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現在開催中のコレクション企画「線の美学」展は、当館が所蔵する古代から現代におよぶ様々な作品から、“線”を切口に選出、構成したものです。当館には考古遺物から現代アートまで、実に幅広く作品が所蔵されていることに、改めて驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 この企画展の特色の一つは、愛知県文化情報センターが所管していた「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」より、『フーガの技法』(2001年、監督:石田尚志)と『T-CITY』(1993年、監督:勅使川原三郎)が選ばれ、上映されていることでしょう。「オリジナル映像作品」は、“身体”を統一テーマに設定し、様々なジャンルの作家がそれぞれ独自性を発揮し、ユニークかつ実験的な作品を生み出してきました。ドローイング・アニメーションの『フーガの技法』と、水平・垂直線で構築された世界で展開するダンス・フィルム『T-CITY』は、どちらも線というテーマでも語ることができる共通点があります。
 もう一つトピックス的な観点からも、この2本には共通性があります。それは今年開催され話題となった企画展と、どちらも関わりが深いということです。『フーガの技法』の石田尚志は、横浜と沖縄で大掛かりな個展「石田尚志 渦まく光」を開催し、日本における注目すべき映像系の現代アーティストして、その存在感を示しました。この「渦まく光」展でも、『フーガの技法』は石田の代表作として、しばしば紹介された重要作品です。
 一方『T-CITY』は舞踊家の勅使川原三郎が監督した、日本における本格的なダンス・フィルムの先駆作です。この作品でもう一つ注目されるのは、スーパーモデルの元祖ともいわれる山口小夜子が出演している点です。山口小夜子は2007年に惜しくも亡くなられましたが、ファッションの世界だけに留まらず、ダンスや映画などにも積極的に活動領域を広げた、マルチ・アーティストとも呼べる存在です。その多彩な活動を検証すべく、今春、東京で大掛かりな企画展「山口小夜子 未来を着る人」が開催されましたが、松本貴子監督によるドキュメンタリー『氷の花火 山口小夜子』も制作され、現在公開中です。『T-CITY』は28分の作品で、展示室で観るにはやや長い感じもしますが、訪れた方々は山口さんのパフォーマンスに目を奪われてか、皆さんじっくりと鑑賞されている様です。
 11月29日(日)から始まる上映会「第20回アートフィルム・フェスティバル」でも、『フーガの技法』と『T-CITY』は上映されます。こちらは本来のフォーマットであるフィルムによる映写の美しさを味わってください。上映日は12月5日(土)です。そして翌6日(日)には「オリジナル映像作品」シリーズ最新第24弾、山城知佳子監督『創造の発端 ?アブダクション/子供?』(2015年、出演:川口隆夫)も初公開されます。こちらもお見逃しなく!
 なお勅使川原さんは来年開催される「あいちトリエンナーレ2016」プロデュースオペラの演出家として、石田さん、山城さんは現代美術の出品作家として、それぞれ参加されることになっています。
(T.E)

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キャプション:勅使川原三郎『T-CITY』(1993年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品) 

Photo: Martin Richardson

棚卸し、はじめました

2015年07月10日

片岡球子展の会期も、残すところあと2週間を切りました。先日の日曜美術館の放映もあり、ますます多くのお客様で賑わう展示室…。一方でバックヤードにある収蔵庫では、学芸員による一大プロジェクトが粛々と進行していました。

 今回ご紹介するプロジェクトは「管理状況確認作業」、通称「棚卸し」です!愛知県美術館のコレクションはとても充実しており、膨大な数の作品が所蔵されています。その管理をするのも学芸員の大切な仕事のひとつ。美術館の方向性を決める大事な館蔵品を、プロジェクトチームが一点一点確認していきます。

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▲まずは作品を探すところから。大体の場所を割り出したら、あとは経験が頼り…!作品カードと照合しながら作品があることを確認していきます。

もちろん一口に確認と言っても、「作品はあります!」では終わりません。いつ収蔵されたのか、どこから収蔵されたのか、どこにあるのか、どんな状態で保管されているのか…。こういった細かい情報を点検し、記録していきます。この情報が次回プロジェクトチームへと引き継がれることで、所蔵作品が末永く、かつ、きっちりと管理されていくのです。
 

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▲記録中。事前に作成した「作品リスト」と、作品の戸籍である「作品カード」の両方に、確認した情報を記録していきます。

今回の点検では、作品の梱包状態と付属物の両方を記録しています。例えば今回調査を行った収蔵庫では、洋画なら大体のものが「黄袋、たとう(外箱)、エアキャップ(ぷちぷち)」の三位一体セットで梱包され、保管されています。
しかし、これが掛け軸となると情報が激増!「紐下(関東では「巻止め」らしい)、薄葉紙(特に日本美術の梱包で大活躍な薄い紙)、薬籠箱(関東では「印籠箱」らしい)、台指箱(いつもの桐箱)、文書入ってます!極めもついてます!あ、昔の売立目録も!」となり、情報の大洪水…。その水面下では関西呼びか関東呼びかの派閥争いもありそうですね…。ちなみに執筆者は関西人です。
 

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▲さらに近年収蔵された作品の中には、まだ作品カードに写真がないものも。収蔵品の整理を兼ねて、この機会に撮影も行います。
 

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▲同時に、作品の名札になる「絵符」をつけて見やすくしたり、並べ直したり。当館は地震対策に「さらし」を駆使していますが、不測の事態に備え、まき直しやさらしの点検もこの機会に行ってしまいます。日頃の備えが肝心ですね!

以上のように確認された情報は、今後の作品の保存や公開にも大きく役立ってきます。連綿と続いてきたデータをもとに、ホームページで「コレクション検索」を公開したり、企画展に併せてコレクション展を企画したり…。地道な作業の連続ですが、館蔵品はその美術館を特色付ける大切な財産。歴代プロジェクトチームの(時々冷)汗と(おそらく嬉し)涙の上に、美術館とコレクション展は成り立っています。

ちなみにこのコレクション展、2015年10月16日(金)からは大規模な「コレクション企画」として、《線の美学》という展覧会が予定されています。オール館蔵品による、線の美しさと面白さ、可能性と魅力が詰まった展覧会です。愛知県美術館の底力、とくとご覧ください!

 (y.y)