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現在、美術館のロビーでは「芸術植物園」展と同時に、子どもアート・プログラム「グランド・カフロス博士の庭」を開催しています。「芸術植物園」展に合わせて行われるワークショップやプログラムを自由に体験してもらえる庭です。 

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そもそもカフロス博士って誰…と思われる方も多いかもしれませんが、「各地を旅する文化人類学者」なのです。博士が街なかで見つけた面白いかたちを集めて、仲良しの大工さんたちと一緒に愛知県美術館に庭を作ったら…というイメージのもとにこの空間はデザインされています。事前申し込みプログラムの他に「だれでも・いつでもプログラム」として、「芸術植物園」展出品作家である渡辺英司さんによる人工芝を人工的に生長させた《常緑》を実際に体験できる「しばのばし」や、造花の花びらや葉っぱを組み合わせて新しい種類の植物を作る「新種発見ガーデン」など、など……毎日その場で参加してもらえるものも多数用意しています。

 
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↑「新種発見ガーデン」で作られた新しい花たち。なかなか独創的です。

 

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↑「しばのばし」体験中。着々と芝が育っています。

子どもだけでなく、展覧会観覧後に参加されていく大人も多いです。特に「しばのばし」は、はまるとなかなか抜け出せず、たくさんの芝をふさふささせていく人の姿もちらほら。カフロス博士が暮らしている(はず)のロッヂもあり、会場のどこかで博士の姿を発見できるかもしれないので是非観察してみてください。

今回、会場デザインを担当したL PACKは、2013年のトリエンナーレで「NAKAYOSI」という名前のビジターセンターを運営していたおなじみのメンバー。「芸術植物園」展に出品している狩野哲郎さんの作品設置にも携ってもらっています。会場設営はミラクルファクトリー、プログラム立案はフジマツの面々にお願いしました。

芝が伸びたり、花が増えたり会期中どんどんと進化していきそうなこの庭。ロビーでの開催になるため、庭に入って頂くのは無料ですので、是非何度でも足をお運びください!なお、8月8日に飯山由貴さんが行ったプログラム「病気や怪我の思い出を話す」の映像も公開中です。

*写真撮影可

↑実はCMもあるのです。BGMは国際オバケ連合!

(N.O)

棚卸し、はじめました

2015年07月10日

片岡球子展の会期も、残すところあと2週間を切りました。先日の日曜美術館の放映もあり、ますます多くのお客様で賑わう展示室…。一方でバックヤードにある収蔵庫では、学芸員による一大プロジェクトが粛々と進行していました。

 今回ご紹介するプロジェクトは「管理状況確認作業」、通称「棚卸し」です!愛知県美術館のコレクションはとても充実しており、膨大な数の作品が所蔵されています。その管理をするのも学芸員の大切な仕事のひとつ。美術館の方向性を決める大事な館蔵品を、プロジェクトチームが一点一点確認していきます。

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▲まずは作品を探すところから。大体の場所を割り出したら、あとは経験が頼り…!作品カードと照合しながら作品があることを確認していきます。

もちろん一口に確認と言っても、「作品はあります!」では終わりません。いつ収蔵されたのか、どこから収蔵されたのか、どこにあるのか、どんな状態で保管されているのか…。こういった細かい情報を点検し、記録していきます。この情報が次回プロジェクトチームへと引き継がれることで、所蔵作品が末永く、かつ、きっちりと管理されていくのです。
 

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▲記録中。事前に作成した「作品リスト」と、作品の戸籍である「作品カード」の両方に、確認した情報を記録していきます。

今回の点検では、作品の梱包状態と付属物の両方を記録しています。例えば今回調査を行った収蔵庫では、洋画なら大体のものが「黄袋、たとう(外箱)、エアキャップ(ぷちぷち)」の三位一体セットで梱包され、保管されています。
しかし、これが掛け軸となると情報が激増!「紐下(関東では「巻止め」らしい)、薄葉紙(特に日本美術の梱包で大活躍な薄い紙)、薬籠箱(関東では「印籠箱」らしい)、台指箱(いつもの桐箱)、文書入ってます!極めもついてます!あ、昔の売立目録も!」となり、情報の大洪水…。その水面下では関西呼びか関東呼びかの派閥争いもありそうですね…。ちなみに執筆者は関西人です。
 

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▲さらに近年収蔵された作品の中には、まだ作品カードに写真がないものも。収蔵品の整理を兼ねて、この機会に撮影も行います。
 

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▲同時に、作品の名札になる「絵符」をつけて見やすくしたり、並べ直したり。当館は地震対策に「さらし」を駆使していますが、不測の事態に備え、まき直しやさらしの点検もこの機会に行ってしまいます。日頃の備えが肝心ですね!

以上のように確認された情報は、今後の作品の保存や公開にも大きく役立ってきます。連綿と続いてきたデータをもとに、ホームページで「コレクション検索」を公開したり、企画展に併せてコレクション展を企画したり…。地道な作業の連続ですが、館蔵品はその美術館を特色付ける大切な財産。歴代プロジェクトチームの(時々冷)汗と(おそらく嬉し)涙の上に、美術館とコレクション展は成り立っています。

ちなみにこのコレクション展、2015年10月16日(金)からは大規模な「コレクション企画」として、《線の美学》という展覧会が予定されています。オール館蔵品による、線の美しさと面白さ、可能性と魅力が詰まった展覧会です。愛知県美術館の底力、とくとご覧ください!

 (y.y)

愛知芸術文化センターでは、現在「アーツ・チャレンジ2015」を開催中です(3月1日(日)まで)。フォーラムと呼んでいるこの建築のエントランスや、地下2階から地上に出る階段の踊り場に相当する場所、11階の展望回廊など、通常はお客様が美術館や劇場といった目的地に向かって通り過ぎるため、ことさら意識に上ることのない空間に、若手作家の意欲的な作品が設置されて、センター内は非日常的で特別な雰囲気が現出しています。また、12階と地下2階のアートスペースも会場になっていて、見ごたえのある現代アート作品が展示されていると、ここもまたいつもとは違った空気が流れている感じを受けるでしょう。
 「アーツ・チャレンジ」は、このように愛知芸術文化センター内の美術館や劇場以外の公共空間に作品を展示するもので、厳密にいうと美術館の企画ではありません。とはいうものの、愛知県美術館がこの企画にまったくタッチしていない訳ではないのです。表立って我々学芸員が展示作業に立ち会うことは少ないのですが、裏方的な立場からのサポートは、かなりのものだと言っていいかもしれません。例えば、非常に地味ですが、展示作品の受け取りという仕事があります。現在開催中の「ロイヤル・アカデミー展」では、専用の美術作品輸送車で、展示する作品をまとまった形で搬入しましたが、この企画では個々の作家がそれぞれ作品をセンターに持ち込む形となります。そのため普通の宅配便で、バラバラのパーツに分解された状態で送られてきたり、あるいは作家本人がレンタカーを運転して搬入したり、といった具合で、その都度、担当学芸員が受け取りの対応を行うことになります。また、個別に届いた作品を、設営日まで保管する場所も確保しておかなければなりません。

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 12階アートスペースHに展示されている江川純太の絵画は、非常に巨大なものでそのままの状態で搬入することは出来ません。実はこの絵画の支持体は3つのパネルに分かれていて、分解したパネルと、巻いた状態にした画布を、屋外庭園から運び込んだのですが、その搬入経路を確保したり、普段あまり使用しないエレベーターを操作することもありました。

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フォーラムや展望回廊は、もともと展示用スペースとして設計されている訳ではないので、通常とは違った作業上の苦労があるのですが、アートスペースも展示室というよりは多目的スペースなので、スペースGの藤井龍の展示ではモニターを直に壁に設置するために、穴を空けても良い仮設の壁をわざわざしつらえたりしています。展示用に特化した展示室では考えられない困難もありますが、その分、展示が完了した時の充足感もまた特別といえるかもしれません。(T.E.)

 

 早いもので2014年も残りわずか。館職員の間では年末の大掃除の話が聞こえてくるようになりました。その大掃除に先駆けて、このたび当館では収蔵庫内の大整理を行いましたので、その様子をご紹介したいと思います。

 日頃たくさんの作品が眠る収蔵庫。普段は関係者しか入ることができない美術館の深層部ですが、このブログではこれまでも、美術館の裏側をご紹介する記事でしばしば登場してきましたので、中の様子をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
●収蔵庫での作品受け入れ準備 2010年7月16日
●裏方通信 さらしの話3 2010年7月6日
●裏方通信 収蔵庫の話 2009年8月1日

 愛知県美術館が1992年に現在の場所、愛知芸術文化センター内に開館する際には、継続的に作品を収集しコレクションを充実させていくことを考えて、収蔵庫はかなり余裕をもった収納スペースを確保して作られました。それから約20年。この間にあった購入や寄贈によって、美術館の所蔵作品は着実に増えていきました。そのなかには「木村定三コレクション」のように、何千点もの作品が一括寄贈されるという出来事もありました。コレクションの充実は美術館にとって良いことなのですが、ここで問題になるのが作品の収納です。

 作品の収納については他の館でも頭を悩ませているところが多いと聞きます。愛知県美術館は現在、約8000件の作品を所蔵していますが、コレクション展に常時約100点の作品が出ているとしても、残りの数千点の所蔵作品を収蔵庫で収納するために、これまでの収納方法のままでは限界が近づいていました。そこで今回の大整理では、収蔵庫内の一部、箱に入った作品の収納棚の増設と収納方法の見直しを行いました。

 まず、収納されていた作品を全て移動させます。

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▲作品移動後の風景。

 

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▲仮置き中の作品。各作品に付けられたタグには、作品タイトルや作品画像が載っています。作成には友の会サポート部会の皆さまにご協力いただきました。これがあると箱の中身が分かり易くて助かります。

 

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▲今回の整理にあわせて、作品の点検作業も行いました。約2000点の作品を1点ずつ開梱し、状態を確認します。こうした作業は作品の扱いを学ぶ良い機会になります。今回は桐箱に入ったものが多かったので、真田紐の結びを繰り返し覚えました。

 

 

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▲棚の増設が完了すると、作品を元の場所に戻します。いかに効率よく、かつ取り出しやすく収納するかというテトリスゲーム…一番難しかった作業です。(テトリスってまだ通じるのでしょうか?)

 

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▲収納完了!落下防止のためのネットも設置されました。

 

 作品群を移動させてから元の場所に戻すまで約1週間の過密スケジュールでしたが、なんとか予定していた作業を完了させることができました。「これが済まなければ2014年を終えられないからね…!」という(今年度初めからかけられていた)プレッシャーから解放されて、担当職員一同ホッとしています。溢れかかっていた作品がすっきり納まって、しかも収納場所にまだ少し余裕まである様子を見ると、感慨もひとしおです。残るは、今回の収納にあわせて棚にラベルを貼っていく作業。どこに何が収納されているのかが分かり易く目の前に示されている、そんな光景が見られる日も近いはずです…(願望)。


(タイトルS.K、本文N.H)

 

刀剣の手入れ

2014年12月11日

 今回は、学芸員も江戸時代の武士のごとく刀剣の手入れをします、というお話。
 相手を断ち斬る「武器」であり「武士の魂」である日本刀は、美術館や博物館で展示される美術品の一つでもあります。当館の木村定三コレクションのなかにも槍が含まれているのですが、美しく保存しておくためには定期的に手入れが必要。そこで京都国立博物館名誉館員の久保智康先生を講師にお迎えして手入れの方法を伝授いただくことに。
 手入れの内容は大まかには、刀に塗られた古い油を拭い取ることと、新しい油を塗ることです。油が少なくて揮発してしまったり、逆に塗りすぎたまま放置したりするとサビの原因になってしまうので、定期的に古い油を拭い、きれいな油を薄く引いておくことで、研ぎ澄まされた刃文や輝くような地がねの美しさをいつまでも保つようにするのです。

 

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▲まずは鞘を抜いて状態をチェック。美術品といえども刀は刀。手にしてみると独特の重みが感じられ、なかなかに緊張感があります。

 

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▲古い油を拭い取ります。昔は和紙を使っていたそうですが、現在はキズがよりつきにくいということでちょっと高級なタイプの極柔ティシューを使用。親指と人差し指で刃を挟んで、すーっ、すーっ、と手を動かして拭っていきます。しかし切れ味鋭い刀剣、ここで手の動かしかたを少しでも間違えると簡単に手を切ってしまうので、注意が必要です。
 

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▲次に「打粉」を打っていきます。ろうそくを灯した部屋で、口に紙をはさんだ武士が丸いふかふかした玉で刀にポンポンポン…、と時代劇で目にするシーンのアレです。打粉というのは砥石を粉末状にしたもので、これを薄く付けることで油を吸収する効果があります。(ちなみに口に紙をはさむのは、刀に唾が飛んでしまってサビるのを防止するため。)この後、もう一度打粉ごと古い油を拭い、きれいに拭えていることを確認して新しい油をひき、元の通り柄に戻し、専用の袋に仕舞って手入れは完了です。

 一つ間違えると事故になりかねず、緊張しながら手入れをするので、一通り作業を終えると「ふぅ」と一息つきたくなるような疲労感があります。しかしそれだけに、余計なことを考えずに目の前の刀だけに意識を集中して精神を統一する修行、という感じで心がなんとなく落ち着きます。

 

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▲今回手入れをしたのはこちらの槍。与謝蕪村や浦上玉堂などの江戸絵画、熊谷守一や小川芋銭をはじめとする近現代美術、古代遺物、茶道具、仏教美術…と非常に幅広い時代と地域の作品からなる木村コレクションですが、じつは刀剣類はこの槍が一振りあるだけです。木村氏がこの槍を買い求めたのは、「柄」の螺鈿細工の装飾を気に入ったからだそうです。究極的には人を殺すための道具である刀剣に関心があったのではなく、あくまでも自身の価値基準に照らして美しいと判断したものを収集していったという木村氏らしいコレクションの一つです。一点だけなのでなかなかコレクション展の構成に組み込むのが難しいところですが、いつか展示してご紹介したいと思っています。(S.S.)

▼螺鈿の装飾が美しい槍の柄

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 2014年も11月の半ばを過ぎ、だんだんと、年の瀬という雰囲気になってきました。愛知芸術文化センターにとって今年は、1992年の開館以来の大きな組織改編の年でもありましたが、それがあと1ヶ月少しで終わるのかと思うと、ちょっと感慨深いものがあります。
 愛知県芸術劇場の運営を(公財)愛知県文化振興事業団が行うという指定管理者制度の導入は、これまで新聞等でもある程度、報道されてきました。愛知県文化情報センターの公演事業は事業団が引き継ぎましたが、その一方で映像事業がどうなるのか? といったことは特に報じられず、上映会を定期的に訪れられるお客様からは、映像はどうなってしまうのか、という質問をいただくこともありました。


 ただ、愛知県美術館の「2014年度展覧会スケジュール」には、映像事業がラインナップの一つとして掲載されていましたし、夏の「これからの写真」展では、展覧会に併せる形で、12階のアートスペースAを会場に、コレクション作品上映会「フィルムからデジタルへ」を開催しました。4月より試行として始まった、映像作品を紹介するスペースであるビデオテークでも、文化情報センターが企画・制作していた「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」を上映しています。ですので、美術館の事業として映像分野が引き継がれていることは、徐々に伝わりつつあるのではないか、と思います。

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▲ジャン=フランソワ・ラギオニの『LE TABLEAU』(絵の中の小さな人々/2011年)

 11月23日(日)から始まっている「第19回アートフィルム・フェスティバル」は、「第19回」とカウントされている通り、文化情報センターから映像事業を引き継いで行うものです。その一方で、美術館の企画として行うことも意識して、初日には黒の抽象絵画で知られる画家ピエール・スーラージュに関する短編ドキュメンタリー、フランソワ・カイヤ『CHAMBRE NOIRE, CINQ PEINTURES DE PIERRE SOULAGES』(黒い部屋、ピエール・スーラージュの5つの絵/1983年)と、絵を描くことをモチーフにしたアニメーション、ジャン=フランソワ・ラギオニの『LE TABLEAU』(絵の中の小さな人々/2011年)を併せて上映する、といったプログラムを組んでいます。また、28日(金)には、ウケ・ホーヘンダイク『みんなのアムステルダム国立美術館へ』(2014年)と、当館の古田浩俊課長のトークも行います。

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▲ウケ・ホーヘンダイク『みんなのアムステルダム国立美術館へ』(2014年)

映画祭ではしばしばあるのですが、直前になってプログラムが変更になったり、作品が差し替えになったり、といったことが起こります。(絵の中の小さな人々)は英語字幕で上映を予定していましたが、実際には当日、日本語字幕版で上映できたのも、そんな例の一つです。12月7日(日)の最終日まで、多少のアクシデントもあるかもしれませんが、映画ファンの方も、美術愛好家の方も、共に楽しんでいただければ幸いです。

アートフィルム・フェスティヴァルの上映プログラムについてはこちらを、スケジュールについてはこちらをご覧ください。

(T.E)

 今期のAPMoA Project, ARCH、末永史尚「ミュージアムピース」では、当館のコレクションに付けられた額縁をテーマにした展示を行っています。この展示についてのお話は、会場で配布しているリーフレットをご一読いただくとして、ここではリーフレットに書ききれなかった額縁をめぐるアレコレのお話をしたいと思います。

 油絵具で描かれた多くの絵画は、物理的には布や紙といった薄っぺらなものを「□」か「田」のようなかたちの木枠にピンと張って、そこに絵具が載っているだけ、という大変壊れやすいつくりをしています。額縁はこのような絵画をがっしりとホールドしてくれるので、絵画を現在の状態で保つためにはとても有用です。同時に、額縁は絵画を取り囲んでいるものなので、絵画を見るうえで否応なく目に入ってきて、よくも悪くも絵画の鑑賞に干渉してきます。ちなみにこの干渉は、日本画の軸装だともっと強いものになります。というのも軸の場合、絵画の部分(本紙)の面積よりもそれ以外の表具の部分の方が面積が広いことがざらにあるからです(もちろん面積の多寡だけで干渉の強弱が決まるわけではありませんが…)。ちなみに、今期の木村コレクションの特集展示では、「表具—掛軸の美—」と題して日本画のコレクションのなかから変わった表具を集めて展示しています。

 ところで、絵画というものはよく窓に例えられることがあります。そうすると額縁は窓枠ということになります。窓から見える景色は(当たり前のことですが)見えない部分も含めた広大な景色のなかから四角形に切り取られた一部分です。これを絵画に戻して考えてみると、絵画の世界は額縁の向こう側にあって、額縁に隠れた部分やその外側にも本当は広がっているんだ、ということになりますよね。もちろん現実には絵画はそこで途切れてしまってそれ以上の部分は存在しないわけですが、絵を見る私たちの想像力は、絵の外側の世界を補う力を持っていることもまた事実です。言い換えれば、額縁はそのような私たちの想像力をかき立て、助けてくれる存在でもあるわけです。

 ですが、全ての額縁が常にそういった想像力に対してプラスに働くというわけではありません。例えば、当館のコレクションのひとつ、モーリス・ルイス《デルタ・ミュー》は、購入時についていた金縁を、数年前に取り外すことにしました。その時の様子はこのブログの別の記事でご紹介しています(モーリス・ルイス 《デルタ・ミュー》 の秘められた部分が露わに!|愛知県美術館ブログ)。ここで「広々とした感覚を害してしまっている」と書かれているように、額縁が絵画の世界の広がりを阻害してしまうこともあるのです。当館では他にも、パウル・クレー《蛾の踊り》やジョアン・ミロ《絵画》の額縁が、保存の観点から不十分な構造である上に、見た目にも作品とうまくマッチしていないという判断によって、新たにデザインし直した経緯があります。また、現在展示室7で展示中の志賀理江子〈螺旋海岸〉シリーズも、あいちトリエンナーレ2010/2013ではパネルにプリントを直貼りしたかたちで展示されていた作品ですが、昨年度当館のコレクションに加わった際には、保存のことを考えて新たに額装を行いました。さらには、やはり近年コレクションに加わったゴーギャンの表裏の作品《海岸の岩/木靴職人》についても、すでに何度か展示はしておりますが、やはり保存上の問題と見た目の問題から、現在進行形で額縁の付け替え計画を進めています(志賀とゴーギャンの額装については、それぞれ直接担当している学芸員が詳しいブログ記事を書いてくれることでしょう、きっと)。

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▲ クレーの額のためのラフ(すぎる)スケッチ(左)/ミロの額の仕様(右)

 額縁と絵画との関係の良し悪しは、なかなか一概に判断するのが難しいところがあります。ですので、私たちは新たに額縁を作らねばならないときは、画家がどのような額装を望んでいたか、描かれた当初に流行していた額縁はどのような形状か、同じ画家の別の作品はどのような額装がなされているか、などについて可能な限りリサーチした上で、保存と見た目の両方の観点から最善の額縁を探ろうと日々努力しています。
(KS)

空前絶後の熊谷守一展

2014年09月11日

残酷なまでに暑かった夏をようやく乗り越えて、すっかり秋めいてきましたが、皆さんは如何お過ごしでしょうか。私の方はというと先日、岐阜県美術館でオープンしたばかりの「熊谷守一展」を拝見してまいりました。

 

当館からも木村定三コレクションの作品が多数出品されている関係で、初日の開場式にお邪魔してきたのです。熊谷守一といえば岐阜県にとっては、山本芳翠と並んで極めて重要な地元出身の洋画家。当然多数の関係者がつめかけた開場式は熱気に包まれ、古川館長の最初の挨拶からして気合が入っています。曰く10年以上前から、誰も見たことがないような、熊谷の展覧会をいつかはやりたいと考えており、今回それが実現した。出品点数が400点を超える展覧会は空前絶後である、とのこと。これを聞いたときに、何か運命めいたものを感じました。

 

というのも、熊谷の生誕100年を記念した展覧会図録の中で、木村定三氏は今後自分のコレクションはどこにも貸し出さない、故にこの展覧会が絶後の遺作展である、という主旨の言葉を書いているからです。それから20年以上を経て、木村定三コレクションが当館に寄贈され、今やその作品が多くの人の目に触れることになったのは周知の通りです。その中でも80点以上(まさしく空前の規模!)の木村定三コレクションが貸し出された今回の展覧会が、時を超えて二つの「絶後」を結びつけたということに感慨もひとしおです。

 

また岐阜新聞社の杉山名誉会長は、2012年に岐阜県美術館のシャガール展が大成功を収めた頃から、2014年にも何か大きいことを、という思いで企画を進めてきた、と挨拶されていました。それでふと思い出したのが、シャガールも熊谷守一も同じく97歳でこの世を去った長寿の画家だったという事。同じ年に立て続けに長寿画家の展覧会に関わった偶然に、我ながら少しおかしくなりました。ちなみに梅原龍三郎と中川一政も同じく97歳まで生きたそうです。…ハッ!…ということは…!?(かようにしつこく長寿ネタを披露しているのは単なるトリビアではなく、次回のコレクション展の「夭折の画家」特集へのカウンター的ステマだったりします)。

 

出席者の中には県議会の議長もいらっしゃって、この展覧会をもって岐阜の文化振興に寄与したい旨の言葉もありました。熊谷守一の父親、孫六郎がかつて同じ県議会議長を務めたことを思えば、この言葉もまた重みを増してくるように思いました。などと、普段はオープニングにうかがっても聞き流している関係者のご挨拶ですが(ちょっとちょっと!)、展覧会をお手伝いをさせて頂いたこともあって今回は聞き入ってしまいました。

 

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 熊谷守一のご息女、熊谷榧さんもご出席。

 

さてテープカットが終わり、会場へ足を進めようと思いますが、人が多すぎて中に入れません。なのでまずは、所蔵品展示から先に見始めます。こちらは先頃《裸婦》が重要文化財に指定されたばかりの山本芳翠の絵が多数展示され、さながら特集展示のよう。他にも藤島武二、長原孝太郎、青木繁、藤田嗣治など、熊谷と関係の深い画家の作品が並んでいました。

 

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 展示室入ってすぐの初期作品コーナー。

 

ようやく熊谷守一展の会場に入ると、いきなり木村定三コレクションの《朝の日輪》がお出迎え。おお。その後も要所要所で、木村定三コレクションの名品が展覧会を彩っていて誇らしくなるとともに、自分の中で確立させた熊谷守一像に従って、厳格に作品を収集していった木村定三氏の目利きに改めて恐れ入る思いでした。また、それにも増して《母の像》や《熊谷萬病中図》、《ヤキバノカエリ》など、主要な所蔵品を軸にして熊谷守一の死生観に迫っていく展示構成には、作家への深い理解と収集活動が一体となった岐阜県美術館の実力を感じずにはいられませんでした。

 

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 当館木村定三コレクションの猫は下絵(トレース紙)と一緒に。

 

作品数の充実は、会場で様々な気付きがもたらされることを意味します。今回の展示では、1930年代に描かれた様々な裸婦像がグリッド状に配置されたコーナーや、1960年前後に描かれた裸婦がまとめられた壁面などに、特に目を見張りました。前者では同じ裸婦というモチーフながら、絵具によるドローイングのように、異なる表現方法を試行錯誤した跡がありありと見て取れます。また後者では、グリーンとオレンジという色の対比を用いた背景の平面構成に、この時期の画家の関心があることが伝わってきます。これらはそれぞれの時代や主題ごとの作品を、点ではなく面で見せることによって浮かび上がってくる成果と言えるでしょう。

 

また木村定三コレクション以外では、来年秋に画家の故郷にオープンする予定の、熊谷守一付知記念館準備室が所蔵する作品が出品されていました。開館前の今のタイミングだからこそ、集めることの可能だった出品内容といえると思います。単純だけれどもそれだけに奥が深く、一点一点の鑑賞に時間のかかる熊谷作品。それがこれだけ集められているのですから、どうか十分な時間を予定に入れておくことをおススメします。なんといっても他のお客さんから、「えーっ、まだあるのー?」という驚きの(あるいは歓喜の)声が聞こえてきたくらいですから!!

(TI)

夏本番の今日この頃ですが、皆様は猛暑対策にいそしんでらっしゃいますでしょうか。この夏の愛知県美術館は本丸で行われる「これからの写真」展以外にも、各所で同時多発的に熱い戦い、もとい当館所蔵品のお披露目が続いております。既に終了した茶臼山での移動美術館、田原市博物館でのサテライト展示、さらには貸出でご協力した展覧会を含めればきりがありませんが、今日ご紹介するのは大口の陣、もとい大口町歴史民俗資料館でのサテライト展示です。

大口町歴史民俗資料館

 

移動美術館とサテライト展示は、本丸になかなかお越しいただけない方々に、当館の作品をお見せする貴重な機会ですが、同時に日頃あまり名古屋を出ない我々が、様々な地域の文化状況を知る絶好の機会でもあります。また、普段とは勝手の違う空間で、展示に工夫を凝らすのもなかなかの楽しみです。

移動美術館とサテライト展示

 

大口町、私は今回初めて訪れたのですが、昔の市長が企業の工業誘致に力を入れたそうで、資料館に向かう間にも有名企業の大きな工場を目にします。資料館と同じ建物の中にはトレーニングセンターや会議室などもあり、入口は常に人でにぎわっています。曜日によっては館内で市も開かれるようで、展示作業の日には地元で取れた野菜や、焼き立てのパンなども売っていました。ちなみに2005年の移動美術館はここで行われました。

 

今回のサテライト展示は「創作のヒミツ」というタイトルで、制作のプロセスが分かるような資料を集めてきて、作品と一緒に展示しています。現代の美術作品には特殊な技法や素材を使ったものが数多くありますが、一見突飛に見えていた作品も、どうやって作っているのかを知ると、新しい楽しみ方が発見できるのでは?…というのが担当者の目論見です。

 

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展示内容をいくつかご紹介しましょう。まずは今回の目玉と言えるのが、本邦初公開となる浅野弥衛のフロッタージュ台です。実は今年2014年は、浅野弥衛の生誕100年という記念の年。東海地方の戦後美術を支えてきた巨人の偉業を称えるために、この展覧会でもささやかな展示を行っています。それが当館所蔵のフロッタージュと共に展示されている、フロッタージュ台です。フロッタージュというのは凹凸のある所に紙を乗せて鉛筆でこすることで、下の凹凸を写し取るという技法です。2年前のエルンスト展では、ロビーにフロッタージュのコーナーもありましたので、ご記憶の方も多いのでは。浅野弥衛はフロッタージュを作るときに、自分でそのための台を作っていました。この台、勿論作品を作るための単なる道具といえばそうなのですが、台そのものも作品のような魅力を放っているから不思議です。これは是非会場で見てほしい作品ならぬ貴重な資料なのです。

 

今回はエルンスト展の真似をして(それは言うな)、会場にご来場の皆さんにも気軽にフロッタージュを体験して頂けるコーナーを設けました。とはいっても流石に浅野弥衛のフロッタージュ台は使えないので、画家の佐藤克久さんに新たにフロッタージュ台を作って頂きました。浅野弥衛の闘魂を受け継ぐ佐藤さんならではの、素敵な台を用意してもらいましたので、こちらもお見逃し、おこすり逃しなく。

 

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他にも森田浩彰、設楽知昭、山田純嗣、白髪一雄、多和圭三、染谷亜里可、北山善夫、クリストの作品と、資料と共に展示しています。ちなみに大口町歴史民俗資料館は、昨年「アイチのチカラ」展にも出品された倉地比沙支さんの個展を過去に開催したこともあり、館内には倉地さんの作品も展示されています。また、近くには愛知が生んだ建築界の巨人、黒川紀章が設計した大口中学校がありますので、遠目で見学することも出来ます。また、会期中には社本奈美さん(8月24日)、大田黒衣美さん(9月15日)というアーティストによるワークショップ(対象:小学校4年生から中学生まで)もあります。

 

最後に重要な情報を。資料館へはお車が便利ですが、公共交通機関でお越しの方は名鉄柏森駅からコミュニティバス(基幹ルート、もしくは北部ルート反時計まわり)をご利用ください。本数が少ないので事前に時刻表を確認されることをお勧めします。(TI)


大口町コミュニティバス時刻表・乗り換え検索


 

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▲当館で使用しているスポットライト(ハロゲン)

 1992年の開館に合わせてメーカーに特注で作ってもらった「愛知県美術館仕様」です。特注にあたり、光の中心部が特に明るくなったり、周縁部に光の輪ができたりしないよう、また、スパッと切られたように光の外側が暗くなるのではなく、適度に減衰して輪郭が目立たないよう、試作を繰り返して完成されました。

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▲展示室で照明作業中のSS学芸員

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▲照明作業完了後の展示室

 スポットライトは劇場やテレビ局のスタジオなどから街のショップまで、さまざまなところで使用されていますが、美術館で使われるものは、貴重な美術作品用の照明として特別な性能を備えています。

 愛知県美術館のスポットライトはハロゲンです。他館ではLEDに切り替えているところもありますね。ハロゲンとLEDは構造が違うので、詳しい話は個別にしないといけないですが、美術館用のスポットライトについて総じて言うと、まず電球自体が、作品の変色や退色の原因となる紫外線や、作品の表面温度を上昇させて乾燥によるヒビ割れなどを引き起こす恐れのある赤外線を、極力発しないものになっています。また、照明を当てた時、作品が本来持っている色が照明のせいで変に違って見えず、なるべく自然に見えるような配慮も十分になされて作られています。さらに、電球が取り付けられる本体にも、それでも電球からいくらか発せられてしまう紫外線をカットするためのフィルターが装着されていたり、赤外線を作品とは逆の方向に逃がす仕掛けが施されていたりします。

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▲愛知県美術館仕様スポットライトの内部(上から順に5度=very narrowタイプ/10度=narrowタイプ/20度=flatタイプ/30度=wideタイプ/40度=very wideタイプ)

 愛知県美術館仕様のスポットライトは、外見上デザインが統一されていて、内部を見ないと分かりませんが、光を発する角度によって5種類(5度、10度、20度、30度、40度)に分かれています。5度のものは、電球回りの椀状の銀色のパーツの表面にあまり凹凸がなく、かなりツルツルしています。鯖の腹のようですね。これが40度になると、パック詰めされたイクラみたいに凸が激しくなります。30度のものは、アワビの殻の内側のような美しい輝きを放っています。

 角度が大きくなるほど光の当たる範囲は広くなっていき、その分、同じ面積あたりでは光は弱くなっていきます。それで私たち学芸員は、作品の種類(油彩画、日本画、素描etc.)に応じた照度制限や作品のサイズなどを考慮して、適切な角度のものを適切な数選択し、照明を行っています。

 先に少し触れましたが、近年ではLED照明を導入している館もあります。ハロゲンと比べた際のLEDの大きな利点としては、省エネであること、電球の耐久性が高いこと、発する赤外線の量が少ないことなどが挙げられます。また、ハロゲンだと、その性質上、光の色はオレンジっぽい色のみなのですが、LEDだと、もっと白っぽい光を出す種類のものもあり、展示する作品に合わせて光の色をいくつかの中から選択することができます。

 ただ、LEDの性能はまだ進化の途上ですので、どの段階で導入するのが適当かの判断は簡単ではありません。またその前に、この長引く財政難の中でLED導入の予算を獲得することも、当館としては現時点で難しそうです。そして、ハロゲンの光には、その柔らかな感じなどハロゲンならではの良さもあり、それはそれで捨てがたい気もします。しかし、あいちトリエンナーレも含めて今後愛知県美術館が多様な展示に全体的としてより良く対応していくためには、やはりLED導入を考えていきたいと思っています。
(TO)

 コンサートなどのチケットはかなり前からオンラインチケットのみに統一されており、展覧会のチケットも近頃はオンラインが増えてきています。でも、今もデザインに工夫を凝らして、その都度新しく作るのが展覧会チケットの主流。プレイガイドのショーケースにいろんな展覧会チケットが並べられ、それぞれに個性を競っているのは皆さんご存じのとおりです。ところでこの展覧会のチケット、どれもほぼ同じサイズで作られているようですが、長さはかなり違いますし、幅の狭いものから広いものまで、さまざまなものがあります。

 愛知県美術館でも、以前は展覧会ごとに異なるサイズのチケットを作っており、おおむね最近のものよりかなり縦に長いかたちでした。当時よく会場入口のスタッフから「お客様が半券のないチケットをお持ちなのですが…。」という連絡がありましたが、その原因はチケットを財布や小さなバッグに収納するとき、そのままだと長すぎるのでミシン目のある半券のところから折って入れることによるものだったようです。紙幣の出し入れなどを繰り返しているうちに半券が外れて紛失してしまうのでしょう。かといって、ミシン目をなくせば受付での切り離しが大変だし、さてどうしたものか…?そこで閃いたのが、「一万円札と同じサイズにすれば、半券部分を折らずに財布などに収納できる!」というアイデアでした。それ以降、当館のチケットはできるだけ一万円札サイズで統一することにしました。一般的なチケットよりちょっと寸詰まりで幅広な感じにはなりましたが、扱いやすいサイズになっているのではないでしょうか。それ以降、半券のないチケットをお持ちになるお客様がずいぶん少なくなりましたので、その効果は大きかったようです。

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▲クレー、ステラは今見るとかなり長い!エルンスト、魔術美術、ポロックは一万円札と同じ長さで幅はやや狭く、応挙、クリムトは一万円札と同じ幅でほんの少し長めです。

 一万円札サイズのチケットは、一般的なものより数センチ短いのですが、これが意外に大変でデザイナー泣かせのようです。チケットのメインビジュアルに使う作品によってはおさまりの悪いこともあります。展覧会のタイトルや基本情報をはじめとするテキストも多く、これら全てをあの小さな紙面に配置し、上手くデザインするのはなかなか難しいことなのです(そのためかここのところまた一万円札より数ミリ長くなっていたりしますが…)。前売り券を入手されたとき、またご来館の折りに、当館のチケットを一度じっくりご覧になってみてください。

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▲印象派を超えてのチケット。

 なお、オンラインチケットをご持参いただいたお客様も、会場入口でオリジナルのチケットに交換させていただいていますので、どうぞご安心ください。
(MM)
 

 去る2013年11月28日付で、文化庁から次のような承認証が送られてきました。

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 「文化財保護法第53条の規定に基づく公開承認施設であることを証する/承認の期間は平成25年11月28日から平成30年11月27日までとする」と書いてあります。この「公開承認施設」とはどのような施設のことを指しているのでしょうか?

 国宝を含めた重要文化財は、広く皆さんに親しんでいただく機会を出来る限り確保したいところですが、材質上脆弱なものが多いため公開したら壊れてしまった、ではお話になりません。したがって、重要文化財の展示を計画する施設は、基本的にその都度文化庁長官に対して「わたしたちは文化財を適切に取り扱います、大丈夫です!しかもこれだけの人に観てもらえますよ!」ということを示して、許可を得なければならない仕組みになっています。しかし、あらかじめ「わたしたちは常日頃から重要文化財を展示するための諸条件をクリアしていますよ」ということを届け出ておけば、展示の都度許可を得なくてもよいという決まりがあります。この諸条件をクリアしている施設が、公開承認施設なのです。
参照:e-Gov|文化財保護法 第五十三条(所有者等以外の者による公開)

 では、どういう条件をクリアせねばならないのでしょう。防火防犯体制がしっかりしているのはもちろんのこと、温湿度管理が適切に維持できる設備があるか、文化財の取り扱いに習熟した専任の学芸員が2名以上いるか、そして過去5年間に重要文化財を適切に公開した実績が3回以上あるか、などなど厳しい基準が盛りだくさん!
参照:文化庁|美術館・歴史博物館|公開承認施設

 さらに、公開承認施設になったからといって、重要文化財を好き放題に展示できるというわけにはいきません。公開や公開のための移動で作品の損壊が進行するおそれがあれば、抜本的な修理を施すまで公開できませんし、そうでなくても原則として年2回以内、延べ60日以内(劣化の危険性が高ければ30日以内)に抑える、巻物を傾斜台で展示するときは原則30度以下の角度で、などなど、多岐に渡って取扱の条件が定められています。このような厳しい条件を幾つもクリアして、ようやく公開OKとなります。
参照:【PDF】国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項(平成8年7月12日文化庁長官裁定)

 日本美術の展覧会で、頻繁に展示替えがあって、どのタイミングで観に行こうか困ってしまうこと、たまにありますよね?でも、あの頻繁な展示替えの理由のひとつに実はこのような重要文化財の公開条件が関係しています。ちょっと展示するだけなのに、こんなに細かく決められてるの?と驚かれるかも知れませんが、これらの条件を守ることによって、現在わたしたちが観ることのできる数々の文化財が、100年後、200年後にも現在と同じような状態を保ったまま、その時代の人々の眼を愉しませることができるのです。
(KS)

黄金の騎士、北へ

2013年09月10日

 郡山市立美術館は、郡山市街から安達太良山までを一望できる、緑豊かな丘陵地にあります。この美術館は1992年11月の開館ですが、愛知県美術館も同年10月の開館で、ほとんど時を同じくして活動を始めました。建物は、季節によって豊かに変化する周囲の自然と調和し、日常から離れて美術鑑賞のひとときを過ごすには最適の場所です。

 コレクションは、ターナーやバーン=ジョーンズといったイギリス近代美術や明治以降の日本近代美術、郡山市ゆかりの美術などが中心になっています。特に、イギリス近代美術の体系的なコレクションは国内の美術館では他にほとんど例がなく、充実したコレクションとして高く評価されています。

郡山市立美術館ウェブサイト

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 この郡山市立美術館で、現在「震災復興支援 愛知県美術館所蔵品展」が開催されています。

 東日本大震災では、郡山市も建物の損壊などを中心に非常に大きな被害を受けました。美術館も施設面での被害などがありましたが、地域の人々に美術作品の鑑賞を通じて安らぎの場を提供しようと活動を続けてこられています。今回の展覧会は「震災復興支援」と銘打たれていますが、これは郡山市立美術館が震災後に開催した展覧会では初めてのことです。震災から二年半を経た今も、郡山市、そして福島県に住まう方々は、原発事故の影響などもあり将来への明るい希望が持てない状況に置かれています。それゆえにこそ、美術館から復興というメッセージを発信していきたい、という美術館のスタッフの皆さんの篤い思いが込められています。

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 郡山市立美術館から、当館のコレクションで復興支援の展覧会を、というご依頼をいただいた折、私たちはできるだけその趣旨にかなう内容でお応えすることにしました。第一章「日本人と自然」は、古来日本人が自然を畏れ、慈しみ、敬いながら共生してきたことを、与謝蕪村や英一蝶らの江戸絵画から、小川芋銭や熊谷守一、東山魁夷といった近代以降の作品を通じて感じ取っていただけるように構成されています。第二章「そして未来へ」は、今回の震災で多くの尊い生命が失われ、慣れ親しんだ故郷を奪われた方々への鎮魂や祈り、思いを託すことができるような作品、クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》など、明日に向かって歩む力を得ていただけるような作品で構成されています。愛知県美術館のコレクションが、このようなかたちで郡山市の、そして福島県の方々にご覧いただけることを、心から嬉しく思っています。
(MM)

 既に展示室でご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、現在木村定三コレクション室(展示室8)では、新しい小冊子を配布しています。かわいらしい表紙が目に付くこの冊子の名前は「拝啓、木村定三さま」。その名の通り、コレクターの木村定三氏をご紹介する内容です。

 当館では木村定三コレクションの受入れ以来、様々な調査研究や展示を行ってきましたが、来館者の方々から「木村さんはどういう方だったのですか?」という質問を頂くことがしばしばありました。今年2013年は木村氏の生誕100年にあたりますので、それを記念して木村定三氏その人に焦点を当てた印刷物の発行を企画したわけです。内容については実際にお手にとって頂くこととして、ここでは編集中の裏話をいくつかご紹介しようと思います。

 この冊子は当初から、幅広い年代の読者を想定して、小中学生でも楽しみながら読めるものにしたいと考えていました。そのため、堅苦しくない雰囲気を出すために、当館の他の印刷物では「木村定三氏」と呼ぶところを、あえて親しみをこめて文中では「定三さん」と呼んでいます。さらに様々なエピソードにはイラストを添えて、楽しみながら読み進められるようにしました。

 このイラスト、どなたに頼もうかと思案したのですが、若い作家を支援した木村氏にならって、若いアーティストにお願いすることにしました。イラストを使った作品も発表している、板谷奈津さんです。彼女は小さいお子さんを持つお母さんでもあるので、子どもたちの共感を得られるのでは、という予感がありました。結果としてこちらの期待を上回る内容に仕上げてくれたのではないかと担当は思っていますが、皆さんの感想はいかがでしょうか。板谷さんの娘さんも登場していますので、是非実物をご覧になってみてください。

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 ちなみに彼女の本業の方の作品では、イラストの温かいテイストはそのままに、もうちょっとハードな感じ(意味深)になっているので、そのギャップもまた興味深いです。一番の驚きだったのは、イラストだけではなく定三さんのアップリケも作ってくださったこと。その出来の良さに、迷わず表紙に使わせていただきました。
(TI)

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 「展覧会で絵を展示するとき、高さはどうやって決めるのですか?」というご質問をいただくことがあります。

 私たちはそれを、絵の中心が床からどれだけの高さになるか、ということを考えて決めるようにしています。そして、多くの展覧会ではこの高さを145cmか、150cmとしています。これは、作品を鑑賞される皆さんの平均的な目の高さから導き出されたものです。

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 ただし、事前に混雑が予想されるような展覧会だと、作品の前に二重、三重に人が立っている状況でも見やすくするために、普段より少し高め、例えば160?くらいの高さで展示することもあります。このようにして展覧会ごとに高さを決め、それを基準に作品の展示が行われます。しかし、ある展覧会に出品されるすべての作品を同じ高さで展示すればよい、というわけでもありません。例えば、高い山や建物を見上げるような位置から描かれているような、高さが強調されている作品の場合は、他の作品より少し高めに展示することもあります。

 現在開催中のプーシキン美術館展では、普段よりちょっと高めの155?を基準にしています。それは、会場が混雑したときにも、少しでも皆さんに作品をご覧いただきやすいように、ということを考慮しているからです。ただ、高ければよいというものでもなく、これ以上高く展示してしまうと、絵によっては見づらくなる可能性もありますので、少し高めの155cm、なのです。ルノワール《ジャンヌ・サマリーの肖像》も、もちろんこの高さで展示してありますから、この絵の前に立つと身長が180?ほどの、ちょっと背の高めな女性と対面しているような印象になるかも知れません。

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 ところで、プーシキン美術館展の会場には、1点だけ155cmより高く展示している作品があります。ご来場いただいた方は、お気づきになったでしょうか?ひょっとすると気付いていただけないかも知れませんが、それはむしろ、展示についての私たちの工夫がごく自然なかたちで皆さんに受け止められている、という証でもあります。展覧会の会場を、作品の配置はもちろんのこと、ディスプレイも含めてどうやって構成するか、そしてまた、絵の大きさや構図などにも配慮して絵の高さを決めていく作業は、学芸員の腕の見せどころといえましょう。
(MM)
 

 東日本大震災から早くも二年が経ちました。このブログでも何度か取り上げてきましたが、2011年7月から9月にかけて文化庁の主導による「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業」、いわゆる「文化財レスキュー事業」に、当館からも複数の学芸員が参加して被災した美術作品の応急処置等の作業にあたりました(参照:文化財レスキュー 一参加学芸員からの報告)。

 その時処置された作品たちは、いまどうなっているのでしょうか?実は、今年の2月から先月4/14まで、岩手県立美術館で「特集:救出された絵画たち―陸前高田市立博物館コレクションから―」という展覧会が開催されていました(開催中にこの記事がアップできたらよかったのですが...)。この展覧会は、震災でとりわけ甚大な被害を受けた陸前高田市立博物館のコレクションのなかから、応急処置の完了した作品の一部を紹介するというものです。レスキュー活動の拠点となったのは、中津川沿いの旧岩手県衛生研究所。作品保全の観点から、作業当時はこの拠点の名称や場所は非公開とされていましたので、レスキュー参加者は「盛岡ラボ」と呼んでいました。

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 幅広いジャンルにわたる同館のコレクションのうち、油彩画、版画、イラスト、書などの美術作品は150点強ありました。応急処置を済ませたそれらの作品は、現在は岩手県立美術館に保管されています。いずれの作品も、未だ完全とは呼べない状態ではありますが、レスキュー活動が一段落したこともあり、作品の現状とレスキュー活動の結果を報告するというかたちで、この展示は企画されました。岩手県立美術館さんのブログで、この展示について館長や担当の学芸員の方が思いを綴られています。作業当初は描いた作家の名前も分からないままに処置した作品たちが、キャプションを添えられてスポットライトを浴びている姿を見ると、とても感慨深いものがあります。

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 レスキュー活動は一段落したとはいえ、作品の本格的な修復はまだまだこれからです。そこには当然お金をどこから捻出するのか、作品は今後どこで保管するのかなど、多くの問題が山積しています。「文化財レスキュー事業」そのものは発展的解消をして、今後は「被災ミュージアム再興事業」として、修復や元の所蔵先への返却等を行うことになります(参照:文化庁 - 「文化財レスキュー事業の発展的解消について〜2年間の活動への御礼と今後の展望〜」)。
(KS)
 

おや、へんなトラックが。

後ろにドラム缶が積まれています。

ドラム缶の周りにはホース。これはいったい・・・。

 

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実はこのトラックには色々な秘密があるのです!

 

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左上:ドラム缶の中を水が流れているので、耳をすますと洞窟の中のような水音がします。

右上:これを回すとドラム缶がぐるぐる回る!

左下:一見普通の車内なのに、ウィンカー、アクセルなどを押すと色々な音が・・・。

右下:途中からドラム缶の一部にギターも装着されてパワーアップ。

 

こちらのトラック《ドラム・カー》を作ったのは、アーティストの國府理さん。

國府さんは、この作品に限らず、車両やパラボラアンテナなどの工業製品を用いた作品を制作しています。

 

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先日、このトラックを直接、愛知県内の盲学校に運んでワークショップを行いました。

アーティストとヘンテコなトラックの登場に盲学校の生徒は大喜びです。

給食時間を惜しんで遊ぶ姿や、学校から帰るときに嬉しそうにトラックのことをお母さんに報告する姿が見られました。

 

愛知県美術館では今年度、文化庁の助成金をうけて視覚に障がいのある方に向けた鑑賞学習の普及活動に取り組んでいます。

このイベントもその一つです。

多くの方が、美術と触れあうきっかけ作りになればと思います。

 

そして國府さん、このトラックを運転して京都のアトリエから名古屋までお越し下さり本当にお疲れ様でした。

「ドラム缶の中の水が揺れると車が揺れるんですよ・・・」とおっしゃっていましたが、無事で何よりです。


(F.N.)
 

美術散歩(2)からちょっと間が空いてしまいましたが、芸術文化センター内のちょっと目立たない場所に展示されているものに焦点を当てる今回の美術散歩(3)は、地下1階の踊り場にある固定ケース内をご紹介します。

 

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場所は、オアシス21の地下通路を入ってきて、エスカレーターに乗って上に向かうと、ちょうど死角になってしまいますが、1階からエスカレーターで下ってきて地下1階に降り立つと丁度正面に見られる固定展示ケースです。

 

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 ここには、愛知県美術館とは兄弟の関係とも言える愛知県陶磁資料館(もうじき名称が変更になります)の紹介専用のコーナー「愛知県陶磁資料館ミニギャラリー」となっています。 
 

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サテライト展示としていつも資料館の作品が展示されています。

現在は、陶芸分野で愛知県唯一の人間国宝・三代山田常山の世界が紹介されています。

常山の作品は急須が主ですが、小ささの中にも「茶」を取り巻く雄大な世界観が込められており、中国など、諸外国との影響関係の中で育まれてきた日本人の生活の豊かさを再発見させてくれます。 

 

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エスカレーターに乗ってしまうとつい通り過ごしてしまうことが多いとは思いますが、一度地下1階で立ち止まってゆっくり見てみてください。新しい発見があると思いますよ。

 

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現在、瀬戸市の愛知県陶磁資料館では、「アール・デコ 光のエレガンス」展が開かれています。

アール・デコのガラスを楽しむことができます。

クリスマスイヴまでの会期、ロマンティックな気分でお出かけになっては如何。

(S.T.)

 愛知県美術館では、視覚に障がいのある方たちを対象とした鑑賞会を開いています。スタートは10年以上前になります。はじめは外部からの要望にお応えすることから始まりました。
 健常者と同じ方法で鑑賞することのできない人たちに、どのように美術作品を鑑賞していただくかという難しい課題に対して、美術ガイドボランティア「アートな美」や点訳グループ「六点会」をはじめとするボランティアのみなさんの協力を得ながら、鑑賞会を開いてお応えしています。

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 (ボランティアの方とペアでの鑑賞です)


 美術館ホームページの「教育プログラム」のなかに「視覚に障がいのある方へのプログラム」でもご案内していますが、18日木曜日と20日土曜日に鑑賞会を開催しました。

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 普段は一般の方にはさわっていただけない彫刻作品をさわって(事前に手をきれいに洗っていただき、やさしくさわって)いただいたり、ボランティアの方に絵画作品を言葉で説明していただいたりして鑑賞をすすめています。ときには立体コピーといって、平面である絵画作品の構図がわかるようにするために、熱を加えるとふくらむ特殊なインクを使って、簡単に図式化された作品のコピーをさわりながら、鑑賞していただいたりしています。

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(新収蔵のゴーギャンの作品を鑑賞中)


 リピーターも多く、参加された方たちは「参加してよかった」と喜んでいただいています。先日の特別講演会での廣瀬さんのお話にもありましたが、健常者でもさわることで初めて感じることもありますが、美術鑑賞の方法は一通りだけではないということだと思います。(ST)
 

特別講演会

2012年10月08日

 10月8日に愛知県美術館では、「だれもが楽しめるミュージアムをめざして」と題した特別講演会が開かれました。講師は国立民族学博物館の准教授の広瀬浩二郎さん。
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 広瀬浩二郎さんは、13歳の時に失明されましたが、筑波大学付属盲学校、京都大学で学ばれて、日本宗教史、障害者文化論を研究、障害や年齢に関係なく誰もが楽しめる「ユニバーサル。ミュージアム」を提唱されています。展示品にさわってはいけない、という博物館の常識をくつがえす試みをされている研究者です。本年3月、広瀬さんが担当する「世界をさわる―感じて広がる」展示コーナーが国立民族学博物館にオープンしています。
 今回は、広瀬さんの学生時代の体験談、ボランティアとの関わりなどをはじめとして、近年研究されている琵琶法師や瞽女についての考察、そして語りから広がる視覚的イメージや美術館、博物館の展示物という情報をいかに情報転換していくのかといったお話を伺いました。 

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 会場は100人近くの聴衆が集まりました。他館の学芸や大学の先生をはじめ、講演会内容から視覚に障害を持った方も多く参加されていましたので、愛知県美術館の講演会としては珍しく複数の盲導犬も静かに座って聞いていました。

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 講演会の中では瞽女の絶える少し前に杉本きくえさんという上越地域の最後の方が縫ったという雑巾を会場内に回覧され、「これが展示ケースに入っていたら、感じられないことも実際に手に取って感じられることがある」と紹介されて、展示物を触って鑑賞する事の大切さに言及されていました。

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もちろん、触ることのリスクについてもお話しされていましたが、触れることの重要性も一緒に考えさせられました。広瀬さんの講演は今月24日に南山大学名古屋キャンパスでも「ユニバーサル・ミュージアムを目指して?全ての人の好奇心のために?」と題して、今回の講演会につづき開催される予定です。(ST)

 

 

日本美術教育学会

2012年08月19日

 8月18日、19日の二日間に亘って愛知芸術文化センターで第61回日本美術教育学会学術研究大会が開かれました。大変盛況で二百名ほどの参加者がありました。

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 この大会では学会とともに愛知県美術館も主催者として協力し、愛知県美術館と地域の学校の先生方との連携による鑑賞活動について、担当学芸員と愛知県美術館の鑑賞学習ワーキンググループのメンバーの先生と共同発表も行いました。

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 その連携の活動の一つの成果として、今年愛知県下の小中学校すべてに「あいパック」と名づけられた鑑賞補助ツール(作品写真のカードやポスター、鑑賞授業の指導案など)を配布したことも報告しました。多くの関心が寄せられ、またその連携活動の実践について高く評価されました。

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 近年、学校美術の中で表現活動だけでなく、鑑賞活動の重要性に目が向けられるようになっています。学習指導要領の中でも地域の博物館、美術館との連携がうたわれるようになっています。
 それぞれの地域で様々な試みがなされていますが、愛知県美術館はかなり以前から有志の先生方との研究会を重ねてきており、美術館からの一方的な情報提供ではなく、現場の先生方の意見を取り入れながら、また、子ども鑑賞会などでは先生方が強力なサポーターとして連携をしてきたことが実っています。

 また、今回の大会では、あいちトリエンナーレ2010の関連事業として行われたアーティスト派遣事業の成果なども発表があり、作品展示などもありました。a日本美術教育学会10.jpg

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 (フジイフランソワさん指導の飛島村の中学生の共同制作の作品)

 愛知県美術館の教育普及事業も地域の先生方に支えられながら進んでいます。興味のある方はホームページの先生方のページを覗いてみてください。(ST)

夏休み子ども鑑賞会

2012年08月06日

 夏休み子供鑑賞会が始まりました。

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 暑い夏がやってくると涼しい(人のためでなく作品保存のために温度や湿度の設定がされています)愛知県美術館では、恒例の夏休み子供鑑賞会が行われます。

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 今年の夏休み子供鑑賞会が8月2日から始まりました。初日は小学校3,4年生が対象で1時間ほどの展示室での作品鑑賞(コレクション展を中心に見ます)と30分ほどのワークショップの組み合わせで、開催中のマックス・エルンスト展に合わせて、エルンストのおこなった技法のフロッタージュを実際にやってみるプログラムです。

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 最初はちょっと緊張気味を子供たちも、鑑賞の先導役をしていただいているボランティアの方たち(現役の先生や元先生、学生)のやさしい導きで、とても愉しんでいました。中には子供鑑賞会のリピーターもいて、すっかり愛知県美術館に馴染んでいる子もみられます。
 子供むけの鑑賞会は、15年以上まえからスタートしていますが、「夏休み子供鑑賞会」として定例化したのは2000年からです。現在愛知県美術館友の会の学生会員のなかには、小学生の頃に子供鑑賞会に参加していた人もいます。今年の鑑賞会の受け付けは締め切られていますが、美術館のサポーターがすこしでも増えていくことを願っています。(ST)

はじめてアート講座

2012年07月25日

愛知芸術文化センターでは、「はじめてアート講座」というシリーズ・レクチャーが開催されています。
複合文化施設として、センターでご紹介しているさまざまな芸術領域について、親しみを持っていただくための講座です。


今年度のテーマは、「愛知芸術文化センター20周年を迎えて」。

先週金曜日には、「愛知県美術館なう」と題して、20周年の現在から見る、愛知県美術館のこれまでとこれからについて、館長と若手のS学芸員がお話しました。

現在の愛知県美術館の前身である文化会館時代も知る館長と、ここ数年ツイッター等を通じて美術館情報を発信している若手学芸員。二人の目から見た愛知県美術館の姿が語られ、美術館の活動に熱い視線を送ってくださる方々が聴講しに来られていました。

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↑ 会場でお話する村田館長(手前)とS学芸員(奥)


前半では、愛知県美術館の前身であった愛知県文化会館の話から、芸術文化センターの中の一施設としての愛知県美術館の誕生、文化財レスキューへの参加や、防災への取り組みも含めた最近の活動まで、懐かしい写真や、日頃お見せする機会のない写真なども交えてお話しました。

後半では、ブログやツイッターで、美術館の活動を知ってもらう試みの他、企画展、コレクション展とも異なる新しいプロジェクト、ARCHについてもお話しました。


金曜の夜7時という時間もあってか、雨にも拘わらず会場は盛況でした。
皆さんの美術館への期待を感じた講座でした。

これからも、絶えず活動に注目してもらえる美術館となるよう(”愛知県美術館なう”のツイートが一つでも増えるよう?)頑張っていきたいと思います。

(S.N.)

 

美術館と防災(1)

2011年12月22日

美術館は、お子様や高齢者の方々を含むたくさんのお客様をお迎えして展覧会を行なっています。

また一方でかけがえのない文化財をお預かりし保存する施設でもあります。

今年の3月11日は私たち美術館スタッフにも大きな衝撃を与え、今一度、館の防災計画を見直す契機ともなりました。

 

そしてまず復活したのが「シミュレーション・ミーティング」というものです。

これはいわば災害の仮想体験をしながら、個々の職員が自らをトレーニングする場であり、また既存の防災計画では、到底及ばないような、現実的かつ細かな部分について職員間で知恵を出し合い、話し合いを行なう場です。

 

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↑ ワークシート。

 

これがそのワークシート。
出題者の「何月何日何時何分に○○規模の地震が発生し、センターの設備やインフラがこういう状態になりました。そしたら、その時、あなたは?」という課題に沿って、まず自分で行動予想を書き込みます。

 

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↑ シミュレーション・ミーティングの様子。

 

みんな真剣でしょう?

美術館は土日も開館していますし、閉館日しかできない仕事というのもあり、美術館職員はローテーションを組んで出勤しています。その為、意外と全員が出勤している日というのが少なく、出張者が重なった日に事が起こると、少ない人数で対応しなければなりません。「今日、このミーティングに出席している職員だけで対応するとなると・・・」。毎回、条件が著しく異なるので、みんな、その都度、いろんな問題に直面する事になるのです。

 

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↑ シミュレーション・ミーティング2。

 

その次にはグループで話し合い、グループの代表がみんなの前で発表を行います。

館内の平面図上で各自の行動経路を動かしながら行なう事もあります。複雑な構造ですので、奥まったところでお客様が倒れていないか、「それで漏れなく確認が取れるか」、先輩学芸員から厳しいチェックが入ります。

 

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↑ 非常階段勉強会。

 

そのように仮想体験を重ねていると、毎回、いろんな問題点が出てきます。

センター上層の施設ですので、当然、避難経路は長く複雑になります。長く美術館に勤務している人間でも「覚えてるかしら?」、新人は「行ったことがない」というようなことが、ある時問題となり、今回は非常階段勉強会を行なう事になりました。

 

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↑ 非常階段勉強会2、3。

 

その他にも、「展示室監視員さんたちには、頭を守るものと懐中電灯は持っていてもらったほうがいいよね」「でも、展示室で、監視員の足元にヘルメットがゴロンというのは、あまり好ましくないよね」など、様々な意見の末、監視員さんの椅子の背もたれカバーと兼用できるような防災頭巾を考えました。

 

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↑ 防災頭巾試作。

 

いえいえ、怪しいお兄さんではありません。その試作品第一号を検討している場面です。

ちなみに、こういうものも、友の会のお母様方のご協力を頂いております。

 

(N.N.)

 

*ブログ編集担当者より

雨降らずして、地固うする。


 

ご報告

2011年12月10日

東日本大震災発生から9ヶ月が過ぎようとしています。被災された方々に、あらためて心からのお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、被災地の復興を心よりお祈り申し上げます。


愛知県美術館では、震災以降、さまざまな機会に来館者の皆様に義援金へのご協力をお願いし、その都度、ご支援をいただいてまいりました。そのなかで、被災した美術品をはじめとする文化財を救出する「文化財レスキュー活動」へのご支援を呼びかけさせていただいてまいりました。先日、全国美術館会議から感謝状を受けてまいりましたので、ここにそのご報告を申し上げます。

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↑ 感謝状の授与。左は全国美術館会議・青柳正規会長、右が村田。


まず、4月29日から6月12日まで麻生三郎展を開催にあわせて、所蔵作品展では、この度の大震災で被災された方々に思いをよせ、その心情に寄り添わせていただくことを願って、「祈りと鎮魂」をテーマにしたささやかな展示を行いました。その際、展示室内に文化財レスキューの支援のための義援金箱も設置し、ご来場いただいたお客様にご協力をお願いいたしました。その結果、175,406円の義援金をお寄せいただきました。この義援金はその後、「愛知県美術館来館者一同」として全国美術館会議に託させていただきました。その義援金への同会議会長からの感謝状です。


つぎに、7月9日から9月4日まで開催した「東北復興支援特別企画 棟方志功 祈りと旅」展では、この展覧会の実行委員会として、支援のための募金、絵葉書あるいはポスターの販売などを通じてご協力をお願いし、合計金額569,234円の義援金を集めさせていただきました。この内、半額の284,617円を文化財レスキュー活動のため、全国美術館会議に託させていただきました。同じく、その感謝状です。なお、この義援金の半額につきましては、朝日新聞厚生文化事業団に託させていただきました。

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また、棟方志功展開催期間中には、美術館のミュージアムショップで、東北地方の各美術館のオリジナルグッズや、同地方の名産品などを販売して、その収益金500,011円の半額250,006円を、このショップを運営する愛知県文化振興事業団から、文化財レスキュー活動等のために全国美術館会議に託させていただきました。なお、この収益金の半額につきましても、朝日新聞厚生文化事業団に託させていただきました。


以上、ご報告させていただきますとともに、改めて皆様のご支援とご協力に心から感謝申し上げます。


愛知県美術館長
村田 眞宏

 

毎年、趣向を変えて行っている「視覚に障がいのある方に向けたプログラム」。

過去のブログでもお話したように、視覚に障がいのある方と一緒に作品鑑賞をするのがこのプログラムの目的です。

通常は、作品について意見を交わしたりして作品理解を深めるのですが、今年度は手で触れる大型鑑賞グッズを特別に用意しました。

 それがこの「足」です。自立します。ジョージ・シーガルの立体作品《ロバート&エセル・スカルの肖像》の構造を理解していただくために、実物と同じものを実際に作ってそれを触っていただこう、という発想のもと生まれました。
 

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↑ 今年の新作鑑賞グッズ「足」。

 

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↑ ジョージ・シーガル 《ロバート&エセル・スカルの肖像》 1965年 愛知県美術館蔵


こちらの「足」を作ってくださったのは、東海地方で活躍中の若手芸術家、宇田ももさんです。モデルとなる人の足の周りに石膏をぺたぺたと貼り付けて、生乾きになったところで足を抜きます。今回はズボンが抜けないのでズボンごと切っていますが、シーガルの作品の場合も、衣服を石膏から抜いたものと石膏の中に残したものがあるそうです。

 

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↑ 工程その1

 

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↑ 工程その2


 そういえば、当館のO学芸員も過去にシーガルの石膏彫刻を自分で試していますね。その時の様子はこちら→2010年12月3日のブログ記事

 
10月13日と15日のプログラムに向けて、宇田さんはジョージ・シーガルの「足」だけではなく、ルーチョ・フォンタナの作品の模型も作ってくださることになっています。
フォンタナ作品の切れ目部分に指を突っ込みたいという願望が、今、叶えられます・・・!

 

 なお、宇田ももさんご本人の作品は、「秋の小旅行」(瀬戸市、銀座通商店街、末広商店街、11/10?11/20)や「ファンデナゴヤ ぶんのせんともものもの」(市民ギャラリー矢田、2012/1/12?22)でご覧いただけるそうです。こちらも楽しみ。

(F.N.)

7月最後の週に博物館実習を行いました。これは学芸員資格を取得するための課程の一つで、当館では毎年10人ほどの学生を受け入れています。実習の全体像については2009年8月14日の当ブログでM.F.学芸員がレポートしていますが、今年も5日間のみっちりと詰まったプログラムが組まれ、地震対策と文化財レスキューについての講義も加えられました。

3日目の実習「作品の展示と照明」は、私を含め3人の学芸員が担当しました。
まずは作品の配置から。学生を3班に分けて、8点の版画(カンディンスキー×2、ココシュカ×3、ファイニンガー、キルヒナー、コルヴィッツ)の配置を班ごとに考え、壁に立てかけてもらいました。

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                 004展示実習写真 009.jpg

各班で配置結果は違いますが、同じ作家のものをまとめたり、多色刷りと単色のものを分けたり逆に組み合わせたり、壁全体での作品の大きさのバランスを考えたりと、さまざまな意図が表れていました。学芸員からは「隣り合う作品に描かれた人物が背中合わせになるよりも、向き合った方が落ち着いて見えるよ」とか、「部屋の隅ではそれぞれの壁際の作品を観る人がぶつからないよう、どちらかを広く空けるとよい」といったアドバイスをしました。

照明については、スポットライトの照射角などについて説明後、コルヴィッツの彫刻《恋人たち?》にいろんな角度から光を当てて見比べました。
彫刻の照明にあたっては、その作者が描いた素描や版画などを参考にできることがあります。コルヴィッツの版画では、闇の中で人の頭や手だけが光で浮かび上がったり、複数の人物たちが影を共有することで結びついたりしているような表現がよくみられます。この《恋人たち?》でも、そんな照明をめざしてみることにします。

  001コルヴィッツ.jpg       002コルヴィッツ_0001.jpg

     コルヴィッツ《母親たち》 1921/22年            《左を向いた横顔の女性労働者》1903年

                 005展示実習写真 015.jpg 《恋人たち?》1913年

二人の頭部や女性の腕などはかなりいい感じ。ライトをもっと作品の真上近くに寄せて少し右に振ってやれば、二人の身体が影の中でより一体化し、恋人の顔を抱き寄せる男性の指の表情も出ることでしょう。
皆さんも時には絵の配置や照明などにご注意されると、美術館の楽しみ方が増すかもしれませんよ。

実習生の皆さん、お疲れ様でした。(T.M.)
 

皆さんこんにちは。
今年の梅雨入りは例年に比べ早かったようですが(沖縄ではすでに梅雨明けが宣言されたとのこと!)、こんな季節のお出かけにこそ美術館がおすすめです。
快適な展示室でゆっくりと作品をお楽しみいただければ、鬱陶しいお天気も一時忘れて過ごすことができるのではないでしょうか。
ただいま開催中の「麻生三郎」展は今週日曜日までとなります。広々とした展示室で、作風の変遷をじっくりと味わうことができるとご好評いただいている麻生展。ぜひお見逃しのないように。

 

さて、去る3月11日、東日本では、私たちの多くが経験したことのない大震災にみまわれました。
東北を中心とする地域の人々は家族や家を失い、一瞬にして平穏な生活を奪われ、その被害の甚大さは日本だけでなく世界中の人々に大きな衝撃を与えました。
これらの地域の人々が受けた物質的・精神的な被害は、まさに想像を絶するとしか言いようがありませんが、同時にこの地域で守られてきた数々の文化財も、大変大きな被害を被りました。
そこで、このたび文化庁により「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業」(通称文化財レスキュー事業)が組織され、震災の被害にあった文化財を救出する作業が始まりました。
さてこの文化財レスキューには、第1陣、第2陣とつづけて、当館からも2名の学芸員が派遣されました。(2011年6月9日現在)
そこで、第1陣に参加した大島学芸員のルポ(中日新聞に掲載)をここにご紹介します。

 

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動き出した文化財レスキュー

 

 3月11日の東日本大震災以来、私はどこか後ろめたい気持ちにつきまとわれていた。被災した人々のことを案ずれば当然胸が痛むが、しかし、だからといって自分に何ができようか。そう思うと、ますます心苦しくなった。
 そんな中、文化庁の要請のもと組織された「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業(文化財レスキュー事業)」の委員会に全国美術館会議(全美)が加わることになり、被災美術品に対するレスキュー隊を全美が組織することになった。これは美術館人としてぜひ参加したいと思い、すぐに志願した。
 全美文化財レスキュー隊第1陣には、国立西洋美術館、静岡県立美術館、愛知県美術館、和歌山県立近代美術館、兵庫県立美術館の5館から計6人の学芸員が集まった。派遣先は、宮城県石巻市の石巻文化センター。任務は、被災後、手を付けられないままとなっている同センターの収蔵庫内の美術品約200点を、現場で1点1点写真記録後、応急処置を施して梱包し、宮城県美術館に移送保管するというものだった。
 石巻市は町自体が津波の大きな被害を受けたため、センターのスタッフは市職員として市民のケアに当たっており、自分たちでそれら被災美術品の対応をすることはほとんど不可能な状態であった。かくして、私たち全美のレスキュー隊の出番となったわけである。
 石巻文化センターの美術品収蔵庫は津波で扉が一部破壊され、一度天井まで水につかってしまっていた。4月27日の朝に私たちが現場に到着した時には、水は引いていたものの、高湿度の中、カビによる被害が広がり始めていた。また、追い討ちを掛けたのが、付近の製紙工場から収蔵庫内に流れ込んだ大量のパルプである。それが作品のあちこちに付着して、まだぬれているものは腐りだし、あるいは、乾き始めたものは作品に固くこびり付きだしていた。

 損傷の種類は他にもいくつかあるが、とにかくそれらの被災美術品は、そのまま放置し続ければ、修復不可能なところまで状態が悪化してしまう危険性もあった。かくして、それらが専門の修復家による本格的な修復を受ける時が来るまで、損傷の進行をできるだけ抑える必要があった。それで私たちは、物資の面でも時間的にも限られた条件下で、適切と判断される程度、付着物の除去や絵の具層の剥落防止などの応急処置を現場でひとまず行った。


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▲駐車場に彫刻類を運び出し、応急処置をするレスキュー隊=宮城県石巻市の石巻文化センターで(筆者撮影)

 

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▲収蔵庫前で保護のため絵画を梱包するレスキュー隊=宮城県石巻市の石巻文化センターで(筆者撮影)


 そうして全美レスキュー隊第1陣は、29日までに石巻文化センターから美術品約200点(および、書簡などの資料数百点)を救出し、宮城県美術館に移送保管した。それらは現在、同館で全美レスキュー隊第2陣によって、入念な追加の応急処置を施されている最中である。貴重な文化財を守り、後代にきちんと残し伝えるため、今後も石巻文化センターの被災美術品に対する全美のレスキュー事業には、継続的に人材が送り込まれる予定と聞いている。

 他の深刻な被災地同様、石巻では今はまだ生活に直接かかわる問題が最優先であると思われるが、石巻文化センターの文化財は、あの地域が本格的に復興しようとする際、市民の大きな精神的よりどころとなるはずである。遠からず来るその時のために、美術館の世界に生きる私たちは芸術というものの持つ力を信じて、レスキュー事業に取り組んでいる。
 あれらの美術品や資料が本格的な修復を経て、晴れて再び石巻文化センターで展示されることになったら、その祝福すべき光景を自分の目で見るべく、もう一度石巻を訪ねようと思っている。その日が一日も早く来ることを切に願っている。
(愛知県美術館 学芸員 大島徹也)
 

【中日新聞5月20日(金)夕刊より転載。(当ブログ転載にあたって写真を1点[上]追加しました。)】

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文化財といった、人々の生命に直結しないものへの被害に思いをめぐらすことは、震災直後にはなかなか困難なことかもしれません。しかし、ある地域の文化的な財産は、その地域の人々のアイデンティティとも直結しているはずですし、大島学芸員の言うように、そのような地域の宝物が復興の過程で重要な役割を果たすはずだ、と私も思います。まずは国の財産として保護するべきという考え方もありますが、人々が故郷での生活を取り戻していくことと決して無縁ではない事業だと言えるのではないでしょうか。今後文化財レスキューの事業が続いていくとすれば、愛知県美術館としてさまざまな形でこの事業に協力していきたいと考えています。

なお、当館では現在、文化財レスキュー事業を支援するため、義援金箱を設置しております。 
皆さまのご協力をお願い申し上げます。
(S.N.)

 

皆さんはじめまして。

本年度より愛知県美術館に入りました新人学芸員です。企画展の準備や教育普及に関わることになりました。

愛知県美術館は、20世紀以降の美術作品、そして古今東西の美術品を誇る木村定三コレクションという見ごたえのある所蔵品を持っています。それと同時に、作品の保存に関わる優れた設備とスタッフを備えた国内有数の美術館でもあります。

そして、最近では学芸員が美術館の裏側をリポートするこのブログでもひそかにその名が知られているようです!

 

新年度ということで、今回は、新人の私が美術館スタッフの仕事場の様子をお伝えしたいと思います。

愛知県美術館のスタッフは、館長・副館長以下14人の学芸員と、5人の事務職員を中心に、アルバイト・スタッフや、案内監視スタッフで構成されています。

学芸員の日々の仕事については常にこのブログでも紹介されているので、今回は省略させていただくことにして。

 

早速ですが、学芸員室に潜入…

まずは受付から。

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なぜ学芸員室に受付が必要なの?と思った方もいらっしゃると思いますが、学芸員室には、いろいろなお客さまがいらっしゃいます。美術館の運営に関わる業者の方々、他館の学芸員さん、そしてアーティストも。皆さんをここでお迎えしています。


さて、こちらが学芸員のデスク。
今回は、整理整頓の行き届いたデスクを持つ先輩学芸員Oさんの後姿をパチリ!

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学芸員は、ここでメールのやりとりをしたり原稿を書いたりします。たくさんの資料のレイアウトには各学芸員の個性が見られて大変興味深いです。
私も他館の学芸員室をいくつか拝見したことがありますが、机や本棚の配置が異なるものの、皆さんたいていこのようにブース状になった個人スペースで仕事をされているようです。

 

続いて、パソコン作業のスペース。

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もちろん各学芸員は個人用パソコンも使いますが、作品のデータ管理をしたり、画像処理を行う時はここ。ホームページやブログの更新もここでやっています。講演会の垂れ幕を作ったりするための大きなプリンターもあります。

 


おまけで、工作作業スペース。

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キャプションや簡単なパネルは、学芸員やアルバイト・スタッフさんがここで手作りすることも。限られた予算内で必要なものを揃えるため、できることは自分たちで!というわけです。ここでは器用さも問われます…。

去年のあいちトリエンナーレの際には、学芸員Sさんがパネル作りに大活躍で重宝されていたとか。こんな能力もぜひ身につけていきたいものです。

 


そしてそして、学芸員室の奥には友の会の方々のお仕事場もあります。

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会員の方々はここに集まって、美術館のお仕事を手伝ってくださったり、友の会独自の活動をされたりしています。
新人の私は、友の会の活動スペースが学芸員室に隣接してあるということにちょっと驚きました。友の会の活動が美術館に根づいていることを感じます。

友の会の活動は、このブログの過去の記事、および友の会のホームページでも紹介されています。

 

さてさて、美術館のスタッフは学芸員だけではありません。
各展覧会の会計やギャラリー利用に対応する事務スタッフも、美術館には欠かせない存在です。学芸員とは違った意味で、美術館のプロフェッショナルと言える方々。新人の私たちも美術館の運営のしくみを教わることが多くなりそうです。

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学芸員の部屋とは少し雰囲気が違いますね。

 


そして、忘れてならないのは、展示室で働く案内監視スタッフさんたち。そのお仕事はこちらで紹介しています。

 

他にも、警備スタッフや清掃スタッフなど、美術館を安全で快適な場所として利用してもらうために働くスタッフの存在も大切です。


「学芸員って普段はどこにいるの?」と質問されることも多いですが、学芸員だけでなく美術館スタッフのほとんどが、このように展示室の裏側でひっそり(?)仕事をしています。展覧会を見にいらした時には、壁の向こう側に私たちの働く姿を想像していただけるとちょっと嬉しいです。

今年度は新人が2人ということで、学芸員チームも若者が増えましたが、一日も早く一人前になれるよう、奮闘せねばと思っています。
美術館の現場ではまだまだ学ぶことが多いですが、先輩の皆さんと力を合わせて魅力的な美術館を作っていくとともに、このブログも盛り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

私の同期であるもう一人の新人学芸員も、まもなくブログに登場する予定です。お楽しみに!

(S.N.)

以前、ブログでもご紹介しました「視覚に障がいのある方に向けたプログラム」。すでに愛知県美術館では10年以上続いているプログラムです。今年2月末に開催された模様を今回はお話します。

愛知県美術館のプログラムでは、参加者とガイドボランティアとが作品について語り合う言葉を通じた鑑賞のほか、立体コピー(平面作品の立体複写画像)を用いた鑑賞、そして実際に作品に手で触れて行う鑑賞などがあります。

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↑三沢厚彦のライオン像に触れる参加者。このプログラムでしかできない鑑賞体験です。

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↑クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》の立体コピー。輪郭部分が触れると分かります。

具体的な方法については前のブログでお話したので、今回は参加者の反応についてご紹介しましょう。

ピカソ《青い肩かけの女》の前に立たれた鑑賞者のお一人は、ガイドボランティアから「肩にかかっているケープは薄くてヒラヒラしたものではなく、ずっしりとしたもの」と説明をうけたそうです。そして、物寂しさや「森の精につつまれているようなひっそりとした雰囲気」を感じたと話されていました。

また、レームブルックの《立ち上がる青年》を手で触って鑑賞された方は、彫刻の足のくるぶしの向きとひざの皿の向きがねじれていることを発見。普通の人間の足はこのようにはならないそうです。レームブルクはあえて人のフォルムをねじりながら上に伸ばしたのでしょう。ぱっと見ただけでは気づきにくいこれら造形上の工夫が、青年像に独特のリリシズムを与えているのかもしれません。

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↑ヴィルヘルム・レームブルック《立ち上がる青年》 1913年

このようなプログラムを経験すると、私たちが普段何かを見ているつもりで見ていないのかに気づかされます。また、同じものを見ていても、あらためて言葉にすることで全然違う風に見ていることも分かります。こうした捉えがたさにこそ、アートの豊かさがあるのかもしれません。

(F.N.)
 

芸術文化センターの吹き抜け空間に設置され、皆さんに親しんでいただいていた北山善夫さんの巨大な作品が再設置されました。この作品、開館十数年を経て、ほこりなどの汚れが目立つようになってきていました。あいちトリエンナーレの開催を機会に、作品のクリーニングを行うことにし、一年半ほどかけてようやく再設置することができました。以前貼ってあった白い紙状のものをすべて取り去り、新しく貼り直すというのが主な作業でした。あの白い紙のように見えるのは、以前はガラス繊維を紙状に加工したものを使っていました。そして今回は和紙を塩化ビニール樹脂で加工してあるものです。このような特殊な素材を使用するのは防火のための配慮です。およそ2万枚近い貼り替え作業もようやく終わって、2月21日から4日間をかけて組立作業を行いました。

 

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この作品、何を表しているかご存じでしょうか。作品が大きすぎてちょっとわかりにくいかも知れませんが、実は人のかたちなのです。両手を広げ、左足を後ろに跳ね上げるようにして宙に浮いているように表されています。そのポーズは今回、かなり大きく変更されました。以前は両手をほぼ水平に広げていたのですが、今回は左手先を上げ、胴の部分をひねって、躍動感のある印象のものになりました。どうぞ皆さん、実際にご覧になってご自分の目で確かめてみてください。

 

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この作品には「私」と書いて「あなた」とルビがつく、ちょっと意味ありげなタイトルがつけられています。

(MU.M.)
 

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 愛知県美術館では以前から、小・中・高校の先生方を対象にした鑑賞に関するプログラムを行っています。展覧会ごとに先生を対象に展覧会の案内をするとともに、先生方の中から美術鑑賞の実践をされた様子を発表してもらって、他の先生方への参考にしてもらおうという催しです。
 今年度最後の鑑賞学習交流会は2月26日に開催し、大変たくさんの先生方に集まっていただきました。年度の最後の交流会では、通常の展覧会解説と先生からの実践発表のほかに学校図書館に展覧会図録のバックナンバーを寄贈することもおこなっていて、図書費の減少の中で1冊でも美術の寄贈本があることは有り難いという声をいただいています。

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 今回はカンディンスキーと青騎士展の解説のほかに愛知県陶磁資料館からの利用案内もおこない、そのうえで交流会の中心である、鑑賞教育の実践発表=今回は「鑑賞から表現へ、そして鑑賞へ」と題して、半田市立花園小学校の伊藤増代先生の発表=がおこなわれました。

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 交流会後には「鑑賞学習ワーキンググループ」という自主的な研究会サークルの勉強会もおこなっています。こちらのほうは、より実践的な意見の出し合いや美術館と協働して美術館での子ども向けのプログラムをおこなったりしています。それぞれの先生はボランティアとして美術館の教育活動を支えていただいています。

 

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また、一方今回の交流会後には知多の図工美術の先生方を中心にした「知多図同好会」の研修会として展示室での鑑賞実践もおこないました。先生方でとてもにぎわった土曜日となりました。
鑑賞学習交流会は必ずしも図工美術の専門の先生だけを対象にしているわけではなく、鑑賞学習に興味のある教師や教員養成課程の大学生なら参加できますので、気軽に覗いてみてください。 

(S.T.)

愛知芸術文化センターでは、広報誌『AAC』を発行しています。芸文センター内や県内公立図書館(一部図書館を除く)で無料配布しているほか、ウェブ上でバックナンバーを読むこともできます。


『AAC』は、芸文センターの各部署が主催する展覧会や舞台公演などを紹介するもので、毎回各部署の担当者が集まって編集会議を行い、掲載内容を練っています。


愛知県美術館も、編集会議のメンバーに加わっています。最新の67号は、愛知県美術館で2月15日から開催される「レンバッハハウス美術館所蔵 カンディンスキーと青騎士」展にちなむ充実した記事が掲載されているほか、展覧会出品予定のカンディンスキーの作品が表紙を飾っています。

 

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↑『AAC』67号表紙
(カンディンスキー《印象III(コンサート)》
Städtische Galerie im Lenbachhaus und Kunstbau München)

 

「カンディンスキーと青騎士」展をご覧になる前に、ぜひ『AAC』をご一読下さい。


(M.Ma)

美術館には行きたいけれど、仕事や学校で、昼間や土日はどうしても行けない・・・という方も多いのではないでしょうか?

そんな方のために、愛知県美術館では、金曜日の夜だけ午後8時までの「夜間開館」をおこなっています(入館は30分前まで)。

↓夜の芸文センター

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駅(栄駅/栄町駅)からも歩いてすぐ(約3分)。
アクセスのしやすさは抜群なので、お仕事帰りの方にもお気軽にお立ち寄りいただけます。


それからこの芸術文化センターに、美術館やコンサートホールだけではなく、ライトアップされたテレビ塔を含めた栄あたりの夜景を楽しむのに絶好のスポット「展望回廊」もあることをご存知ですか?

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美術館のチケット売り場の近くに階段があるのですが、そこを上るとすぐにこの展望回廊があります(展望回廊への入場は無料です)。

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↑展望回廊からは、こんな素敵な名古屋の夜景を眺められます。

さらに愛知県美術館と同じフロアには、アメリカのアカデミー賞授賞式ディナーの公式シェフがプロデュースしたレストラン「ウルフギャング・パック」もあります。

カップルの方なら、美術館でゆっくりと作品を楽しんだ後には、レストランで食事、その帰りには展望回廊で名古屋の夜景を眺める・・・なんていうのもいいですね。


現在開催中の「美の精髄 愛知県美術館の名品300」展では、学芸員による展示作品の説明会をおこなっており、そのなかでも、今週末(1月14日[金]、19:00~)に開かれるものがあります。


夜の美術館に、みなさまどうぞ足をお運びください。

(S.S.)
 

美術館には、展示に使う見慣れない設備がいろいろあります。美術館は11月25日まで閉館していますが、閉館中も実は忙しく活動しています。展覧会のための展示替作業をするのはもちろんですが、短期間ではできない設備の点検や修理をすることも、閉館中の重要な仕事です。

 

所蔵作品の展示に使うことが多い「展示室6」という小さめの展示室には、「昇降トラス」という展示設備があります。これはスポットライトを着けたり作品を吊り下げたりできる骨組みのようなものですが、スイッチで上下動するので、展示のために天井まで上らなくてもいいというすぐれものです。

 

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↑普段は天井に上がっています

 

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↑下ろしている途中です

 

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↑下りきった状態です

 

今回の閉館中に、3日間かけて、この「昇降トラス」をぶら下げているワイヤーを交換する作業を行いました。安心して作品鑑賞を楽しんでいただける環境を保つためには、こうしたメンテナンスが欠かせません。

 

長めの閉館でご迷惑をお掛けしますが、どうぞよろしくご理解のほどをお願いします。
(M.Ma)

 美術館では大量のダスターを使用します。これは友の会の中の「所蔵品管理サポート部会」を通じて寄付されたもので(サポート部会員を通じて寄付して下さっている方もおられる事を存じております。この場を借りてお礼を申し上げます)、本当にありがたいことです。

 

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 サポートのみなさんは、下着やTシャツなどの綿メリヤスの古くなったもの(この『古い』が重要なのです!!頂戴した物の中でも、よれよれで部分的に透けそうなぐらい薄くなり、ちょいと一、二カ所、風穴なんぞが空いた物など、特に貴重品扱いで使用させて頂いております!)を洗浄し(柔軟剤付きなどをお断りしているので・・・、手間ひま掛けさせて本当にすいません)、タグや縫い目など堅い所を取り外し、適当な大きさに切り分けて寄付して下っているのです。これで私たちは絵画や展示ケースのガラスを拭いたり、桐箱を拭いたり、様々な清浄化活動を行います。

 

 ↓これはある時、収蔵庫の棚を拭いた(乾拭き)後のダスターです。開館以来使用されていなかった棚を使用前に拭いた物ですが、こんな状態です。収蔵庫内の木部は基本水拭きができません。乾式で丹念にやってゆくしか方法しかないのですが、ふんだんにダスターが使用出来るおかげで、私たちは作業を進める事ができます。

 

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 他の学芸員から市販のウエットティッシュの類いの使用を検討して欲しいという声も有りましたが、調べてみると添加物の中には残留して作品に影響を及ぼす可能性があるものがあるので、今は保留しています。

 

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 ところでブロンズ像などを拭ったりする作業は、白手袋そのままを使用する事が多いです。なぜなら片手でなぜている間も、片手は作品を確保していなければならないので、結局「白手」そのもので拭いて行った方が安全な場合が多いからです。美術館で購入する「白手」は意図的に左右の区別の無いタイプ。汚れたら左右を替えて、裏表(手のひら側、甲側の意)使用します。汗をかきやすい学芸は、さらに中に薄いゴムの手袋をしてもらうようにしています。

(N.N.)

 

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愛知県美術館で鑑賞学習について共同で研究している現職の先生方と、滋賀県立近代美術館のワークショップの見学をしてきました。

滋賀近美は夏休みに毎年ユニークな子ども向けのワークショップのイベントを行っているというということで、駆けつけてきました。

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▲ まず子どもたちは「アート博士」のお話を聞きます。

今年のワークショップは、動物や植物などをテーマにした常設展「夏休み子ども美術館 アートのぶつブツえん」の展示室を「サファリ」に見立てて、探検隊員になった子どもたちが、作品を鑑賞しながら探検する、というものでした。

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▲ 解説ボランティアの方々と話しながら作品を見る子どもたち。

展示室では、作品を見るだけではありません。
パネルで出題されるクイズに答えて、「怪盗ルパンダ」の狙っている「伝説の大海賊フックマ船長」が展示室に隠した財宝を見つけていきます。

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▲ 作品のなかのトラが何を話しているのか想像して、みんなでクイズの正解を考えています。

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▲ 全てのクイズをクリアすると、「フックマ船長」の財宝である伝説の不死鳥「マイアストラ」を制作する材料をゲット!

子どもたちは、前半の作品鑑賞だけで終えて、後半はミニ作品の制作までおこないます。

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▲ アート博士のアドバイスをもとに、長時間の疲れも関係なく集中して作品を作っていました。

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▲ 不死鳥「マイアストラ」の完成作。

今回見学したワークショップは、全体の構成から細かなテクニックまで、滋賀近美の教育普及担当学芸員や解説スタッフの豊富な経験がなければ、簡単にマネできるものではありません。
見学に参加した愛知県美術館ワーキンググループの先生方は、大いに刺激を受けて帰ってきました。

解説ボランティアのみなさん、「アート博士」こと滋賀近美の平田学芸員、どうもありがとうございました。(S.S.)

※ 愛知県美術館では、鑑賞学習に関する勉強会「鑑賞学習ワーキンググループ」を定期的に開催しています。日程などの詳しい情報はこちらをご覧ください。
 

福岡県太宰府市の九州国立博物館(九博)で上記のシンポジウムが開かれました。

 

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↑太宰府天満宮の参道を通り、光のトンネルを抜けると、ガラスの壁面で覆われた巨大な建物が出現します。手前に並ぶ大きな蓮の鉢は九博のボランティアが設置してくれたものだそうです。

 

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↑博物館内のミュージアムホールという立派な会場で行なわれました。

 

今回で3回目のシンポジウムで、過去2回はIPMの草分け的存在の保存担当N.N.さんが参加しましたが、今回は私が行ってきました(日程が重なったため「愛知トリエンナーレ2010」の開会に立ち会えなかったのが心残りです)。IPMという言葉はまだWHO のように市民権を得ていないので、何のこっちゃわからんという方がほとんどだと思います。気になる人はN.N.さんが書いた8月18日の裏方通信番外編のブログを読んでください。

 

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↑エントランスホールでは、シンポジウムのタイアップ企画で「IPM市民フォーラム」というポスターセッションが行なわれました。


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↑上の写真の拡大(愛知県美術館の事例)です。

 

初日は市民報告会として「愛知県美術館友の会サポート活動とIPMプログラム」という演題で、愛知県美術館友の会所蔵品管理サポート部会の代表お二人と一緒に当館の事例を発表しました。

 

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↑友の会の武藤さんです。

 
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↑友の会の伊藤さんです。

 

愛知県美術館ではボランティア組織はないけれど、友の会という組織があり、その会員によるモニター部会と所蔵品管理サポート部会という部会が美術館を支援してくれており、これらサポート部会がいわばボランティアに代わるものとして活動していること、後者の部会の活動の中ではIPMに関わることが行なわれているといった内容です。予行演習もせずにぶっつけ本番で臨んだのですが、予定時間ぴったりに終わったそうで何よりでした。

(H.F.)

 

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↑おまけ:太宰府天満宮です。頭が良くなりますように。

 

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↑もひとつおまけ:町で見かけた古い看板。カンコーって菅公のことだったのか。納得。
 

 裏方通信番外編、再び所蔵品管理サポート部会(以下、この文章内では「サポート部会」と略す)の話題です。このサポート部会の日頃の活動は「地味」の一言に尽きるので、遠く九州のそれも国立博物館との交流というのは、驚かれるかもしれませんね。
 話は2年前に遡ります。九州国立博物館(以下、九博と略す)は平成19年から20年にかけて、「市民共同型IPM活動に関する研究会」というのをなさいました。ここではIPM(*1)についての説明はスキップしますが、まあ美術館博物館が文化財を未来に向けてまもってゆくために、近年選択されることが増えてきている一つの手法のこと・・・ぐらいに今は理解して下さい。そしてこれを博物館という枠の中にいる人間だけでなく、本来の文化財、博物館の所有者である市民のみなさんと共に実践してゆくにはどうすれば良いのか、というのが、この時の九博さんの研究テーマの概要です。
 さて、実は愛知県美術館(以下、県美と略す)も、このIPMについては早くから取り組んでいる館であり、かつその活動は前回お話したとおり、外部協力者であるサポート部会(基本的に一般市民の方)に多大なバックアップをお願いしている館でもあります。それでその研究会のシンポジウムで愛知も事例発表のお誘いを受け、私(N.N.)が発表させて頂いたのですが、そこで私は九博をめぐるその博物館活動を支援する諸団体のみなさん(博物館のボランティアやNPO法人、「九博を愛する会」の方々など、以下、「九博のみなさん」と略す)の素晴らしい発表に触れ、大変に感動致しました。そしてこちらの県美サポート部会のみなさんと交流ができたらいいですね・・・というのを、その事例発表の結びにした・・・というのが、事の発端です。

 

 話が飛んでしまうのですが、今年、この東海地区で初めて文化財保存修復学会という学会の大会が岐阜で行われました。そこに出席される上記「九博のみなさん」が、大会より一日早く東海地区入りして下さり、なんと本当に県美のサポート部会を訪問して下さったのです。

 

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 引き合わせた当の「言いだしっぺ」は、当日、上記、地元で行われる学会の大会の準備の為に、その会に参加できませんでした。「いつも内助の功に徹している、うちのパパやお母さん達が、そんなに大勢の方々に囲まれて大丈夫かしらん」なぞと・・・後ろ髪を引かれる思いで学会の方に向かったのですが、なんのなんの・・・、そんな心配はまったく無用でした。
 その後、学会で合流した「九博のみなさん」から口々に「愛知のみなさんに元気をもらった」「話に聞く以上に、美術館のために細かい作業をなさっていることに驚いた」等、私はたくさんの感想を学会の会場で伺う事になったのです。後に写真を拝見させて頂きましたが、大変に和気藹々の会であったことを感じることが出来ます。

 

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 「九博のみなさん」と「愛知県美のサポート部会」では、実際に行っている活動の内容にはかなりの違いがあるのですが、「自分達が支援している博物館(美術館)の活動の一部を協働している」という思いは、みなさん同じだったに違いありません。同じ目的の元、「何をどうしているのか、そしてその活動が館の活動にどのようにつながっているのか」という点で、すぐに会話が弾まれたのだろうと思います。

 

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 「黒子に徹することの美学」、これは九博でのシンポジウムで九博のボランティアさんから伺ったのですが、私はこの言葉を聞いたとたん、まるでぐっと棒でも呑んだように上半身が起き上がってしまいました。この美学の意味や尊さを一番理解できるのは、もちろんこの美学を追求している方々同士に違いありません。今後もこのような交流がさまざまなところで行われればいいなあと思います。

(N.N.)

 

*1)Integrated Pest Management(総合的有害生物管理)の略。害虫・カビといった生物被害を回避するための方法。これについてはまた後日、もう少し詳しく話題として取り上げます。
 

 今回はいわば「裏方通信シリーズ」の番外編ともいうべきものです。今までも、この愛知県美術館のブログの中では、「友の会のサポート部会」という言葉がちょくちょく出てきているので、今回はこの「サポート部会」について、少し説明をさせて頂こうと思います。前回ご紹介いたしました「さらしのお洗濯」などをして下っている方々は、正式名称「愛知県美術館友の会 所蔵品管理サポート部会」という活動組織のみなさんです。

 

 愛知県美術館では、直接ボランティアを募集することを行っていません。しかし開館の翌年に発足した「愛知県美術館友の会」という会が、当初より活動目的の一つに「美術館の支援」という項目を掲げて下さっており、友の会は今まで美術館と協議しながら様々な支援への試みをされてこられました。
 2004年、当時の市川政憲館長の「美術館を理解してもらうための『協働』体験の場」という発案から、両者間および美術館内で何度も協議が重ねられ「友の会による美術館サポート活動」という試みが始まりました。この部会も、その6年前にいくつかできた部会の内の一つです。
 ここらへんはやはり紆余曲折があるのですが、現在の「愛知県美術館友の会」の中にある美術館支援活動組織は
 ・美術館モニター部会  
 ・美術館所蔵品管理サポート部会
の二つで、いずれも大変活発に美術館のための活動を行って下さっています。

 

 所蔵品管理サポート部会の場合、これは友の会の会員の方であれば、どなたでも、いつでも参加することができます。活動は第2第4水曜日、10時から4時の随時制。この時間帯であれば、いつ始めて、いつお帰りになられても自由です。毎回の出席も求められていません。部会のみなさんは、それぞれ御自分の生活スタイルに合わせて、毎回、半日だったり、月に1度のペースだったりと、この時間帯の中で参加のスタイルをお決めになっています。美術館側の担当との合言葉は「細く長く無理をせず」(ちなみに+「高望みせず、あきらめず」というのが、発足当時の担当の胸のうちでしたが、それはいつしか消えて無くなってしまいました)。それでも毎回、15名弱のみなさんが活動して下さいます。

 

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 一斉に活動がスタートするわけではないので、活動日の朝には、このように白板に、その日、美術館が部会のみなさんにサポートをお願いしたい作業の細々が提示されます。来られた部会員のみなさんは、その中から御自分でお仕事を選択します。お針仕事がお好きな方はお針仕事、事務的なお仕事がお得意な方は事務的な仕事。ですがやっていることは違っても、同じ机でおしゃべりをしながらゆったりと作業が進められます。
 この写真のお母さまは全体のまとめ役のお一人なので、誰も手をつけていない作業がないかとか、もっと大勢でかかった方がいいんじゃないかとか、作業の進行と白板を照らし合わせながら、全体について気を配って下さっているところです。

 

 以下は内規にうたわれているこの部会の活動項目と、その実例のほんの一部です。
 

1、保存業務に関して生じる様々な作業
   収蔵庫での収納や保存処置に使用する備品製作やその洗浄作業
 

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↑ミシン で備品製作

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↑さらしの作業


2、所蔵作品の調査や管理に関して生じる様々な作業
   所蔵品の管理に必要な所蔵品カード・在庫調査表、現状調書、ラベルなどの作成、書き込み
 

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↑所蔵品カード


3、所蔵作品の活用に関して生じる様々な作業
   キャプションの整理や、展示に使用される備品・道具の管理用備品の作製、その清浄化作業

 

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↑キャプション整理

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 ↑キャプション整理、備品の清掃

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↑お道具入れ作製

 

 このように、今では所蔵品管理に派生しがちな「地味」にして「美術館活動の根本的な部分に深く関わる諸作業」をして頂いている、裏方にとっては、なくてはならないパートナーと言っても過言ではないと思うのです。きっとこの裏方通信シリーズでは、今後も随所でこの部会のみなさんの活動の足跡をご紹介する事になることと思います。だって「裏方を巡れば、サポート部会の厚い支援にぶつかる」というのが事実なのですから。

 

 私はこのサポート部会の皆様のことを、心密かに「美術館のパパ、美術館の母」とお呼びしております。
(N.N.)

 みなさんは美術館や画廊などの展覧会に出かけようとするとき、何から情報を得られていますか?この愛知県美術館のブログをご覧になっているみなさんはもちろんインターネットによる情報入手をされていることと思いますが、一度にたくさんの情報を見ようとすると案外時間がかかってしまいますよね。
 その点、アナログ的な紙媒体の情報は、一目でたくさんの情報を見比べるように得られる良さがあります。
 東海三県(愛知、岐阜、三重)の主な美術館や画廊の情報をぎゅっと詰め込んだ便利な情報紙があるのをご存知でしょうか?それは『ナゴヤアートニュース』です。

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23の美術館施設と画廊68軒(内22軒は画像入り)で、他にも美術系大学やデパートなどの展示情報、そしてそれぞれのアクセスに便利なマップも組み込まれています。
 

 このナゴヤアートニュースは二ヶ月に一度、年6回の発行で、美術館や画廊に行くと無料で手に入れることができます。最新号の8,9月号で114号となります。これだけ内容の濃い紙面を無料で提供できているのは、掲載している美術館と画廊が手を携えて、それぞれ経費分担をしているからです。

 

 ナゴヤアートニュースの最初は市内の6軒ほどの画廊が集って「Nafa=なごやアートフレンドリー・アソシエーション」という横の繋がりを持ち、そこが発行していた簡単な四つ折りのパンフレットに、愛知県美術館と名古屋市美術館が展覧会情報を載せるところからスタートしたものです。Nafaと両美術館が中心になって東海地方の美術館に声をかけて拡大していったのです。これは、一般の美術誌のように広告や購読料を取って作っているのではなく、掲載している美術館や画廊が使用紙面に応じて負担をして作り上げている情報紙で、誌面構成を変えると負担が大幅に増えてしまうから現在の形が精一杯といえるでしょう。今の時代、広報予算を少しでも削らなければならない美術館や画廊にとっては負担の増えることは難しいのです。ある美術館では広報予算の内、ほかを削ってもこのナゴヤアートニュースの予算だけは確保しているというところもあるくらいです。
 それだけ、このナゴヤアートニュースが東海地方の美術ファンにとってとても便利で有効な情報入手ツールとなっているということです。発行の時期になるとまだ出ないかと問い合わせもありますし、すぐに美術館などに行けない人は郵送費を払って入手している人もいます。美術館や画廊で是非手にとってください。

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 実は毎号の内容はインターネットでも見られるようになっているんですよ。http://www.artnews.jp/ にアクセスしてみてください。
 

 なお、114号と115号は「あいちトリエンナーレ2010」の開催の関係から、愛知県美術館と名古屋市美術館としての紙面はお休みして、トリエンナーレの情報が掲載されます。(ST)

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美術館友の会講座

2010年08月03日

 愛知県美術館友の会では、会員向けの講演会や講座も開催しています。その内容は当館の展覧会やコレクション関連に限らず、「ルネッサンス」「ヴァトー、シャルダン」「ガンダーラとバーミヤン」「仏像の光背」「浮世絵」「人間国宝の陶芸」など、会員の希望による幅広いテーマが取り上げられています。
 去る7月24日(土)には、「現代の表現―社会の中での試み」と題した講座が催されました。講師は豊田市美術館チーフキュレーターで美術批評家の天野一夫さん。

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▲大きな部屋での講演会とはまた違った和やかさと熱気が。

 天野さんのお話は、現代美術を(自分なりに)読み解くことを愉しもう、あいちトリエンナーレでいつもの美術館・いつもの街が異なったものになることを現場で感じよう! というもの。
 現代美術と社会の関係の例として、クリスト(大きな建物や自然の景観などを布で包む作品で有名)の制作記録が紹介されました。作品の壮大さをあらためて感じるとともに、地元住民たちの賛否両論熱い語り口に、ご聴講の皆さんから笑いがこぼれました。

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▲万里の長城のような、クリストの布フェンス。

 友の会へのご入会は、トリエンナーレ開催中も美術館入口で受け付けています。
                                             (T.M.)
 

 ところでこの「さらし」、使えば当然汚れます。汚れれば洗って使えばいい、というのがまた「さらし」のいい所ではあるのですが、これがまたなかなか厄介なのです。
 「さらしの話 1」で紹介しました通り、「さらし」は普通、35cm弱ぐらいの幅で売られています。美術館では用途に合わせて、これをこの幅で使ったり、半分や3分の1幅に裂いたり、時にはもっともっと細く裂いて使う事もあります。
 で、これをいきなり洗濯機に入れて洗うとどういうことになるでしょう?洗い終わって、洗濯機から出てくる頃には、こんがらがって、どこから手をつけていいのかわからない代物と化してしまいます。
 

 それで私どもは、このように緩く巻いて、あるいは蛇腹に折って、中央をきつく輪ゴムで縛ってから洗濯します。

↓洗濯前

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 当館ではこの作業を、現在、友の会の中の「所蔵品管理サポート部会」のみなさんがして下さっています。

↓さらしまき

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↓物干

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 洗い上がったものも、この通り、皺をのばしてきっちり巻き込んで現場に提供して下さいます。

↓洗濯後

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 さらしは「さらしの話 1」でもお話しましたとおり、紐の様に一部分に圧力を掛けるのではなく、できるだけ分散させるために使うのですから、このような事前の手間ひまが、実は作品保護の為に重要な意味を持っているのです。
 また棚のフランケンシュタインも、シワシワの棒状のさらしと、幅いっぱい、ピンと張ったさらしとでは、どちらがより効果的であるかといえば明々白々です。さらしを巻くのは学芸員ですが、その手間の効果が60%なのか、100%なのか、このサポート部会のみなさんの、美術館に対する惜しみない労力によって大いに変わってくるということです。
(N.N.)

レームブルック片付け

2010年07月24日

愛知県美術館10階の「ラウンジ」と呼ばれる八角形の空間には、開館以来レームブルックのブロンズ彫刻《立ち上がる青年》がたいてい展示されています。この作品も「あいちトリエンナーレ2010」のために片付けました。《立ち上がる青年》は人力で持ち上げられるほど軽くないので、作業もたいへんです。この彫刻は3次元の揺れにも対応する専用の免震台に乗っているので、まずは免震台が動かないように固定することから始め、いくつかの作業工程を経て、収蔵庫内の予め確保しておいたスペースに収納しました。重い作品の移動は見ているだけでも疲れるものです。
 (H.F.)

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↑免震台を固定しています

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↑作品を移動します

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↑トリエンナーレが終わるまで収蔵庫でしばらくお休みです

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↑残った免震台を片付ければ作業終了
 

愛知芸術文化センター10階の愛知県美術館企画展示室、所蔵品展示室での展示は7月11日で一旦終了しました。そして8月に始まるあいちトリエンナーレ2010の開催に向けて準備が始まっています。
その最初として壁のお化粧直しを行いました。これまでは壁から作品が全く消えることはなかった所蔵作品の展示室ですが、今回は開館以来初めてすべての展示室から一旦作品を撤去して、汚れの目立ってきた壁の塗り直しを行いました。

 

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限られた時間内に作業を行うために、多数の作業員が従事して作業は行われました。さすがに広い壁も見る見るうちに塗られていくのでした。とはいえ高い壁は6メートル近くもあり、また可動壁も含めて全て塗り替えるため大変な作業で5日間を要しました。

 

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展示室によっては普段可動壁で仕切られ、作品が壁に架かった状態しかご覧になれないのですが、きれいにお化粧直しが終わった後は、この写真のように可動壁が全て収納され、広々とした空間が広がっています。この展示室5では動物彫刻の三沢厚彦さんとインスタレーション豊島秀樹さんのコラボレーションの展示が予定されています。この大きな部屋を二人だけで使われます。どんな展開になるのか乞うご期待!(ST)
 

所蔵作品展の展示室には作品こそ変わるものの常に100数十点の作品が出ていますが、展示室が「あいちトリエンナーレ2010」で使われるため、作品を収蔵庫に片付けなくてはなりません。1992年の芸術文化センターの開館以来、所蔵作品展の展示室の作品をすべて収蔵庫にしまったことは一度もなかったように思います。その準備として、収蔵庫の整理をしました。
基本的には、ラックと呼ばれる格子状のスクリーンに掛かっている絵を移動し、戻ってくる絵を掛けるスペースを空けておいてやるという作業です。

 

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↑左の作品を左いっぱいに寄せて

 

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↑右の作品をその上に掛けると、右側に大きなスペースが

 

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↑整理が終わったら、地震対策としてさらしで作品を固定


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↑拡大です

 

なんとか準備は整ったので、あとは戻ってくるのを待つばかりです。はたしてすべての作品がうまく納まるでしょうか。
(H.F.)
 

 この「さらし」、地震対策としても大活躍です。

 

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↑なんか棚がフランケンシュタインのようになっていますが、これは収蔵庫の掛け軸類が入っている棚です。阪神淡路大震災の後、全国の美術館が協力し合い、被害のあった美術館博物館の支援をしながら、被害状況について詳細な調査を行いました。どういう展示、どういう収納方法がされていたものが、どういう被害を受けたのかということを調べ、大変貴重なデータを蓄積しました。
 そしてやはり桐箱にきちんと収納された状態の物が、比較的被害が少なかった事、また横揺れに対し、このような「さらし」であっても充分に落下防止になっていることなどを客観的なデータとして導き出す事ができたのです。

 

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↑ラックに掛けられた作品も、V字に「さらし」を掛ける事で、落下防止のみならず、ラックに直角の揺れが来た時の、作品によるラック面への「叩きつけ」緩和にも役立ちます。
 けして高価な器具を購入するばかりが、地震対策ではないのですね。手間はかかりますけど。(新人さん達の「さらし」結びのトレーニングにはいいですが)

(N.N.)

 美術館に就職した学芸員や保存担当学芸員、あるいはその助手さん達が最初に苦労することに、この「さらし」の結び方の習得というのがあります。

 実はいろいろな結び方があるのですが、絶対というルールが2つだけあります。一つはもちろん加重がかかっても絶対に緩まない事。もうひとつは一カ所を引っ張れば(ほとんどの場合、短く垂れる方になりますが)、すぐにほどけることというこの2つのルールです。

↓すぐに解ける結び
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 まず2番目のルールを達成できる結び方を覚えるのも一苦労ですが、さらにその結び方で1番目のルールもきちんと達成できる様になるまで、結構、繰り返しの練習が必要です。
 作品を扱う時は、「さらし」などで固定されている時以外は、どのような場合でも必ず手を添えるのが鉄則です。片手で作品を支え、片手で紐を解こうとした場合、誰かがこの「結び」のルールを破っていたら、結構、大変なことになってしまいます。

 私も新人の頃、外部の美術輸送専門技術者の方に「だから素人に現場に紛れ込まれると困るんだよな」と言われた事があります。どんな現場もそうやって先輩方にいろいろ叱られながら、みんな育ってゆくんですよね。
その後、私はある一人の美術輸送専門技術者の方にまとわりつき(残念ながら今はもう、その方は退職されてしまいましたが)、いろいろなやり方を教えて頂きました。これはその時、最初に教えて頂いた結び方です。

↓ひとつのやり方

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 ところでこの結び、この間、本を読んでいた時、お着物の仮紐の結び方と同じ原理なんだなと気がつきました。着物の仮紐は、着物を着たら襦袢に使った紐を着付けた着物の合間から、帯が固定されたら着物に使った紐を固定した帯の下から、スルスルと上を壊さないように抜かなければならないので、やはりしっかり固定ができて、しかもすぐに解ける紐結びにしなければならないというわけです。

 他にも仕事の上で習い覚えた紐結びが、日常の中で役に立っていることがいくつかあります。それはまたこのシリーズでおいおいと。
(N.N.)
 

棚卸し

2010年05月31日

愛知県美術館では、毎年、作品のジャンルごとに「棚卸し」をしています。美術館で「棚卸し」?と思われるかもしれませんが、つまり在庫調査、作品が美術館内にきちんと保管されているかどうかを確認することなのです。愛知県美術館の所蔵作品約7000点ある中で、現在では洋画、日本画、彫刻、水彩・素描・版画などのジャンルに分けて行っています。
所蔵作品は、収蔵庫で大きく絵画、彫刻の部屋に分けて保管しています。棚卸しでは、収蔵庫内で作品所在を確認し、作品ごとの帳票に確認場所を記載していく作業を行います。作品は、通常、絵画用ラックや棚に五十音順に整理してあります。例えば、今年調査を行った水彩・素描・版画作品では、多くの作品を箱に入れて保管しています。それら作品を箱の中に収める際には、ウコン袋、通称黄袋“きぶくろ”というウコンで染められた黄色の袋に作品を入れています。防虫効果があることからウコンで染められているのです。また、水彩・素描・版画作品は点数が多いため、すべての作品を額に収めているわけではなく、マットを呼ばれる二枚重ねの厚紙、つまり紙の額縁のようなものに挟んで、引き出しに重ねてしまってある作品もあります。
 

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△黄袋に入れられた版画作品


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△引き出しの中 マットにはさみ重ねた版画作品


このように水彩・素描・版画の作品は、黄袋と箱、また引き出しの中と保管されているため、収蔵庫の中でも容易に目にすることはなく、棚卸しはこれら作品を実見する貴重な機会なのです。作品をチェックしていく過程で、この作品はこんなにきれいな色をしていたのかとか、意外と大きかったなど、これまで見過ごしていた作品の魅力に触れることとなり、作品を鑑賞するときとは異なる、作品を発掘したかのような心躍らされる瞬間を楽しむことができます。このように、棚卸しはあらためて作品に出会う機会となり、さらには皆様に展示でご紹介する作品候補を選定することにもつながります。作品すべてを確認する作業は大変ですが、細かく収納方法もチェックしながら棚卸しを行っているので、作品の保存上でも重要な作業なのです。
棚卸しは年に一度程度ですが、作品管理には日々の仕事の積み重ねも重要です。愛知県美術館の財産である作品を常日頃きちんと管理し、展示を通して皆様に新たな作品の魅力をご紹介していきたいと思っています。(m.f.)
 

愛知県美術館では、教育プログラムの一環として、愛知県内の小学校・中学校・高校の先生方と「鑑賞学習交流会」を行っています。今回はこの「鑑賞学習交流会」をご紹介します。

 

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▲ 昨年度に開かれた〈大ローマ展〉関連ワークショップについての発表

 

交流会のなかでは、先生方が鑑賞教育の実践例を紹介したり、学芸員が展覧会について解説を行なったりして、鑑賞教育についての情報交換を行なっています。
簡単に言うと、鑑賞学習についての勉強会のようなものですが、図工・美術専科の先生だけでなく、そのほかの教科の先生にも多く参加していただいています。

 

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▲ 展示室内で、学芸員の解説に耳を傾ける先生方

 

▲ 昨年度のワークショップを再現、古代ローマの衣服「トガ」を着る I 先生。
この発表を聞いて「実際に彫刻の授業で参考にしたい」という意見もいただきました。


鑑賞学習交流会は、2、3ヶ月に一度のペースで開かれており、企画展の開催ごとに各学校にその案内を送っています。
「鑑賞学習についてもっと知りたい」という方、「鑑賞の授業で、こんな方法があるんだけど」という方などなど、鑑賞教育にご関心のある先生方、ぜひお気軽にご参加ください(予定などの詳しい情報はこちらをご覧下さい。)(S.S.)


 

 みなさん、「さらし」ってご存知ですか?「さらし」は日本の伝統的な「並幅」という単位で織られた白無地の木綿布のことです。ちなみに「並幅」とは約36cm弱、手機で織るのに一番都合が良い幅とされています。日本の着物はその「並幅」を基本に構成されているんですね。普通はこの「さらし」も着物1着分、つまり一反という単位で売られています。昔は赤ちゃんのおむつや、妊婦さん達の腹帯といったものから、生活の様々な場面で使われていた、日本人の生活にはなくてはならないものでした。
 ところで、現在の日本人の生活ではあまり見かけなくなったこの「さらし」、美術館の裏方では大活躍なんですよ。

1、 収蔵庫の中で作品を収納する時、このように「さらし」を縦に裂いたもので、縛っています。002収蔵庫内1.jpg

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2、 作品を移動するときも、台車に固定するのに使います。004台車の固定.jpg


3、 箱だって、中に作品が入っていれば、念のための転倒防止のため、このように「さらし」で縛ります。

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さらしは広げて使えば、紐の様に一部分だけに食い込むのではなく、圧力を分散させることができるのです。ビニール紐の様に滑ることもありません。

またダスターが無い時はダスターの代わりに、敷物が無い時は敷物の代わりにと、時に応じて学芸員や保存担当のその場の機転で、様々な使われ方をします。

 あれ!?これはうちの副館長室の白板です。001副館長室.jpg

白板消しに「さらし」を使うのは、さすがにうちの副館長ぐらいのものでしょう。・・・副館長、返してよ。

(N.N.)
 
 

愛知県には、美術館、歴史博物館、科学館、それから動物園にいたるまで、多種多様な博物館が数多くあります。それらの施設には学芸員、または研究員と呼ばれる専門職員がいるわけですが、県内の近くにいる同じ専門職員なのに、一緒に仕事をしたり、交流を持つ機会はなかなかありません。当館でいえば、展覧会を共同で開催する他県の美術館の学芸員さんや、展覧会を共催で運営する新聞社やテレビ局の事業部の方との仕事のほうが圧倒的に多いです。

愛知博物館協会は、まだ当館が愛知文化会館だった時代、そして博物館が少なかった時代の1964年、学芸員の交流の場として加盟館11館で愛知地区博物館連絡協議会を発足し、なんと40年以上の歴史があります!現在、加盟館は約130館を数え、研究会を開いたり、その成果として合同で展覧会を行ったり、講演会・研修会を開催して知識、技術を共に学び、情報を交換しています。

本年度から新たに、調査・研究、教育・普及、修復・保存という学芸員の日常の仕事区分別の研修会をすることになり、先日の2月5日、調査・研究部門の研修会が「ワークシートの作成・活用術」というテーマで行われました。
ワークシートは、展示物への理解を深めるため、単なる解説ではなく、クイズがあったり、観察して絵を描いたりと、展示を見ながら使用するものです。このワークシートの多くは学芸員お手製です。研修会場には加盟館のワークシートが展示されていましたが、デザイナーやイラストレーターに作ってもらうことは予算が許さず、試行錯誤の様子。

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↑会場内に設けられたワークシートの展示コーナー 色とりどりなワークシートが並んでいます

今回の研修会では、日本全国の博物館のワークシートについて研究を重ね、ワークシート作りの仕事もされているデザイナー木下周一氏をお招きし、ワークシートのあり方や自らのワークシート作成経験などをお話いただきました。

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↑木下氏ご自身が作成されたワークシート(千葉中央博物館生態園)を一例として示してくださいました

その後、碧南海浜水族館・碧南市青少年海の科学館、徳川美術館、愛知県美術館のワークシートの実践例を報告しました。碧南の水族館では、小中学生の理科の授業の一環としたカリキュラムが定められ、それに即したワークシートが作成されていました。徳川美術館では美術館キャラクター「よしなおくん」が登場する子供を対象にしたガイドが月ごとに発行され、これを集めている子供もいるそうです。

当館については、教育・普及を担当しているK学芸員が、所蔵作品のワークシート、美術館と県内の学校の先生で組織された美術鑑賞教育のワーキンググループによって作成されたワークシートや展覧会の鑑賞ガイドを紹介しました。

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↑当館からの報告 K学芸員の分かりやすい説明は普段の団体鑑賞対応の賜物!

所蔵作品のワークシートは木下氏にも評価されていました(嬉しい!!)ので、皆さんもぜひ手にとって見てくださいね。学芸員はついつい情報を詰め込み、文字が一杯のガイドやワークシートを作ってしまいがちですが、当館のワークシートは、ひとつひとつの作品の見てほしいところ、知ってほしいことが、きちんと絞りこまれた優れものなのです!

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↑クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》のワークシート 切り抜かれた穴でポイントになる画面の細部を示しています

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↑展示室にワークシートのラックがあります ぜひ手に取ってみてください!

さて、次回の調査・研究部門の研修会は2月18日(木)13:30?17:30 愛知芸術文化センター12FアートスペースEFにて行われます。テーマは「事業としての調査・研究―博物館のあるべき姿を探る―」。事業の実施ばかりに重点を置くのではなく、調査・研究という博物館学芸員本来の仕事の重要性を見直す研修会です。学芸員だけではなく、特に文化行政に関わる人にも参加してほしい研修会。一般の方も含め、まだ参加人数に余裕がありますので、ご関心がある方は当日直接会場へお越しください。
問い合わせ 愛知県美術館企画業務課森(tel:052-971-5511 内線325)

また修復・保存部門の研修の一環として歴史講演会が行われます。こちらは一般の方も参加可能。
3月6日(土)15:00-16:30 愛西市佐織公民館3階研修室 「廃藩置県と近代日本」講師松尾正人氏(中央大学教授)
要入場整理券(佐織公民館にて2月13日(土)9:00-整理券配布 一人3枚まで)
問い合わせ 愛西市教育委員会社会教育課 tel 0567-37-0231(内線181)

(MRM)
 

そうじの話

2009年12月21日

作品を収納している裏のエリアの掃除には、いくつか注意点があります。
作品が置いてある訳ですから、作品にぶつからない様にすることは、まずその筆頭と言えるでしょう。収蔵庫や撮影室、修復室などでは、一般家庭のものとは異なる、クリーンルーム用の特別の掃除機を使用しています。0011クリーンルーム用掃除機2.jpg

↑クリーンルーム用掃除機

空調機と同様、カビの胞子程度の物も除去する特殊なフィルターがついているタイプです。

これを扱う時には二人一組が原則です。一人は通常通りに掃除に集中すればいいのですが、もう一人はコードや掃除機の本体が作品にぶつからない様にコントロールを行います。これは二人の息が合わないとなかなか難しい作業です。


時には掃除機を持ち込むのが難しい場合もあります。例えば調査日程、撮影日程が詰んでいて、一方では調査、撮影を行い、その傍らで清掃を平行して行わなければならないような時です。その場合は、昔ながらの「茶殻とほうき」の現代版を行います。湿らせたシュレッターゴミをほうきで転がしながら掃除する方法です。

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↑「茶殻とほうき」ならぬ「シュレッターの紙くずとほうき」

これなら音も埃も、両方、立てずに行えますね。大きな面積を掃除する日は、シュレッターゴミを要らなくなった黄袋に入れ、水につけてから洗濯機で軽く脱水をかけて準備します。
 

いずれにせよ床に落ちたゴミや塵を集めるだけなく、裏のエリアでは空気中の埃もできるだけ少なくする目的で清掃を行なわなければなりません。カビの胞子はだいたい3ミクロン内外だと言われています。塵埃の挙動を研究した人がいるのですが、3ミクロンの塵埃は、舞い上がるとすぐには落ちて来ず、数時間かけて沈降してきます。特にカビ処理が続いた部屋などを清掃した日は、一通りの掃除を終えた後も、翌日、誰も入らないうちに手前からそっとモップがけを行い、この沈降した埃を除去してゆきます。机の上など、前日に一度拭いた所でも、朝には結構ざらついているのがわかります。特にカビがひどい時などは、逆制石けんを使用する事もあります。
この塵埃の挙動とモップがけの関係は、ご家庭での掃除についても、少し念頭に置いておかれるといい情報だと思います。

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↑カビ対策用


(N.N.)

  11月26日(木)と28日(土)、「視覚に障害のある方へのプログラム」を開催しました。今年3月15日ブログのワイエス展鑑賞会とあわせてお読みいただきたいのですが、今回は所蔵作品展の鑑賞です。
 現在の展示では、視覚障害をおもちの方に手で触れていただけるブロンズ彫刻が14点。特に展示室入口では若い女性(戸張孤雁の《をなご》)と壮年男性(中原悌二郎の《平櫛田中像》)、そしてベートーヴェン(ブールデル《両手のベートーヴェン》)という頭像を集めました。

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↑戸張孤雁 《をなご(頭部)》 1910年

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↑中原悌二郎 《平櫛田中像》 1919年

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↑エミール・アントワーヌ・ブールデル 《両手のベートーヴェン》 1908年

モデルの顔立ちの差に加えて、卵型の粘土を柔らかく変形した戸張、土台となる骨格に土を付けていく中原、大きな四角い塊から刻み出したようなブールデルと、作り方による造形の違いが現れています。丹念に触れていくと、こめかみや頬骨の下のくぼみに自分の指がぴたりとはまり、作者の手跡を感じとることができます。

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↑コルヴィッツ《恋人たち?》の鑑賞
顔で感覚をつかんだあとは、男女が溶け合うような複雑な彫刻に挑戦したり、絵画の鑑賞に進みました。

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↑小出楢重《蔬菜静物》の鑑賞
今回の参加者は4回のべ27人で、うち初参加が5人。ガイドボランティアも4月におこなった養成講座で新人が増え、お一人に2名つく時も。付き添いのご家族やヘルパーも加わってかなりにぎやかでした。毎回思うのですが、一つひとつの作品についてこんなに語り合える鑑賞会もめったにありません。

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↑川瀬巴水《馬込の月》と立体コピー
名古屋YWCAのボランティアに作っていただいた立体コピーの新作。試作で細かく表していた松の枝葉や右下の屋根藁は本番で単純化し、逆に省略していた、満月をよぎる薄い雲はこの版画の風情に重要だということで復活しました。

4回とも皆さん1時間半を休憩もなく鑑賞され、さらに後日個人的に来館された方もありました。ブログをお読みの方で、このプログラムを紹介したいお知り合いがおありでしたらご連絡ください。次回の開催時(まだ未定ですが)にご通知させていただきます。
            
(TM)
 

巨大オブジェの搬出

2009年12月09日

  芸術文化センターの吹き抜け空間に、巨大なオブジェが吊り下げられているは皆さんもご存じのことでしょう。このオブジェは、竹と和紙による立体造形で知られる現代アーティストの北山善夫さんの制作によるもので、「私」と書いて「あなた」と読ませるというちょっと意味ありげなタイトルが付けられています。

  この作品は、実は人のかたちをしているのですがお気づきだったでしょうか。大ホールの入口あたりから見上げたとき、そして上層階へと移動するシースルーエレベータから眺めたとき、巨大なオブジェは刻々とその姿を変えていきますが、全体は両手を広げて左足を後に曲げて、飛び立つようにも、舞い降りるように見える人の姿が表されています。
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  この作品、芸術文化センターの開館に合わせて設置され、これまでずっと皆さまにご覧いただいてきましたが、さすがに近年は汚れが目立つようになり、また、軽やかに曲げた左足には少しゆがみが出てきていました。そこで今回、一度作品を降ろして化粧直しをすることになり、12月8日(月)にその作業を行いました。制作者の北山善夫さんにお越しいただき、再設置のための記録や目印を付けながら20人近いスタッフが慎重に作業を進め、夕方には無事にすべてを分解、搬出して、保管場所まで運び終えました。これから洗浄作業や、紙の貼り替え作業を行い、再来年には再設置の予定です。

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  ところであのオブジェですが、ご覧いただくと竹と紙でできているように見えますが、基本はすべてガラスでできています。もちろんガラスといっても特殊なもので、繊維状のガラスを束ねて棒にしたものと、同じく紙のように薄くしたものを使っているのです。

  作品がなくなった吹き抜け空間は、ちょっと寂しい感じがしますが、現在は幾何学的な構成による建築空間そのものの美しさをご覧いただけます。そして、来年に迫った「あいちトリエンナーレ2010」では、まったく違った作家による作品が設置されるようになるかも・・・。いずれにしても一年半ほどかけて化粧直しが終わって、開館した時のように美しく軽やかな姿に戻ったあの「私(あなた)」との再会をどうぞお楽しみに!

(MUM)

カビの話

2009年10月25日

 日本で文化財を保存してゆく上で、一番問題になるのが「カビ」そして「虫」です。江戸時代、江戸の大火は有名ですが、その頃ですら貴重本が失われる原因は「火事」よりも、これら生物被害によるものが多かったと試算されています。

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↑カビ

 美術館でもカビ処理は非常によく行う作業です。文化財によらずカビの生えた物の最初の処置はよく乾燥させることですが、文化財の場合、やみくもに乾燥させるとひび割れなど違う弊害が起こります。ただ幸いにして文化財によく使用される素材の保存適正湿度は、カビの発育適正湿度より、ほとんどが低いので、まずはその素材の保存適正湿度に馴染ませてやります。そうすると生えたカビは非常にもろい状態になり、少しの衝撃でも粉砕されるようになります。そういう状態にしてから乾式クリーニング、つまりカビ払いを行います。

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↑カビ払いの様子

筆で払ったり布で拭いたりといった作業ですが、私たちはちょっとした作業に学童用の化繊の筆をよく使います。化繊の筆は乾燥した状態でこすられると静電気が起きやすいので、胞子などが筆側にひっついてくれるからです。このように先を様々な形状に自分でカットして使います。

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↑カビ払いで使用する化繊筆

 小さいものですと修復室のフーバの下で行いますが、大きい物はそういうわけにいきません。これはあくまで殺菌処理ではないので、飛び散った胞子などを吸い込まない様、作業をする職員もマスクをし、ひどいものは白衣を着て作業をします。またしょっちゅうクリーンルーム用の掃除機でまわりを掃除しながらの作業になります。

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↑白衣とマスク

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↑掃除機がけの様子

 余談ですが、お着物などに茶色いシミが、「そばかす」というか「ジンマシン」の様に出てきてしまったというご経験はありませんか?一般には「ほし」とかとも呼ばれ、私たちは専門用語として「フォクシング(foxing)」と呼んでいます。あれの原因もカビであることが非常に多いのです。あまり知られていないことですが、実際にカビが生え出してから、あの「シミ」が出るまでには結構、長い時間(環境にもよるが年単位)が必要です。タンスを開けて少しでも「カビ臭いなあ」と感じたら、すぐ良く乾かして乾式クリーニングを行って下さい。今ではお着物用のブラシなども市販されているようですが、柔らかい毛のものでしたら刷毛のようなものでも使えます。あの「シミ」は一度出来てしまったら、ほとんどの場合、染み抜き出来ません。出来ないばかりか、時として分泌されたものによって次の染め替えの邪魔をする、実に厄介者です。
 昔の日本人の暮らしに「虫干し」という行事は欠かせないことでした。近年、「虫干し」という年中行事も科学的な裏づけがされ、その有効性が再認識されてきています。「虫干し」にはいろいろな類語があるのですが、その中に「目通し、風通し」という言葉があり、まさしく「虫干し」のメカニズムを言い表した言葉だと言えます。上記Foxingなどの症状を予防するにも、この「目通し、風通し」が一番有効なのです。
 美術館の収蔵庫は温湿度管理がされ、いわゆる四季のない空間なのですが、早期発見、早期予防はしっかり継承しなければならないことです。みなさんも自分にとっての宝物は、時々取り出し、眺め、慈しんでやって下さいね。
 

(N.N.)
 

裏方通信 修復室の話

2009年09月17日

  美術館の中には、学校でいう保健室のようなところがあります。それが修復室という所です。作品も物質によって出来ている以上、劣化は免れません。文化財とはいえ、時に対して免罪符を持っている訳ではないからです。病気もすれば怪我もする、人間と同じです。
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↑これは外部の修復家にお越し頂き、館内で所蔵作品の保存処理をお願いした時の写真です。

人間でいうところの往診ですね。修復室はこのような作業を想定して外光が入る様に設計されています。この時は画面の張りの調整と洗浄、剥落留をお願いしました。

 また修復室は強い溶剤を使ったり、カビの生えたものの乾式クリーニングを行う事を想定して、大きなフーバー(吸い込み装置、換気フードのようなもの)がついています。

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 時々誤解されることですが、愛知県美術館の保存担当学芸員は修復家ではありません。修復家がお医者様だとすると、保存担当は学校の養護の先生のようなものです。作品が傷む・・・、劣化するといっても、突然、本格的な修復をしなければどうにもならないというような状態に、一足飛びになるということは非常にまれです(まったくないわけではありませんが)。人間と同じく少しずつ老いてゆくのが普通ですし、日頃はそれができるだけ緩やかになるよう、むしろ作品環境の方を厳しく管理しています。作品は常に観察がされ、具合が悪い所は早め早めの処置を心がけています。
 作品を保存してゆくのに一番大事な事は修復に先立つ予防です。だから近現代美術が多い愛知県美術館の保存担当は、修復作業は外部の専門家にお任せし、予防のための活動の方を中心に行っているのです。

(N.N.)

展示室もそうですが収蔵庫の空気は厳密に管理されています。

みなさんは展示室でこういうものをご覧になったことはありませんか?

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この中には「自記温湿度記録計」という温度と湿度の変化を1週間分記録する計測器が入っています。

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もちろん空気調和設備(家庭でのエアコンに該当する機械。以下、空調と略す)に直結した電気的なセンサーはあるのですが、展示室も収蔵庫も、その電気的なセンサーとこの記録計と、常に2本立てて温度湿度はモニターされています。

空気成分や塵埃も管理対象です。空調機の中のフィルターは3層有り、カビの胞子レベルも有害なガスもここで除去されます。

これはプレフィルターといって空調機の一番手前に入っている、おおまかな塵埃除去目的のフィルターです。thmnl_塵埃1.jpg

左の真新しいものと比べるとかなりの違いがわかりますね。空中浮遊塵の数は収蔵庫の場合、人が作業を始める前、空気がかき乱される前は病院の手術室と同じレベルの清浄度です。ちなみに私は花粉症ですが、収蔵庫での作業が続く日は、帰る頃には花粉の季節だという事を忘れるぐらいになっています。外に出て、くしゃみをして始めて思い出す・・・といった具合です。

もちろん掃除もしますが、できるだけ埃を作らない様に、また持ち込まない様にするための工夫もします。

これはまるでエレファントマンのようですが、カバーのかかった彫刻です。thmnl_塵埃2.jpg

こういった長期保存のためのカバーには絹が使われます。絹は木綿などと違って長繊維なので埃が出にくいのです。だから収蔵庫内では強度を必要としないものに関しては絹が積極的に使われています。

また入り口には足拭き用の粘着シートが敷かれ、スリッパや台車の車輪についた埃を取る様なしくみになっています。

これは汚れて来たので一番上を、半分めくった所です。

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真新しい時は結構粘着が強く、うっかりすると転びそうになるくらいです。これを「人間ごきぶりホイホイ」と命名した学芸員がいます。

余談ですが、先程、絹は長繊維なので・・・と書きました。ご存知のとおり絹はお蚕さんの繭なのですが、お蚕さんは繭の作り始めから終わりまで、休むことなく・・・つまり繊維を切らすことなく吐き続けます。なんとまゆ1粒は1500mの長さの1本の繊維でできていると言われているのです。木綿がわが国に普及したのは江戸時代以降です。羊毛が普及したのはもっと新しいことです。昔は絹かこれまた長繊維の麻しかありません。昔の人の暮らしにはほとんど「綿ホコリ」というものがなかったものと推定されています。

 (N.N.)
 

7月に、博物館実習を実施しました。大学等で博物館学芸員資格取得を目指して講座を受講している学生が、美術館の現場で実習を行うものです。今年も愛知県内やそれ以外の地域の様々な大学から、芸術を中心とした諸専攻の、男性1名、女性8名が受講しました。
実習の基本的なプログラムは、美術館の概要に始まり、収集、保存、展覧会企画、ドキュメンテーション、教育普及、広報などの各講義に加えて、作品の点検・取り扱い、展示実習などにより行われます。愛知県美術館の学芸員が、各分野を担当します。
毎年、実習時に開催される展覧会の事業や館内の仕事の流れによって、重点的に行われる実習が変更されます。夏場の実習ということもあり、過去には、屋外展示作品の洗浄を行ったこともありますが、今年は、夏休みの子ども向け鑑賞会に参加・実施してもらうことにしました。


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↑子どもの好奇心におどろき

実際、子どもを対象としたイベントに慣れていない学生も多く、作品鑑賞に導くことはもとより、子ども相手への戸惑いも見られました。けれども、子どもというフィルターを通して、語らいながら作品を鑑賞することの楽しさ、または作品への子どもの素直な反応に、作品が持っているエネルギーをあらためて感じたようでした。


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↑実物の作品での展示実習に緊張気味

こうした現場の生の声による講義や実習を通して、各自が、来館者としてそれまで抱いていた展覧会を開催する場としての美術館像から、作品を中心とした活動を展開する美術館像に転換させている様子がみえてきます。毎日提出される実習日誌からもそれはうかがえるのですが、最終日に受講者に課される課題発表に、その成果が現れるように思います。毎年、発表の日は、皆さん寝不足のようです。それだけに、展覧会企画・ワークシート等の鑑賞補助資料作成・教育事業企画等々に取り組まれた発表は、(限られた予算で)いかに魅力的な美術館にするかということへの、学生らしい斬新な提案ばかり。美術館も、初心に返って、こうした企画を実現できるよう活動していけたらと思わず感じざるを得ませんでした。
受講生の皆さん、5日間お疲れ様でした!

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↑自分たちで行った展示に感動、満足

なお、来年度は、「あいちトリエンナーレ2010」開催のため、博物館実習は行いません。学生さんたちとの交流は、トリエンナーレなどの開催を通して、別のかたちで行っていけたらと思っています。

(M.F.)

夏休み子ども鑑賞会

2009年08月04日

 美術館では毎年夏休みの期間に小・中学生を対象としたプログラム「夏休み子ども鑑賞会」を実施しています。美術館や作品鑑賞に慣れ親しんでもらおうと、毎年様々なテーマを設けています。今年は【めざせ!!美術館マスター】です。美術館長から、マスターになるための3つの指令が出され、それをクリアすると美術館マスターになれるというものです。今回の鑑賞会には、美術館のスタッフの他、鑑賞学習ワーキンググループの有志の先生方や芸術系大学の学生などに、プログラムの企画から参加していただきました。
 プログラムでは、4から7名のグループに分かれ、サポートスタッフが2名つき美術館長からの指令をクリアしていきます。低学年(小学1年生から4年生)と高学年(小学5年生から中学生)と指令の内容が異なり、対象年齢に合わせた指令が出されています。

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▲「指令できそうなひとーっ」の掛け声に元気に手を挙げてくれています。

 

 まだ、鑑賞会実施期間中なので全てご紹介できませんが、指令を1つご紹介したいと思います。
 指令 「ピッタリの作品をさがせ」 では、色カードと言葉カードを使って、そのカードとピッタリ合う作品を探し出し、その作品の特徴などを鑑賞していきます。
 カードホルダーに3枚までカードを入れることができるので、色を3色入れてその作品を探し出すわけですが、参加者にカードを選んでもらうと、金色はみんな好きなようで、必ずといっていいほど手に取ります。

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 ▲金色がホルダーに入っていますが、作品のどこにあるのでしょうか?

 

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▲グループのみんなでピッタリ合っているか検証中

また、言葉カードでは「あたたかい」「どろどろ」「シュッ」「つるつる」などのカードから作品を探します。

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▲どの言葉でピッタリを見つけようか相談しているようです

 

 この「ピッタリの作品を探せ」では、実施前3色の組み合わせだと、見つからない作品が出てくるかと思いましたが、作品をじっくり観察してみると、見つかるものでたくさんピッタリの作品を発見することができます。

たとえば、金色・ピンク色・緑色だと、どんな作品を見つけられるでしょうか。来館の際に探してみてください。

(R・K)

裏方通信 収蔵庫の話

2009年08月01日

  華やかな美術館の表側と異なり、裏側には関係者しか入れない大変厳しいセキュリティーエリア(警備強化範囲)があります。さらにその奥に日頃作品が眠る「収蔵庫」があります。thmnl_収蔵庫1.jpg

↑収蔵庫前室

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↑収蔵庫の内部

 「収蔵庫」は、私たちが中で調査や作業を行う時だけ、また必要なところだけ照明を点けることになっています。光も作品の劣化を促進してしまうからなんですね。
 額に入った作品は、「絵画ラック」というものに掛かっています。このラック自体、必要な時に引き出せる様、モノレールのように上からつり下げられた構造になっています。thmnl_収蔵庫3.jpg

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↑ラックにかけられた絵画 落下防止のためさらしで留められています

 収蔵庫は分厚い断熱材を内張りしたコンクリートの箱の中に、その壁からは独立した別個の木造の家を建てた様な、完全な二重構造になっています。その木のお家とコンクリート躯体との間には巨大なゴムが噛ませてあり、劇場やコンサートホールから、もし重低音振動が伝わってきたとしても、そこでシャットダウンできるようになっています。複合施設なので他の美術館博物館施設にはない工夫がされたのですね。でも近年それが地震対策にも有効に機能するということがわかってきました。
収蔵庫は年間を通じて22度55%の温度湿度に保たれ、空気成分の各種ガスや固形物である空中浮遊塵に至るまでモニターされ、管理されています。

(N.N.)

華やかな美術館の表側と異なり、裏方にはちょっと変わった世界があります。学芸員(curator)はこの表と裏の両方を行き来する研究者ですが、この美術館には、ほとんどこの裏方ばかりにいる保存担当学芸員(conservation staff)という職種のメンバーもいます。この裏方より、このあまり知られていない裏方の世界を紹介させて頂こうと思います。
美術館の裏方は防犯上お見せできない部分もあり、この裏方通信シリーズには意図的にぼけさせた写真を使わざるえない場合も出てくると思います。そこらへんはどうかお許し下さい。

 

現在、この主に保存業務を中心に頑張っているメンバーは3人います。今日はアートドキュメンテェーションという、これまた裏方チームのアシスタントさん1名にも手伝ってもらい、4人で屋外彫刻の洗浄です。この立体作品がセンターのどこにあるか、ご存知ですか?

まず床面に堆積した泥を集めます。かなりこびりつきが激しいのでデッキブラシでこそげ落とします。thmnl_大地洗浄 1.jpg

 

いよいよ作品にかかりました。まず十分に水で流します。次の段階では洗剤を使って表面を洗うのですが、この時、泥が残っているとかえってその泥が表面を傷つけてしまうので、最初の水洗いは丹念に行います。ここらへんは車の洗浄と同じですよね。

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次に中性洗剤で洗います。表面のコーティングがかなり弱っているので、優しく、赤ちゃんの体を洗うように・・・、「こする」というより「なぜる」という感覚で、洗ってゆきます。

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そしてまた水で洗剤を流し、流した洗浄液を排水溝に集めながら、床面も磨いて終わりです。この作品は大きいので丸一日の仕事となりました。

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翌日には全員(?)ふくらはぎに激しい筋肉痛が起こりました(注:若干1名の筋肉痛は1日遅れましたあ!!)。ツルツルの曲面から滑り落ちないように、かなり筋肉を緊張させていたのですね。
(N.N.)
 

やわら

2009年05月02日

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 まずは、上の写真をご覧ください。フカフカの座布団のようなものですが、これが美術館の収蔵庫(作品を保管する所)にたくさんあります。何に使うものかお分かりになりますでしょうか。
 この写真に写っている布団のサイズは、大体A4サイズぐらいで、大変上質なビロードでできています。厚さも結構あり、枕にすると気持ちよさそうなかんじです。実際、触っていると気持ちが良くて、抱きかかえていたくなる感じなんです。

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▲たくさんの赤い座布団的なもの



 これは、私たちが[ヤワラ]とか[布団]と呼んでいる美術館で使う道具です。ヤワラは基本的に、展示作業中に使っています。作品を移動させる際、台車に乗せて運んでいるのですが、作品をそのまま台車に乗せる事はまずありません。作品を乗せる部分に、ヤワラを敷いて、その上に作品を乗せます。移動の際にかかる負担や衝撃を和らげるため、さらに、装飾的な額の場合、突起している部分にだけ重力がかからないように、床面から離すために使っています。

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▲絵画用の台車に乗せています。真横からthmnl_サブ04.jpg

▲前から見るとこんな感じで乗せています。

 

 さらに、このヤワラには、色々な種類があります。先に紹介した赤いかわいいヤワラもあれば、美術作品の輸送や展示に携わる業者の方が持ってきているグレーの長いタイプのもの、さらに綿を薄い紙で巻いたものなどのヤワラがあります。

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▲ひとまとめになっていますが、これが業者の方がお使いになっているヤワラです。thmnl_ザブ06.jpg

▲こちらが、薄い紙に巻かれたタイプのヤワラ

 

 最初の写真のヤワラは、当館専用のヤワラです。作っていただいたのは、美術館友の会のサポート部会の方々っ! 赤いヤワラ以外にも、白いヤワラも存在します。下の写真にある白いヤワラは、すっごく綺麗ですべすべです。ちりめんやりんずといった着物用の絹地でできています。thmnl_ザブ07.jpg

▲綺麗な模様もはいっています。

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▲この写真では、作品を裏返しておく際に、作品の画面が直接あたらないよう浮かせるために敷いています。

ご来館の方々には、お見せすることができないものですが、美術館が閉館中の展示替え作業中などで、大活躍してくれる道具です。

(RK)

 

 

 

 美術館に展示されている作品のそばには、作品の作者やタイトルなどが表示されています。この表示をキャプションと呼んでいます。(図録などに載る図版の横にある表示もキャプションと呼びます。)
 美術館によって、また企画展によってキャプションの形や大きさ、表示されている内容は異なります。愛知県美術館所蔵作品展示室で使用しているキャプションは約15×15cmの正方形。上半分は日本語による表記、下半分は英語による表記で、1作家名、2作家の生没年と生没地、3作品名、4制作年、5技法材質、6その他(寄贈者のお名前、木村定三コレクション、寄託作品など)を表示しています。

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 実は、以前のキャプションはもっと小型で、表示されている情報も少なかったのですが、年齢や居住地、職業などより幅の広いお客様にご来館いただけるように、と改良を重ねてきました。

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↑上が現在所蔵作品展で使用しているキャプションの一般的なかたち。下は以前使用していたもの

(注:それぞれ違う作品のキャプションです)。文字が大きくなり、生没地が表示されるようになりました。作家の出身地が自分のふるさとと同じだったりすると、なんだか親近感がわいてきませんか。

 そして、キャプションを掲示するために欠かせないのがキャプションケースとアクリルピンです。
 キャプションケースは透明なアクリル製で、キャプションを差し込めるようになっています。キャプションケースを使えば、キャプション自体には汚れや傷が付きにくいので、展示替えで作品や作品の位置が変わっても、一度作ったキャプションを繰り返し使うことができます。また、簡単にキャプションを差し替えることができるため、作品が変わっても、同じキャプションケースが使用できるので効率的です。
 キャプョンケースには、床や展示ケースに置くことできるスタンド型のものと壁付け型のものがあります。壁付け型のキャプションケースを壁に固定するために使うのがアクリルピンです。キャプションケースに空けられた2つの穴にピンを刺して壁に固定します。アクリルピンとは呼んでいますが、頭部分が透明アクリルになっている、いわゆる画鋲のことですので、みなさんのお宅や職場にもあるかもしれませんね。
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↑スタンド型のキャプションケース

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↑キャプションケースとアクリルピン

 作品を展示する作業よりも先にキャプションを付けてしまうと、作品や作品を持った作業員さんの体にキャプションケースが当たって作品を傷付けてしまう可能性があるため、キャプションを掲示する作業は作品自体の展示が終わってから行います。展示室の壁は堅いので、画鋲を使うようにはいきませんが、同じ壁に掛かっている作品に振動を与えないよう心がけて作業をしています。

 ※本文中で所蔵作品展でのキャプションを紹介しました 熊谷守一《土饅頭》、ヴィルヘルム・レームブルック《立ち上がる青年》、パブロ・ピカソ《青い肩かけの女》は東京都美術館にて4月25日より開催の「日本の美術館名品展」に出品予定です。企画展ではどんなキャプションが付けられるのでしょうか。

(MI)

 去る2月26日(木)と28日(土)、「視覚に障害のある方へのプログラム」を開催しました。これは所蔵作品展の鑑賞を主として10年以上続けているものですが、今回は「アンドリュー・ワイエス 創造への道程」展が対象。2日間を午前午後に分けた4回で、のべ42人が参加されました。

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 「目の見えない人がどうやって美術鑑賞を?」と思う方も多いでしょう。彫刻なら手で触れてもらうこともありますが、絵画の場合は言葉で説明し、頭の中に絵を思い描いていただきます。初めに学芸員の私から画家ワイエスや彼の絵のテーマなどについてお話ししたのち、参加者一人ずつにガイドが付き添って展覧会場をまわります。ガイドは「名古屋YWCA 美術ガイドボランティアグループ」の皆さんです。

 さて、言葉で絵を描くにはどうしたら? 客観的な説明法としては、例えば「雪景色の中に二人の人がいる絵」と主題を伝えた上で、絵の大きさや縦横の比率を話し、続いて画面のどのあたりに道や木や人が配置されているのか、そして人の性別や年齢、衣服、ポーズや表情など細部へと進めていくのがいいようです。でもこれだけでは絵が芸術作品になりません。その風景や人物と画家との関係といった情報を加え、構図や色彩・光・筆のタッチなどの効果を読み取り、画家の表現意図を解釈する必要があります。ちょっと難しそうですが、そこまで話そうと思うと、説明する人にも絵がどんどん見えてきます。さらには自分自身がその絵をどう感じたか、個人的な思い出なども交えて会話ができると楽しいですよ。このブログをお読みの皆様も、一度お好きな絵の説明を考えてみてください。

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 絵の説明の補助として、黒で描いた部分が盛り上がって手で触れられる「立体コピー」も用いています。今回はWYCAの方々が4点のコピーを作ってくださいました。ところどころ線の太さを変えたり、網がけで面の手触りを変えたりといった工夫がされています。これら4点には私が解説文を書いてガイドの資料にするとともに、参加者にお持ち帰りいただけるよう点字にもしてもらいました(点訳にはボランティアグループ「六点会」のお世話になっています)。

↓立体コピー (手前に描かれているものと、遠くに描かれているものが、手触りで違うことが分かります!)

 

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 参加者は1時間半のプログラムが短く感じられるほど熱心に鑑賞され、後日「美術ボランティアのかたがたのおかげで目の障害があっても見えてきます」、「ワイエスの小説の中に入り込んで、ワイエスの視線で作品を見せていただき、私の脳裏に強く残り深く鑑賞する事ができました」といった感想が寄せられました。            (TM)

4月にYWCAのガイドボランティア養成講座がひらかれます。お問い合わせは
電話052-961-7707 メールyyy@nagoya-ywca.or.jp

白手袋と黄袋

2009年02月28日

  白手袋(しろてぶくろ)は短く略して白手(しろて)とも呼んでいます。
  直接素手で作品を取扱うと、汚れや手跡が残ることや、サビなどの原因になることがあります。そのような可能性が懸念される場合には、白い綿手袋を付けて作品を取扱います。手袋を着けることで手が滑りやすくなったり、手袋の繊維が作品に引っかかったりして逆に作品を傷めてしまう危険がある場合や、指先の微妙な感覚が必要とされる作業には白手袋は使いませんが、他の美術館などからお借りした作品を取扱う場合は、所蔵先と相談して作業時に白手袋を着用するかしないかを決めています。
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↑ライオネル・ファイニンガー展(2008年10月17日?12月23日)展示より

  一方の黄袋(きぶくろ)とは、素描や版画作品を箱に入れて収納する場合に使う袋。その大半が黄色の布で出来ています。
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↑黄袋は作品より少し大きめ。口の部分を折り返して箱に入れます。

  黄色の理由は、昔から黄色の染料として使われていたウコンに防虫効果があったからとも言われています。黄袋に使用されている黄色染料の種類やその防虫効果については不明ですが、額縁や額縁に装着されているガラスやアクリルの傷を防ぐことができ、振動や温湿度の変化を緩和する効果もあります。
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↑いろんな黄色、いろんな大きさの黄袋があります。色はともかく、大きさは作品(額の寸法)にあわせて作られています。

  白手袋も黄袋も作品に直接触れるもの。白手袋が黒手袋になる前に、黄袋が茶袋になる前に、洗濯して繰り返し使っています。(作品への影響に配慮し、洗濯には蛍光剤などの添加物が少ない洗剤を使用しています。)
  そして、お洗濯にご協力をいただいているのは愛知県美術館友の会サポート部会の皆さん。お洗濯だけでなく、手袋の縫い目のホツレや黄袋の破れなど繕いまでして下さっています。いつもありがとうございます。

(MI)

  さて、そろそろアーツ・チャレンジ本番の時期になってきました。アーツ・チャレンジとは若手アーティストをサポートするために愛知県が主催しているアート・コンペティションです。多数の応募者の中から厳しい審査を勝ちぬいた若手アーティスト19人が2月中頃から愛知芸術文化センターで作品を発表します。美術館側もいそいそとお手伝い。

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 そういうわけで、美術部門に選ばれたアーティストの作品をいかに展示するか最終調整が進んでいます。上の写真は、先月末、選出されたアーティストの一人、田中香奈さんが、キュレーター、加藤義夫さんといっしょに現場で展示方法を考えているところです。
上の写真を見てお気づきのとおり、このアーツ・チャレンジがユニークなのは、展示室だけではなく芸術文化センター内の色々な公共スペースにも作品を展示するところです。地下2階の廊下などもぞくぞくと展示スペースに変身します。田中さんの作品は11階の展望回路(10階レストラン横の階段の上)に展示予定。栄の景色も活かした作品になるとか…。

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 ちなみに展望回路、夜はこんなふうになります。ロマンティック!

アーツ・チャレンジにかこつけて、芸術文化センター内の隠れ素敵スポットめぐりもできちゃいますね。

(FN)
 

みなさま、愛知県美術館が実施している団体鑑賞をご存知でしょうか。
当館では、美術館に親しんでもらいたい、本物の作品のよさを多くの方に味わってもらいたいと考えて、学校行事や地域の催しなどでの団体鑑賞を受け入れています。

どんなことをするかというと、申し込まれる方のご要望をお聞きして、企画展または所蔵作品展の解説をしたり、美術館でのマナーをお伝えしたりすることもあれば、美術館の仕事について紹介や学芸員に対する様々な質問にもお答えしています。

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▲見えませんが、作品の前に学芸員が立ち解説中です。

先日来た中学生からの学芸員に対する質問で、びっくりしたのが「月給はいくらですか?」といったものでした。さらっとお伝えしましたが、そんな普段では知ることのできないことも、できるかぎりお答えしています。

学校行事でのお申込みが大半ですが、美術部での申し込みや地域の絵画教室、美術サークルなど、一般のお客様でも、もちろんお申込可能です。

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▲一般の方へのレクチャー。人数が多かったので別室にて

団体鑑賞のお申し込みは20名からとなります。20名を超えると、観覧料金が割引にもなるし、お得です。よろしければ、みなさまもお誘い合わせの上、団体鑑賞に参加されてはいかがでしょうか。

↓団体鑑賞のお申込み方法などについては、こちらから↓

学校団体向けページ / 一般の方向けページ

(RK)

 

 美術館で気になる画家を見つけて、その画家についてもっと知りたくなったら、とりあえず画集や他の展覧会のカタログを見る。基本的かつ手っ取り早い調べ物の方法です。

 作家の全貌を知りたいときに一番便利なのは、「カタログ・レゾネ」と呼ばれる本を見ることです。意外と知られていないこのカタログ・レゾネ、いったいどんなものなのでしょうか?

 カタログ・レゾネ(Catalogue raisonné)とはフランス語で、「論理的思考にもとづいて編まれたカタログ」という意味です。大抵の場合、特定の作家の全作品について、図版、制作年、来歴、サイズ、所蔵者、言及論文などの情報が網羅的かつ編年的に記載されています。作品数が多すぎると複数巻になったり、絵画だけの巻、彫刻だけの巻などとジャンル別に分けられたりします。

ちなみに愛知県美術館の入っている愛知芸術文化センターの一階には、アート・ライブラリーがありまして、様々な芸術家の資料がそろっています。例えばピカソのレゾネを見てみると…

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 なんと全33巻!当館所蔵の《青い肩掛けの女》ももちろん記載されています(Z155)。貴重書なので、傷まないようにストレージ・ボックスに入れて保管してあります。

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 最近では存命の作家のレゾネが出版されることもあります。この場合は、○○年から○○年までというように時期を区切っていることが多いです。しかしレゾネだからデータは完璧、というわけにもなかなかいきません。レゾネ発行後に新しく作品が見つかったとか実はあの作品は偽物だったとか所蔵者が手放してからあの作品は行方が分からない…なんてこともありますしね。そういえば先日スペインのプラド美術館所蔵のゴヤの作品《巨人》が、実は弟子の作かもしれないというニュースがありました。そんなわけで、作家によってはレゾネが何ヴァージョンも刊行されていることもあります。先ほどのピカソのレゾネはクリスチャン・ゼルヴォスという人の編纂で、通称「ゼルヴォス・レゾネ」と呼ばれています。ですが、すでに刊行されてから30年以上経っており、情報が古い部分もあるので、その後も時期を絞ってレゾネはいくつか刊行されています。

 レゾネを探すときに注意しなければならないのは、これらの本には必ずしも「カタログ・レゾネ」という名前がついているわけではないというところです。通称みたいなものです。日本語なら「全作品集」とか、フランス語なら「Oeuvres Completes」とか、そういう名前のことが多いです。

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 上からアンディ・ウォーホル、アントニ・タピエス、パウル・クレーのレゾネです。他にもいろいろな作家のレゾネがあるんですが、特に見た目がきれいなものを選んで撮ってきました。表紙カバーは外してありますけれど。ウォーホルは《ブリロ・ボックス》を彷彿とさせるような(?)装丁。タピエスは背表紙がつながって絵になりそうです(実際にはつながっていませんが)。クレーはとてもカラフルで、並べているだけで愉しくなります。

 そうそう、それからピカソのレゾネと言えば、オンライン・ピカソ・プロジェクトというウェブサイトがありまして、膨大な資料や図版を見ることができます。サム・ヒューストン州立大学とテキサスA&M大学の助成金で、学術研究目的で行われているようです。

 また、現在当館で展覧会開催中のアンドリュー・ワイエスのお父さん、N.C.ワイエスのオンライン・カタログもあります。こちらはブランディワイン・リバー美術館が運営している模様。

 このようなオンラインのデータベースはとりわけ検索性に優れている点が強みでしょうか。今後どんどん増えていくと良いんですけれど。

 さて、長くなりましたが、愛知芸術文化センターのアートライブラリでは、レゾネは貸出しができないものが多いですが閲覧することはできますので、○○の作品をたくさん見たい!という方は是非探してみてください。下のリンク先から所蔵資料の検索ができますよ。

(KS)

ただいまワイエス展真っ最中の愛知県美術館ですが、展示室が美術館の全てではありません。バックヤードでも日夜、さまざまな活動が行われています。

先日は、NPO法人・文化財保存支援機構の装こう師(*注1)の先生方をお招きして、木村定三コレクションの近現代日本画(明治・大正時代の掛け軸など)の調査が行われました。大和なでしこからは程遠い私もちょっと見学!

例えば、かけ軸は箱から取り出して壁にかけるのですが、その過程には細やかな手順があります。軸と箱の向きのそろえ方、圧力をあまり紙にかけない軸の持ち方、特殊な紐のかけ方、等々。全て、かけ軸を最も安全かつ簡潔な手順で扱うために必要なのです。

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 一つ一つの所作振る舞いが何だかお茶席みたいだなーと思いきや、やっぱり掛け軸の扱いはお茶と同じ起源をもっているそうです。どちらも、大切なものをできるだけ丁寧に扱う、という心に基づいており、その作法の美しさをより洗練させたのがお茶と言えるかもしれません。

↓きれいに巻いて紐をかけた掛け軸は、それだけで美しいですね!

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 調査の終わりに、先生方から直接、掛け軸の扱い方を指導していただけました。先生方はすっすっと自然な手つきなのですが、先生の前で緊張している私の場合「あれ、手が足りない…」「紐がびよーんとなっているんですが…」となります。。。
長い時間を超えて受け継がれる作品にはきちんとした作法で接したいもの。そして、そうした作法は日々の鍛錬があって初めて身につきます。時には先生方に基礎から教わり、自分の「手」を見つめなおすことが学芸員として何より大事ですね。


*注1 装こう師とは、掛け軸や屏風など日本の伝統的な形態のものを修理したり仕立てたりする技術者の方です。今回いらした方は、いずれも日ごろは国宝などの修理をされている工房の皆さんばかりです!パパーン!!

(FN)

   愛知県美術館では、主に日本画や工芸品などを展示する場合、作品の状態や安全を考えて、作品を展示ケース内に展示しています。美術館によく足を運ばれる方は「展示ケース」と言ってもいろいろな種類があることに気付かれるでしょう。愛知県美術館で「あんどんケース」と呼んでいるのは、そんな展示ケースのひとつ。(※当館以外では通用しないことがありますのでご注意下さい。)4面ともガラス張りなので、作品を前後左右から鑑賞していただくことができ、単独で照明を調節することも可能なため、比較的小型の彫刻や工芸品を展示するのに効果的です。「あんどんケース」と呼ぶ理由は、木の枠に和紙を貼って中に火を灯した「あんどん」(行灯・行燈)に形が似ているから。何種類もある展示ケースを区別してこう呼んでいます。

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   呼べば呼ぶほど癒される(?)「あんどんケース」。現在、愛知芸術文化センター地下2階南通路『フォーラム・プロジェクト:小さな彫刻展』で使用しています。

(MI)
 

 今年ももう12月にはいり、寒い毎日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。自転車通勤の私は手袋とマフラーが欠かせません。

 さて、愛知県美術館にはミュージアムショップが併設されています(ロビー内にあるので美術館にいらっしゃったことのある方は御存知だと思いますが...)。ミュージアムショップでの買い物は、美術館めぐりのひとつの愉しみですよね。美術館ごとに商品のラインナップが全く違うので、初めて訪れる館のショップには色々と期待してしまうものです。愛知県美では、過去の展覧会カタログやポストカードなどの一般的に販売されているものの他に、当館ならではのオリジナル・グッズを取り揃えています。

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 その中でも「しまマフラー」(各5,670円税込)は、この季節にぴったりの人気グッズのひとつです。製造元は、群馬県桐生市の繊維メーカーさんで、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のミュージアムショップでも同社のマフラーが販売されています(なんと4年連続の売上数量第一位だとか)。

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 実はこのマフラー、それぞれに愛知県美所蔵のある作品の色を参考にした配色になっています。元ネタの作品がなんだかわかりますか?(答えはこの記事の右下の「続きを読む」に隠してあります笑)。これまで2パターン販売してきたのですが、今週から店頭に新色が登場しました。

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 こちらも同じく当館所蔵作品が元ネタなので、どの作品か考えてみてください。

 この他にも熊谷守一の猫を象ったキーホルダーやピンズなど、所蔵作品に関連した様々なグッズがあります。また芸術文化センターの地下二階にはアートショップNADiff愛知が入っており、アート関連書籍や雑貨がたくさん。「ちょっと美術館へ買い物に」というのも美術館の愉しい利用法かもしれません。

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▲スタッフにマフラー付けてもらって撮影してたら、お前が全色同時につければいいじゃないかと言われたので付けてみました...。

(KS)

 愛知県美術館ブログを始めてもうすぐ2ヶ月になろうとしています。ふと他館のブログはどういう記事を掲載しているのだろう、と思いたったので探してみました。

青森県立美術館ブログ | 青森県立美術館
東京都現代美術館: MOT STAFFブログ
東京都写真美術館: みっちゃんの写真開拓日記(^-^)
セタビブログ - 世田谷美術館
横浜美術館: AIMY+NAPブログ
館長ブログ | ウェブマガジン | 川崎市市民ミュージアム
活動レポート | ウェブマガジン | 川崎市市民ミュージアム
新潟市新津美術館 NAFによるブログ【NAFLOG】(ナフログ)
金沢21世紀美術館のポッドキャスティング まるびぃ on the RADIO
八ヶ岳美術館だより
和歌山県立博物館ニュース
神戸ファッション美術館BLOG
島根県立美術館
高知県立美術館: 美術館日記
愛媛県美術館のブログ
クラブログ 徳島県立近代美術館
HEARTにART | HEART | 山口県立美術館
熊本市現代美術館|CAMK

 見落としているものも多いと思いますが、ざっと確認できたのは以上の館です。思っていたより...少ないです。印象としては、現代美術を取り扱っている館が多く、逆に東洋の古美術専門の館はこのような形での情報発信があまりないようです。
 色々と読んでみたなかで、特に東京都写真美術館のブログは来年度の展覧会に向けた調査を学芸員の方が詳細に報告するもので、大変読み応えがありました。どうしても催事情報ばかりになってしまいがちな館ブログのなかで、これだけしっかりした内容を発信できるのは凄い...(あとお昼ごはんが毎回美味しそうです)。


 それから館のブログではありませんが、九州国立博物館がブログ企画をやっていたので紹介しておきます。
九州国立博物館: BLOGREPO ぶろぐるぽ
 展覧会のレポートをブログ記事にして、アドレスを館に送るとプレゼントがもらえる、という仕組み。ブログ記事に九博研究員がコメントするかも知れない、とあります。展覧会ごとにこういったブログ・マーケティングが行われるのは最近では珍しくありません。ただ、美術館・博物館では写真撮影を禁じているところが多いので、ブログ記事にしてもらいにくいという難点があります。作品画像の撮影や掲載には著作権の問題が常についてまわりますので、そういった意味では現代美術専門の館よりも、古美術専門の館の方がフットワークが軽いと言えます。その点、この九博の企画はwebサイトで提供する画像を利用できるのはすばらしいですね。
(KS)

ワーキンググループ

2008年10月21日

 今日は、当館でおこなわれている教育普及活動の一つ[先生方との鑑賞学習ワーキンググループ]についてご紹介します。
 先週の18日(土)に、[先生方との鑑賞学習ワーキンググループ]がありました。ワーキンググループとは、登録制の研究会で、鑑賞学習に関心のある先生方が月に1回のペースで集まり、鑑賞教育の事例研究や、美術館で実施する事業への協力、学校と美術館をめぐる鑑賞教育の課題についての討議などを担当の学芸員と共におこなっているものです。

 今回のワーキンググループでは、次回開催の「アンドリュー・ワイエス –創造への道程-」に合わせて、実施予定の関連ワークショップとセルフガイド、鑑賞補助教材についての話し合いがおこなわれました。

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▲美術館の会議室にて
 ワークショップについての意見交換では、どのようなアプローチが小・中学生に有効なのか、美術館ですべき活動はどのようなことなのかなど、先生の側からみた意見も多く出て、活発な意見交換ができました。今後も話し合いを重ね素敵なワークショップ、セルフガイド、鑑賞補助教材にしていきます。

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▲ワーキンググループ終了後も、多くの先生方が残り意見交換をしていました。


 ワークショップの内容や日程は未定ですが、近日中にお知らせしたいと思いますので、ぜひ参加していただきたいと思います。先生方との協力によってどのような内容のワークショップやセルフガイドになるのか、楽しみにしていて下さい。
(RK)

 美術館の展示室にいるあの人はいったい何をしているのでしょうか・・・?

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 あの人は「案内監視スタッフ」と言いまして、作品とお客さんの両方を、美術館の最前線で守るお仕事をしています。例えば、誰かがちょっと触れただけで傷んでしまうデリケートな作品を見守ったり、「展示室を歩いているうちに気分が悪くなってきたんだけど…」など美術館内で困っているお客さんのケアをしたりしています。

 あと、見逃せないのは椅子の後ろの透明ボックス。あの中には、展示作品についての資料が入っています。どのスタッフも、所蔵作品について実は色々知っているのです。

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 また、避難経路の地図や虫捕獲グッズが入っている点も要チェック。紙の作品を食べて壊してしまうこともある虫は、美術館にとって厄介ものの一つ。そこで虫の被害を最小限に食い止めるため、案内監視スタッフは美術館内で虫を発見すると、すぐに捕獲してその侵入ルートを書き込むわけです。  学芸員が一生懸命展示した作品でも、案内監視スタッフがいないと多くの方に気持ちよく見てもらえません。スタッフいわく、美術鑑賞のパートナーとして何かありましたら気軽に声をかけてくださいね、だそうです。

(FN)