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藤井達吉の〈継色紙〉

2014年04月26日

 愛知県美術館のコレクションは20世紀以降の国内外の美術を中心としたものですが、その他にまとまったコレクションが二つ含まれています。ひとつはこれまでこのブログでも何度か取り上げてきた「木村定三コレクション」、そしてもうひとつが「藤井達吉コレクション」です。このコレクションは、愛知県碧海郡棚尾村(現在の愛知県碧南市棚尾地区)に生まれた工芸家・藤井達吉(1881-1964)が1953年に愛知県に寄贈した自身の作品と、彼が収集していた美術・工芸作品を含むものです。最近この藤井達吉による〈継色紙〉のシリーズの再調査を行っていますので、その様子を少しご紹介します。

 藤井は岸田劉生を中心としたフュウザン会に唯一工芸家として参加するなど、当時最先端の美術動向を鋭敏に捉えながら近代的な芸術としての工芸を追究した作家で、その作品は螺鈿、七宝、刺繍、染織、金工など多様な技法を自在に組み合わせた非常に斬新なものでした。そんな藤井が晩年好んで行ったのが、平安時代の和歌の料紙(書に用いる和紙)の技法「継紙(つぎがみ)」を継承・発展させた、継色紙(つぎしきし)。色や模様、質感の全く異なるさまざまな紙を継ぎ合わせることで一枚の料紙を作り、そこに墨で歌を書き付け、さらに顔料や箔、螺鈿で植物などの姿を描き出すという、一種の総合芸術です。

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▲軸装された継色紙。赤い円の部分を拡大すると…

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▲…こんな感じで異なる紙が継ぎ合わされています。

 この継色紙が生まれた背景には、愛知県西加茂郡小原村(現在の愛知県豊田市小原地区)で農閑期の副業として行われていた紙漉きとの出会いがあります。1932年、藤井は小原村で野草を漉き込んだ和紙を目にし、染色したコウゾ(和紙の原料)を絵具の代わりにして絵や模様を漉き込む技法を発案し、和紙工芸の指導を行いました。それ以降、藤井は様々な風合いの和紙制作を研究し、さらにそこに別の紙を継いだり布や貝などを貼り付けたりすることで、この継色紙という技法を生み出しました。

 使われている材料が多岐にわたるうえに、藤井独自の技法も加わっているため、作品の基本的な情報である素材や技法を正確に同定するには時間がかかります。いずれまとまった形で皆さんにお披露目することを目標に、今後も調査は続きます。
(KS)

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