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 芸術植物園、ご覧いただいた方はお分かりのように、ここ尾張名古屋を代表する植物学者・伊藤圭介を大フィーチャーしております。幕末から明治にかけて大活躍した伊藤圭介は、来日中のシーボルトに学び、日本初の理学博士となった人物。九州生まれの私は、実はここ名古屋に来るまで恥ずかしながらその存在を知らなかったのですが、名古屋の方は皆ご存知のようで、あちこちに像が設置されているほどの愛されぶりに驚きました。

 というわけで、今回の記事はこの伊藤圭介ゆかりの地のうち、比較的行きやすいところをいくつかご紹介したいと思います!

・伊藤圭介記念室

 まず、何と言っても外せないのが名古屋市東山植物園さん。植物園門を入ってすぐ左の事務所の建物内に伊藤圭介を顕彰する「伊藤圭介記念室」があり、本展出品の伊藤圭介関係資料は、いずれもこちらからお借りしております。なお東山植物園の皆さんは、花を見分けられない私にかわって、本展出品作に描かれた植物を同定していただくというとても面倒な作業も快くお引き受けくださいました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

 

・生家跡

 続いて伊藤圭介の生家跡。「伊藤圭介先生誕生之地」という碑が設置されています。

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 背面の碑文には次のようにあります。

伊藤圭介先生(1803-1901)は日本を代表する偉大な植物学者で多くの輝かしい業績を残されわが国で最初に博士号を得られた人である。この地は先生が享和3年1月27日に生まれ66歳で東京へ移られるまで住んでおられた所である。双葉を象徴するこの碑は若い人々の伸びゆく魂への期待でもある。

 なるほど、言われてみれば双葉ですね。場所は呉服町通りと上中通の交差点そばです。

 

・旭園跡

 そして、圭介が1858(安政5)年に設けた植物の栽培・研究拠点「旭園」跡。…を訊ねようと思ったのですが、そこにあるはずの石碑が見当たりません。以前は老舗和菓子店・名古屋亀末廣の店先にあったようなのですが、同店は2012年7月に閉店、現在はコインパーキングになっています。閉店の際に撤去されてしまった...?場所は中区錦3-14付近です。事情をご存知の方がいらっしゃいましたらTwitterなどでぜひご教示くださいませ。

 

・伊藤圭介座像

 最後に、花を持った圭介の座像。鶴舞中央図書館の駐輪場付近にひっそりと設置されています。碑文をみると、1957年に圭介の功績をたたえて建立されたとのこと。

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▲連日の雨で水たまりが。

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▲いろいろな植物に囲まれる伊藤圭介。

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▲鶴舞中央図書館の来館者を見守る。

 なお、ゆかりの地の場所は名古屋大学付属図書館ウェブサイトを参考にさせていただきました。まだまだゆかりの地は沢山あるので、時間を見つけて行ってみたいと思います。皆さんも機会がありましたらちょっと気にして見てみて下さいね。
(KS)

 芸術植物園がオープンしてもうすぐ一ヶ月。もう皆さん散策していただけましたでしょうか?多肉植物好きの私としましては、8月は我慢の季節。水やりも植え替えも控え、ひたすらしおしおになってゆく多肉たちを眺めやるしかすることがない悲しい季節でした。が、いよいよ9月に入り、朝晩も少し涼しくなってきましたので、多肉たちも俄然元気に。人間も植物も一緒ですね。

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 さて、私の園芸趣味の話は置いておいて。この展覧会にはたくさんの書籍形式の作品が出品されています。本当は皆さんにお手に取ってみていただくのが一番なのですが、いずれも貴重書、なかなかそういうわけにはいきません。しかし、いまはインターネットという便利な道具が!出品作の多くを、ウェブ上で閲覧することができるのです。便利な世の中になったものですねー。というわけで、今回はじっくり手に取って眺めたいあれやこれやの資料のうち、ウェブ上に公開されているものをいくつかご紹介したいと思います。

・恩地孝四郎『博物志』玄光社、1942年(出品作は個人蔵の書籍と横浜美術館蔵のプリント)
近代デジタルライブラリー|博物志(一部欠あり)

 当ブログをご覧の皆さんにはきっともうおなじみの恩地孝四郎。そう、先頃開催しました「月映(つくはえ)」展の版画家の一人、あの恩地です。版画家として知られる恩地孝四郎ですが、実は本の装丁や写真などの分野でも才能を発揮したマルチ・プレイヤー。

 

・金子支江子ほか『家庭造花術全書』大倉書店、1908年(出品作は慶応義塾図書館蔵)
近代デジタルライブラリー|家庭造花術全書 上巻
近代デジタルライブラリー|家庭造花術全書 下巻

 今ではあまり想像できませんが、明治時代の女子教育のなかで、造花は裁縫、編物、刺繍などと並んで教えられていました。近代デジタルライブラリーはモノクロですが、原書は美しい多色刷りなのでぜひ会場でご覧ください!

 

・橘保国『絵本野山草』1755(宝暦5)年(出品作は雑花園文庫蔵)
早稲田大学図書館古典籍総合データベース|画本野山草|巻之1-5
国立国会図書館デジタルコレクション|畫本野山草(1800年版)

 画家や絵付職人向けの絵手本です。一見園芸書のようですが、ところどころに花は胡粉で描いて臙脂で隈取りしなさい、などと書いてあります。マリーゴールドやポピーなど舶来の植物も掲載されているので探してみて下さい。

 

・岩崎灌園『本草図譜』1828(文政11)-1844(弘化元)年(出品作は雑花園文庫蔵)
国立国会図書館デジタルコレクション|本草図譜|巻5-96

 2,000種近い植物の図を描き解説を付した江戸時代の植物図譜の最高峰!

 

・カール・ペーテル・ツュンベリ『日本植物誌』1784年(出品作は雑花園文庫蔵)
Gallica, la bibliothèque numérique|Caroli Petri Thunberg|Flora Japonica: sistens plantas insularum iaponicarum…

 スウェーデンの植物学者リンネの弟子で、オランダ東インド会社の医師として来日、768種の日本の植物を採集して帰国後にまとめたのが『日本植物誌』です。後にシーボルトはこの本を持って来日し、尾張の植物学者・伊藤圭介に贈りました。

 

・水野忠暁『草木錦葉集』1829(文政12)年(出品作は雑花園文庫蔵)
国立国会図書館デジタルコレクション|草木錦葉集|緒巻、巻1-6

 斑入り植物ばかりを集めた超マニアックな植物図譜。風変わりなものを好む人は今も昔もいるものですね。木版一色の制約をうまく生かして白黒で斑を表現するところが素敵です。

 

・野田青葭『拾品考』1850(嘉永3)年(出品作は雑花園文庫蔵)
研医会図書館|Picasa Web Albums|拾品考

 著者の野田青葭は、長崎・出島で輸入植物の鑑定をしていたひと。なので舶来の珍しい植物をいち早くみることができたんですね。十種類の舶来植物の美しい図譜です。

 

・前田利保『本草通串証図』1853(嘉永6)年(出品作は雑花園文庫蔵)
富山県立図書館|古絵図・貴重書ギャラリー|本草通串証図

 江戸末期にはこの前田利保のように植物マニアな大名が各地におりまして、いろいろな図譜を作らせたそうです。富山藩の絵師たちと摺師たちの技術を結集した贅沢な植物図鑑。



・飯沼慾斎『草木図説』1856(安政3)-1862(文久2)年(出品作は雑花園文庫蔵)
国立国会図書館デジタルコレクション|草木図説前編|20巻

 日本初のリンネ式分類による近代的な植物図鑑。上に挙げた『草木錦葉集』のようなモノクロ表現と、花や蕊の拡大彩色図が同居しているのが面白いですね。あの高名な植物学者・牧野富太郎も明治末にこの本の増訂版を刊行しており、長く実用性を保った名著です。

 

 と、沢山ご紹介してきましたが、最後に私の趣味的に外せないのが、名古屋の写真家・下郷羊雄が編集した多肉植物写真集『メセム属:超現実主義写真集』(出品作は名古屋市美術館蔵)。仲間の写真家たちによる前衛的なメセン写真と、メセン愛好家が自らのコレクションを撮った写真とが入り交じった何とも奇妙な写真集です。残念ながらウェブでみることはできませんが、以下の本に全ページ掲載されていますので、ご興味のあるかたは是非ご覧ください。

・山田諭編『コレクション・日本シュールレアリスム14:瑛九、下郷羊雄・レンズのアヴァンギャルド』本の友社、2001年
愛知芸術文化センターアートライブラリー|瑛九、下郷羊雄・レンズのアヴァンギャルド
ほか、愛知県図書館、豊田市中央図書館などに入っています。

 

 最近巷には植物の力をライフスタイルにとり入れる“ボタニカル女子”とか“植物男子ベランダー”とかいろんな植物愛好のあり方があるようです。ぜひ皆さんもよき植物ライフを。
(KS)

現在、美術館のロビーでは「芸術植物園」展と同時に、子どもアート・プログラム「グランド・カフロス博士の庭」を開催しています。「芸術植物園」展に合わせて行われるワークショップやプログラムを自由に体験してもらえる庭です。 

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そもそもカフロス博士って誰…と思われる方も多いかもしれませんが、「各地を旅する文化人類学者」なのです。博士が街なかで見つけた面白いかたちを集めて、仲良しの大工さんたちと一緒に愛知県美術館に庭を作ったら…というイメージのもとにこの空間はデザインされています。事前申し込みプログラムの他に「だれでも・いつでもプログラム」として、「芸術植物園」展出品作家である渡辺英司さんによる人工芝を人工的に生長させた《常緑》を実際に体験できる「しばのばし」や、造花の花びらや葉っぱを組み合わせて新しい種類の植物を作る「新種発見ガーデン」など、など……毎日その場で参加してもらえるものも多数用意しています。

 
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↑「新種発見ガーデン」で作られた新しい花たち。なかなか独創的です。

 

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↑「しばのばし」体験中。着々と芝が育っています。

子どもだけでなく、展覧会観覧後に参加されていく大人も多いです。特に「しばのばし」は、はまるとなかなか抜け出せず、たくさんの芝をふさふささせていく人の姿もちらほら。カフロス博士が暮らしている(はず)のロッヂもあり、会場のどこかで博士の姿を発見できるかもしれないので是非観察してみてください。

今回、会場デザインを担当したL PACKは、2013年のトリエンナーレで「NAKAYOSI」という名前のビジターセンターを運営していたおなじみのメンバー。「芸術植物園」展に出品している狩野哲郎さんの作品設置にも携ってもらっています。会場設営はミラクルファクトリー、プログラム立案はフジマツの面々にお願いしました。

芝が伸びたり、花が増えたり会期中どんどんと進化していきそうなこの庭。ロビーでの開催になるため、庭に入って頂くのは無料ですので、是非何度でも足をお運びください!なお、8月8日に飯山由貴さんが行ったプログラム「病気や怪我の思い出を話す」の映像も公開中です。

*写真撮影可

↑実はCMもあるのです。BGMは国際オバケ連合!

(N.O)