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愛知芸術文化センターでは、現在「アーツ・チャレンジ2015」を開催中です(3月1日(日)まで)。フォーラムと呼んでいるこの建築のエントランスや、地下2階から地上に出る階段の踊り場に相当する場所、11階の展望回廊など、通常はお客様が美術館や劇場といった目的地に向かって通り過ぎるため、ことさら意識に上ることのない空間に、若手作家の意欲的な作品が設置されて、センター内は非日常的で特別な雰囲気が現出しています。また、12階と地下2階のアートスペースも会場になっていて、見ごたえのある現代アート作品が展示されていると、ここもまたいつもとは違った空気が流れている感じを受けるでしょう。
 「アーツ・チャレンジ」は、このように愛知芸術文化センター内の美術館や劇場以外の公共空間に作品を展示するもので、厳密にいうと美術館の企画ではありません。とはいうものの、愛知県美術館がこの企画にまったくタッチしていない訳ではないのです。表立って我々学芸員が展示作業に立ち会うことは少ないのですが、裏方的な立場からのサポートは、かなりのものだと言っていいかもしれません。例えば、非常に地味ですが、展示作品の受け取りという仕事があります。現在開催中の「ロイヤル・アカデミー展」では、専用の美術作品輸送車で、展示する作品をまとまった形で搬入しましたが、この企画では個々の作家がそれぞれ作品をセンターに持ち込む形となります。そのため普通の宅配便で、バラバラのパーツに分解された状態で送られてきたり、あるいは作家本人がレンタカーを運転して搬入したり、といった具合で、その都度、担当学芸員が受け取りの対応を行うことになります。また、個別に届いた作品を、設営日まで保管する場所も確保しておかなければなりません。

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 12階アートスペースHに展示されている江川純太の絵画は、非常に巨大なものでそのままの状態で搬入することは出来ません。実はこの絵画の支持体は3つのパネルに分かれていて、分解したパネルと、巻いた状態にした画布を、屋外庭園から運び込んだのですが、その搬入経路を確保したり、普段あまり使用しないエレベーターを操作することもありました。

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フォーラムや展望回廊は、もともと展示用スペースとして設計されている訳ではないので、通常とは違った作業上の苦労があるのですが、アートスペースも展示室というよりは多目的スペースなので、スペースGの藤井龍の展示ではモニターを直に壁に設置するために、穴を空けても良い仮設の壁をわざわざしつらえたりしています。展示用に特化した展示室では考えられない困難もありますが、その分、展示が完了した時の充足感もまた特別といえるかもしれません。(T.E.)

 

ロイヤル・アカデミー展が開幕してから早くも2週間が経過しました。新米学芸員Oが副担当を務めております。今回初めて本格的に展示設営作業に携わったので、ここでは展覧会が作られていく展示室内の様子をお届けしたいと思います。実はこのロイヤル・アカデミー展はオーストラリアからの国際巡回展。日本では石川、東京、静岡と巡ってこの愛知県美術館が最終会場です。静岡の展示は1 月25日までということで、作品の到着を待つ間愛知県美術館では展示室内のディスプレイが進められていました。
 

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今回は布を使って壁を装飾していきました。ちなみにこの赤茶色は実際にロンドンのロイヤル・アカデミーで使われている壁と同じ色。このようにして展覧会のイメージに即した雰囲気を作っていきます。約20人の作業員さんたちの手にかかれば短時間で完成。
 

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どこにどの絵を掛けるかがすぐに分かるように、図録から図版をコピーして壁に張っておきます。これで展示の準備は万端。同時にこの頃、静岡市美術館では作品の梱包、および撤収作業が行われていました。私は早朝からの作業に備え、この日の夜から静岡入り。

静岡から名古屋間の作品輸送および愛知県美術館の展示作業は、ロンドンのロイヤル・アカデミーからクーリエとして来日した学芸員のヘレナさん、作品管理を担当しているエドウィナさんの立会いのもとに執り行われます。お2人ともとても気さくで良い方たちでした…!展覧会のオープニングから6日前、作品を積み込んだトラックは静岡市美術館から一路、愛知県美術館にやってきました。(トラックに同乗した私は途中、浜名湖のサービスエリアにてうなぎパイもちゃんと購入しました)
 

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しかし、作品を展示室に運び込んでもすぐに作業に取りかかれるわけではありません。場所を移動したことによって温湿度も変化するため、シーズニングといって暫くその場に置いて慣らすという工程が必要になります。
 

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展示作業は翌日午後から再開。専用のクレート(木箱)から取り出された作品は一点ずつ損傷がないか、クーリエたちによって入念なコンディションチェックが行われます。今回巡回先についてまわっている修復家の方は、コンディションチェックをするばかりではなく、額縁の欠けなどがあればクーリエの許可のもとその場で修復してくれました。このようにして96点の作品を3日間かけて点検していきます。(先輩学芸員からは当然との声が聞こえてきそうですが、基本的には終始立ちっぱなしです)
 

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点検を終えた作品からどんどん美術作品の輸送を専門とする業者さんの手によって定位置へと運ばれていきます。この展覧会の第一会場である石川県立美術館から同じスタッフが作業を担当しているため、作品の取り扱いについては誰よりも熟知している実に頼れる存在なのです。かなり重さのある大理石で出来たヴィクトリア女王の胸像も、見事な連携プレイによって着々と彫刻台に乗せられていきます。
 

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最終的にはロイヤル・アカデミー側から指定された照度に従って(絵画は200ルクス、版画は70ルクスまでと暗め)照明を調整し、現在はこのようになっています。照明や壁の色が重厚な雰囲気を作り出すのに一躍かっているのが、お分かり頂けるかと思います。

そもそもロイヤル・アカデミーとはロンドンに1768年に設立された、芸術家を支援するための芸術機関。当時、芸術家が作品を発表する場が整っていなかったイギリスにおいて恒常的に展覧会を開催するということを取り決め、また初めて美術学校の運営を開始したロイヤル・アカデミーは、現在の英国美術の礎を築いたといっても過言ではない存在なのです。今回は日本でその所蔵作品を公開する最大規模の展覧会となります!是非足をお運び下さい。(N.O)