2015年11月123456789101112131415161718192021222324252627282930

現在開催中のコレクション企画「線の美学」展は、当館が所蔵する古代から現代におよぶ様々な作品から、“線”を切口に選出、構成したものです。当館には考古遺物から現代アートまで、実に幅広く作品が所蔵されていることに、改めて驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 この企画展の特色の一つは、愛知県文化情報センターが所管していた「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」より、『フーガの技法』(2001年、監督:石田尚志)と『T-CITY』(1993年、監督:勅使川原三郎)が選ばれ、上映されていることでしょう。「オリジナル映像作品」は、“身体”を統一テーマに設定し、様々なジャンルの作家がそれぞれ独自性を発揮し、ユニークかつ実験的な作品を生み出してきました。ドローイング・アニメーションの『フーガの技法』と、水平・垂直線で構築された世界で展開するダンス・フィルム『T-CITY』は、どちらも線というテーマでも語ることができる共通点があります。
 もう一つトピックス的な観点からも、この2本には共通性があります。それは今年開催され話題となった企画展と、どちらも関わりが深いということです。『フーガの技法』の石田尚志は、横浜と沖縄で大掛かりな個展「石田尚志 渦まく光」を開催し、日本における注目すべき映像系の現代アーティストして、その存在感を示しました。この「渦まく光」展でも、『フーガの技法』は石田の代表作として、しばしば紹介された重要作品です。
 一方『T-CITY』は舞踊家の勅使川原三郎が監督した、日本における本格的なダンス・フィルムの先駆作です。この作品でもう一つ注目されるのは、スーパーモデルの元祖ともいわれる山口小夜子が出演している点です。山口小夜子は2007年に惜しくも亡くなられましたが、ファッションの世界だけに留まらず、ダンスや映画などにも積極的に活動領域を広げた、マルチ・アーティストとも呼べる存在です。その多彩な活動を検証すべく、今春、東京で大掛かりな企画展「山口小夜子 未来を着る人」が開催されましたが、松本貴子監督によるドキュメンタリー『氷の花火 山口小夜子』も制作され、現在公開中です。『T-CITY』は28分の作品で、展示室で観るにはやや長い感じもしますが、訪れた方々は山口さんのパフォーマンスに目を奪われてか、皆さんじっくりと鑑賞されている様です。
 11月29日(日)から始まる上映会「第20回アートフィルム・フェスティバル」でも、『フーガの技法』と『T-CITY』は上映されます。こちらは本来のフォーマットであるフィルムによる映写の美しさを味わってください。上映日は12月5日(土)です。そして翌6日(日)には「オリジナル映像作品」シリーズ最新第24弾、山城知佳子監督『創造の発端 ?アブダクション/子供?』(2015年、出演:川口隆夫)も初公開されます。こちらもお見逃しなく!
 なお勅使川原さんは来年開催される「あいちトリエンナーレ2016」プロデュースオペラの演出家として、石田さん、山城さんは現代美術の出品作家として、それぞれ参加されることになっています。
(T.E)

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キャプション:勅使川原三郎『T-CITY』(1993年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品) 

Photo: Martin Richardson