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12日に、高校生対象の鑑賞ワークショップ「携帯電話をデザインしよう」を開催し、1年生から3年生まで23名が参加してくれました。
 内容は、アーツ&クラフツ展会場の作品から自分が気に入ったデザインを選び、あるいは複数のデザインを組み合わせたオリジナルのデザインを考えて、各々シールに写し、自分たちの携帯電話に貼り付けようというものです。今回の企画は、愛知県美術館の鑑賞学習ワーキンググループ有志の高校教員を中心に練られ、制作指導には、高校・中学校の教員と芸大生があたりました。

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↑暑い中真剣に制作

生徒たちが展覧会を鑑賞する前に、学芸員がアーツ&クラフツ運動の説明を行いました。単に気に入ったデザインを探しに行くのではなく、忘れ去られていた手仕事を見直す、または自然や伝統の中に美を見出すといったアーツ&クラフツ運動の精神によって制作されたデザインに注目してもらいたかったからです。

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↑友人と話し合いながら鑑賞する参加者

 鑑賞後、参加者が選んだデザインはほとんど重なることなく、各自の携帯電話の形や色に合わせてデザインされ、流行の「デコ電」と同様、個性あるオリジナルの携帯電話に生まれ変わりました。

 

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↑オリジナルデザインを思案中


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↑ 転写を繰り返し、シールを貼付

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↑オリジナルなモノに変化

鑑賞ワークショップ終了後のアンケートには、次のような感想が寄せられました。
「今回見たものは、どれも模様のようだったりと、形が単純化されているものが多く、普段の生活にもとけこみやすい作品だと思った。マットや壁紙のようで、いつも見ていた美術館の作品より、身近に感じた。」(女子)
「ただ、展示物を見るだけじゃなくて、自分で描いてみて、デザインって素敵だなと感じました。じゅうたんとかすごくキレイで、一つ一つがこまかくて、本当にすてきでした!」
(高3女子)
「自分で描いたものを使うっていうのはなかなかない気がしますが、なんか満足気な気分になれます。」(高2女子)
「実用的なだけじゃなくて、もちあるくのが楽しくなりそうな冷たい工業製品に柄を入れるだけで民芸品みたいなあたたかみがでた気がする。日常品で普段はじっくりみなかったりするものだけど、見ていてきもちがいい」(高3女子)

参加者が日常的であるがゆえに気づかなかったモノの美(デザイン)もあらためて対峙し、その出会いに心地よさを感じていることがわかります。
実は、今回の鑑賞ワークショップは、携帯電話のほか、日常的な存在である電子辞書や眼鏡ケースなどにデザインを施した後、各自がそれらを一週間使ってどのように感じたかを報告してもらうことになっています。一体どんな感想をもつのでしょうか。一週間共に生活することで、デザインされたモノに愛着を抱くと共に、おそらくは美のもたらす作用や美の役割について、なにごとかを感じていることと思います。今回の鑑賞ワークショップでは、わたしたちも目の前で高校生が取り組んでいる作業風景を通して、手作業のすばらしさに思いを馳せることができました。

(M.F.)

 

 

 6月26日(土)に行われた、林望氏による講演会「私にとってのアーツ&クラフツ」のご報告です。
「リンボウ先生」の愛称で有名な林氏は、近世書誌学が専門の日本文学者であり、またケンブリッジ大学・オックスフォード大学で研究のためイギリスに滞在した体験から、イギリスの食文化・イギリス人の食生活に関する著書を発表するなど、イギリスに造詣が深い方です。というわけで、今回の記念講演会が実現しました。

さて、先生は演壇に上がるとすぐに、集まった多くの聴講者の心をつかんでしまいました!先生はなにやら鉄でできたものを、控え室から講演会会場までずっと大切そうに、まるで犬を連れて歩くかのように持ち歩き、壇上に置きました。イギリスのとある骨董屋で出会ったこの鉄の代物は「フット・スクレッパー」といって、靴の裏についた泥を落とすために使うもの。シンプルで美しいデザインだけれど、日常の生活にとても便利そうです。骨董屋の店主に「アーツ&クラフツのフット・スクレッパー」という説明を受け、アーツ&クラフツに関心を持ち始めたそうです。

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↑フット・スクレッパーを持ち上げて説明する林先生 鉄製なので結構重いです!

講演の内容は、アーツ&クラフツ運動が抱えた矛盾に焦点が当てられました。デザイナー、ウィリアム・モリスを中心に始められたアーツ&クラフツ運動は、機械生産による日用品を、中世の職人のように手仕事によって芸術性の高い品へ変えることを理想とし、そうした装飾品によって囲まれた精神的に豊かな生活、そして社会を目指しました。しかし、技術や素材のよさにこだわったばかりに、制作された品は非常に高価なものになり、結局裕福な人の生活にしかアーツ&クラフツ運動は及ばなかったのです。

一方、アーツ&クラフツが果たせなかった理想を昔から実現していたのが日本であり、食器や伝統的な日本の住空間の図版を通して、大衆の生活にいかに芸術が根付いていたかを示してくださいました。またこうした日本の芸術が19世紀に西洋に伝わり、「ジャポニスム」として、日本の芸術の本質である「生活の中の美」が影響を及ぼしているという興味深いお話でした。

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↑本阿弥光悦の舟橋蒔絵硯箱

江戸時代初期の書家、陶芸、漆芸、出版、茶の湯などにも携わったマルチアーティストの本阿弥光悦とウィリアム・モリスとの共通点を指摘!

展覧会では日本の芸術とアーツ&クラフツの関わりについては民芸運動を中心に紹介していますが、林先生のお話ではアーツ&クラフツ運動の問題点や限界に言及し、日本のより本質的な美学に踏み込み、アーツ&クラフツ運動との関係や比較をご紹介していただきました。先生のお話を聞いて、日本人として誇らしい気持ちになりました。


(M.M.)

 今月12日に始まったアーツ&クラフツ展、連日盛況です! モリスの別荘「ケルムスコット・マナー」や民芸運動のサロン「三国荘」の再現展示を含む約280点の出品作は当然見ものながら、本展にはもう一つのお楽しみがあります。それは、お・買・い・物!

 

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▲アーツ&クラフツ展特設ショップの一角(美術館ロビー)

 

 今回のアーツ&クラフツ展では、展覧会関連グッズを取り揃えた大きなショップが美術館のロビーに特設されています。素敵なグッズがいっぱいで、どれも欲しくなってしまいます。その中でも特に個人的にお気に入りのものを、いくつかご紹介したいと思います。

 

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▲いちご泥棒ジャム(840円)

 

 今回の展覧会に出品されているウィリアム・モリスの重要作《いちご泥棒》(内装用ファブリック)に引っ掛けて、いちごを原料とした特製ジャムです。老舗の某果物屋さんの協力を得て、添加物はいっさいなしで、福岡産いちご「あまおう」に北海道産ビートグラニュー糖と和歌山産レモンの果汁だけを加えて作られているそうです。
 ショップのスタッフさんのお話では、バニラ・アイスクリームに掛けて食べるとすごく美味しいとのこと。それを聞いて居ても立ってもいられなくなった私は、その場でプレゼント用に1つ(誰にあげるんだ?!)、自分用に1つ買いました。さっそく試してみましたが、このジャムは市販の一般的なものと違って増粘剤が使われていないので、やわらかくてアイスによく絡み、まさしく絶品でした!

 

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▲壁紙ポスター(1,260円 or 1,575円)

 

 モリスのデザインが使われたイギリス製の壁紙が、この展覧会のために特別に100×52 cmに裁断されて、ポスターとして販売されています。壁紙のままだと、買って帰っても、壁に張ってくれる職人さんを呼ばないと普通の人は使えませんが、この壁紙ポスターなら自分で手軽に張れて楽しめます。しかも、モリスのデザイン! 全部で13種類もあるので、きっとお気に召すものが見つかるはずです。

 

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▲民芸の陶器(600円から48,000円まで)

 民芸の陶器もあります! 島根の湯町窯(ゆまち・かま)と出西窯(しゅっさい・がま)、熊本の小代焼(しょうだい・やき)の3種類が揃えられています。これらの器で食べる料理は、いつもと違った趣きを味わわせてくれることでしょう。

 

 特設ショップは展覧会入場券がなくても無料で入れますので、ショップにお買い物にだけ来て頂いてももちろん歓迎です。でも、展覧会もどうぞお見逃しなく! ショップで販売されているグッズの元となった作品現物が、そのすぐ横の展示室内に並んでいるのですから。豪勢な展示を見てから、素敵なグッズを記念に買って帰る。きっと贅沢な一日が過ごせますよ! 

(T.O.)
 

いよいよ始まりました!!アーツ&クラフツ展。
なんと280点もの作品が展示されています。
これらの作品を展示するための作業は、5月29日から6月10日まで10日間もかかりました。たとえば絵画の展覧会であれば5、6日間の作業で十分なところを、その2倍の時間と労力をかけて行いました。多くのスタッフの涙ぐましい作業を、一部ご紹介!

まずは会場内のディスプレイです。
10トントラック5台分の資材が運び込まれました。
この資材を大工さんが組み立て、経師屋さんが壁紙をきれいにはってくれます。

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↑数人の大工さんがなにやら大きなものを組み立てている様子

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↑組立完了 でも壁はボロボロ

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↑そこで経師屋さんの登場です

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↑室内空間が完成!

個人的には、この職人さんたちの作業を見ているのがとても好きです。
手わざが光る仕事は、なんだかアーツ&クラフツ運動の主旨にもあってるなぁと、感心しながら作業を見守りました。
 

会場内のディスプレイが完成したところで、またまたトラック5台が美術館に到着。
作品が入った木箱が次々と会場に運び込まれました。
この時、展覧会に作品を120点も出品されたイギリスのヴィクトリア&アルバート美術館から、作品に付き添うクーリエとして3人の方がいらっしゃいました。とてもフレンドリーな方々で、この日から展示作業最終日まで楽しく一緒に展示作業をすることができました。

作品は家具、タペストリーなどの布製品、食器、本など実に様々。
展示前には念入りに作品の状態をチェックし、破損していないか、また壊れやすいところはないかを確認します。

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↑イスの状態をチェックするクーリエ(チャーリーさん)と修復家の方

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↑横にながいタペストリーをゆっくりと開いていきます (手前右クーリエのスザンナさん)

 状態チェックが終わると、作品を展示するのですが、これがなかなか難しい!
普通は同じ壁や空間に展示する作品を全て並べて、全体のバランスを見ながら作品の配置を決めます。しかし今回はそんなことをしていては時間がいくらあっても足りない!なんてったって、280点の作品をサクサクと展示していかなければならないのです。というわけで、まだ状態チェックの終わっていない作品は、同じサイズの型紙を作り、それを壁に貼って実物があると想像しながら、作品の位置を決めていきました。時には、想像通りにいかないこともあり、また想像以上に絶妙なバランスを生み出すこともあったり…

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↑家具は倒れないように気をつけて、そっと!

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↑屏風は倒れないように、壁に固定 (作業を見守るグレッグさんは、日本美術の専門家。日本語もぺらぺらです)

 様々な試練を乗り越え、配置が大体決まると、作業の終わりが見えてきます。後は作品のキャプションや解説パネルの配置をしたり、照明をしたり。
最後のほうは体力的にも限界でヘロヘロでしたが、周りのスタッフの皆さんが元気に盛り立ててくださり、何とか開会式前日に作業を終えることができました!

 というわけで、作業自体はとても大変でしたが、ヴィクトリア&アルバート美術館のクーリエの方、修復家の方、共催の新聞社の方、展覧会監修者の方、そしてディスプレイや展示作業をしてくださった方、また修復の勉強をしている研修生の方など、みんなの力がひとつになって、この展覧会ができあがりました。ひとつのことに向かってみんなが団結していく感じ、そしてできあがった後の達成感を実感できることこそ、学芸員という仕事の醍醐味です!

 展覧会は始まったばかり!ぜひとも会場へ足をお運びいただき、この展覧会を楽しんでくださいますよう、スタッフ一同心より願っています!

(MM)
 

 現在、着々と次回展覧会の準備が進んでいます。その展覧会「生活と芸術?アーツ&クラフツ展」にあわせて、10階レストランのウルフギャングパックのご協力のもとスペシャルランチを作っていただきました。

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今回は、アーツ&クラフツ展にあわせたランチなのでイギリスを意識したメニューになっています。サンドウィッチは、イギリス発祥と言われていますし(パンは山形のイギリスパン)、フィッシュ&チップスもイギリスを代表する料理のひとつです。

▲サンドの中身は、ハム&チーズとスモークサーモン&オニオン(現在中身は検討中だそうです)

 メインがサンドウィッチなので軽食的なイメージがありますが、ボリュームがあり食べ応え充分です。もし、食べ切れなかった場合には、お持ち帰りもできるそうです。

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▲セットでついてくるデザートは、一口サイズのケーキにアイスッ

 

予定されているお値段は、1800円。ワイエスランチの時と同様に展覧会チケット提示をすれば500円引きの1300円になります!展覧会を楽しんだ後に、ぜひスペシャルなランチも堪能してみてください。

また、ランチのほかに、アフタヌーンティー的なデザートメニューの提案をしました。小さめのケーキ(数種類)にスコーンがついたワンプレートタイプのものに、紅茶をセットでいかがでしょう。紅茶は、4種類の中からお選びいただけます。作品をみて、少々疲れたところで甘いものを食べながら、見てきた作品を思い出す。素敵な午後のひとときになりそうですよ。

(RK)
 

桜の季節も過ぎ、少しずつ日差しが強くなり始めたこの頃。

美術館では「アヴァンギャルド・チャイナ」展が開催中ですが、その裏では次回の「アーツ&クラフツ展」の準備が着々と進められています。
地下鉄の駅などで、ポスターを見かけられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この展覧会は、昨年秋からこの春まで、京都国立近代美術館と東京都美術館を巡回し、6月からは最後の会場となる当館で開催されます。
担当者としてまず悩んだのは、広報物のデザインイメージを決定することでした。というのは、出品される作品は、イギリスを中心としたヨーロッパや日本と地理的に幅広く、また家具、テーブルウェア、ファブリック、服飾、書籍、グラフィック・デザインと分野も多様で、「この1点!」といったヴィジュアルイメージを作り出すことがとても難しかったからです。

京都と東京の会場は、多岐にわたる作品を一つのイメージとして作り出した、かなり斬新なデザインで広報を展開しました。
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↑東京都美術館のチラシ
目を引く、とても面白いデザインですよね。

一方、愛知会場は・・・というと、春から初夏にかけての明るい季節に似合う、やさしいデザインにしてみました。
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↑愛知件美術館のチラシ
広報物には、今回の展覧会の一番の目玉であるウィリアム・モリスとジョン・ヘンリー・ダールのデザインによるタペストリー《果樹園》《別名《四季》)を使用しました。ポスターやチラシの裏表の地には、モリスのテキスタイルデザインの《マリーゴールド》があしらわれています。
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↑ウィリアム・モリス《マリーゴールド》(内装用ファブリック)

上部の唐草文様は、下のテキスタイルのデザイン見本帳に入っていたもの。これをデザイナーさんがグラフィックに起こしてくれました。
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↑ウィリアム・モリス、ジョン・ヘンリー・ダール《別珍プリントの見本帳》

皆さんはどちらのデザインがお好みですか?

さらに、今回の展覧会では前売り券でもとくにお得なペアチケット(1900円)を販売中!
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横長のタペストリーのイメージは、中央破線で二つに分かれるようにできていますよ。このペア券を使って、お一人で2回、またはお友達、ご夫婦、恋人同士でぜひ展覧会に遊びにいらしてください!

(MM)
 

 夏の猛暑も和らいできた今日この頃、秋の訪れを感じるようになりました。秋といえば、芸術の秋!というわけで、日本各地の美術館では様々な展覧会がオープンしています。
 そんななか、京都国立近代美術館で始まった「生活と芸術―アーツ&クラフツ展」の開会式に出席してきました。この展覧会は、愛知県美術館で来年6月12日―8月16日に開催を予定しています。展覧会は同じ内容でも各会場によって趣向が異なるので、京都でご覧になられた方も、ぜひ当館にも足をお運びください。

 それでは、展覧会の様子をいち早くご報告!

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↑展示室入り口 展覧会のロゴがとてもユニーク

 アーツ&クラフツとは、デザインや工芸の分野でも芸術性を求めた運動で、19世紀のイギリスで始まりました。

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↑自宅で使いたいと思うような、かわいいデザインの食器

 展覧会の見どころは、家具や壁紙、ステンドグラス、食器などを配置して当時の室内空間を再現しているところです。

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↑展示風景

 展覧会といえば、グッズも楽しみのひとつ!
 今回はイギリスらしい小物など、かなり充実しているので、期待度満点です!
 またこの展覧会に関連して、「Life&Art」というキャンペーンをしています。そこでは日常生活でアートを楽しむコツを提案しています。芸術は難解だと思っている方、ぜひこのウェブサイト(http://www.asahi.com/la/)に遊びに来てください!ちょっとした工夫や気持の持ちかたしだいで、アートは身近なものになるはずです。
(MRM)