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 早いもので2014年も残りわずか。館職員の間では年末の大掃除の話が聞こえてくるようになりました。その大掃除に先駆けて、このたび当館では収蔵庫内の大整理を行いましたので、その様子をご紹介したいと思います。

 日頃たくさんの作品が眠る収蔵庫。普段は関係者しか入ることができない美術館の深層部ですが、このブログではこれまでも、美術館の裏側をご紹介する記事でしばしば登場してきましたので、中の様子をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
●収蔵庫での作品受け入れ準備 2010年7月16日
●裏方通信 さらしの話3 2010年7月6日
●裏方通信 収蔵庫の話 2009年8月1日

 愛知県美術館が1992年に現在の場所、愛知芸術文化センター内に開館する際には、継続的に作品を収集しコレクションを充実させていくことを考えて、収蔵庫はかなり余裕をもった収納スペースを確保して作られました。それから約20年。この間にあった購入や寄贈によって、美術館の所蔵作品は着実に増えていきました。そのなかには「木村定三コレクション」のように、何千点もの作品が一括寄贈されるという出来事もありました。コレクションの充実は美術館にとって良いことなのですが、ここで問題になるのが作品の収納です。

 作品の収納については他の館でも頭を悩ませているところが多いと聞きます。愛知県美術館は現在、約8000件の作品を所蔵していますが、コレクション展に常時約100点の作品が出ているとしても、残りの数千点の所蔵作品を収蔵庫で収納するために、これまでの収納方法のままでは限界が近づいていました。そこで今回の大整理では、収蔵庫内の一部、箱に入った作品の収納棚の増設と収納方法の見直しを行いました。

 まず、収納されていた作品を全て移動させます。

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▲作品移動後の風景。

 

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▲仮置き中の作品。各作品に付けられたタグには、作品タイトルや作品画像が載っています。作成には友の会サポート部会の皆さまにご協力いただきました。これがあると箱の中身が分かり易くて助かります。

 

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▲今回の整理にあわせて、作品の点検作業も行いました。約2000点の作品を1点ずつ開梱し、状態を確認します。こうした作業は作品の扱いを学ぶ良い機会になります。今回は桐箱に入ったものが多かったので、真田紐の結びを繰り返し覚えました。

 

 

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▲棚の増設が完了すると、作品を元の場所に戻します。いかに効率よく、かつ取り出しやすく収納するかというテトリスゲーム…一番難しかった作業です。(テトリスってまだ通じるのでしょうか?)

 

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▲収納完了!落下防止のためのネットも設置されました。

 

 作品群を移動させてから元の場所に戻すまで約1週間の過密スケジュールでしたが、なんとか予定していた作業を完了させることができました。「これが済まなければ2014年を終えられないからね…!」という(今年度初めからかけられていた)プレッシャーから解放されて、担当職員一同ホッとしています。溢れかかっていた作品がすっきり納まって、しかも収納場所にまだ少し余裕まである様子を見ると、感慨もひとしおです。残るは、今回の収納にあわせて棚にラベルを貼っていく作業。どこに何が収納されているのかが分かり易く目の前に示されている、そんな光景が見られる日も近いはずです…(願望)。


(タイトルS.K、本文N.H)

 

刀剣の手入れ

2014年12月11日

 今回は、学芸員も江戸時代の武士のごとく刀剣の手入れをします、というお話。
 相手を断ち斬る「武器」であり「武士の魂」である日本刀は、美術館や博物館で展示される美術品の一つでもあります。当館の木村定三コレクションのなかにも槍が含まれているのですが、美しく保存しておくためには定期的に手入れが必要。そこで京都国立博物館名誉館員の久保智康先生を講師にお迎えして手入れの方法を伝授いただくことに。
 手入れの内容は大まかには、刀に塗られた古い油を拭い取ることと、新しい油を塗ることです。油が少なくて揮発してしまったり、逆に塗りすぎたまま放置したりするとサビの原因になってしまうので、定期的に古い油を拭い、きれいな油を薄く引いておくことで、研ぎ澄まされた刃文や輝くような地がねの美しさをいつまでも保つようにするのです。

 

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▲まずは鞘を抜いて状態をチェック。美術品といえども刀は刀。手にしてみると独特の重みが感じられ、なかなかに緊張感があります。

 

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▲古い油を拭い取ります。昔は和紙を使っていたそうですが、現在はキズがよりつきにくいということでちょっと高級なタイプの極柔ティシューを使用。親指と人差し指で刃を挟んで、すーっ、すーっ、と手を動かして拭っていきます。しかし切れ味鋭い刀剣、ここで手の動かしかたを少しでも間違えると簡単に手を切ってしまうので、注意が必要です。
 

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▲次に「打粉」を打っていきます。ろうそくを灯した部屋で、口に紙をはさんだ武士が丸いふかふかした玉で刀にポンポンポン…、と時代劇で目にするシーンのアレです。打粉というのは砥石を粉末状にしたもので、これを薄く付けることで油を吸収する効果があります。(ちなみに口に紙をはさむのは、刀に唾が飛んでしまってサビるのを防止するため。)この後、もう一度打粉ごと古い油を拭い、きれいに拭えていることを確認して新しい油をひき、元の通り柄に戻し、専用の袋に仕舞って手入れは完了です。

 一つ間違えると事故になりかねず、緊張しながら手入れをするので、一通り作業を終えると「ふぅ」と一息つきたくなるような疲労感があります。しかしそれだけに、余計なことを考えずに目の前の刀だけに意識を集中して精神を統一する修行、という感じで心がなんとなく落ち着きます。

 

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▲今回手入れをしたのはこちらの槍。与謝蕪村や浦上玉堂などの江戸絵画、熊谷守一や小川芋銭をはじめとする近現代美術、古代遺物、茶道具、仏教美術…と非常に幅広い時代と地域の作品からなる木村コレクションですが、じつは刀剣類はこの槍が一振りあるだけです。木村氏がこの槍を買い求めたのは、「柄」の螺鈿細工の装飾を気に入ったからだそうです。究極的には人を殺すための道具である刀剣に関心があったのではなく、あくまでも自身の価値基準に照らして美しいと判断したものを収集していったという木村氏らしいコレクションの一つです。一点だけなのでなかなかコレクション展の構成に組み込むのが難しいところですが、いつか展示してご紹介したいと思っています。(S.S.)

▼螺鈿の装飾が美しい槍の柄

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