館仕様」です。特注にあたり、光の中心部が特に明るくなったり、周縁部に光の輪ができたりしないよう、また、スパッと切られたように光の外側が暗くなるのではなく、適度に減衰して輪郭が目立たないよう、試作を繰り返して完成されました。

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▲展示室で照明作業中のSS学芸員

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▲照明作業完了後の展示室

 スポットライトは劇場やテレビ局のスタジオなどから街のショップまで、さまざまなところで使用されていますが、美術館で使われるものは、貴重な美術作品用の照明として特別な性能を備えています。

 愛知県美術館のスポットライトはハロゲンです。他館ではLEDに切り替えているところもありますね。ハロゲンとLEDは構造が違うので、詳しい話は個別にしないといけないですが、美術館用のスポットライトについて総じて言うと、まず電球自体が、作品の変色や退色の原因となる紫外線や、作品の表面温度を上昇させて乾燥によるヒビ割れなどを引き起こす恐れのある赤外線を、極力発しないものになっています。また、照明を当てた時、作品が本来持っている色が照明のせいで変に違って見えず、なるべく自然に見えるような配慮も十分になされて作られています。さらに、電球が取り付けられる本体にも、それでも電球からいくらか発せられてしまう紫外線をカットするためのフィルターが装着されていたり、赤外線を作品とは逆の方向に逃がす仕掛けが施されていたりします。

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▲愛知県美術館仕様スポットライトの内部(上から順に5度=very narrowタイプ/10度=narrowタイプ/20度=flatタイプ/30度=wideタイプ/40度=very wideタイプ)

 愛知県美術館仕様のスポットライトは、外見上デザインが統一されていて、内部を見ないと分かりませんが、光を発する角度によって5種類(5度、10度、20度、30度、40度)に分かれています。5度のものは、電球回りの椀状の銀色のパーツの表面にあまり凹凸がなく、かなりツルツルしています。鯖の腹のようですね。これが40度になると、パック詰めされたイクラみたいに凸が激しくなります。30度のものは、アワビの殻の内側のような美しい輝きを放っています。

 角度が大きくなるほど光の当たる範囲は広くなっていき、その分、同じ面積あたりでは光は弱くなっていきます。それで私たち学芸員は、作品の種類(油彩画、日本画、素描etc.)に応じた照度制限や作品のサイズなどを考慮して、適切な角度のものを適切な数選択し、照明を行っています。

 先に少し触れましたが、近年ではLED照明を導入している館もあります。ハロゲンと比べた際のLEDの大きな利点としては、省エネであること、電球の耐久性が高いこと、発する赤外線の量が少ないことなどが挙げられます。また、ハロゲンだと、その性質上、光の色はオレンジっぽい色のみなのですが、LEDだと、もっと白っぽい光を出す種類のものもあり、展示する作品に合わせて光の色をいくつかの中から選択することができます。

 ただ、LEDの性能はまだ進化の途上ですので、どの段階で導入するのが適当かの判断は簡単ではありません。またその前に、この長引く財政難の中でLED導入の予算を獲得することも、当館としては現時点で難しそうです。そして、ハロゲンの光には、その柔らかな感じなどハロゲンならではの良さもあり、それはそれで捨てがたい気もします。しかし、あいちトリエンナーレも含めて今後愛知県美術館が多様な展示に全体的としてより良く対応していくためには、やはりLED導入を考えていきたいと思っています。
(TO)