2015年05月12345678910111213141516171819202122232425262728293031

現在開催中の企画展「『月映』」展とともに、当館展示室6では、APMoA Project, ARCH vol.14として名古根美津子さんの写真作品<New Self, New to Self>シリーズを展示しています。このシリーズは名古根さんのセルフ・ポートレートなのですが、すべて顔が隠されています。その隠し方が絶妙で、ほうきやアイロン、バスタオルなどの日用品を用いながら、ちょっと面白い、可笑し味のあるポーズで撮影されています。

先日の5月2日には、名古根さんによるアーティスト・トークが行われ、このシリーズが生まれるきっかけや制作方法など、いろいろなお話をうかがうことができました。1点の作品を制作するために、まず自宅のアパートの一部のスペースに壁紙を貼ったりしてセットを作り、セルフタイマーを用いながら自らポーズを取って、何十回、何百回と納得がいくまで撮影を繰り返すのだそう。ただポーズを取るだけではなく、体の各部分の力の入れ方によって、筋肉や筋の緊張感なども違ってくるらしく、そうした力加減を調節するのが難しいようです。

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▲「#34」<New Self, New to Self> 2011年
片足を上げたポーズがとてもつらかったのだそう…

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▲展示室で参加者の方からの質問に答える名古根さん

顔を隠してセルフ・ポートレートを撮影する理由は、学生時に与えられるセルフ・ポートレートの課題をこなしながら、「自分とは何か」ということを追究するのに限界を感じたから。今の自分より、自分がどうしたいのか、どうなりたいのか、現在ではなく未来を志向しながら、自己を作り出すことのほうが、楽しいと思えるから。
名古根さんの作品に出会って、APMoA Projectで紹介したいと思ったのも、この自己を創造する、というコンセプトに共感したからかもしれません。(あぁ、展覧会の準備で疲弊していた頃…(笑))

New Self, New to Self ― 新しい自分、自分にとっての新しいこと。
そんなワクワク、ドキドキを展示室でぜひ実感してほしいと思います。

(MM)

愛知県美術館では、開催中の『月映』展が好評を得ていますが、今回は、同時開催のコレクション展をご紹介します。というのも、今回のコレクション展、いつになく豪華な内容となっているのです!

まず、展示室4では、昨年度新たに収蔵した《Girl From the North Country》(2014年)を中心に、当館に寄託されている作品をあわせ、奈良美智の特集展示をしています。

愛知県立芸術大学出身の奈良は、あいちトリエンナーレにも参加するなど、この地域とも強い結びつきのある作家です。当館でも、その作品を収蔵したいとずっと考えていたところ、今回、とてもよい作品にめぐり会うことができました。

今回の展示は、大型の油彩から版画、ドローイングまで18点の作品を通して、作家の魅力を十分に味わっていただける空間となっています。当館に新たに仲間入りした“北の国の女の子”、どんな表情をしているのでしょうか…?ぜひ、展示室に会いに来てください!


さてさて、続く展示室では、なんとも奇跡的な組み合わせが実現しています。

展示室5では、常に当館のコレクション展の核となっている20世紀美術をご紹介していますが、現在このコーナーに、休館中の豊田市美術館からお預かりしている作品を展示しています。

豊田市美術館といえば、近現代美術のコレクションやユニークな企画展を目当てに、愛知県内はもとより全国からお客様が訪れる美術館ですが、今年秋に開館15年を迎えるに当たり、現在改修工事が進められています。この改修のための休館中、コレクションの中でも特に重要な作品を、当館でお預かりすることとなり、せっかくなので、当館の所蔵品とあわせて展示させていただくことになりました。

実は、豊田市美術館の近現代美術のコレクションの中には、当館の20世紀美術のコレクションと強いつながりのあるものがたくさんあります。その一つが、ウィーン分離派とその周辺の作品です。

当館の代表的名品と言えばクリムトの《人生は戦いなり(黄金の騎士)》ですが、豊田市美術館はクリムト後期の作品《オイゲニア・プリマフェージの肖像》(1913/14年)を所蔵されています。

 

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▲グスタフ・クリムト 《オイゲニア・プリマフェージの肖像》 1913/14年 豊田市美術館


1903年に、クリムトが独自の様式とテーマを追求しようと決心した頃の記念碑的作品《人生は戦いなり(黄金の騎士)》に対して、《オイゲニア・プリマフェージの肖像》は、画家の晩年の肖像画のスタイルをよく伝えるものです。国内の美術館に所蔵されているクリムトの油彩画は数点しかないのですが、その中でも特にこの2点は、画家の成熟期に制作されたという意味で特別な価値を与えられています。今回のコレクション展は、この2作品を同時に堪能できる大変貴重な機会となっているのです!

 

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▲このように、クリムトの油彩の名品を見比べることができます。なんて贅沢?


さて、この《オイゲニア・プリマフェージの肖像》を、当館の《人生は戦いなり(黄金の騎士)》と比べてみますと、かなりスタイルが異なっていることが分かります。《人生は戦いなり》が厳格な構図を持ち、金色を引き立てるような落ち着いた色彩で丹念に仕上げられているのに対して、《オイゲニア》の方は、鮮やかな色彩と大胆な筆遣いが目立ちます。

このような晩年のスタイルの変化には、クリムトより若い世代の画家たちの影響があったのではないかと言われています。その代表が、オスカー・ココシュカ(1886-1980)とエゴン・シーレ(1890-1918)です。そして、なんと今回は、同じく豊田市美術館のコレクションから、この二人の画家の作品もあわせて展示しています。ユーゲント・シュティールの影響下から出発し、それぞれ独自の表現主義的スタイルを確立したココシュカとシーレ。彼らのうねるような筆遣いを見ていると、クリムトの《オイゲニア》に通じるところあることが見えてきます。親子ほど歳の離れた若きココシュカやシーレの才能をいちはやく評価したクリムトは、自らの組織した展覧会で、彼らに作品発表の場を与えました。彼らと交わることによって、クリムト自身が新しい方向性を見出していったと言うこともできるでしょう。

クリムトの名品2点と、次世代のココシュカ、シーレの作品に囲まれれば、もう、気分は世紀末から20世紀初頭のウィーン・・・まるでウィーンの美術館を訪れたような気分に浸ることができます。

さらに、豊田市美術館の作品は、シュルレアリスムや現代美術のコーナーでも、当館の作品とあわせて展示させていただいています。当館が作品を所蔵するマックス・エルンスト、ジョアン・ミロ、イヴ・クラインといった作家たちが、豊田市美術館の作品が加わることで、ぐんと深い理解をしていただける展示となっています。こちらもウィーン・コーナーに負けず劣らずの見応えで、皆さんをお待ちしております。

現在の展示は5月31日(日)までとなります。どうぞお早目にお出かけください!

(S.N.)