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本日、「魔術/美術」展は二万人目のお客様をお迎えいたしました。岐阜からいらっしゃった三名様。館長より、カタログとオリジナルグッズ、キャンドル等がプレゼントされました。おめでとうございます。
 
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また、二万人達成を記念して、明日、6月13日(水)より魔術展のB3ポスタープレゼントを行います。魔術展のオリジナルノート、オリジナルクリアファイルのうち二点をお買い上げのお客様に、もれなくB3ポスターをお渡しいたします。ノート2冊、クリアファイル2冊、それぞれを1冊ずつでもオッケーです。 
 
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ポスターに使われているのは、中村岳陵の《都会女性職譜・奇術師》(1933年、三重県立美術館)です。1933年と言えば、昭和モダンが花開いた時代。短髪、洋装の女性や、アール・デコ様式のデパート、カツレツなどの洋食などが街を彩りました。また、江戸川乱歩の怪奇小説をはじめ、大都会は時に妖しいサスペンスの舞台ともなりました。本作品にもどこかミステリアスな雰囲気が漂いますね。
 
「魔術/美術」展、残すところ二週間弱です。
 
(F.N)

想像力と創造力

2012年06月07日

 先日、「魔術/美術」展の記念講演会ということで、作家の平野啓一郎さんにご講演いただきました。講演タイトルは「想像力と創造力」。ロマン派、象徴主義、ダダイズム、そしてシュルレアリスムへいたるヨーロッパの美術が、どのように目に見える現実を越えようとしたのかについて、魔術的な物事の捉え方という点からお話いただきました。西洋の哲学思想や社会背景をずいぶんとかみ砕いてご説明くださったので、とても分かりやすく知的好奇心を刺激される内容でした。

 また、幼少期、恐がりだった思い出や怪しげな心霊番組の思い出なども語ってくださり、平野さんにぐっと親近感を持った方も多いのではないでしょうか。 

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 最近では、平野さんが新たに翻訳された『サロメ』の舞台も話題になっています。これまでの豪奢な翻訳とはちょっと違う現代的な感覚の訳になっているとのこと。

『サロメ』と言えば「魔術/美術」展にも関係のある作品があります。出品作、オディロン・ルドンの版画《夢の中で?. 幻視》(1879年)には、ギュスターヴ・モローの《出現》シリーズからの影響が指摘されています。

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↑《夢の中で?. 幻視》1879年、岐阜県美術館所蔵

 

 

 モローの画像については、こちらオルセー美術館のウェブサイトをご覧になるとお分かりの通り、左側にサロメを右上に聖ヨハネの首を描いていますが、ルドンの場合は左側に男女、右上には目玉が描かれています。モローが『サロメ』の物語を大変ドラマチックに表現しているのに対し、ルドンの方は明らかな物語性が感じられません。むしろ、はっきりとした意味が分からないところが人を不安に陥れますね。

 

 

 魔術展の関連イベントについてですが、記念講演会も終了し残すところわずかとなりました。6月9日(土)と6月15日(金)のギャラリートークほか、9日にアートラボあいちで行われるワークショップ「ラボ・マジック・サークル」となります。魔術展を存分に楽しめるこの機会、みなさん、逃さないでくださいね。

 

F.N

ゴールデンウィーク中も大変多くの方にご来場いただきました「魔術/美術」展

本日、来場者が1万人に達しました!

 

1万人目のお客様は、名古屋市内にお住いの女性。お子さま2人と来館されました。

館長から、記念品の図録、クリアファイル、ノート、そして、アンデス地方で幸福をもたらすとされる人形「エケコ」をプレゼントさせていただきました。

 

 

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↑ 「魔術/美術」展、1万人目のお客さまに記念品を贈呈。

 

 

ところで、美術館へは小さな子供を連れて入れないと思っていらっしゃる方は結構多いようです。

しかし、日本国内の美術館で、入場者の年齢制限を設けている館があるとはあまり聞いたことがありません。

逆に、トイレでおむつ替えができるようにしたり、子供が遊べるプレイルームを設けたり、子供連れのお客さまにも快適に美術鑑賞をしていただけるような工夫をしている館が多くなってきていると思います。

 

愛知県美術館では、女性でも男性でも赤ちゃんのおむつ替えができるトイレを設けておりますし、ベビーカーの貸出も行っています。

 

 

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↑ 館内貸出用のベビーカー。赤ちゃんを抱っこしながら美術鑑賞はツライですものね。

 

子育て中の皆さま、どうぞ安心してお子さまと一緒に愛知県美術館にいらしてください。

2万人目はあなたかもしれません!

 

 (S. N.)

 さて、前回に引き続いて今回のブログも「魔術/美術」展のカタログ内容のご紹介をさせていただきます。

 三番目の執筆者は小澤京子さん。『都市の解剖学 建築/身体の剥離・斬首・腐爛』(小澤京子/ありな書房/2011年)でも話題を呼んだ小澤さんには、第二次世界大戦前の東京をめぐる都市の幻影について寄稿していただきました。江戸川乱歩には深夜の街を無目的に遊歩する趣味があったとのことですが、テキストを読まれた皆様におかれましても夜の街へと誘い出されてしまいそうな感じです。(美術館は責任を負いかねますが・・・)。

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↑愛知県美術館所蔵の谷中安規《飛ぶ首》(1927年)、《蝶を吐く人》(1933年)。
  都市の怪奇とメルヘンが入り交じった作品です。安規自身も街をさまよい、幻を追い求めるような生活を送りました。
 
 四番目のテキストは美魔女の話題から始まるものです。執筆者、石田美紀さんは日本において「魔女」というイメージがどのように受け入れられてきたのか、考察してくださいました。欧米由来の「魔女」とは異なる独自の姿が浮かび上がってきます。「魔女になることを、女に生まれついたのなら当然手にする権利だと理解している」という言葉は、魔女と化して人生を謳歌する女性達へのメッセージでしょうか。 

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↑こちらは蛇に惑わされるイヴの姿を描いたマックス・クリンガーの版画《イヴと未来 III. 蛇》(1880年/岐阜県美術館蔵)。
  自分自身の魅力的な容姿に耽溺しがちな女性は、悪い誘いにだまされて身を滅ぼすという意味が暗に込められているようです。こうした女性観が魔女のイメージを生み出す一因となっています。
 
 蘆田裕史さんも、ファッション論や服飾史がご専門ながらサブカルチャーまで視座に入れたテキストを寄せてくださいました。衣服が持つ意味を身体の保護、装飾、そして呪術と分類したうえで、魔法少女の衣装にまで話をひっぱっていくのは蘆田さんならではの解釈でしょう。もっと詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか?
 
カタログは展覧会内容を記録、補足するためだけに作られるわけではありません。それ自体で読み物としての価値がないと面白くありませんね。今回のカタログは色々な分野の方によるテキストを掲載することで、展覧会から独立した形でも楽しめるものになったのでは、と自負しています。これで1300円はけっこうお買い得ですよっ。
 
〔宣伝ついでに、カタログの郵送販売のご案内も。本代1300円に470円(送料および梱包代を含む)が追加されて1770円となります。遠方の方はどうぞご利用ください。詳しくは愛知県美術館までどうぞ→tel:052-971-5511(代)〕
 
このカタログが皆様の知覚のモードを変えるきっかけになればと願っています。
 
(F.N.)
  展覧会の担当学芸員が取り組む業務の一つにカタログ作りがあります。カタログは展覧会が終了した後もずっと残りますので、おのずと学芸員は力が入ります。そういうわけで、今回はカタログのお話です。
 
 さて、まず気になるのはカタログの中身ですよね。魔術展のカタログの方向性を決めるにあたって担当者が最初に考えたのは「主観的、偏向的、周縁的で混交的。でも、感性を揺さぶるカタログを!」ということ。これは、学術的な情報をできるかぎり客観的に網羅することが求められる美術館のカタログとしてはNGかもしれません。しかし、出品作品の大半が各公立美術館できちんと調査研究されている※ので、これくらい型破りなコンセプトを掲げる余裕もあるわけです。さあ、魔術的なカタログの始まり、始まり・・・。
 
 というわけで、今回は美術館の担当学芸員以外に五名の方にテキスト執筆をお願いいたしました。出品作品にこだわらずに個々の執筆者の世界観が伝わるテキストを、と依頼したので、どのテキストもとても個性的です。早速、テキストを寄せてくださった方々を順にご紹介しましょう。
 
 まずは、文化人類学者、中島智さん。世界各地を巡り、シャーマンと呼ばれる方々と接してきた経験を持たれる中島さんは、石垣島の巫女をめぐる出来事から独自のアート論を展開されています。書き出しからゾクゾクするような文章です。
 より詳しく知りたい方には『文化のなかの野性 - 芸術人類学講義』(中島智/現代思潮社/2000年)をお勧めします。
 
 つづいて唄邦弘さんがアンドレ・マッソンとジョルジュ・バタイユ、神話の再解釈を巡るテキストを寄せてくださっています。すでに会場をご覧になった唄さんからは、ブルトンの部屋を想像させる、とのコメントをいただきました。専門家からそう言っていただけると嬉しいです!
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 ↑「ブルトンの部屋」みたいなのは、このコーナーですね。ここは思想家ジョルジュ・バタイユ等が編集した雑誌『ドキュマン』をベースに構成されています。芸術と文化人類学の垣根を越えた展示がポイント。唄さんのテキストを読むと理解も深まります。
 
中島さんはしばしば、表現者の意図や目的に回収されえない芸術作品の事後性について示唆されていますが、気づくと、このカタログもそんな感じです。担当者の意図を越えてテキスト同士が響きあい、それが一つの展覧会のかたちを作っているかのよう。
さあ、続く三名については第二弾にてご紹介します。お楽しみに!
 
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↑おまけ。キラキラで人気のカタログ表紙(右)もホログラムを押さないとこんな感じ(左)です。これが最初に印刷見本として出てきたときは、担当学芸員もまさかあんなキラキラになるとは想像していませんでした。
 
(F.N.)
 
※この展覧会は愛知県美術館、岐阜県美術館、三重県立美術館の所蔵作品から構成されています。より詳しい作品情報を知りたい方は、各美術館の目録等をご覧下さい。

 魔術/美術展は始まって好評をいただいております。とくにツイッター上では話題としてとぎれず取り上げられていてうれしいかぎりです。カタログやオリヂナルグッズの販売も好調のようです。会期途中でなくなりそう!という心配の声も上がっています。
 最初の木曜日には、友の会の特別鑑賞会がありました。これは愛知県美術館友の会会員向けだけの特別プログラムです。昼の部と夜の部がありますがとくに夜の部は別室で展覧会全体のガイダンスを受けた後、美術館の閉館後に、貸し切りの状態で展示室に入っていただき、担当学芸員だけでなく他の学芸員もいっしょに観覧し、それぞれと思い思いに会話しながら楽しく鑑賞します。

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 こういうときだからこその裏話を披露することもあり、友の会の参加者には大変好評です。今回も夜の部には30人ほどが参加され、お互いに話したり、作品のエピソードを聞いたりと楽しい時間を過ごしました。友の会入会は随時出来ますので、10階の美術館受付でお尋ねください。

 

 魔術・美術ついでにもう一つ話題を。

好評の魔術/美術展ですが、先日思わぬところで魔女を発見しました。

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 博物館明治村では毎年「明治村茶会」が盛大に開催されているとのことです。今年は明治村内に三席用意されていた内、野点の会場が日本庭園であり、そのしつらえを愛知県美術館でも展覧会をやってもらったことのある造形作家の庄司達さんがされました。先年碧南市藤井達吉現代美術館での展覧会と同様のコンセプトのインスタレーションとなっていました。そして弟さんの信州さんが席亭の亭主を、もうひとりの弟宗文さんがお花を生けられていました。

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 そして、そのお道具のなかの煙管を見せていただいてびっくり。それがスペイン製パイプで魔女が付いていたのです。説明の方も「これは魔女です。最近は美魔女なんて言う言葉もありますよね」と笑いを誘っていました。思わず愛知県美術館で「魔術/美術展やってます」と宣伝したくなりました。ほかの席では寄り付の掛物に横山大観であったり鈴木其一の作品が掛かったりしていて美術館で見るのとは違った眼の喜びがありました。ヨハネ教会.JPG

 上の写真は雨天のために用意されたヨハネ教会のなかのインスタレーションで、前日は雨模様でこちらで席が設けられたそうです。

 (S.T.)

当館で開催中の「魔術/美術 幻視の技術と内なる異界」。

「魔術」というキーワードの魔力のなせる業なのか、週末を中心にたくさんの方においでいただいています。

 

しかし、盛り上がっているのは展覧会だけではありません!

実は、アートショップも「魔術/美術」に合わせた展開となっています。

 

そこで今回は、魔術展会期中限定で、アートショップで販売する商品をご紹介いたします。


まずは、「魔術/美術」オリジナル・グッズ!

カタログ制作中に出てきたデザインがあまりにも可愛らしかったので、このデザインをお借りして、マジュビジュ風クリアファイルとノートを作りました。

まずは、パステルカラーが春らしいオリジナル・クリアファイル。

女性のお客様に大人気です。表も裏も繊細な模様でいっぱいです。

 

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↑ 「魔術/美術」オリジナル・クリアファイル。A4サイズ。350円(税込)。

 


続いては、ちょっと渋めのオリジナル・ノート。

マジュビジュ風デザインはそのままに、タイトル部分だけを抜いています。

お好きなタイトルを書き込んで、あなただけのマジュビジュ風ノートを作ることができます。

中身は白無地なので、おしゃれなお絵かき帳としてもも使えますよ。

 

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↑ 「魔術/美術」オリジナル・ノート。A5サイズ。350円(税込)。

 

 

次に、「魔術/美術」オリジナルではありませんが、学芸員のイチオシ商品をご紹介します。

 

当館が所蔵する白隠慧鶴(はくいんえかく)の作品をモチーフにした、愛知県美術館オリジナルせんべいです。

 

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↑ 愛知県美術館オリジナルせんべい。5枚入り。380円(税込)

 

 

白隠慧鶴は、江戸時代中期の臨済宗の禅僧で、主に民衆への布教の目的から、禅の教えを表す墨画を数多く残しました。

その中には、漢字を絵の中にそのまま取り入れたものがあり、今回の魔術展でも、白隠のこの大胆なテクニックを紹介しています。

せんべいのモチーフになった作品《布袋図》は、袋の中に「寿」を入れた嬉しそうな表情の布袋様の姿を表したものです。

 

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↑ 白隠慧鶴《布袋図(ほていず)》江戸時代中期(18世紀) 愛知県美術館(木村定三コレクション)

 

 

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↑ おせんべいにすると、こうなります。

 


実はこのおせんべい、作り方もなかなか本格的なのです。

製作していただいたのは、手焼きのおせんべいが自慢の製菓店「貴清堂本店」さん。

白隠の作品をもとに、オリジナルの焼き印を製作していただきました。

 

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↑ 白隠《布袋図》をかたどった焼き印。手に持つとかなりの重みがあります。

 

この焼き印もおせんべいの横に展示(?)していますので、どうぞ手にとってご覧ください。


木村定三コレクションによる「禅の味」をお楽しみいただける白隠せんべい。お土産にもおすすめです!

 


その他、アートショップでは世界の呪術、おまじないグッズを取りそろえています。

 

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↑ メキシコの骸骨ストラップ。
  先祖の霊を迎えるお祭りの時に街に骸骨が飾られるそうです。ゆらゆら揺れる姿はむしろコミカル。

 

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↑ ダーラナホースのマグネット。
  北欧に伝わる「幸運を呼ぶ馬」。デザインがおしゃれです。

 

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↑ インドネシアの魔除けの神様「バロン」のマグネット。
  個性的なマグネットをお探しの方はぜひ。

 

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↑ エケッコおじさんの人形。
  アンデス地方で幸運を呼ぶとされる人形です。見ているだけで愉快な気持ちになります。(横のランプも気になりますね。)

 

そしておまけ。

現代の魔女といえば「美魔女」(年齢を重ねても若さと美しさを追究する女性たちを指す言葉です)。

ということで、美魔女の皆さんが注目する高級蜂蜜マヌカハニーも販売しています。

ニュージーランドに自生する植物マヌカの花からできる蜂蜜は抗菌性が高いとして、美容、健康などの面から話題なのだとか。

 

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↑ マヌカハニー。 「美魔女」への第一歩!?

 

展覧会を楽しんだ後には、ショッピングも楽しめる「魔術/美術」。

アートショップをチェックするのもどうぞお忘れなく!

(S.N.)
 

 ツイッター上で何かと話題になっていた「魔術/美術 幻視の技術と内なる異界」展がついに始まりました。12日には大村知事をはじめ多くの招待者を迎えて開会式が行われました。来場者も300人ほどで大変混雑しました。一言では伝えにくいのですが、魅力的な展覧会であることはチラシなどでも伝わっていたようです。魔術開会式.JPG  魔術1室.JPG
 
 そして一般公開は、13日の金曜日! まったく展覧会タイトルにぴったりだと思いませんか?
 展示室内は、「魔術」をキーワードに「だまし絵」「遠近法」「江戸絵画」「天体」「数字」等々様々な切り口から古今東西の作品を紹介しています。展覧会入り口にはシュルレアリストのアンドレ・ブルトンの言葉が記されたカーテンが下がっています。美術と魔術の近い関係を想起させます。最初の部屋には、現代美術の野村仁、能面、そしてサルバドール・ダリの作品が象徴的に来館者を迎えます。そのあとは・・・・ぜひ来館してお楽しみください。
 
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そして、ロビーには魔法使いに変身できるコーナーが設けられています。展示室内はよく考えられたきちんとした展示ですが、展示室外ではお子様も含めて楽しんでいただける仕掛けが用意してあります。ここだけ楽しんでいくのもアリかも、などというと担当者に叱られるかな

(S.T.)

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まもなく一般公開

2012年04月11日

 本年度最初の企画展「魔術/美術 幻視の技術と内なる異界」の準備も大詰めになりました。

13日の金曜日からは一般公開が始まります。
 担当学芸員は連日、夜遅くまで準備をしています。ようやくカタログも姿を現しました。黒地にホログラムの模様がとてもおしゃれで、ツイッター上では話題になっているとのこと(私は未だスマートフォンではないのでやや話題におくれぎみですが)。
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 また、展覧会グッズも担当者のアイデアで準備されています。その一つ、クリアファイルは、カタログ表紙と逆で白地にカラフルな模様がかわいらしく、女性の目を特に引きつけそうです。
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 そして、展示内容のほかに来館者に話題になりそうなのが、魔法使いのコスプレの出来るようにしようと考えていることです。展示室内では能面や古い狛犬にはじまって、1500年代のヨーロッパの古い版画から現代作家の21世紀になってからの作品や、はたまた心に染みる映像作品にいたるまで、東洋、西洋を問わずまた時代も自由に、「魔術」をキーワードに作品が選択されて、展示としてもきちんと考えられた、非常にきれいな展示がされていますが、展示室外では、魔法使いの衣装を着けて記念写真を自由に撮っていただけるような気軽なコーナーも設けようと考えています。どうぞお楽しみにしてください。子供用もありますよ。(S.T.)

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 「魔術/美術」展の担当者は先日、お休みを利用して野外民族博物館リトルワールドへ行って来ました。東海地方の方々にはお馴染みの場所ですね。

 なぜ「魔術/美術」展でリトルワールドへ、と疑問に思う方も多いかもしれませんが、その大きな目的は「博物館の展示メソッドを学ぶ」です。いわゆる美術作品だけではなく、古遺物や民族学的資料も多数展示される魔術展。通常の愛知県美術館の展示方法とは異なる展示に挑戦するべく、リトルワールド見学というわけです。

  実際、意識してみると近代美術館の展示スタイルと文化人類学に基づく博物館の展示スタイルは意外と違うことに気づかされます。例えば、美術館では立体物を展示する場合、一点一点を独立して見られるよう適度に間隔をあけて横に並べることが多いです。

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↑現在開催中の「うつし、うつくし」の展示風景です。銅鐸や瓦も台に並べています。
 
 
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↑こちらは所蔵作品展の様子。作品それぞれのベストアングルを見せられるように、立体と平面の配置を考えています。
 
 
一方、博物館の場合は空間全体を意識した展示を行います。文化というものを総体的に見せることが目的だからでしょうか。
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↑リトルワールドの展示風景。左右だけでなく、上下、手前と奥など三次元を活かした展示になっています。迫力がありますね。
(*リトルワールドより許可をいただいて写真を掲載しております)。
 
 
もちろん、こうした展示方法に対する挑戦も最近では数多く行われています。その筆頭がパリに2006年にオープンしたケ・ブランリ美術館。アフリカ、アジアなどヨーロッパ以外の地域の装飾品や民具などを数多く所蔵している施設ですが、施設名からも明らかなように博物館というよりも美術館に近しい展示方法をとっています。その結果、これらの展示物は「民俗学的資料か、それとも美術作品か」をめぐって議論が起こりました。その論争も含めてとても興味深い施設です。http://www.quaibranly.fr/
 
ちなみに担当者二人は、リトルワールドのお土産にアフリカのお面フィギュアを購入。お面に展覧会の成功をお祈りしたいと思います。
(F.N.)
 

*ブログ編集担当者より

リトルワールド本館展示のテーマ別ビデオは必見です。

愛知県美術館では、現在「うつし、うつくし」展を開催中ですが、次の企画展の準備も着々と進んでいます。


4月から開催予定の「魔術/美術――幻視の技術と内なる異界」展の前売券が本日販売開始となりました。

前売ですと一般は700円、高校・大学生は400円でチケットをご購入いただけます。(それぞれ当日より200円お得です。)

販売は4月12日までとなりますので、お早めにお求めください。


前売券発売と同時にポスター・チラシも作成しました。

巷で「かわいい!」と話題の魔術展ポスター・チラシ、全部目にすることができたらラッキーかもしれません!

 

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↑ 「魔術/美術」展ポスターとチラシ。

 

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↑ チケットはこれまた雰囲気が違います。券種によって色が違うので、全部集めたくなる??

 

さてさて、宣伝ばかりでなく、ここでこの展覧会をきちんとご紹介したいと思います。

この企画は「愛知・岐阜・三重三県立美術館協同企画」の第6回目となります。

2004年に三重県立美術館で開かれた「20世紀美術にみる人間像」展から始まったこの協同企画は、地理的に近いこれら3つの県立美術館が協力し、互いの所蔵作品を活用しながらより魅力的な展示を考えるというもので、愛知県美術館の企画としては、2007年の「20世紀美術の森」展以来2回目となります。

一言でいいますと、担当学芸員にとっては、「ほら、他の2つの美術館の作品が自分の美術館の作品になったと思って、自由に所蔵作品展を企画してご覧なさい!」という課題を与えられたことになります。

担当学芸員2人が持ち寄った企画案の中にあったのが、「魔術」をキーワードにした展覧会。

他にも案があった中でこれが最終案となったのは、「魔術」というのがとても魅力的なことばである一方で、美術においてとても広がりを持ったテーマであるところにその理由があったと思います。


芸術家という概念の歴史は、人の創造行為の歴史に比べるとはるかに浅いものですが、その始まりは、さまざまな技術を駆使して人々に驚きを与え、現実と幻想の境界を揺るがしてきた人々にあったと言うことができます。

平面的な画面の上に奥行きを再現したり、「ない」はずのものを「ある」かのように見せる技術は、まさに魔法のように人々を魅了してきました。そして、それらの技術は、やがて美術という制度の中で継承されていきます。


一方、世界各地の信仰や宗教儀礼と密接に結びついた創造行為というものがあります。呪術の道具や、祭事に用いられる仮面といったものは、異界へアクセスし、超常的な存在と交流するための道具として大変重要なものです。それらは制度としての美術の外側で生き続けてきたために、その造形の魅力は、反対に「美術」に影響を与え、その権威を脅かしさえすることもあります。


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↑ 《ヨルバ・スタッフ》 愛知県美術館(木村定三コレクション)
  ナイジェリアで病気の治療を目的に行われる呪術の道具。


愛知県美術館の所蔵品の過半数を占める木村定三コレクションの中には、そうした民俗学的資料とも呼べるような造形物がたくさん含まれています。今回は、これらを美術品として生み出されたものと同じ空間で展示することにより、人間の創造行為を幅広い視点から見つめるきっかけとなるようにしたいと思っています。


さらに、近代以降の傾向として、科学技術の急速な進歩に抵抗するかのように、多くの芸術家が不可視の世界を積極的に表現してきました。とりわけ19世紀末のヨーロッパでは、幻想的世界を表現した版画作品が数多く制作されました。


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↑ オディロン・ルドン〈夢のなかで〉より《VIII. 幻視》 1879年 岐阜県美術館

 
また、神秘主義的な要素や神話の主題といったものは、現代作家の作品にも受け継がれていますし、また現代生活の中の非日常を表現するアーティストも少なくありません。

最後の章では、彼らを「現代の魔法使いたち」として紹介する予定です。

 

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↑ 中澤英明《子供の顔――クマ》 2001年 愛知県美術館
  大人の世界を外側から見据える子供の視線は、大人の日常に裂け目をもたらすかのようです。

 

こんな風にざざっと「魔術/美術」の予告をしてみましたが、なんとなくイメージを持っていただけましたでしょうか?

本展は、あくまで美術館での展覧会ではありますが、技術や主題といった部分にのみ「魔術」を読み取るのではなく、「作る」という行為そのものへと人々を駆り立てる不思議な力を探る展示にできればと思っています。


担当学芸員としては、この展示を通してご来場の皆さん自身の中の隠された感性が刺激されればという願いを込めて、キャッチコピーを「あなたの魔性、めざめます」としました。

この春、ぜひ愛知県美術館で”魔性デビュー”してみてください。


「…と言われても何が展示されるのかさっぱり…でも何だか気になる!」と思ったあなた、すでに魔法にかかっているのかも知れません…。


(S.N.)