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 先日閉幕した「アイチのチカラ!」展では、多くの美術ファンの方やこの地域の美術に関心をお持ちの方にご来場いただきました。会期中に開催した記念座談会「戦後愛知のアートシーン」では、パネリストの方々から貴重なお話に加えてさまざまな課題のご指摘もいただき、またご来場のみなさまからも「興味深く見ることができた」「愛知には優れた作家が多くいることが分かった」「コレクションだけでこれだけの展示をやれるのは評価できる」「楽しめたが、欠落した美術動向や作家があったのは残念」といった様々なご感想やご意見をいただきました。

 当館では、1993年に開館記念事業の一つとして「20世紀 愛知の美術」を開催し、明治期の画壇の成立から、大正、昭和までの美術動向を中心におよそ1世紀に及ぶ愛知の美術の展開を、93作家、131点の作品で概観しました。この展覧会は、多くの作品を県内外の美術館や所蔵者から拝借し、当館のコレクションからはわずか39点の出品にとどまっていました。また、その39点の作品のほとんどは、1992年の開館以前、愛知県文化会館美術館時代に収集したものでした。

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▲「20世紀 愛知の美術」展カタログ

 それから現在にいたるまで、当館では愛知に関係する作家や作品の収集に取り組み続けてきました。開館以来20年ほどの歳月をかけたこの収集活動によって、コレクションは質量ともにより充実したものになりました。特に近年は、若手作家であっても現在の制作活動や将来性に注目し、その作家の代表作と目される作品は積極的に収集してきています。そこで、「20世紀 愛知の美術」ではあまり触れられなかった、戦後の動向に焦点を絞ったかたちでのコレクション展を企画し、皆様にもご覧いただくことを考えました。もちろん、コレクションだけで愛知の美術動向すべてを網羅できるわけではありません。特定の作家や、そもそも収蔵が困難な美術動向などに欠落のあることは当然のことですが、それでも愛知県文化会館美術館から数えれば半世紀を超える活動の中で蓄積してきたこれらのコレクションを、実際に展示してみることの意義は大きいと考えたわけです。こうして、当館のコレクションから91作家、133点の作品で構成した「アイチのチカラ!」展を開催することになりました。

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▲「アイチのチカラ!」展会場風景

 私たちがこの展覧会で目指したこと、そしてその成果についても触れておきたいと思います。まず、戦後愛知の美術状況を、愛知県文化会館の設立(作品発表と鑑賞の場の誕生)、芸術大学の開学(教官の制作活動と若手作家の育成)などとも絡めながら概括的にお示しできたのではないかと思います。そして何より、この地方の美術の厚みと広がり、その魅力の一端に触れていただく格好の機会になったのではないでしょうか。さらに言えば、このような美術の厚みと広がりこそが、ここ愛知でトリエンナーレを開催する基盤ともなっていることも感じ取っていただけのではないかと思っています。
 
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▲あいちトリエンナーレ2013での愛知芸術文化センターの様子

 一方で、様々な課題も浮かび上がってきました。一番大きな課題は、当初から想定していた通り、未収蔵の作家や美術動向をどうするかということです。この点については今後、時間はかかるでしょうが、それを補うことも意識した収集活動をつづけることで、より充実したコレクションを形成していきたいと考えています。その過程では、例えばモノとしての作品が残されていない過去の美術活動を、映像記録などの二次資料でどのように収集・公開していくかといった課題にも取り組んでいく必要があります。「APMoA Project, ARCH」や「あいちトリエンナーレ」をご覧いただいてもお分かりのとおり、美術の表現と領域はいまなお急速に拡大しつつあります。従来の美術館がコレクションの前提としていた絵画や彫刻は、もはや美術のほんの一部でしかないような状況も生まれてきています。スケールの点でも、インスタレーションのような作品の成り立ちの点からも、従来の収蔵という枠に収まらない作品が美術館の周りにはあふれています。これにどのように対応していくのかも、今後の大きな課題です。また、過去の美術や美術動向を捉える歴史的な視点や、現在の美術を評価する姿勢についても、一つ所にとどまることなく、それ自体をつねに問い直すことも忘れることはできません。

 美術状況ばかりでなく、美術館というシステムそのものの限界や、運営面での制約もあります。そして、もとより当館のコレクションだけで、愛知の美術の動向や歴史を語りつくせるものではありません。それでも、チャレンジしなければ、何ら具体的なかたちで皆様にお示しすることはできません。そんな思いを込めて、今回「アイチのチカラ!」を開催いたしました。今回皆様からは、肯定的な評価のみならず、さまざまなご意見やご提案などもいただくことができました。それらを受け止めながら、いつの日かまたチャレンジすることになるであろう次の「アイチのチカラ!」に向けて、コレクションの充実や調査研究に取り組んでいきたいと考えています。

館長 村田眞宏